介護人材再就職準備金貸付制度とは?
介護人材再就職準備金貸付制度とは、一度介護の仕事から離れた人の再就職に必要な準備金を貸し付ける制度です。制度について詳しく見ていきましょう。
1. 厚生労働省の再就職準備金貸付事業
結婚や出産・育児、親の介護など、何らかの事情で介護の仕事から離れた人は少なくありません。
そんな人が再び介護業界で働きたいと思ったとき、再就職に必要な準備金を上限20万円まで貸し付けてくれる制度が、「介護人材再就職準備金貸付制度」です。
最大の魅力は、貸し付けを受けてから介護職員として2年間働くと、返済が全額免除されるという点にあります。
2. お金の用途は再就職するための準備
貸し付けを受けたお金は、再就職するための準備を目的に利用するのが決まりです。
自分では就職活動や職場復帰に必要な一時金だと思っていても、貸し付けの対象とならないケースもあるので注意が必要です。
具体的なお金の用途は自治体によって多少バラツキがあるものの、次のような項目が基本です。
- 就職活動中や再就職後に利用する保育施設などを探すための活動費
- 介護の講習会の参加費や学習資料の購入費
- 就職後のシューズ、介護業務で必要な道具やカバンなどの購入費
- 就職に伴う引っ越し費用や敷金・礼金・仲介手数料
- 通勤用の自転車やオートバイ、自動車の購入費
ただし、自治体によって「新しい就職先まで通勤用の自動車が必要になったケースは認められるものの、以前から持っていた車の買い換えは対象外になる」「転居が必要な就職先が決まっても、礼金や仲介手数料はOKだが、敷金や家賃、管理費は一時的な経費とは認められずNG」というように、扱いはさまざまです。
そのため、申請時には必ず自分のお金の使い道が貸付制度にマッチするかどうかを、窓口で確かめましょう。
貸し付けを受けられる対象者
魅力的な貸し付け制度である介護人材再就職準備金ですが、貸し付けを受けるには2つの条件にマッチする人でなければなりません。
それが、「介護業界での実務経験」と「連帯保証人」です。
1. 介護業界での実務経験がある者
介護業界の経験によって貸し付けが受けられるかどうかが分かれます。
介護人材再就職準備金では次の4つをすべて満たさなければいけません。
一つでも基準から外れると、申し込みできないので注意してください。
- 介護職員として1年以上実務経験があること(雇用期間365日以上に加えて介護業務の勤務期間が180日以上)
- 介護資格を持っていること(介護職員初任者研修やそれに該当する旧資格、介護職員実務者研修修了者)
- 再就職した勤務先が介護保険サービス事業所であること
- 再就職までに都道府県の福祉人材センターに登録して、再就職準備金利用計画書を提出していること
以上が、申し込み本人に関する条件の4項目です。
介護業界での再就職をサポートする補助金制度であること、条件をクリアすれば返済免除になることから、対象者が絞られていることがわかります。
基本的に介護資格を持った介護職員の経験がある人で、再就職先も介護関連の施設や事業所でなければなりません。
しかも、再就職の活動をスタートする段階で再就職準備金貸付制度を取り扱っている窓口とのやりとりが必要です。
介護職員の実務経験がある人ならぜひおすすめの制度です。
条件をひとつずつ確認して、漏れのないように申請準備を進めてください。
2. 連帯保証人を用意できる
制度を利用するためには、申請者本人とは別に、連帯保証人を用意することが求められます。
ここで、連帯保証人とはどのようなものなのかご紹介しましょう。
お金を借りると、当然借りた本人が全額返済しなければなりません。
これを金銭債務といいます。
もし借りた本人の返済が遅れると、貸主は「早く返してほしい」と請求してお金を取り立てるわけです。
しかし、大きな金額を借りた場合、途中で借りた本人の収入が不安定になって完済が難しくなる場合があります。
このような場合、貸主は全額回収できるように保証人を付けてもらうのです。
こうしておくと、借りた本人が返せなくなっても、貸主は代わりに保証人に請求することができます。
保証人という制度には、単なる保証人と連帯保証人の2種類があります。
お金の貸し借りにおいて、ただの保証人の場合、もし本人が払えなくなると貸主はまず本人に請求します。
そのうえで、保証人も返済を負担します。
しかし、連帯保証人の場合は、たとえ本人に請求できる場合でも、貸主はいきなり連帯保証人に全額返済するよう求めることができるのです。
再就職準備金貸付制度では、連帯保証人を必ず付けなければいけません。
介護業界への再就職を考えて貸付制度を利用しようと思った段階で、連帯保証人になってもらえる人を探しておくことをおすすめします。
制度の使用をおすすめしたい人
条件に当てはまって、2年以上継続して勤務することを考えているなら、とても魅力的な内容です。万一、2年以内に退職しても、無利子というのも大きなポイントです。
- 就職活動前や内定時に届け出をしなければいけないこと
- 連帯保証人が必要なこと
- 使い途に一定のルールがあること
などは気をつけなければいけませんが、介護分野で再就職をしたい人にはぜひおすすめしたい制度です。
貸し付け金額は上限20万円
全国的に20万円を上限に実施されている貸付制度ですが、地域によって差があります。
再就職をスムーズに進めるために大切な資金となりますので、きちんと確認しておきましょう。
1. 最大40万円の貸し付けが可能な地域も
厚生労働省の公式ホームページで再就職準備金貸付制度の説明を見ると、貸し付け可能な金額は「上限20万円(一部の地域では40万円)」と明記されています。
国からの貸し付け額(上限20万円)を基本にしつつ、自治体の介護分野の方針によって上乗せされることがあるのです。
例えば、茨城県や奈良県では貸し付け金額が40万円以内なので、上限プラス20万円の就職資金を手にすることが可能です。
このように、再就職準備金貸付制度は、厚生労働省がリードして実施されているものの、自治体によって募集要件を緩和したり、プラスアルファのメリットを盛り込んだりなど、都道府県の介護人材を増やすために行われているのが特徴なのです。
2. 貸し付けに利子はかからない
上限20万円までの貸し付けを受けても、無利子です。
利子の返済の心配はありません。
もし2年以内に何らかの事情で再就職先を退職した場合でも、返済に利子がかからないので安心です。
3. 2年間介護現場で働くと返還が免除される
再就職準備金貸付制度には、全額返還免除の制度があります。
貸し付けを受けた都道府県内の介護施設や介護事業所などで2年間、介護職員として働くことが免除条件です。
各自治体によっては、「介護職員改善加算を算定している事業所や施設であること」のほか、「在職期間通算730日以上かつ従事日数360日以上」であることなど、より細かな条件がついている場合があります。
2年後に無事返還免除を受けるためにも、申し込みの際にもらうパンフレットを必ずチェックしておきましょう。
貸し付けてもらうまでの流れ
貸し付けは5つの流れに沿って行われます。
それぞれ支給を受けるのに大切な手続きが含まれますので、ひとつずつクリアしていきましょう。
1. 福祉人材センターでの登録
ここからは東京都を例に説明します。
就職活動を始めるときに、東京都の福祉人材センターに、「離職介護人材」の届出を郵送またはFAXで行います。
届け出のときに、窓口やホームページで提出書類の確認をしておきましょう。
2. 申込書類の提出
再就職先が内定したら、福祉人材センターの窓口でもらった書類を準備して提出します。
手元にないときは福祉人材センターのホームページからダウンロードも可能です。
申込書類は、
- 離職介護人材再就職準備金利用計画書兼貸付申込書
- 実務経験証明書
の2つです。
なお、同じ期間中に2つ以上の施設や事業所に勤務したことがある人は「従事日数内訳書」の提出も合わせて必要となります。
3. 再就職届の提出
実際に働き始めてから、福祉人材センターの窓口に「再就職届」を窓口または郵送で提出します。
就業から3ヵ月以内が決まりです。
4. 審査を受ける
提出書類に基づいて社会福祉協議会が貸し付け可能かどうか審査します。
場合によってはさらに提出書類を求められることも。
借用証書などを提出すれば貸し付けはまもなくです。
5. 貸付金の交付
審査結果の連絡が届きます。
無事通った人は、貸付金を一括で受け取ることができます。