異業種から介護職への転職は可能
特別な経験や知識がないと、異業種から介護職へ転職できないというイメージを持つ人は少なくありません。
介護業界に転職するためには、何年も学校に通って資格を取得したり、現場で経験を積んだりする必要があると思っている人もいるようです。
実際に、ほかの業種から介護職にチャレンジしたいと思ったとき、どの程度スムーズに転職できるものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
1.資格がなくても介護の仕事はできる!
高齢化が進むにつれて、介護職員のニーズは日に日に高まっています。人口の多い都会はもちろん、地方でも高齢者の介護問題は切実なものの、介護に従事する人材が思うように集まらず、慢性的に人手不足のところが多くなっています。
それでも、高齢者に寄り添い、介護を通して相手の役に立ちたいと思って介護業界を目指す人も少なくありません。
例えば、家族が病気や怪我をして自宅で療養する場合、本人に代わって料理や洗濯をしたり、移動や食事、入浴などをサポートしたりすることが考えられます。介護の仕事はその延長線上で、資格を持たない人でも業務によっては十分に現場で活躍できる業種です。
実際、介護施設や医療機関で介護に携わっているスタッフのなかには、資格を持たずに仕事をしている人も多くいます。
もちろん、高度な介護技術や専門的な知識が必要な業務では、介護福祉士のような専門資格が求められます。
しかし、資格を持たないまま就職した人のなかには、現場で可能な業務を続けながら、介護職員初任者研修や実務者研修、さらに上位資格の介護福祉士やケアマネージャーといった資格を取得した人もいます。
2.無資格でもできる介護の仕事
それでは、介護の資格を持たない人が現場に入ったとき、具体的にどのような仕事が可能なのかを確かめてみましょう。
介護の現場では、法律によって資格がなくても可能な業務と、有資格者でないとできない業務がはっきり線引きされています。
まず、業務を行う場所によって、資格が不要な場合と資格が必要な場合に分かれます。
無資格者が身体介護をおこなためには、有資格者の監督が必要です。
そのため、老人ホームやデイサービスのように、法律の人員配置基準によって介護福祉士など介護の有資格者が働いている職場では、資格がなくても、洗濯や掃除などの家事を行う「生活援助」や、直接利用者の身体に触れて入浴や着替えなどを手伝う「身体介護」の業務が基本的に可能です。
現場では、専門的なスキルと知識を持ったスタッフが指導・指示をするため、資格を持たないスタッフも業務に携わることができます。
一方、介護職員が利用者の自宅に訪れる「訪問介護」では、家事支援などの生活援助はできますが、身体介護はできません。
入浴介助や移乗介助など利用者の体に直接触れる介護業務は、介護職員初任者研修修了者や介護福祉士などの有資格者が行うことになります。
なお、訪問入浴サービスは資格がなくても未経験で働くことが可能です。ただし、施設のサービス提供方針によって有資格者のみに訪問入浴サービスを担当させているケースもありますので、注意してください。
このように無資格であっても介護職に就くことは可能です。しかし、働くための制約が発生することは念頭に置いて奥ことが必要です。
異業種から転職をおすすめする理由
少しでも自立した生活を送れるように、要介護者のお世話をする介護職は、社会的に意義のある仕事です。
肉体的・精神的にハードなことも多くあるものの、転職先の選択肢のひとつとして考えてみると、さまざまなメリットが見えてきます。
ここからは、介護職への転職によって得られる、働き方や生きかたの面でのメリットを考えていきましょう。
1.正社員として採用されやすい
介護業界へ転職しやすくなっている大きな理由として、「全国に高齢化が進行しつつある」ということが挙げられます。
都市部だけでなく、地方でも65歳以上の高齢者人口が増加していているため、介護を必要とする人の割合も急増しているからです。
そのため、令和6年の有効求人倍率は全分野の平均で1.08倍であるのに対して、介護分野では3.22倍にも上ります。(厚生労働省職業別<中分類>常用計 有効求人・求職・求人倍率)
このように、介護業界では売り手市場がずっと続いているのです。
つまり、介護業界へは、ほかの業界に比べて正社員として転職できる可能性が大きいと考えられます。
介護業界への転職は、求人倍率の高い都市部に転職したい人だけでなく、地方に転職したい人にもおすすめです。例えば、地方へUターン(※)やIターン(※)して介護職を志望する人向けの支援が、自治体によって用意されていることもあります。
※Uターン…地方出身者が都会で働いたのちに、ふたたび生まれ育った地方へ戻って働くこと
※Iターン…都会で生まれ育った人が、地方に移住して働くこと
2.育児でブランクができても復職しやすい
介護職は、出産や育児で一時的に現場を離れていても、経験があればスムーズに復職しやすい業種です。
介護業界は女性の割合が多いので、職員のライフスタイルに企業側も対応しています。デイサービスや老人ホームでの施設や訪問介護事業所などでは人手が足りないので、現場の経験がある人が復職後に即戦力となることを期待しているからです。
小さな子どもがいることを職場に伝えておけば、ある程度配慮を受けることもできるはずです。
3.空き時間に自宅近くで働ける
家事や育児のために時間の融通を利かせたい人には、登録制の訪問ヘルパーがおすすめです。自宅になるべく近いエリアのホームヘルパーとして介護事業所に登録すれば、空いている時間帯や希望地域に沿った訪問先を選ぶことができます。
登録制なら、事業所側にとっても空きの出やすい時間帯をカバーできますし、ヘルパー側もフレキシブルな働き方が実現するので、お互いにメリットが大きいでしょう。
4.親の介護にも役立つスキルを得られる
直接仕事に関係するわけではありませんが、高齢者をケアする仕事を通して身につけた介護技術は、もし親の介護が必要になった場合、とても役に立ちます。
元気と思っていた親でも、いつ急病や怪我で介護が必要になるかわかりません。介護保険制度のサービスをメインにしながらも、日常的に家族が介護を担う場面も出てきます。
そんなとき、実際に高齢者を現場で介護した経験を持っていれば、大切な親の介護をする際、確かな知識とスキルでサポートできるはずです。
5.将来的にも需要が大きい
介護ができる人材は、全国どこの現場に行っても引く手あまたです。有効求人倍率からも明らかなように、一般の業界より求人数が多く、自分のワークライフバランスに合わせた職場を選びやすい業種だといえるでしょう。
日本では地域に関係なく、社会全体の高齢化が進行しています。当然、高齢者を介護できる介護職員は、今まで以上に数が必要となると予想されます。そのため、介護の求人は今後も増えることはあっても減ることはないと考えられてます。
さらに、介護業界は介護保険制度をはじめ、国や自治体からさまざまな補助や助成を受けています。高齢者を介護する介護施設や事業所は、福祉サービスの一翼を担う、とても重要な役割を持っているからです。
最近では、介護職の給与水準を一般業種の平均レベルまで引き上げようという動きも活発です。介護の仕事は肉体的、精神的にハードかもしれませんが、高齢化が加速する日本では、今後も介護職員のニーズが衰えることはなく、安定して働き続けられるでしょう。
異業種から介護職へ転職する際の注意点
さて、最後に異業種から介護職へ転職する際に注意すべきポイントを確認していきましょう。具体的な例を大きく2つ挙げるので、少しでも自分に合った、有利な転職になるようセルフチェックしてみてください。
1.資格を取得しておいた方が就職しやすい
介護の仕事は、専門資格を取得していなくても、未経験・無資格ですぐ働くことが可能です。とはいえ、経験もなく、資格も持っていないとなると、業務の範囲が限られます。
そのため、たとえ未経験であっても、介護の入門資格と呼ばれている「介護職員初任者研修」の修了をおすすめします。
介護職員初任者研修のカリキュラムを通して、介護に関する基本的な知識と実践的な介護技術を学ぶことができます。資格を持たない応募者より、一定の介護スキルや知識を持っている介護職員初任者研修の修了者のほうが、採用選考時にも有利です。
また、介護職員初任者研修の資格保有者なら、訪問介護の身体介護が可能になります。
資格手当も給料にプラスされることも多いので、もし、介護について無資格・未経験で、異業種から介護職へ転職しようとしている場合は、介護職員初任者研修の取得にチャレンジしてみましょう。
2.研修制度が整った職場を選んだ方が良い
介護業界では、求められる介護スキルも知識も日々アップデートされています。常に向上心を持って新しい情報を仕入れる努力をしなければ、より良い介護を提供するのは難しくなっていくでしょう。
自分自身のスキルアップのためにも、研修制度やフォロー体制の充実した介護施設や事業所を選択肢しておくことをおすすめします。
このことは、将来的にリーダー的役割を担う役職を目指したり、施設長などの管理職や経営側にチャレンジしたりするときにも役立つでしょう。
とくにホームヘルパーは介護現場で、一人で自宅に伺って、適切なコミュニケーションを図りながら介護を行わなければなりません。
ホームヘルパーは現場での指導役がおらず、業務を通じたスキルアップが難しいので、先輩やリーダーが常にフォローしてくれる体制になっている、研修会が定期的に開催されているなど、施設や事業所全体で介護職員の質向上に取り組んでいる職場を選ぶようにしましょう。
異業種からの転職について詳しく知りたい方は、「運命のカイゴ転職・葬祭業から介護業界への転職 利用者の笑顔に触れることで ポジティブに変わった私の物語」をご参照ください。