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介護事務管理士とは?仕事内容から資格の取得ルート、取得によるメリットを解説

介護分野で働くうえで必要となる資格や知識獲得・スキルアップにつながる研修などのうち、介護事務に特化した資格が「介護事務管理士」です。 介護サービス事業所などで事務作業を行うための資格ですので、資格取得を通じて具体的な介護の方法などを学ぶわけではありません。しかし、介護事務の作業は専門性が高く、即戦力として就職・転職を目指すならば、介護事務管理士の資格はぜひ取得を検討したい資格です。 こちらでは介護事務管理士の資格を取得してからの仕事内容や資格取得の方法、さらに就労後の給与額などについても詳しく解説します。 「事務職という形で介護・福祉に貢献したい」との思いをお持ちの方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

介護事務管理士とは

介護事務管理士とは、介護保険サービスを行う各種事業所での受付業務や会計処理、介護報酬請求業務など、事務職員としてのスキルを持つことを証明する資格です。居宅介護支援事業所などでは、ケアプランを作成するケアマネージャーをサポートする業務も担います。

介護事務として働くには、利用者の方への接遇力やケアプランの内容を読み取れる理解力、さらに正しく介護報酬を計算するための専門知識とスキルが不可欠です。

1.仕事内容

介護事務管理士の仕事内容

介護報酬請求業務(レセプト作成)

介護事務管理士がメインとして行う業務の1つが介護報酬請求業務です。レセプト作成業務とも呼ばれ、事業所が受け取る介護報酬を計算し、請求書を作成する作業のことを言います。

介護報酬とは、介護保険から各事業所に対して支払われる介護報酬のことで、事業所はこの報酬請求を1ヵ月につき1回程度の割合で、国民健康保険団体連合に請求することが必要です。

介護事務管理士は、この請求を行うために介護報酬の明細書(レセプト)を作成する業務を担当します。この作業のため、特に月末や月初が忙しくなりやすいです。

ケアマネージャーの業務をサポート

介護事務管理士が行う主業務はレセプト作成ですが、それ以外にも担当する仕事は多いです。事業所の利用者からの問い合わせへの対応をはじめ、利用者のケアマネジメントを行うケアマネージャー(介護支援専門員)をサポートする業務も担当します。

ケアマネージャーを支える仕事としては、事業所に勤務しているスタッフのシフト作成がメインです。

また、事業所によっては現場の介護業務を補助する役割を求められるなど、事務作業にとどまらない幅広い対応が要求されます。介護事務管理士として就職・転職する際は、どのような業務を任されるのかを事前に確認しておくと良いでしょう。

2.ケアクラーク(介護事務)との違い

介護事務にかかわる知名度の高い資格には、介護事務管理士のほかに「ケアクラーク」があります。どちらも介護事務の業務でメインとなる介護報酬請求業務を適切に行えることを証明する資格です。しかし、異なる点がいくつかあります。

第一に資格の主催者が違っており、介護事務管理士は株式会社技能認定振興協会(JSMA)が認定しているのに対して、ケアクラークの認定を行っているのは一般財団法人日本医療教育財団です。

また、全体の傾向としては、ケアクラークは幅広く介護のことを学習し、多様な業務に対応できる介護事務を目指したい方に向いていると言えます。ケアクラークの資格試験では、介護保険などの知識に加えて、コミュニケーションや老人・障がい者の心理、医療分野の知識なども問われます。

一方、介護事務管理士は、レセプト作成の専門家を目指し、すぐにでも介護事務の担い手として活躍したい方に適した資格です。介護保険制度などにかかわる法規や、介護給付明細書の作成などが試験範囲です。

また、ケアクラークの資格試験は会場受験のみで実施されていますが、介護事務管理士では指定の通信講座の受講生に限るものの、在宅受験を行えます。この点も介護事務管理士資格ならではの特徴です。

資格を取得するには

資格を取得するには介護事務管理士技能認定試験に合格する必要がある

1.国家資格ではない

介護事務管理士の資格を取得するには技能認定試験に合格する必要があります。試験は特に受験資格などはなく、希望すればどなたでも受験可能です。

受験に際しては実務経験なども必要ありませんので、現在は他業界で働いていて、将来的に介護事務として働きたいと考えている方は、就職・転職に備えての資格取得も検討できます。

特に、介護事務として働いたことがない方にとって、介護事務管理士の資格を持つことは大きなアピールポイントにもなるでしょう。

2.受験資格

受験資格ははなく独学でも挑戦できる

独学でも挑戦できる

介護事務管理士の資格は通学講座や通信講座で学ぶことができますが、独学で資格取得を目指せる資格です。

一般的に通学講座だと5~8万円程度、通信講座だと3~5万円程度の費用がかかり、通学する場合は交通費などもかかります。

一方、独学の場だとテキスト代や筆記用具、電卓などにかかる費用負担のみです。また、自分のペースで学習を進めることができるのも独学の利点といえます。

ただし独学の場合、市販されているテキストが多いためどれを選べば良いのか悩むこと、モチベーションを維持し続けるのが難しいことデメリットと言えます。

独学で資格取得を目指す場合、これらデメリットを踏まえたうえで学習を進める必要があります。

3.受験するまでの流れ

介護事務管理士の資格試験は年6回、奇数月の第4日曜日に実施されています。受験の申し込みを行うには、インターネットによる方法とコンビニ端末を使う方法とがあるので、利用しやすい方を選びましょう。

インターネットから申し込む場合は、所定のサイトの試験申し込みフォームに氏名など必要事項を入力し、送信します。その際、受験料6,500円の支払いも必要です。

コンビニ端末をご利用になる場合は、「セブンイレブン」「ミニストップ」「ローソン」「ファミリーマート」「サークルKサンクス」のいずれかの店舗にある情報端末にて、必要事項を入力します。入力後、レジにて受験料を支払い、入金の確認により受験申込は完了です。

どちらの方法でも、申し込みを完了後、試験日の1週間ほど前に株式会社技能認定振興協会から受験票が届きます。

4.試験会場

介護事務管理士の試験会場は、主要都道府県ごとに1つの場所が割り当てられています。ただし、秋田県や富山県など一部の都道府県では開催されませんので、その場合は隣県の会場などでの受験が必要です。

なお、岩手会場と福知山会場、高知会場については7月、11月、3月度試験のみ、沖縄会場は9月と3月のみ実施されます。

また、試験会場が指定されている都道府県在住の方であっても、お住まいの場所から試験会場まで距離が離れていることも十分考えられます。会場となっている施設の場所を確認したうえで、試験開始時間に遅れないように移動方法を計画しておくことも大切です。

また、一般の通信講座には自宅での受験が可能なものもあります。これらの通信講座は費用こそかかりますが、試験当日の移動負担などなく、自分の家で緊張せずに試験に挑戦できます。

5.試験問題

試験には学科と実技がある

介護事務技能認定試験は、学科試験と実務試験で構成されています。学科試験はマークシート方式で行われ、出題されるのは介護保険制度や介護報酬請求にかかわる「法規」と、介護給付費の単位数算定や介護給付費明細書の作成、介護用語などが問われる「介護請求事務」です。

一方、実技試験では介護給付費明細書の作成と点検を行う必要があります。出題内容はレセプトを作成する問題が2問、レセプトを点検する問題が1問です。

なお、受験の際は資料の持ち込みを行えます。

6.合格率はおよそ50パーセント

介護事務管理士の合格率は約5割。受験者のおよそ半数が不合格になることを考えると、難易度は高めと言えます。

しかも、所定の研修などを受講したうえでその内容が問われるといった試験形式ではないため、学習方法も含めすべて自分で考えて準備しなければなりません。独学の場合は、勉強するためのテキストや問題集も自分で探し、選ぶ必要があります。

しかし、難易度が高めの資格であるからこそ、取得する価値は高いとも言えるでしょう。合格に向けて学習を始めたら、モチベーションを切らさないように注意し、試験日まで努力を継続することが大切です。

7.取得するメリット

介護保険制度について専門的な知識を身につけられる

専門的な知識を身につけられる

介護事務管理士の資格を取るメリットの1つが、専門的な知識を学ぶことができるという点です。「介護」というと、実際に自分の身内が要介護状態にならない限り、実感を持ちにくい面があります。そして、現実に親などの介護に直面したとき、「介護サービスのことがよくわからない」という状態に直面し、とまどってしまうわけです。

介護事務管理士の資格取得を目指す学習では、介護保険制度に関する知識を一通り学ぶことができます。

資格を取っておけば、いざ自分の身内が要介護状態になったときでも、介護保険サービスの利用に関して冷静に対処できるでしょう。

履歴書への記載で就職や転職にも役立つ

さらに、介護事務管理士の資格は、転職や就職時にも有利です。介護事務の仕事は必ずしも資格が必要というわけではありません。

しかし、実際に就職・転職活動をする際、資格の有無が採否に大きく影響するのは確かなことです。資格を取得しておくことで、書類審査・面接時における大きなアピールポイントになるでしょう。

また、資格取得により全国どこに引っ越しても介護事務にとして働くことができます。介護事務管理士の資格は介護事務に必要な専門的な知識・スキルを持っていることを証明してくれるので、いったん仕事から離れた後で復職を考える際も、不安なく勤務先を探すことができるでしょう。

介護事務管理士の給料

1ヵ月あたりの実賃金

介護事務管理士の実賃金

みんなの介護求人の求人情報を見てみると、介護事務の平均月収は16~18万円で、年収だと平均で240万円~390万円。パートやアルバイト、派遣社員として勤務する場合、時給800~1,200円が相場です。

ただし、これは資格を保有していない人も含めての平均額です。より専門性が高いことを証明する介護事務管理士の資格を持っている場合、給与額はより高くなると考えられます。

現在資格を持たずに介護事務の仕事をしているなら、資格取得により給料アップを狙えるでしょう。

介護事務管理士の将来性

1.高まる需要

日本では今後、高齢化がさらに進展していくと予想されています。特に2025年にかけては団塊の世代が75歳(後期高齢者)の年代になることもあり、介護施設へのニーズも増加していくことでしょう。

介護施設が増設されると、レセプト作成などの業務を担う介護事務管理士への需要も必然的に高まります。また、現状では介護職員が兼務する形で介護事務をこなしている施設であっても、介護サービスの質を向上させるために、今後事業者が介護事務の専門員を雇用するようになることは十分に考えらます。

これらのことを踏まえると、介護事務のエキスパートである介護事務管理士への需要は、将来的に高まる一方であると考えられます。

2.活躍できる職場

介護事務管理士が活躍できる職場は、介護付有料老人ホームや介護老人保健施設、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)、訪問看護ステーション、デイサービス、ショートステイ、グループホーム、病院の療養病床などです。

働き方は勤務先によって変わり、常勤はもちろん、午前のみ就労する場合や週2日だけの勤務、あるいはレセプト業務が忙しくなる月初めだけ雇用するというケースもあります。

自分の生活様式に合わせて、プライベートを大事にしながら働けるのは、介護事務管理士の大きな利点です。

3.介護事務管理士の魅力

介護事務管理士の魅力

介護事務管理士の魅力は、まず、資格を取得しておけば全国どこでも働けるという点を挙げることができます。また、高齢化が進展する中で活躍の場が増えているために将来性が高く、資格保持者は就職や転職、再就職の際も有利。働き方も融通がきくので、ライフスタイルに合った就労がしやすいです。

しかも、介護事務は責任を伴う重要な職務ではありますが、一般的な介護職員と比べて身体的な負担は少ないと言えます。その点も魅力の1つと言えるでしょう。

さらに、高齢者・利用者の方の役に立っているという充実感を得られます。感謝の言葉をかけられたとき、介護事務管理士として働いていてよかったと心から思うことができるでしょう。