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認定介護福祉士とは?資格の取得ルート、取得のメリット・デメリットを解説

認定介護福祉士は、介護に関する国家資格である介護福祉士の上位資格です。介護職としてキャリアアップを図りたい人にとって、将来的に目指すべき資格の1つと言えるでしょう。 こちらでは認定介護福祉士の業務内容や資格の取得方法、介護職員の給与額などについて詳しく解説します。認定介護福祉士を目指して日々努力している方は、ぜひチェックして頂きたいです。 高齢化が進む中、介護分野のスペシャリストである認定介護福祉士の活躍の場は、今後さらに広まっていきます。介護職のキャリアアップ・スキルアップを促す手段として、期待されている資格の1つです。

認定介護福祉士とは

認定介護福祉士とは、介護福祉士の上位に位置づけられ、一般社団法人「認定介護福祉士認証・認定機構」が主催している民間資格です。

国家資格ではありませんが、資格保有者は介護福祉士よりもさらに介護分野の知識、スキルを有する専門家とみなされます。

ここでは、認定介護福祉士という認定制度のなりたちや制度導入のねらい、認定介護福祉士の役割、介護福祉士との違いなどについて詳しく解説しましょう。

1.資格導入の背景

認定介護福祉士の制度を導入する議論が始まったのは2011年頃。多様化する介護ニーズに対応するために、知識・スキル・経験の豊富な介護福祉士の中から、さらに高度な能力を持つ介護人材を育成する制度を設ける動きが活発となっていきました。

そして2015年に、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が設立され、新たに「認定介護福祉士」の資格が誕生したのです。

2019年3月時点における全国の認定介護福祉士の数は55名。認定者数はまだそれほど多くはありませんが、高齢化の進展と介護人材へのニーズの高まりを考えると、将来的に認定者数はさらに増えていくと考えられます。

2.ねらいは介護サービスの質向上

高齢化が急速に進む中、質の高い介護サービスの提供力を持ち、さらに介護職への指導や教育、医療職との連携強化をも担える能力の高い介護福祉士へのニーズが高まっています。

将来的に利用者がさらに増えていくと見込まれる中、介護サービスの質の向上に向けた「人づくり」は欠かせません。また、国を挙げた地域包括ケアを推し進めていくためには、地域に住む高齢者に寄り添える視野の広い介護職も必要となってきます。

介護福祉士は国家資格であり、資質向上の責務が課せられた専門職です。介護福祉士に継続的な教育の機会を提供し、知識・スキルをさらに向上させ、社会からの要請に応えていける能力を身に付けてもらうことをねらいとして、「認定介護福祉士」の資格が導入されました。

3.介護サービスマネージャーとしての期待

認定介護福祉士の役割は多岐にわたり、第1に各介護サービス事業所において介護サービスマネージャーとしての責務を果たすことが期待されます。

利用者各人に対して最適、合理的な個別ケアを実施するのはもちろんのこと、同じ事業所で勤務するほかの介護職への教育や指導、管理の役割も担うのです。

また、認定介護福祉士は介護サービスを提供するうえで、医療職やリハビリテーション職など多職種との連携において中心的な役割を担うことも求められます。

さらに、地域全体の介護力向上に資する専門家として、地域にある施設や事業所、ボランティアの介護力を引き出すことも認定介護福祉士の役割。認定介護福祉士が活躍する場は、単一の事業所に止まらず、地域社会全体に及んでいると言えるでしょう。

4.介護福祉士との違い

介護福祉士との違い

認定介護福祉士と介護福祉士は、具体的にどのような点において違いがあるのでしょうか。

まずは資格の認定者が異なります。認定介護福祉士は民間資格であり、所定の養成研修を修了して認定されれば取得できる資格。一方、介護福祉士は国家資格であり、国家試験に合格し、登録を行う必要がある資格です。

また、役割も違います。介護福祉士は介護のプロフェッショナルとして、利用者に適した介護サービスやアドバイスを行い、現場でほかの介護職員の指導などを行ったりします。

一方、認定介護福祉士は、介護福祉士をメンバーとするチームのリーダー・責任者として、看護職やケアマネージャーなど多職種との連携を担う介護現場の中心的存在です。

さらに資格取得の要件も異なります。実務経験ルートの場合、介護福祉士は介護職として3年以上の実務経験が必要となります。一方、認定介護福祉士は、介護福祉士として5年以上の実務経験が求められます。

5.2020年認定介護福祉士の人数

2020年認定介護福祉士の人数

認定介護福祉士の有資格者は、2020年7月時点だと全国で60人。勤務先は、訪問介護事業所や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、小規模多機能型居宅介護事業所、グループホーム、居宅介護支援事業所、社会福祉協議会、医療機関など多岐にわたります。

それぞれの勤務先で介護福祉士として経験を積み、そのうえで上位資格である認定介護福祉士の資格を取得したわけです。

資格取得のメリット・デメリット

1.メリットはリーダー級としての証明

メリットはリーダー級介護職員に選ばれる基準になる

2019年10月から特定処遇改善加算が導入されたことで、認定介護福祉士の価値が向上したと言われています。特定処遇改善加算とは、介護職員の人手不足を解消するために導入された介護報酬加算。その内容は、勤続10年を目安としたベテランの介護福祉士に対して、月額8万円程度の待遇改善を行うものです。

この加算の配分方法は事務所に一定の裁量が認められていますが、優先順位としは「経験、技能のある介護職員(リーダー級介護職員)」が最優先とされています。つまり、よりベテランの介護職員ほど、賃上げ率が高くなるわけです。

認定介護福祉士の資格は、この「リーダー級介護職員」であることを証明するための1つの基準となります。つまり、資格取得によってリーダー級介護職員とみなされ、待遇が上がりやすくなるわけです。

2.デメリットは費用に対する評価

厚生労働省の調査によると、介護福祉士の資格を取得しない理由として、「(受験資格を得るのに必要な)実務者研修を受講するのに必要な費用負担が大きかった」との回答が52.7%と最多でした。

国家資格の介護福祉士資格ですら、研修の費用負担を理由として資格取得をあきらめる人が多いわけです。

民間資格であり、介護福祉士資格よりもさらに膨大な研修時間(600時間)と費用(長野県介護福祉士協会の例だと、定価で約60万円)を必要とする認定介護福祉士は、やはり取得までのハードルは高いと言えます。

認定介護福祉士になるには

1.資格取得の条件

認定介護福祉士の資格取得の条件

認定介護福祉士の資格を得るには「認定介護福祉士養成研修」を修了しなければなりません。認定介護福祉士養成研修にはⅠ類とⅡ類があり、受講するには以下の要件を満たす必要があります。

研修名 条件
認定介護福祉士
養成研修Ⅰ類
・介護福祉士としての実務経験5年以上
・介護職員を対象とする現任研修を100時間以上受講
・研修実施団体が行ったレポートの課題あるいは受講試験において、一定の成績を修めている
認定介護福祉士
養成研修Ⅱ類
・認定介護福祉士養成研修Ⅰ類を修了
・介護職の小チーム(5~10名の介護職からなるチーム)のリーダーとしての実務経験を有する

なお、Ⅰ類とⅡ類の両方とも、研修の受講にあたっては、居宅系・施設系サービス両方での生活支援の経験を有することが望ましい、とされています。

2.申込方法

認定介護福祉士養成研修は、主催者である認定介護福祉士認証・認定機構が直接実施しているわけではなく、同機構が認定している実施団体が行っています。

通常は、都道府県の社会福祉協議会や介護福祉士会などが研修を実施、募集している団体です。研修の申込をしたい場合は、自分が住んでいる都道府県ではどの団体が実施しているのかを確認しましょう。

なお、受講にあたっては、個人ではなく事業所など法人単位で申し込みを行うケースもあります。まずは勤務先で認定介護福祉士養成研修の団体受講を行っていないか確かめてみましょう。

3.養成研修カリキュラム

認定介護福祉士養成研修I類

認定介護福祉士養成研修Ⅰ類は、医療、リハビリ、認知症、心理・社会的支援、福祉用具、住環境にかかわる新たな知識を学び、他職種との連携も含めた実践的な力を高めます。さらに、介護職からなる小チームのリーダーに対して指導を行ううえでの必要な知識も習得。幅広い分野について、合計で345時間のカリキュラムをこなす必要があります。

具体的なカリキュラムは、認定介護福祉士養成研修導入(15時間)、医療に関する領域(60時間)、リハビリテーションに関する領域(60時間)、福祉用具と住環境に関する領域(30時間)、認知症に関する領域(30時間)、心理・社会的支援の領域(60時間)、生活支援・介護過程に関する領域(90時間)です。

認定介護福祉士養成研修Ⅱ類

認定介護福祉士養成研修Ⅱ類は、Ⅰ類を修了した人が受講する研修であり、Ⅰ類で学んだ知識を応用し、指導力や創意工夫する力、判断力など養います。

具体的なカリキュラムは、医療に関する領域(30時間)、心理・社会的支援の領域(30時間)、マネジメントに関する領域(105時間)、自立に向けた介護実践の指導領域(90時間)で構成され、合計で255時間です。

4.受講費用と期間

認定介護福祉士の研修時間は、Ⅰ類とⅡ類の合計で600時間。しかも科目ごとにスケジュールが定められているので、研修をすべて終えるまでに平均で1年~1年半ほどの時間がかかります。短期間でまとめて研修を受ける、といったことはできません。

さらに、養成機関によっては、カリキュラムの総時間が232時間もかかる介護福祉士ファーストステップ研修の修了が要求される場合もあり、その場合だと合計で800時間以上も受講する必要があります。

研修にかかる費用は実施団体によって多少変わりますが、認証団体の1つである長野県介護福祉士会の場合だと、定価で約60万円です。

介護福祉士ファーストステップ研修との違い

介護福祉士ファーストステップ研修とは、国家資格である介護福祉士の資格を取得してから2年程度の経験者を対象に行われる研修です。介護福祉士としてのキャリアアップや、小規模チームのリーダーを養成することを目的とした研修内容となっています。

受講のメリットは、自分自身が取り組んできたこれまでの業務を振り返り、リーダーシップスキルを高め、介護福祉士としての専門能力をさらに高めることができる点です。また、知識・スキルアップを図ることで、所属する事業所や利用者からの信頼も高めることができます。

認定介護福祉士研修と介護福祉士ファーストステップ研修との違いの1つは、受講に必要な実務経験。認定介護福祉士研修は5年であるのに対して、介護福祉士ファーストステップ研修は3年です。また、認定介護福祉士研修は合計で600時間が必要ですが、介護福祉士ファーストステップ研修は232時間となっています。

認定介護福祉士の給料は?

1ヵ月あたりの実賃金

認定介護福祉士の実賃金(1ヵ月あたり)

厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護職員の手当や一時金などを含めた月の平均給与額は下記の表のようになります。

年齢 男性 女性
29歳以下 30.3万円 29.1万円
30~39歳 35.1万円 31.5万円
40~49歳 36.6万円 32.4万円
50~59歳 34.1万円 32.4万円
60歳以上 29.7万円 29.5万円
出典:「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」(厚生労働省) 時点

認定介護福祉士の場合も介護福祉士とほぼ同水準~やや高め、といった金額になっていると推測されます。

しかし、資格取得までにかかる時間や費用を考えると、現状ではまだまだ十分な待遇を得ているとは言えません。将来的に認定介護福祉士の給料が上がることが期待されます。

資格取得でスキルアップを図るには?

認定介護福祉士資格のこれから

認定介護福祉士は高度な知識やスキルを学べる場であるにもかかわらず、実際には資格取得者は多くありません。

資格取得者が少ないのは、認定介護福祉士養成研修を受けるための要件として介護福祉士の実務経験が5年以上必要であること、研修時間が600時間も必要なこと、費用が高いこと、などが挙げられます。

さらに現状では、養成研修を行う団体の数も決して多いとは言えません。

今後、認定介護福祉士という資格を普及、拡大させていくためには、より受講しやすい環境整備が不可欠。特に介護福祉士は普段の仕事内容が多く、研修に時間を割きにくいです。仕事をこなしながらでも無理なく認定介護福祉士に挑戦できるような仕組みづくりが必要となるでしょう。