地域包括ケアシステムとは
地域包括ケアシステムとは、高齢者を支えるサービスを地域で一体的に提供するシステムのこと。
国だけでなく地域が主体となって介護・医療や生活支援サービスを整えることで、高齢者が住み慣れた地域で「自分らしい生活」を最後まで送ることを支援します。

こうしたシステムを実現するためには、介護職や医療関係者をはじめとした多職種が連携する必要があります。その仲介役として、地域包括支援センターやケアマネージャーが重要な役割を果たします。
なお、ここでいう「地域」とは、自宅から30分圏内のことです。
国は現在、介護サービスの主体を国から自治体へ移行しようとしています。
地域包括ケアシステムの導入はそのための体制作りとも言えます。
また、全国的に介護施設が不足する中で、国はケアの場を施設から在宅へと移すことを重視しており、そうした国の意向も導入の背景にあると考えられます。
特に厚生労働省は、2025年を目標に、地域の包括的な支援やサービス提供体制を構築できるよう、取り組みを推進しています。
地域包括ケアシステムの歴史
「地域包括ケアシステム」という概念は、1980年代に広島県御調町における取り組みによって生まれました。
当時の御調町(現在は尾道市)が、医療と福祉行政が連携して「高齢者の寝たきりゼロ」を目指すという画期的な取り組みを初めて実施。これが「地域包括ケアシステム」と呼ばれるようになりました。
その後、2000年に介護保険制度が始まり、高齢者を支えるには医療と介護や福祉の連携だけではなく、生活支援サービスも必要であることが明らかになってきました。
そんな中、医療サービスと介護サービス、さらに生活支援などを連携させた体制として改めて「地域包括ケアシステム」の概念が注目を集めるようになります。
そして2014年には「医療介護総合確保推進法」が施行され、地域包括ケアシステムの構築が全国的に進められるようになったのです。
なぜ地域包括ケアシステムが必要なのか
地域包括ケアシステムの構築を求められるようになった背景にあるのは、急速に進む少子高齢化です。
厚生労働省の「介護保険事業状況報告の概要」のよると、2021年1年時点では要介護・要支援認定者数が全国で679.2万人を突破しています。
高齢者人口の増加とともに要介護認定を受ける人も増えつつある一方、要介護者を支える介護職が大きく不足し、既存の介護保険サービスだけでは高齢者を支え切れない状況になりつつあります。
そのため、公的なサービスだけでなく「地域」の力を活用しながら高齢者を支えていく「地域包括ケアシステム」の構築が必要となったのです。
また、核家族化が進み、家族の支えを受けられない単身高齢者が増えていることも、地域によるケアが必要になった要因のひとつとして挙げられています。
介護予防こそがシステムの本丸
地域包括ケアシステムでは、介護が必要になる以前の「介護予防」を充実させることが重要な課題になっています。
高齢者が要介護になる主な理由は身体的な衰えにあり、身体の状態によって、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームにわけられます。
これら3つの状態について詳しく説明すると、フレイルは体重減少や活動量の低下などが著しい状態のことで、要介護の前段とされています。サルコペニアはフレイルの入口とされる状態で、消費エネルギー量の減少から食欲低下、低栄養へと至ります。ロコモティブシンドロームは加齢などによる運動器の障害のために活動量が低下することで、これもフレイルを招く状態だとされています。
これらの状態に至らないように、高齢者に社会参加してもらったり社会的役割を担ったりしてもらうことで、心身の充実や生きがいを感じてもらえるよう目指しています。
地域包括ケアシステムを理解するポイント
地域包括支援センターがシステムの中心
2005年の介護保険法改正に伴い、地域包括ケアシステムを支える中核機関として設置されたのが、地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、在宅介護支援センターの運営法人や社会福祉法人、公益法人、医療法人、NPOなどが市町村から委託される形で運営しており、保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャーなどが配置されています。
業務内容は、介護予防支援事業と包括的支援事業に分かれています。具体的な内容としては以下のようになっています。
介護予防支援事業
- 指定介護予防支援事業所として要支援者のケアマネジメント
包括的支援事業
- 介護予防ケアマネジメント…要介護になってしまうことを防ぐための支援
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援…高齢者が自分が暮らす地域に住み続けられるような体制づくり
- 総合相談・支援…地域に住む高齢者の相談を聴き、地域包括支援センターに引き継ぐ業務
- 権利擁護…判断力が十分でない人への相談支援や金銭管理
地域包括ケアシステムの5つの構成要素
「地域包括ケアシステム」という言葉だけでは、全体像がぼんやりしているように思えますね。
以下で、地域包括ケアシステムの具体的な中身についてみていきましょう。
地域包括ケアシステムは、大きく分けて次の5つの要素で構成されています。
医療・看護
地域の連携病院、かかりつけ医、急性期病院など、医療・看護に関するサービスが該当します。
介護・リハビリテーション
在宅介護サービス・施設介護サービスといった介護に関するサービスを指します。
予防・保健
健康的な生活を維持するための介護予防などが該当します。
生活支援・福祉サービス
高齢者の健康的な暮らしをサポートするための福祉サービス。具体的には、ボランティアや自治体主体でふれあいサロンの企画・運営や、配食サービスなどが行われています。
住まいと住まい方
高齢者の住まいを確保するためのサービス。賃貸契約時の保証人の確保などが含まれます。
5つの構成要素は植木鉢に例えられる
地域包括システムの構成要素を考える際、よく引き合いに出されるのが「植木鉢」です。

その植木鉢では、医療や介護などの専門職が行うサービスは植木鉢の中で育つ植物の「葉」に例えられています。
今後の介護サービスへの需要増に備えるには、この葉を大きく広げなければならない、という意味がこめられているからです。
しかし介護サービスを充実させても、生活の基盤である「住まい」が確保されなければ、安定した日々の暮らしは送れません。
そこで「住まいと住まい方」は「鉢」として表されています。
また、地域の高齢者が取り組む「介護予防」や、地域内の介護保険外のサービス、近隣住民の支えによる「生活支援」が充実していることが必要。なぜなら、専門職が自分の業務に集中して取り組み、専門性を発揮してサービスを提供することができないからです。
そのため、介護予防と生活支援は「土」に例えられました。
そして、これらのサービスを受ける大前提として、高齢者本人の選択や、本人と家族の心構えが何より大切です。
そのことを表すため、「本人の選択と本人・家族の心構え」は、植木鉢を包む「皿」に例えられているのです。
4つの助(自助・互助・共助・公助)とは?
地域包括ケアシステムにおいては、次の4つの「助」の力を連携させて、さまざま生活課題を解決していくことが求められます。
自助
「自助」とは自分自身で自分を助けるということ。
「セルフヘルプ」とも呼ばれますね。
住み慣れた地域に住み続けるためには、自らの健康に注意を払いながら、介護予防活動に積極的に取り組むことが重要になります。
また、地域包括ケアシステムの中では、自費で介護保険外のサービスを利用することも自助のひとつとして考えられています。
共助
「共助」は、制度化された相互扶助のことです。
医療や年金、さらに介護保険や社会保険制度など、被保険者による相互負担で成立する制度も共助の概念に含まれます。
「共助」が制度に基づく助け合いなのに対して、「互助」は自発的な助け合いです。
互助
「互助」とは、個人的な関係性を持っている人間同士が助け合い、各々が直面している生活課題をお互いが解決し合うという意味です。
「互助」と「共助」は似ている概念ですが、費用の負担などが制度にのっとっておらず、あくまで「自発的な支え合い」であることを示すときに「互助」という言葉が使われます。
家族やご近所同士の助け合いといった、インフォーマル(非公認)な社会資源を活用しようというわけです。
公助
「公助」は、自助あるいは互助や共助では対応できない「困窮」などの問題に対応するための生活保障制度や社会福祉制度のことです。
税による負担で成立し、生活保護のほか、人権擁護や虐待対策などが公助に該当します。
それぞれの「助」が連携し合う
地域包括ケアシステムがうまく機能するためには、「4つの助」の連携が不可欠です。
そこで基礎となるのは、やはり一人ひとりが自分の生活を豊かにするために努力する「自助」になります。
しかし、自分で自分を支えるのには限界があるため、自助を支えるための「互助」が必要になるわけです。
ただし、この「互助」も支える側に限界が来ると関係性が崩れてしまいます。
そのため、互助だけでは解決できない問題に対しては「共助」で対応するのです。
共助を活用することで、互助の負担を減らすことができます。
そして、自助と互助、さらに共助によっても解決できないような貧困や家族関係の悪化、あるいは虐待に対しては、「公助」の助けが必要になるのです。
メリットは自宅で過ごせるなど
では、地域ケアシステムがうまく機能した場合、高齢者やその家族にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
医療ケアが必要になっても自宅で過ごすことができる

以前は地域内における医療分野と介護分野の連携体制が整備されておらず、サービス提供はそれぞれの分野の事業者が独自に行うというのが一般的でした。
そのため、医療ケアが必要となる重度の要介護者に対して、柔軟にサービスを提供していくことが難しかったのです。
しかし、地域包括ケアシステムの導入が進められることで、在宅医療を提供する医療機関と介護サービス提供事業者の連携体制が構築され、必要なときに一体的なサービスを提供できるようになります。
認知症の方やその家族が暮らしやすくなる

地域包括ケアシステムの導入とともに構築が進められている地域支援ネットワークを活用することで、地域内に認知症の方を支える認知症サポーターの数が増えていきます。
認知症サポーターとは、認知症にかんしての正確な知識を持ち、地域などで認知症の方やその家族の支援を行う人々のことを指します。
また、認知症を介護している人が集まる場となる認知症カフェも、今後増えていくでしょう。
地域で認知症を支える体制が作られていけば、高齢者の方は認知症を発症しても住み慣れた地域、そして自宅で生活を続けることができます。
また2018年度より、各地域に設置されている「認知症初期集中支援チーム」が、地域内で医療サービスや介護サービスを十分に利用できていない認知症の方をサポートできるようになりました。
例えば、認知症かどうかを確かめる評価、介護サービスの案内、生活環境や介護に関するアドバイスなどを行っています。
ニーズに沿った多様なサービスが生まれる

地域包括ケアシステムが導入されることで、高齢者が自宅で生活していくうえで必要なケアをきめ細かく提供できるようになります。
買い物や見守りなどの「生活支援」をはじめ、住まいの提供や「介護予防」への取り組み、さらに24時間対応の定期巡回・随時対応サービスが充実化された「介護サービス」など、状況に応じたサービスを柔軟に提供できるようになってきました。
被介護者のニーズを適切に満たすことができれば、本人の精神的な負担やストレスも軽くすることができるでしょう。
高齢者の社会参加が活発になる

地域包括ケアシステムでは、元気な高齢者には積極的に社会参加をしてもらい、支援を必要とする高齢者を支える役割を果たすことが期待されています。
そのため、介護予防に関するイベントや、ボランティア、老人クラブなどへ参加を促しています。
つまり「高齢者」は、支援を受ける側であると同時に、支援をする側でもあるわけです。
高齢者は、社会的役割を持つことが「生きがい」になることも多く、そのことが介護予防にもつながります。
高齢者の活躍の場を広げられるという点も、地域包括ケアシステムが持つ大きなメリットだと言えるでしょう。
今後の展望
それでは、地域包括ケアシステムはどのように構築されていくのでしょうか?以下では3つの段階に分けて、その詳細をみていきます。
3つのプロセス
地域包括ケアシステムは、市区町村自治体が3年ごとに作成している「介護保険事業計画」に従って計画的に導入が進められます。
全国一律で策定されるのではなく、それぞれの地域が独自にケアシステムの計画を作り上げていくのです。
ただし、国は各自治体に対して、地域包括ケアシステムを構築する際に行うべき3つのプロセスを示しています。
ケアシステムの具体的な計画内容は自治体ごとに異なりますが、必要な手順を踏んだうえで構築が進められているわけです。
それでは3つのプロセスの詳細についてみていきます。
1.地域の課題の把握と社会資源の発掘

最初に、各市区町村が日常生活上のニーズを調査します。
地域で暮らす高齢者がどのような課題に直面しているのかを調べ、それに対する解決策として提供すべきサービスを考えていくのです。
また、「地域ケア会議」を開催し、地域内で行われている個別の支援内容(ケアプランなど)についての検討を行うことで、地域内の課題の把握および分析を行います。
さらに、医療や介護サービスの担い手となってくれる地域内のボランティア団体やNPO団体をはじめ、商店や町内会を発掘し把握することも必要です。
2.地域関係者による対応策の検討

最初の段階で個別事例ごとに行われた地域ケア会議ですが、この段階では地域内の関係者全体が課題を共有し、検討するために、地区町村レベルの地域ケア会議が行われます。
市区町村レベルの地域ケア会議には役所の職員をはじめさまざまな地域関係者が参加し、地域内に共通して生じている課題を抽出したうえで、それを政策につなげるための具体策について議論されるのが通例です。
地域の課題を総合的に分析し、その解決に向けて社会資源の開発を行うなど、ケアシステムの構築を目指すための地域づくりが行われる段階だと言えるでしょう。
3.対応策の決定と実行

地域ケア会議で検討された課題への具体的な策を決定し、介護保険事業計画の中に盛り込んでいくことが、地域包括ケアシステムの構築に向けた最後の段階です。
ニーズに見合った支援サービスのメニューを整備し、必要に応じて各種サービスの事業化や施策化なども行われていきます。
いわば自治体レベルの政策形成と実行の段階であると言えるでしょう。
この最終段階を経て、地域の実情に合わせた地域包括ケアシステムが実現されていくのです。
PDCAサイクルで常にシステムを改善していく
地域包括ケアシステムは構築すればそれで終わり、というものではありません。高齢者にとってよりよいものになるよう、改善していくことが必要です。
その際、「PDCAサイクル」と呼ばれる手法が使われます。Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を順に行い、定期的にシステムをチェックします。
具体的には、地域内に住む高齢者に対して適切なサービスが行われているのか、常に振り返って検討を行い、改善していくことが必要です。
ほかにも「地域内の課題への対応に問題がなかったのか」「サービスに効果があったのか」について、チェックが行われます。こちらは、定期的に行われる地域ケア会議などでのニーズ調査を通して行われます。
地域の現状を把握するための「地域ケア会議」
地域ケア会議は地域包括支援センターが主催することが多くなっています。会議には、役所の職員をはじめ、ケアマネージャー、介護サービス提供事業者、医療機関や社会福祉協議会の関係者、町内会やボランティア団体の代表者ほか、民生委員などが参加します。
さまざまな立場の人が意見を述べることで、地域に住む高齢者が直面している問題がより明らかにされます。それが、地域包括ケアシステムのための地域づくりや、資源開発に役立てられるのです。
「ミクロ」と「マクロ」をつないでいくツール
地域ケア会議は主に2段階に分けて行われるのが通例です。
最初の段階では、複数の市町村で構成される行政組織である「圏域」ごとの個別ケースを取り上げて、地域の高齢者がどのような課題に直面しているかを把握し、その検討が行われます。
これは、圏域レベルの地域ケア会議とも言えるでしょう。
こうして明確化された圏域の課題は市区町村レベルで開かれる地域ケア会議で報告されます。その際、自治体内で直面している共通の課題が抽出され、解決に必要なサービスメニューを開発や社会基盤の整備が検討されるのです。
最初に圏域ごとに開催される地域ケア会議で「ミクロ」の課題を把握し、続いて市区町村レベルの地域会議で「マクロ」レベルの自治体の社会政策に反映させる、という流れになります。
地域ケア会議の5つの機能
それでは、地域ケア会議とは、いったいどのような機能を持っているのでしょうか。
以下でみていきましょう。
1.個別の課題を解決する
地域で暮らす高齢者が直面している個別の課題や必要とされているサービスを把握し、解決への道筋をつける機能を持ちます。
圏域レベルの地域ケア会議が果たしている機能であると言えるでしょう。
2.関係者間のネットワークを構築する
高齢者が直面している課題の解決に向け、自治体をはじめ医療や介護、住まい、予防などにかかわる事業者など、多様な主体間の連携を行う機能を持ちます。
圏域ごとに行われる会議と市区町村レベルの会議の両方の地域ケア会議において果たされている機能です。
3.地域の課題を発見する
市区町村レベルの地域全体で共通して起こっている課題を発見することも地域ケア会議が果たす機能です。
圏域レベルの地域ケア会議の結果から浮き彫りになることもあり、市区町村レベルの地域ケア会議で具体的な施策に反映されます。
4.地域の社会資源を開発する
高齢者が住みやすい地域づくりのために必要な社会資源の開発を行うことに貢献します。
地域ケア会議は実際にその地域で働く役所の職員や事業者、ボランティア団体などが集まるため、ほかの地域とは異なる独自の意見が出やすいです。
5.政策に反映させる
地域内で普遍的に必要とされているサポートを見出し、それを自治体の政策に盛り込んでいく機能を持ちます。
市区町村レベルで開催される地域ケア会議が担う機能で、圏域別の会議で抽出された各課題をまとめる形で、施策化が行われていくのです。
地域での具体的な取り組み例
ここでは、地域自治体が行っている具体的な取り組みについてみていきます。
松戸市での医療と介護の連携を推進する取り組み

松戸市では、在宅医療支援診療所による多職種連携の取り組みが行われています。
開催されている集中ケア担当者会議の参加者は、医師と看護師をはじめ、ケアマネージャーとソーシャルワーカーなどです。
この会議では、ケアマネージャーから高齢者の生活状況や提供されているサービスにおける課題が報告されます。さらに医師からは病状と治療方針の解説や介護サービスに対する助言、看護師からは訪問看護の報告、診療所内の情報の共有が行われます。
会議による効果は、患者に対する認識の統一やケアマネージャーと医療の連携強化、そして医療と介護の連携によるチームケアの充実化などです。
医療と介護が一体的にサービスを行えるようになったという点で、地域包括ケアの模範事例とも言えるでしょう。
神戸市での認知症高齢者を見守る取り組み

神戸市東灘区で行われているのは、地域住民と医療分野および介護分野の多職種連携に基づく高齢者の見守り支援です。
地域住民に親しまれているバラ公園周辺の交番や商店などに地域住民が集まり、定期的に地域の高齢者に関する情報交換を行います。もしも異変に気づいたときは、すぐに医療や介護の専門職に相談と支援を行うという支援体制になっています。
専門職への連絡役となるのは、主に地域包括支援センターです。
この見守り体制が構築されたことで、高齢者への支援が強化されたのはもちろんのこと、振り込み詐欺を発生前に食い止めた実績もあります。
「バラ公園」を中心に作られた連携体制なので、地域内では「バラ園公園ネットワーク」という名称で呼ばれることも多いです。
札幌市での除雪支援

北海道札幌市では、行政と住民ボランティアが連携して高齢者への除雪支援が行われています。
企画と立案を役所が行い、役所から委託を受けた社会福祉協議会などの中間支援組織が仲介役となって、住民ボランティアを募集するのです。
地域に住む高齢者は、中間支援組織に支援を申し出ることで、ボランティアのサポートを随時受けることができます。
この取り組みにおける注目点は、市の取り組みを参考にして、地域の企業や大学などが自発的に除雪ボランティア活動を始めたという波及効果があったことです。
行政と中間支援組織がうまく機能することで、高齢者に対する地域内の支援体制がより充実化していったケースだと言えるでしょう。
今後の課題や医療との連携
医療とどう連携していくのか

地域包括ケアシステムにおいて重要になるのが医療と介護の連携です。
高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、そのような状態でも安心して暮らせる地域の体制を整えるには、医療あるいは看護サービスと介護サービスの協力体制が必要になります。
しかし、医療分野の関係者と介護関係者の間には「メンタルバリア」と呼ばれる目に見えない壁があると指摘されることも。
両者の間にあるバリアをなくし、コミュニケーションを活発にしていくことが、医療と介護の連携を機能させるうえで重要であると言われています。
地域ごとに格差がある

地域包括ケアシステムの大きな特徴のひとつが、高齢者を支えるサービスの主体が国から自治体へ移行するという点です。
しかし、財源や人的資源は自治体ごとに大きな差があるために、提供されるサービスの質や量にも違いが生まれてしまうのです。
そのため、「より充実したサービスを受けられる自治体に人が流出していく」という事態が起こることも危惧されています。
この点は地域包括ケアシステムが直面している問題の1つであると言えるでしょう。
担い手不足
地域包括ケアシステムでは、地域住民同士で助け合う「互助」が重視されていますが、現代の日本社会においては、コミュニティの力が失われている地域が少なくありません。
核家族化が進み、親族間のつながりも薄くなり、さらにご近所づきあいも以前ほど活発に行われていないことも多いのが実情。
そんな中で、「地域社会の力を活用する」という理想が、どれだけリアリティを持つのか疑問を投げかける人が多くいるのです。
また、ボランティアなどの互助を重要な構成要素とすることに対して、国の政策としてそもそも有効なのか、という指摘もあります。
自治体ごとに異なる工夫が必要
地域包括ケアシステムは、団塊の世代が75歳以上となり要介護者が急増するとみられる2025年までに、各地域や自治体で構築を行うことが目指されています。
ただ、75歳以上の人口数は自治体によって異なり、また、地域が保有する社会資源の量や質も異なるという実情があります。各自治体には、国からの指示を待つのではなく、各地域の事情や特性に合った地域包括ケアシステムのあり方を考え、整備していくことが求められます。
他の人はこちらも質問
地域包括ケアシステムとは何か?
地域包括ケアシステムとは、住み慣れた地域で最期を迎えられるように、地域がひとつになり、多様な支援やサービスを提供するシステムです。1980年代に広島県で誕生し、医療と福祉が連携した取り組みが行われました。2014年には地域包括ケアシステムが全国へ進み、地域の力で高齢者を支える輪が広がりました。
地域包括ケアシステムは何法?
2005年に実施された介護保険法の改正により、地域包括ケアシステムが使われました。2011年の同法改正では地域包括ケアシステムの構築が義務化され、2015年の同法改正で在宅医療と介護の連携などの推進をして、さらに地域包括ケアシステムの強化を図りました。
地域包括ケアシステムは誰が考えた?
地域包括ケアシステムの始まりは、1975年広島県にある公立みつぎ総合病院の医師です。リハビリを終えた患者が再入院して寝たきりになる流れを変えるために、患者の自宅で医療・介護サービスを始めたのがきっかけです。
地域包括ケアシステムの実現はいつ?
団塊の世代が75歳以上になる2025年を目安に、高齢者が重度の要介護となっても、できる限り住み慣れた地域で生活を送ることを目指しています。医療・介護・住まい・支援が一体となって提供していきます。