認知症ケア専門士とは
認知症ケア専門士は、認知症の方々に対して、高度な専門知識と技術でサポートを提供する専門職です。
この資格は、一般社団法人日本認知症ケア学会が認定しており、認知症ケアのプロフェッショナルを目指す方にとって重要なステップとされています。
認知症ケア専門士の資格は、看護師や介護福祉士など既に医療や福祉の現場で働いているプロフェッショナルが、さらに専門的な知識を深めるために取得します。
この資格は、認知症の方々に特化した独自の知識とスキルを身につけ、より質の高いケアを提供することを目的としています。
認知症ケア上級専門士
認知症ケア専門士には上位資格である認知症ケア上級専門士があります。
両者の違いにより、できる業務が変わるわけではありません。
しかし、より専門性の高い知識やスキルを持つことを証明できる認知症ケア上級専門士の資格を取得することで、仕事の幅がより一層広がります。
認知症ケア上級専門士が期待されるのは、認知症ケアのチームのリーダー、および地域における認知症ケアのアドバイザーとしての活動です。
認知症の方に接する専門職として、倫理観を深く理解し、認知症介護を理論の部分から説明できる能力が求められます。
認知症ケア上級専門士は、介護現場で認知症の方を介護することに加え、施設や地域社会全体を視野に入れた活動が期待されています。
認知症ケア専門士の役割・仕事内容
認知症ケア専門士は、日本認知症ケア学会が認定する専門職で、認知症の方々への適切な支援とケアを提供するために必要な知識と技術を有します。
主な職場は介護保険施設、グループホーム、医療現場などがあり、認知症ケアの専門知識をもって他のスタッフへの指導やアドバイスも行います。
また、近年では家族からの要望で認知症ケア専門士の存在が求められることも多く、介護の現場において彼らの役割はますます重要になっています。
これは認知症ケア専門士が家族にとっても大きな安心材料となるからです。
認知症ケア専門士のメリット・デメリット
メリット
認知症ケア専門士のメリットは多岐にわたり、介護・医療・福祉業界での評価が高いことから、就職やキャリアアップに大きく寄与します。
合格率は約50%と難易度が高いですが、認定を受けることで得られる利益は計り知れません。
以下は、認知症ケア専門士の主なメリットです。
- 専門知識の習得
- 就職、転職の優位性
- 給与の増加
- 社会的需要の増大
- 職場での評価向上
認知症の理念や原則、コミュニケーションの技術など、体系的な学びを通じて専門知識が身につきます。
また、認知症ケア専門士は介護施設や医療機関で高く評価され、キャリアアップのチャンスが広がります。
資格取得により、介護保険施設での認知症ケア加算を受けることが可能となり、施設の収益向上にも貢献します。
さらには、介護・医療・福祉分野でのニーズの高まりにより、資格手当の対象とする施設も増えています。
高齢化が進む中、認知症の方が増え続けるため、専門的なケアが求められるようになります。
2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予測されており、専門職の需要は更に高まるでしょう。
認知症ケア専門士の資格が役立つ職場
認知症ケア専門士の需要は、日本の高齢化が進むにつれて増加しています。特に認知症の高齢者が増え続ける中で、専門的な知識とスキルを持つ認知症ケア専門士は、介護・医療・福祉の各現場でますます重要な存在になっています。以下に主な職場をまとめました。
- 医療機関
- 在宅ケアサービス
- 地域包括支援センター
- 有料老人ホーム
- デイサービスセンター
このように、認知症ケア専門士の資格は、多方面でのキャリアアップや職場での評価向上に大いに役立つと言えるでしょう。
介護福祉士や看護師などにおすすめの資格
認知症ケア専門士は、介護福祉士や看護師、ケアマネージャーを含む多くの医療・福祉従事者に推奨される資格です。
この資格を持つことで、認知症予防やケアの質を向上させることができます。
特に、看護師や理学療法士などが入院患者の認知症予防に寄与できるため、資格の取得が増えています。
認知症患者と直接関わる機会が多い職種であれば、専門的な知識と技術が求められ、資格取得が強く推奨されます。
給料アップやキャリアアップにつながる
認知症ケア専門士の資格は、給料アップやキャリアアップに直結する可能性があります。
特に介護職員や看護師など、認知症患者と直接関わる医療・福祉従事者にとって、この資格は重要です。
以下は、資格取得がもたらす具体的なメリットです。
給料アップ | 資格手当として追加の給与が期待でき、特に認知症ケアを重視する施設では手当が支給される可能性あり |
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キャリアアップ | 認知症ケアの専門知識が評価され、昇進や新しい職場への転職に有利になる可能性あり |
専門性の評価 | 認知症ケアに対する深い理解と対応能力は、職場での信頼性を高め、より多くの責任あるポジションを任される機会につながる |
これらのメリットにより、認知症ケア専門士の資格は、医療・福祉の現場で活躍する多くのプロフェッショナルにとって、価値ある投資となります。
デメリット
配置義務はなく介護報酬の加算対象でもない
認知症ケア専門士の資格は多くの施設で尊重されるものの、国や自治体が行う認知症介護指導者研修とは異なり、介護報酬の加算対象資格ではありません。
さらに、認知症ケア専門士には施設の配置義務がなく、資格自体が就職を保証するものではありません。
この資格は、個人のスキル向上や施設のサービス品質向上に寄与するものと考えるべきでしょう。
認知症ケア専門士になるには?資格の取得方法
認知症ケア専門士の資格を取るには、認定試験に合格する必要があります。
試験内容や受験資格も確認しましょう。
認知症ケア専門士認定試験とは
受験資格
認知症ケア専門士の受験資格は、以下の要件を満たす必要があります。
実務経験 | 認知症ケアに関連する施設や機関での実務経験が、試験実施年の3月31日までに過去10年間で3年以上 |
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職種制限 | 実務経験は、介護職員、ホームヘルパー、看護師など、職種に関わらず認められます。ただし、ボランティア活動や実習は含まれない |
受験資格を持たない人向けには、認知症ケア准専門士の資格があり、これは18歳以上であれば誰でも受験可能です。認知症ケア准専門士は、基本的な認知症ケア知識の習得を目的としており、実務経験が不足している者にも受験の機会を提供します。
これらの要件は、質の高い認知症ケアを提供する専門家を育成するための基準として設けられています。認知症ケア専門士の資格を持つことで、専門的な知識と技術を持った介護職員として認知され、キャリアアップにも繋がります。
試験日や試験会場
認知症ケア専門士の試験は毎年実施され、申込期間は3~4月頃です。例年、第一次試験である筆記試験が7月頃、第二次試験である論文・面接試験が12月頃に実施されています。
試験会場は、第一次試験は札幌、仙台、東京、京都、名古屋、福岡の中から希望受験地を一つ選択します。第二次試験は札幌、仙台、東京、名古屋、神戸、福岡の中から希望受験地を一つ選択します。なお、上記の会場は変更される可能性があります。
認知症ケア専門士の難易度と合格率
認知症ケア専門士試験の合格率は近年50%前後で推移しており、試験の難易度は比較的高いと言えます。
この試験は認知症ケアに関連する実務経験が必要であり、受験者は多くが介護福祉士や看護師などの関連資格を持っています。試験合格には広範な知識と認知症ケアに関する深い理解が求められるため、準備には十分な時間が必要です。
認知症ケア専門士の試験内容
認知症ケア専門士試験は、オンラインで実施される第一次筆記試験から始まり、合格後に論述式の第二次試験が続きます。
第一次試験は「認知症ケア標準テキスト」に基づいた4つの分野から成り、各分野での合格が必要です。
一次試験
認知症ケア専門士の一次試験は、以下の4つの分野から構成されます。試験はオンラインで実施され、全問五者択一のマークシート形式です。
- 認知症ケアの基礎
- 認知症ケアの実際Ⅰ:総論
- 認知症ケアの実際Ⅱ:各論
- 認知症ケアにおける社会資源
各分野は50問ずつ、合計200問が出題されます。合格基準は各分野で70%以上の正答率です。合格有効期間は5年で、期間内に不合格分野のみ再受験可能です。
二次試験
認知症ケア専門士の二次試験は、論述と面接試験で構成されています。以下は、試験の概要です。
論述試験 | 特定の事例に基づく課題に対して、指定された期間内に解答を執筆し提出 |
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面接試験 | 指定されたテーマについて、1分間のスピーチと20分間のディスカッション |
合格基準は、以下の5つの要件を満たすことです。
- 適切なアセスメントの視点を有する者
- 認知症を理解している者
- 適切な介護計画を立てられる者
- 制度および社会資源を理解している者
- 認知症の人の倫理的課題を理解している者
この試験は、候補者が実際の認知症ケアシナリオにどう対応するかを評価することで、その専門性と対応能力を確認します。
資格取得のための勉強方法
講座を受ける
認知症ケア専門士を目指す方には、毎年開催される専門の受験対策講座がおすすめです。
この講座は全国の主要都市で2日間にわたって行われ、参加費は1.5万円。重要な学習ポイントを押さえた講義と実践的な模擬試験を通じて、効率的に学びます。
開催期間 | 毎年5月から6月頃に2日間 |
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開催場所 | 横浜や京都 |
講義内容 | 「認知症ケア標準テキスト」に基づき、重要ポイントを専門講師が解説 |
模擬試験 | 本番形式の模擬試験を実施し、試験後には詳細な解説が行われる |
参加費 | 1.5万円(テキスト代、交通費、宿泊費は別途必要) |
講座では「認知症ケア標準テキスト」を使用し、各分野のポイントを詳しく解説します。また、模擬試験後には専門の講師が直接問題の解説を行うため、理解を深めることができます。
受講には事前に公式テキストの購入が必要です。時間的余裕がある方は、しっかりと準備をして臨むことが望ましいです。
独学で勉強する
認知症ケア専門士の公式テキストを使用して独学で学ぶ場合でも合格を目指すことは十分可能です。
また、公式テキスト以外にも問題集やテキストが市販されているので、それらをあわせて使うとより理解が深まるでしょう。
テキストや過去問を解く
認知症ケア専門士の試験対策として、「認知症ケア標準テキスト」を利用することが効果的です。このテキストは、一般社団法人日本認知症ケア学会によって認定されており、認知症ケアの基本から応用まで幅広くカバーしています。
第一次試験では、このテキストの第1〜4巻が出題範囲となりますが、実践的な理解を深めるためには、市販の模擬問題集も併用すると良いでしょう。
これにより、試験の流れや難易度を理解し、試験当日に余裕を持って挑むことができます。
アプリで勉強する
認知症ケア専門士試験の準備に最適なスマートフォンアプリが存在し、これらはどこでも手軽に問題解決練習が可能です。
過去問題を繰り返し解くことは、試験合格への確実な近道とされています。
多くのアプリは有料ですが、比較的安価で、公式教材を購入するよりもコストパフォーマンスが高いです。
忙しい日々の中でも、空いた時間に効率的に勉強できるため、時間が限られた方にも理想的です。
オンライン講座(e-ラーニング)
近年ではeラーニング講座によって、認知症ケア専門士の勉強ができます。
インターネット環境さえあれば、パソコンはもちろんスマホでも学習できるので、自宅以外の場所でも空いた時間を利用しての勉強が可能です。
公式テキストの内容がわかりやすく解説されているため、独学では理解が難しいという方にはおすすめの勉強法といえます。
認知症ケア専門士の更新手続きと必要単位
認知症ケア専門士の資格は5年ごとに更新が必要です。
この更新プロセスには、一定の単位を取得する必要があり、具体的には以下の要件が定められています。
更新単位の要件 | 5年間で30単位以上を取得。これらの単位は、学術集会の参加、生涯学習プログラム、または機関誌への論文発表から獲得可能 |
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単位の内訳 | 20単位は学術集会や生涯学習プログラムの参加から取得し、残りは任意の活動から補う |
必要書類の ダウンロード |
更新手引きや申請書は日本認知症ケア学会のウェブサイトから入手可能 |
更新料 | 1万円 |
もし必要な単位を取得できない場合、最長1年間の更新保留を申請することができます。
この間に単位を取得し、資格の失効を避けることが重要です。
再取得には再受験が必要となるため、定期的な更新が推奨されます。
ほかの認知症関連資格との違い
認知症介助士との違い
認知症介助士は日本ケアフィット共育機構が実施している資格で、認知症の方を社会全体で支えていくという理念のもと設立されました。
そのため、介護職として働いている方はもちろん、身近に認知症の高齢者がいる一般の方、サービスの質を高めたい方など、多様な人々を資格取得者として想定しています。
この点、ホームヘルパーや介護職員など介護分野で働く人が資格主なの取得者となる認知症ケア専門士とは、大きく異なります。
また、認知症介助士は認知症ケア専門士に比べ短期間で取得可能です。取得方法は2種類あり、一つは自宅学習をして検定試験を受ける方法、もう一つは認知症介助セミナーを受講し検定試験を受験する方法です。
認知症ケア指導管理士との違い
認知症ケア指導管理士は認知症ケアにかかわる人の専門性向上を目的に創設された資格で、職業技術振興会、総合ケア推進協議会の2団体が共同で認定を行います。
初級、上級の2種類があり、初級は認知症ケアを行うための資格となっており、上級は認知症ケアの指導者として指導や管理を担う人向けの資格です。
上級は合格率が低く難関資格となっています。上級取得者は資格名にもある通り、指導、管理、人材育成の役割が求められています。
受験者は介護職、医療職従事者が多く、この点は認知症ケア専門士と同様です。
しかし指導者の育成を重要な役割としている点において、認知症ケア専門士とは異なっているのです。