高齢化社会とは
高齢化社会という状態は、人口を占める65歳以上の高齢者の割合が7%を超えた状態です。
これは、1956年に国連での報告書で、当時の欧米先進国の水準に合わせて7%と定義されたことが由来とされています。
日本では、1970年から高齢化社会に突入しています。
この時期は高度経済成長期に当たり、医療技術や化学技術の進歩により長生きする人が増えたことが、高齢者の割合が増えたことが要因です。
当時の高齢化率は7.04%であるため、現在の27%を超える高齢化率と比較すると、いかに高齢化が急速に進んだかがわかるでしょう。
「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」の違い
高齢化社会と並んで耳にする機会が多い言葉として、「高齢社会」や「超高齢社会」があります。しかし、これらの違いをきちんと把握できていない人も多いと思われます。
知っていた(5598件) | |
なんとなく知っていた(3851件) | |
知らなかった(5244件) |
これら3つの言葉はすべて、定義が異なります。
そして、高齢化にかかわる定義は、高齢化率から求められるのがひとつのポイントです。
人口の14%が高齢者になったら「高齢社会」
高齢社会とは、高齢化率が14%を超えた状態のことを指します。
高齢化社会を迎えた1970年以降、日本の高齢化はさらに進み、1994年に高齢社会を迎えています。
日本が高齢社会に突入したスピードは他国よりも速く、ドイツは40年で、フランスは115年かかっているのに対し、日本はわずか24年です。
この要因は、単純に高齢者が増えただけではなく、少子化もかかわっています。
1994年における日本の出生率は1.50、高齢化社会が始まった1970年の2.13と比較すると大幅に減少しています。
子どもの数が減りながら、高齢者が増え続ける時期が続いたことから、高齢社会への突入のスピードも速くなったというわけです。
人口の21%が高齢者になったら「超高齢社会」
高齢社会の状態からさらに高齢化が進み、高齢化率21%を超えると、「超高齢社会」となります。
日本では、2007年に高齢化率が21%を超え、超高齢社会に突入しました。
高齢者の数は増えていますが、出生率は減少し続けています。
このため、超高齢社会に突入した翌年の2008年からは人口減少も始まっています。
高齢化率が高い日本では、超高齢社会への突入も他国にはない速いスピードで、高齢化率は今後も上がることが見込まれています。
2065年には高齢化率が38%、人口の25%が75歳以上の後期高齢者になるという予測もあるほど、日本の高齢化は今後も急速に進んでいくものと思われます。
他国との比較 日本は世界一の高齢先進国
「日本は世界のどの国も経験したこのとのない高齢社会を迎えている」といわれていますが、日本に住む私たちが聞いてもピンときませんよね。
2017年の世界における主要国の高齢化率をみてみると、高齢化率の世界のトップ3は、日本が27.05%、イタリアが23.02%、ポルトガルが21.5%となっています。
世界の高齢化率(高齢者人口比較)TOP10 | ||
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順位 | 国名 | 高齢化率 |
1 | 日本 | 27.05% |
2 | イタリア | 23.02% |
3 | ポルトガル | 21.5% |
4 | ドイツ | 21.45% |
5 | フィンランド | 21.23% |
6 | ブルガリア | 20.8% |
7 | ギリシャ | 20.4% |
8 | スウェーデン | 19.99% |
9 | ラトビア | 19.75% |
10 | クロアチア | 19.72% |
この数字を見てもまだ実感が湧かないと思いますが、次の「高齢化の速度」について国際比較しているデータを見ると、その意味がわかります。
世界各国の高齢化率が、7%から14%になるまでに要した年数(倍化年数)を比較すると、フランスではなんと115年もかかっています。
スウェーデンは85年、ヨーロッパで一番高齢化が進んでいるといわれるドイツでも40年かかっていました。
では日本は何年かというと、驚くことに、わずか24年で達しているのです。
これは、ドイツの1.6倍、スウェーデンの3.5倍、フランスの4.8倍の速さです。日本が24年という短い年数で高齢化が進んできたのは、何が理由だったのでしょうか。
次項からはその理由を探っていきたいと思います。
日本が超高齢社会になった原因
日本の平均寿命は世界でもトップレベルで、医学の進歩によりがんによる死亡率の低下、心疾患や脳血管疾患の死亡率改善が、平均寿命を上げた要因とされています。
現在も、日本の平均寿命は上昇し続けています。男女ともに平均寿命は過去最高を更新しており、この記録は今後も延びることが推測されます。
一方で、高齢化が進んでいる日本では、高齢社会への移り変わりも他国より速いスピードで進んでいます。
平均寿命が上がってはいますが、出生率は緩やかに減少しているため、少子高齢化が深刻なのが、高齢先進国である日本の現状といえます。
平均寿命はなぜ伸びた?

日本の高齢化がこれほどまで急速に進んだ要因のひとつが、平均寿命が延びたことです。その理由には、死亡率の低下が挙げられます。
医療の進歩のほか、栄養状態や生活環境の改善、食生活の変化などにより、日本における乳幼児や若年層の死亡率は戦後以降、大幅に改善しました。
さらに、現在高齢者と呼ばれる世代は、戦後のベビーブーム世代が多いこと、ほかの年代と比較して死亡率が高くなる65歳以上の高齢者の死亡率も戦技は下がっている傾向があります。
平均寿命も延びたと考えられています。
また、日本の保険制度は国民皆保険です。すべての国民が保険加入を義務付けられているので、病院で受診しやすい環境が整っていることも、平均寿命を延ばしている要因となっています。
少子化が進行した理由は?
少子化も、先に挙げたように高齢化の要因となっています。
一人の女性が一生に産む子どもの平均数である「合計特殊出生率」は、1973年の第二次ベビーブーム以降は減少しています。
平成に入ってからは、人口を維持するために必要な出生率である2.08を下回る年が続いている状況。
2005年には過去最低の出生率である1.26を記録するなど、日本の人口の減少傾向にあります。
このように、高齢者の死亡率が下がり平均寿命が上がったこと、同時に子どもの数が減り人口も減少傾向にあることが高齢化の背景となっています。
超高齢社会でどんな問題が起きる?
医療における問題点
まず挙げられるのが、多くの人が利用することが多い医療制度です。
持病などが増えて病院にかかる人が多く、介護が必要な高齢者の数が増えることにより、医療費や介護費用の負担が膨らみます。
現在の仕組みのように税金でまかなえなくなる可能性が出てくると、税金の負担がさらに大きくなることも想定されます。
この問題は、団塊の世代が75歳以上を迎える2025年に起こる「2025年問題」として、解決すべき課題とされています。
そして、少子化により働く世代が減り、支えられる側の高齢者が増えるという構造は、バランスが崩れている状態と言えます。
働き手が少ない社会はお金が回ることも減り、景気悪化を招くこともあるでしょう。
介護における問題点
必然的に介護の現場で働く人材も不足するため、介護施設が適切に運営できなくなり、思うように介護が受けられずに「介護難民」が増える事態も考えられます。
介護施設で介護を受けられないとなると、家族による在宅介護という方法を選ばざるを得ない状況も出てきます。
すると、家族へ介護負担が大きくなります。介護費用の問題だけではなく、在宅介護では肉体的・精神的な負担も大きくなるでしょう。
そのほかにも、高齢者世帯が増えるために高齢者同士で介護を行う「老老介護」や認知症同士が介護を行う「認認介護」の増加も懸念されます。
さらなる超高齢社会に向けての対策は?
今後さらに進むことが予想される超高齢社会に対して、どのような対策が行われているのでしょうか。
日本では、1995年に高齢社会対策を総合的に推進するための「高齢社会対策基本法」が定められています。
この中では、以下の3点が示されています。
- 公正で活力のある社会
- 地域社会が自立と連帯の精神に立脚して形成される社会
- 豊かな社会
このほかに、高齢社会に対する理解や知識を深め、相互連携を行って健やかで充実した生活を送れるように努力をするという内容も含まれています。
「地域包括ケアシステム」で高齢者を支える
その代表的なものが、地域で高齢者を支えるための仕組み「地域包括ケアシステム」です。
これは、高齢者が住み慣れた場所で人生の最後まで暮らせるよう、医療や介護、生活支援を一体的に提供するもので、2025年を目途に整備が進められています。
働く世代の減少により起こる労働人口の減少を食いとめるための策として、定年延長や廃止を行った中小企業の事業主へ奨励金の支払いが行われています。
介護現場のIT化・機械化
労働人口減少は、介護の現場でも深刻です。
介護職員一人当たりにかかる負担も増えることから、介護施設へのロボット導入など、機械化も進められています。
在宅介護を行う家庭での負担軽減や介護サービス普及のため、高齢者の機能低下のために必要な介護サービスが介護保険適用と認定されれば、利用料金のほとんどが介護保険で利用でき、金銭的負担を軽くできる対策も行われています。
日本の超高齢社会は、改善どころか今後も進んでいくと見込まれています。
今後起こり得る、これからの生活を左右する重要な問題に対し、しっかり対策を行っておくことが求められるでしょう。