重度訪問介護従業者とは
重度訪問介護従業者は、重度の肢体不自由者や知的障がい者に自宅で必要な介護サービスを提供する専門職です。
この資格を取得するには、都道府県知事が指定する「重度訪問介護従業者養成研修」を修了する必要があります。
重度訪問介護従業者は、主に長時間の介護サービス提供が求められるため、他の訪問介護サービスと異なる点もあります。
重度訪問介護従業者のサービス内容
重度訪問介護従業者は、利用者の自宅を訪問し日常生活をサポートする専門職です。
- 食事や入浴、排泄などの身体介助
- 調理、洗濯、掃除などの家事援助
- 外出時の移動介助
- 買い物のサポート
主に以上のような支援を行います。
さらに、重度訪問介護従業者は利用者の生活全般を支えるため、入院時のコミュニケーション支援や必要に応じた医療的援助も提供することがあります。
同行支援では、新任従業者が熟練従業者とともにサービスを提供することが求められる場面もあります。
重度訪問介護の対象者
重度訪問介護従業者のサービス対象となるのは、重度の肢体不自由、あるいは精神障害や知的障害によって日常生活の行動に困難があり、常時介護を必要とする方です。
具体的には、以下の2点のうちいずれかを満たしている場合、利用対象と認められます。
- 2肢以上に麻痺があり、障害者支援区分の認定調査項目において歩行、移乗、排尿、排便のすべてが「支援が不要」以外の認定を受けている
- 障害支援区分の認定調査項目において、行動関連項目など12項目の点数が合計で10点以上になる
実際には、脳性まひや難病、事故による脊髄損傷の方などが多く利用しています。
訪問介護・居宅介護との違い
重度訪問介護と訪問介護、居宅介護は、提供されるサービスの内容や対象者、法的な枠組みに違いがあります。
重度訪問介護 |
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訪問介護 |
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居宅介護 |
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それぞれ違いがあるためよく検討することが重要です。
重度訪問介護従業者の給料相場
重度訪問介護従業者の給料は、介護職員の平均給与より高めとされています。
厚生労働省が発表した『令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果』によれば、介護職全体の平均給与額は月あたり31万7,540円となっています。
しかし、重度の障がい者をサポートする専門性の高い業務を担当するため、重度訪問介護従業者の給与は、これよりも上昇する傾向があります。
給与額は経験や地域、勤務する施設によっても異なるため、具体的な金額を確認することが重要です。
重度訪問介護従業者になるには
重度訪問介護従業者になるためには、都道府県が指定する「重度訪問介護従業者養成研修」の修了が必須です。
この研修は、基礎課程や追加課程、統合課程があり、受講者はそれぞれの課程を修了することで必要なスキルを習得できます。
無資格者でも受講可能で、NPO法人や社会福祉法人が主催する研修もあるため詳細は各都道府県のホームページで確認できます。
重度訪問介護従業者養成研修
重度訪問介護従業者養成研修は、都道府県が指定した事業所で受講でき、誰でも参加可能です。
この研修には、基礎課程と追加課程があり、基礎課程を修了すると障害程度区分4・5の利用者に、追加課程を修了すると区分6の利用者に対して介護サービスの提供が可能となります。
NPO法人や社会福祉法人が研修を開催している場合もあり、地域ごとに詳細が異なるため、各都道府県のホームページで確認すると良いでしょう。
研修のカリキュラム
基礎課程
重度訪問介護従業者の基礎課程は、誰でも受講可能で、合計10時間のカリキュラムで構成されています。
この課程では、重度の肢体不自由者の地域生活や介護技術に関する講義が3時間行われ、その後、介護技術やコミュニケーションに関する実習が7時間行われます。
修了後、障害程度区分4・5の利用者に対して介護サービスの提供が可能となります。
追加課程
追加課程は、基礎課程を修了した方を対象に、障害支援区分6の利用者に介護サービスの提供が可能になるカリキュラムです。
講義は7時間で、医療的ケアを要する利用者への支援方法や緊急時対応、コミュニケーション技術を学びます。
また、実習3時間では、実際に重度の肢体不自由者の介護サービス現場での実践を行います。
合計10時間のプログラムを修了することで、より高度な介護技術を習得できます。
統合課程
統合課程は、基礎課程や追加課程に加え、医療的ケアを学べるカリキュラムで、受講後には喀痰吸引や経管栄養の対応が可能になります。
この過程では、医療的ケアの講義や実習が含まれ、特に重度の障がい者に対するケアを重点的に学ぶことができます。
合計20.5時間の講義と実習で構成されており、基礎的な介護技術やコミュニケーションスキルに加えて、緊急時の対応やリスク管理に関する知識も身に付けます。
修了後は、障害支援区分4~6の利用者に対して、より高度なケアを提供できる資格が得られます。
行動障害支援課程
行動障害支援課程は、重度の知的障がいや精神障がいを持つ方へのケア技術を学ぶ研修です。
この課程は、2014年の障害者総合支援法改正に伴い、精神・知的障がい者も重度訪問介護の対象に含まれたため、重度訪問介護従業者が必要な知識や技術を習得する目的で設けられました。
研修を修了することで「強度行動障害支援者養成研修」も同時に修了したとみなされ、行動障害を持つ方への支援が可能となります。
受講時間は12時間で、強度行動障害の理解や支援技術、情報収集、記録の方法を学びます。
具体的には、講義が6時間、実習が6時間行われ、特に行動障害の背景やコミュニケーション方法を深く理解するための実践的な内容が含まれています。
受講費用と期間
重度訪問介護従業者養成研修の受講費用は、研修先によって異なりますが基礎課程と追加課程で約1万5,000円~2万円が相場です。
統合課程の場合は、費用が約3万円程度かかります。
研修先によっては、受講後の就労条件や、特定の地域に住んでいる人のみを対象とすることもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
受講期間は、課程によって異なりますが基礎課程と追加課程はそれぞれ10時間、統合課程は20.5時間です。
重度訪問介護従業者資格取得のメリット・デメリット
重度訪問介護従業者のメリット
重度訪問介護従業者の資格を取得することで、就職やスキルアップに大きなメリットがあります。
まず、資格を取得することで、重度障がい者に対応する専門知識を持っていると認められ、介護職として就職しやすくなります。
特に、重度訪問介護の需要が増加している現代では、即戦力としての評価が高く、給料アップにもつながるでしょう。
また、重度訪問介護従業者は、高齢者介護に比べて医療的ケアやコミュニケーションスキルが必要とされ、介護職としての専門性が高まります。
利用者のサインを敏感に読み取る技術が養われ、実務を通じてさらにスキルを向上させることができます。
これにより、介護職としての成長が期待でき、日常生活にも応用できる豊かなコミュニケーション能力を身につけられます。
重度訪問介護従業者のデメリット
重度訪問介護従業者のデメリットは、専門性の高さに伴う責任の重さです。
重度の障がいを持つ利用者に対応するため、高度な技術と判断力が求められます。
特に資格取得直後は経験不足から、特殊な症状を持つ利用者への対応に苦労することも考えられますが、利用者の命や生活に関わるケアを行うため常に緊張感を持って職務にあたる必要があります。
そのため日々の勉強や技術向上への努力が不可欠で、個々の利用者に最大限の配慮が求められます。
とはいえ、高い技術と知識を持つ重度訪問介護従業者は評価が高く、ニーズも大きいため、スキルアップややりがいを求める方には資格取得をおすすめします。
重度訪問介護従業者の将来性
重度訪問介護従業者の将来性は非常に高く、介護の現場での需要が今後も増加することが予想されています。
現在、重度の障がいを持つ方に対応できる専門家は不足しており、特に高度な知識と技術を持つ重度訪問介護従業者は貴重な存在です。
介護福祉士など他の資格を持つ専門家と比べても、重度の障がいに特化した研修を受けているため、現場での対応力が高く評価されています。
事業所では、常勤のヘルパーとして重度訪問介護従業者の資格保有者を求めることが多く、介護報酬の加算対象にもなるため、資格保持者のニーズは非常に高いと言えるでしょう。
専門性の高い資格を持つことで、より多くの利用者に対応できるだけでなく、自身のキャリアにも大きな可能性を見出すことができます。