生活支援コーディネーター(SC)とは
生活支援コーディネーター(SC)は、地域で高齢者の生活支援や介護予防のサービスを調整する役割を担っています。
「地域支え合い推進員」とも呼ばれ、地域の様々な機関や団体と連携して、支援体制の構築を進めます。
生活支援コーディネーターは、地域の高齢者が安心して暮らせるように、集いの場・通いの場やボランティアサークルなどとマッチングを行います。
「住まい・医療・介護・予防・生活支援」を包括的に提供する地域包括支援センター及び、社会福祉協議会(一部市町村の高齢者福祉課等含む)に所属し、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活ができるようサポートします。
生活支援コーディネーター誕生の背景
生活支援コーディネーターが誕生した背景には、「2025年問題」が大きく関わっています。
「2025年問題」とは、団塊の世代や1950年代に生まれた人々が一斉に後期高齢者となり、医療費や介護費などの社会保障費が急増することが予測される問題です。
この問題を解決するために、厚生労働省は地域包括ケアシステムの構築を進め、この新しい仕組みを推進するために生活支援コーディネーターという専門職が導入されました。
厚生労働省は、この職種を「調整機能を果たす存在」として位置づけ、高齢者が安心して生活できる地域環境を整えるために活動しています。
2025年以降、ますます高齢化が進み、一人暮らし高齢者の急増も予測され、この役割が非常に重要なものとなるでしょう。
生活支援コーディネーターの役割
生活支援コーディネーターの役割は、高齢者の生活支援と介護予防の基盤を整えることです。
全国の市町村において地域包括ケアシステムの構築に向けた調整役として活動し、「地域支え合い推進員」とも呼ばれています。
具体的な役割には以下のようなことを行います。
- 生活支援サービスの設立と連携
- 地域の住民と協力しながら居場所づくりなどの支援体制の充実と強化
- 高齢者の社会参加の推進
医療・介護・住まい・予防・生活支援を一体的に提供する仕組みである、厚生労働省が推進している「地域包括ケアシステム」の一環として活動します。
また、地域の福祉ネットワークを構築し、住民や関係者が話し合える場を設けることも推進します。
こうした活動を通じて、生活支援コーディネーターは高齢者の生活の質を向上させるために、生活支援サービスの提供者と受け手を結びつける橋渡しの役割を果たします。
地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を続けられるように、地域の特性に応じて「住まい・医療・介護・予防・生活支援」を一体的に提供する仕組みです。
このシステムは、自治体が主体となり、地域の自主性と主体性をもって構築されることが期待されています。
- 医療
- 介護
- 予防
- 住まい
- 生活支援
地域包括ケアシステムを進めるためには、各自治体の積極的な取り組みと、住民の意識づくりと各機関との連携が欠かせません。
例えば、生活支援体制整備事業は、地域包括ケアシステムの一環として設けられました。
この事業では、「生活支援コーディネーター」という役割を導入し、高齢者の生活支援と社会参加を推進する仕組みを作り上げています。
地域包括ケアシステムは、医療・介護が必要になっても住み慣れた地域で生活できるようにするための包括的な支援体制です。
これにより、高齢者が地域で自立し、安心して暮らせる社会の実現を目指しています。
生活支援コーディネーターの3層の領域
第1層:市町村全域におけるサービス開発・活動支援
生活支援コーディネーターの「第1層」の役割は、市町村全域でのサービス開発と活動支援を行うことです。
具体的には、地域の社会資源を把握し、高齢者のニーズに応じた新しい福祉サービスを発掘・育成します。
また、地域のボランティア団体などに情報を提供し、意見交換を促進して、住民による支援体制の強化を目指します。
さらに、新たな生活支援サービスを提供するための人材育成も重要な活動です。
このようにして、地域全体で高齢者の生活を支えるための基盤づくりを行っています。
第2層:中学校区域における関係機関の連携強化
生活支援コーディネーターの「第2層」では、小地域ごと(中学校区域)の社会資源やニーズを把握し、関係機関や団体間の結び付けを強化します。
この活動には、人口2万人を基本に配置された地域包括支援センターなどと連携し、情報の共有や新しい福祉ネットワークの構築が含まれます。
「小地域」とは、一般的に中学校の学区で定義される日常生活圏域のことを指します。
ここでは、住民のニーズに合ったサービス提供を目指し、介護サービス事業所や各種団体との連携を支援します。
これにより、高齢者が安心して地域で生活できる環境づくりを推進します。
第3層:地域の支援ニーズと取り組みのコーディネート業務
「第3層」では、地域の支援ニーズと取り組みのコーディネート(マッチング含む)を行います。
具体的には、支援が必要な高齢者のニーズを評価し、生活支援計画の作成をサポートすることが含まれます。
また、サービスを提供する事業者への研修や、関係機関との連携を強化し、適切な支援が行き届くよう調整します。
このように、地域の実情に合わせてニーズとサービスを結びつけることが求められます。
生活支援コーディネーターの仕事内容
生活支援コーディネーターの仕事内容は、大きく3つの役割に分類されます。
仕事内容 | 求められること |
---|---|
地域内にある社会資源を把握し福祉サービスを開発・育成する | 既存の社会資源の再評価や新たな福祉サービスの創出・発掘 |
地域での新しい福祉ネットワークの構築 | 生活支援コーディネーターは、公的機関、NPO、民間企業などとの連携を促進し、福祉ネットワークの構築をサポート |
支援ニーズと提供サービスのマッチング | 地域の高齢者や住民が必要とするサービスと、それを提供できる事業所や関係機関とをつなげる |
また、生活支援コーディネーターは、地域ケア会議と協議体の間に立ち、社会資源の有効活用や新たな資源の創出を支援します。
これらの役割を通じて、生活支援コーディネーターは、地域の高齢者が自立して生活できるよう、幅広い支援を行っています。
生活支援コーディネーターの職場
生活支援コーディネーターの職場は、各市区町村の規模と組織体制によって異なります。
- 市役所や役場の福祉関連部署
- 社会福祉法人
- 医療法人
- 社会福祉協議会
- NPO法人など
生活支援コーディネーターが働く場所は、主に地域包括支援センターか社会福祉協議会が多く、小規模自治体では行政直営の職場となります。
業務内容や支援体制、業務の受注先に応じて、配置先が決まることが多く、柔軟な働き方が求められます。
生活支援コーディネーターの給料・年収
生活支援コーディネーターの給与は、月平均で約21万円から26万円程度です。
例えば、月収22万円の場合、基本給は約17万5,000円、特殊業務手当が3万円、常勤加算手当が1万5,000円という内訳です。
宿直業務がある場合、その手当も別途支給されることがあります。
また、働く施設や勤務条件によって給与額や昇給の幅が異なることもあります。
介護職の給料についてもっと詳しく知りたい方は、「介護系職種の給料を徹底解説!年齢別平均や給料アップのポイントは?」をご参照ください。
生活支援コーディネーターと生活支援員の違い
生活支援コーディネーターと生活支援員は、似た名前ですがその役割には大きな違いがあります。
役割 | サポート内容 | 直接的な介助 |
---|---|---|
生活支援コーディネーター | 地域で高齢者の生活支援や介護予防サービスの体制を整え、地域全体の支え合いをコーディネートする | 行わない |
生活支援員 | 障がい者や高齢者に対して日常生活や生活能力の向上をサポートする | 介助や生活習慣の指導、職業訓練の支援などを行う |
生活支援コーディネーターは地域全体の支え合いをコーディネートする役割であり、生活支援員は、個々の障がい者や高齢者の自立を直接サポートする職種です。
生活支援員についてもっと詳しく知りたい方は、「生活支援員とは?詳しい仕事内容や給料、将来性について解説」をご参照ください。
生活支援コーディネーターになるには
生活支援コーディネーターになるには、介護分野や社会福祉に関する知識や経験が重要です。
詳しく説明していきます。
資格要件
生活支援コーディネーターとして働くには必須の資格はありませんが、市町村によって応募要項は異なるので確認をすることが大切です。介護や福祉に関する資格や知識・経験を持っていると有利です。
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 介護職員初任者研修
- 介護支援専門員
これらの資格は、高齢者支援や介護予防の専門知識を証明するもので、業務の幅を広げる助けになります。
介護業界での経験や知識があると、よりスムーズに採用されるでしょう。
必要なスキル
生活支援コーディネーターになるためには、特別な資格は必要ありませんが、ボランティアや市民活動への深い理解と諸機関との調整能力、優れたコミュニケーションスキルとファシリテーションスキルが重要です。
この職種は、地域包括ケアシステム構築を目指し、多様な機関や地域住民との関係を築き、地域全体の福祉向上を目指します。
そのため、適切な調整力や中立的な立場での支援が求められます。
国や自治体が実施する研修を受講することが推奨されており、これにより必要なスキルを磨くことができます。
研修
生活支援コーディネーターになるための研修は、全国の自治体で開催されています。
例えば、東京都では「生活支援コーディネーター初任者研修」と「生活支援コーディネーター現任者研修」という2つの研修が実施されています。
初任者研修 | 生活支援コーディネーターの基本的な役割や理念、協議体との関わりなど、基礎的な知識と技術を学ぶ研修 |
---|---|
現任者研修 | 初任者研修を修了した経験者向けで、市区町村レベルでの実践的な活動に焦点を当てた研修 |
これらの研修は、生活支援コーディネーターを目指す人にとって非常に有益です。
厚生労働省もこれらの研修受講を推奨しており、現場でのスキル向上に役立ちます。
興味がある方は、自治体が提供する研修を受講してみると良いでしょう。
生活支援コーディネーターに向いている人
生活支援コーディネーターに向いているのは、高いコミュニケーション能力を持ち、公平で中立的な視点を持てる人です。
この仕事は地域内のさまざまな機関や関係者と連携し、調整を行う役割を担います。
そのため、さまざまな立場・世代の人とやり取りができ、特定の組織に偏らずに物事を判断できる力が求められます。
また、人と地域のために貢献する姿勢と助け合いの精神が大切です。
献身的な気持ちを持ち、人々の生活をサポートすることに喜びを感じられる人は、この職種に非常に向いていると言えるでしょう。
さらに、人と会話するのが好きで、多様な意見を尊重しながら活動できる人も適しています。
活動事例
生活支援コーディネーターは、全国の自治体で高齢者支援や地域づくりの活動を展開しています。
例えば、地域住民と連携して福祉サービスを向上させる取り組みなどがあります。
横浜市金沢区の例
横浜市金沢区では、「住民同士の支え合い」を促進するために、地域リーダーの育成を目的とした「地域づくり塾かなざわ」を実施しています。
この取り組みは、2016年度から金沢区役所と協働で進められ、多くの住民が参加しています。
横浜市中区の例
横浜市中区では、「ちょっとした困りごとへの対応」を目的に、生活支援ボランティアを育成する講座を2017年秋に開講しました。
この取り組みでは、病院の付き添いや草むしり、家具の移動といった高齢者が一人で行うには難しい作業を支援するボランティア団体の発掘を目指しています。
福岡県北九州市の例
福岡県北九州市では、高齢者が徒歩で利用できる「買い物環境マップ」を市内全域で作成し提供しています。
また、各地区の特性に応じた生活支援や介護予防の取り組みを共有するネットワークの構築にも取り組んでいます。