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【はじめての方向け】老人ホームでのボランティアの知っておきたい心構え

「老人ホームのスタッフや入居者をサポートしたい」、そんな気持ちを形にできるのがボランティア活動です。活動内容は多岐にわたるので、資格や経験がない方でも、自分にできることを見つけられるのがポイント。もちろん、ジャンルによっては自分の特技を生かした活動を行うことも可能です。この記事では、ボランティアがはじめての方向けに、「老人ホームでのボランティア活動に参加するためにはどうしたら良いか、どんな注意点があるか」をわかりやすく解説しました。実際に参加しようと考えている方は、ぜひ目を通してくださいね。

老人ホームでのボランティア活動とは

要介護状態の高齢者も多く暮らし、外部から閉ざされた場所になりがちな老人ホームでは、ボランティアの方に来てもらうことが地域コミュニティとの交流方法のひとつになっています。
入居者にとっては、普段の生活のなかで出会えないような人と触れ合うことが良い刺激となるのです。

また、老人ホームでは人手不足が深刻化しています。
高齢化が進むなか、職員が行う日々の業務も増えつつあります。

ボランティアが職員の補助業務を行うことで、職員の負担が減らせますし、活動内容によっては入居者の満足度を高めることにもつながるのです。

活動の中心はQOL向上のサポート

部屋に掃除機をかける若い女性

老人ホームでのボランティア活動は、食事や排泄の介助といった身体介護ではなく、入居者のQOL(生活の質)を高めるためのサポートが中心です。
実際に行われているのは、主に介護職の補助業務です。

基本的に難しい作業は要求されませんので、気になっている方は安心して参加してください。

ボランティアが行う業務は、以下のようなものです。
いずれも入居者とボランティアの距離が近くなるため、しっかりとした感染症対策を行うことが大切になります。

(1)介護職の補助業務

  • 入居者のベッドのシーツ交換
  • 食事の際のサポート(食事の配膳やお茶を淹れるなど)
  • 共有スペース、居室の備品の補充
  • 敷地内にある花壇や畑、庭の手入れ
  • 館内全般(共有スペース、居室)の清掃
  • 入居者が入浴した後、ドライヤーをかける

(2)個々の入居者に対するサービス

  • 傾聴(入居者の話し相手になる)
  • 囲碁や将棋の相手
  • 散歩の付き添い
  • 新聞や本が読めない方に朗読する

    (3)複数の入居者に対するサービス

    • 書道、フラワーアレンジメント、編み物など習い事の指導
    • マジックショー、演芸、歌、楽器の演奏などの披露
    • 理美容(要資格)やネイル

    特別な資格や経験は必要ない

    両手でマルの札とバツの札を持つ若い女性

    理美容などを別にして、老人ホームでのボランティア活動に参加するうえで、特別な資格や経験は必要ありません。
    「入居者の役に立ちたい」という気持ちが何よりも大事です。

    もちろん、自分の趣味や特技を活かしたボランティア活動を行うこともできます。

    入居者に喜んでもらっている、社会に貢献している、ということに喜びを感じられるのが、ボランティア活動の大きな魅力。

    あえて条件を挙げるなら、そうした気持ちや価値観を持っているかどうか、という点かもしれませんね。

    ボランティアを始めたいと思ったら

    電話をする私服の若い女性と応答する制服を着た若い女性

    では、老人ホームでボランティアをしたいと思ったときは、どのように申し込めば良いのでしょうか。
    個別の施設に直接問い合わせるのが、最もシンプルな方法です。

    人手が足りない施設も多く、ボランティアを募集している老人ホームは少なくありません。
    自宅の近くにある老人ホームで募集していないか確かめてみると良いでしょう。

    ただし都市部など、周辺に老人ホームが多く立地している地域だと、一つひとつの施設にボランティア募集の有無を確認するのは手間がかかります。

    そこでおすすめしたいのが、最寄りの社会福祉協議会に問い合わせるという方法です。
    社会福祉協議会にはボランティアセンターが設置されており、ボランティアとして活動したい方への仲介業務を行っています。

    また近年、「介護支援ボランティア制度」を導入する自治体が増えてきました。
    介護支援ボランティア制度とは、高齢者の方が老人ホームなどでボランティアをした場合に、介護保険料の支払いにも使えるポイントをもらえる制度のこと。

    この制度を利用したい方は、市区町村や地域包括支援センターに相談してみましょう。

    ほかにも、地域のNPO法人が行っているボランティアの募集に応募するという方法もあります。
    近所にそのような法人があるという場合、活動内容や募集の有無を尋ねてみると良いでしょう。

    幅広い世代が参加している

    老人ホームでボランティアをしている人は、個人だけではありません。

    NPO法人のスタッフや学生、社会人、主婦、元気な高齢者まで、幅広い世代がボランティアに参加しています。

    特に、 健康な高齢者が老人ホームでボランティアを行うことは、介護予防につながるだけでなく、ボランティアを通じて刺激を受け、いきいきと生活しているケースも多くあります。

    メリットは人生経験を積めること

    両手を挙げて笑う若い女性と笑う高齢の男性

    介護ボランティアを行うことで、ボランティアを行う本人はもちろん、利用者、施設側それぞれにとってメリットがあります。

    ボランティアスタッフにとってのメリットは、趣味や特技を活かしながら、人生経験が積めることです。

    人生の先輩である高齢者とかかわることで多くの学びを得られ、成長することができるのです。

    施設の高齢者にとっては、職員とは違うボランティアと話しができるので、気分転換になるでしょう。

    また、ほかの世代と交流することで刺激を受け、介護予防や認知症予防にも役立ちます。

    介護施設側は、ボランティアが忙しいスタッフの仕事を軽減させ、余裕を持ったケアが可能になります。

    また、職業や生活背景の異なるさまざまな人がかかわることで、違った視点から課題や対応策を見つけられることも。

    さらに、ボランティアを受け入れることで、地域に開かれた施設にもなります。

    生活や人間関係が固着しがちな高齢者にとって、ボランティアの皆さんが良い雰囲気作りに一役買ってくれることでしょう。

    注意したい入居者への配慮

    人差し指を立てて話をするスーツ姿の若い女性とあごに手を当てて話を聞く若い男性

    老人ホームでのボランティア活動に参加するときに忘れてはいけないのが、老人ホームには寝たきりなど重度の要介護度の方や、認知症の方もいるということです。

    ボランティア活動を通してさまざまな心身状態の方と接していくことになるため、コミュニケーションを取るうえで十分な配慮が必要です。

    認知症を理解すること

    頭を抱えて苦しむ高齢男性とうなだれて肩を落とす高齢女性と注意喚起のマーク

    老人ホームには認知症の方も入居されています。
    大きな声を出して驚かせる、行動を急かす、自尊心を傷つけるなどの行為は厳禁です。

    ボランティア活動をする前に「認知症について学びたい」という場合、各地域で開催されている「認知症サポーター養成講座」に参加することをおすすめします。

    認知症サポーターについては、「【あなたにもできる】認知症サポーターとは?(養成講座・研修内容)」のページで詳しく解説しています。

    約束・秘密を守ること

    ボランティア活動を通して知ったプライベートな情報は厳守するのが原則。
    入居者の方に対して興味本位で立ち入ったことを質問するのは控え、入居者・職員の個人情報を聞いた場合は、外部に漏らさないようにしてください。

    各施設で定められているルールを守り、職員の指示に反する行動は慎みましょう。

    職務の権限を守ること

    ベッドで横になった高齢男性を介助する若い女性とバツマーク

    ボランティアの活動は、あくまでも職員から依頼された案件が中心となるので、それに専念することが大切です。

    活動内容は必ず事前に確認し、自分も納得のうえで行ってください。

    高齢者の方が身体介護を希望したときは、勝手に介助をしてはいけません。
    そういった場合は、速やかに職員を呼びましょう。

    体調を管理すること

    風邪をひいた場合、入居者・職員にうつさないようにするため、ボランティア活動は休むようにしましょう。

    たいした風邪ではないと思っていても、もし感染した場合、相手の体調によっては症状が重くなることも考えられます。院内で感染が広がってしまうことも考えられます。

    出勤前には体温測定を行い、微熱がある場合はボランティア活動を中止しましょう。ほかにも鼻水や下痢などの症状がある場合も、まずは自宅で療養し、体調を万全にしてから参加してください。

    笑顔とあいさつ、マナーを忘れないこと

    笑顔で寄り添う高齢女性と若い女性

    職員や入居者、ほかのボランティアの方との関係を良好に保つためにも、あいさつと笑顔を欠かさないようにし、社会人としてのマナーを守りましょう。

    特に、はじめて入居者の方と接するときは笑顔が大切です。
    距離が縮まり、コミュニケーションが取りやすくなります。

    相手の気持ちに配慮すること

    ボランティア活動の際は、相手の気持ちを尊重することが大切です。
    入居者の方が今、何を望んでいるのかを考えて行動し、自己満足の活動にならないよう注意しましょう。

    また、職員やほかのボランティアの方たちと協力し合える関係を築くことも大切です。

    ボランティア活動保険への加入がおすすめ

    手を差し出して話をするスーツ姿の若い女性と、話を聞く長髪の若い女性

    ボランティア活動に参加するにあたって、活動中に起こった怪我や事故に対して補償をしてくれる「ボランティア保険」への加入を考えておきましょう。

    保険料や補償内容は保険ごとに異なりますが、例えば社会福祉協議会の「ボランティア活動保険」の場合は、下の表のようになっています。

    タイプ 保険料(年間) 死亡保険金 入院保険金(日額)
    基本タイプA 350円 1,040万円 6,500円
    基本タイプB 510円 1,400万円 1万円

    基本タイプのほかに、地震、津波、噴火などの天災への補償を含んだ天災タイプも選択できます。

    辞めるための方法

    ボランティアは自発的に行うものなので、仕事のように契約等はありません。

    ボランティア活動を辞めたいときは、所属する団体や施設に辞める意思を伝えてください。可能であれば、後日、あいさつに行けると関係を損ねることもありません。

    ボランティアがこれからの介護の鍵に

    高齢男性の乗った車いすを押すエプロン姿の若い女性

    厚生労働省の資料「今後の高齢者人口の見通し」では、2025年に日本の高齢者数は3,657万人、2042年には3,878万人でピークを迎えると予測されています。

    介護職員が慢性的な人材不足であることに変わりがない現状で、高齢者の数だけが増えていけば、介護現場が危機的状況になることは周知の事実です。

    そのため、自立した高齢者が独りでも住みやすい環境にしていくために、地域の状況にあった介護サービスを職員とボランティアが連携して作り上げる包括ケアシステムを各自治体が構築中です。

    ボランティアの方の協力により、生活介助や介護予防の部分の負担が軽減されることに期待が寄せられています。

    これからの社会において、介護ボランティアは非常に重要な存在で、確保したいと望む市町村はとても多いのです。

    介護ボランティアが気持ち良く、有意義に活動できるよう、時間的な部分だけでなく、柔軟な発想を取り入れながら地域全体で介護を支えていけると良いですね。

    大切なのは対等な関係づくり

    はじめて老人ホームでボランティアをする場合は、活動の様子を事前に見学させてもらうのもひとつの方法です。
    もし身近にボランティア経験者がいたら、体験談を聞いておくと活動内容をイメージしやすくなるでしょう。

    また、ボランティアとして活動する場合は、一人の市民として相手に奉仕するという気持ちを大切にしてください。
    普段は社会的地位のある人でも、ボランティアとして参加した場合、そのような肩書は関係ありません。

    入居者の方とはもちろん、職員やほかのボランティアの方とも対等な関係を作り、活動していくのが基本です。

    活動中に問題が起こったら一人で悩まないようにし、職員、あるいはボランティアセンターの窓口などに相談しましょう。