鍼灸師(しんきゅうし)とは
鍼灸師は、東洋医学の考え方に基づき、鍼(しん)と灸(きゅう)を用いて治療を行う専門職です。
主な仕事は、鍼や灸を使って体の経穴(ツボ)や筋肉を刺激することで、身体の不調を改善したり健康を促進することです。
鍼灸師には「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格があり、一般的には両方の資格を取得した者が鍼灸師と呼ばれます。
鍼灸師は主に鍼灸院や医療クリニックなどで勤務し、患者一人ひとりの健康課題に合わせた治療を提供します。
鍼灸師の仕事内容
鍼灸師の主な仕事は、東洋医学の考え方に基づいて鍼と灸を用いて治療を行うことです。
まず患者の症状を聞き、適切な鍼治療や、灸治療を施します。
具体的には、体内の経穴(ツボ)を特定し、そこに鍼を刺して刺激を与える鍼治療や、もぐさを使ってツボを温める灸治療を行います。
この鍼灸治療は、頭痛や肩こり、不眠症、食欲不振、高血圧、アレルギーなど、幅広い年代の人の体の不調に対応できます。
鍼・灸のしくみ
鍼灸師が行う中心的な治療法は、鍼と灸を使った東洋医学の伝統療法です。
鍼治療では、0.1~0.3ミリ程度の極細の金属製の鍼を使用し、皮膚に鍼を刺して刺激を与えます。
鍼を引き抜いたり動かしたりと、様々な技法があり、ほとんど痛みを感じません。
一方の灸治療は、ヨモギの葉を綿状にした「もぐさ」に火をつけ、皮膚に置いて熱刺激を与えるものです。
直接皮膚に置く直接灸や台座に置く間接灸など、やり方は多岐にわたります。
鍼と灸はいずれも、体内の361か所にある経穴(ツボ)に刺激を与えることで、治療を行います。
その刺激が全身に伝わり、血行の改善や自然治癒力の向上などの効果が得られるとされています。
鍼(はり)で自然治癒力を高める効果
鍼灸師は、人体の「経穴」と呼ばれるツボを見つけ出し、その場所に鍼を瞬時に刺激します。
状況に応じて、刺した鍼に弱い電流を流す治療法も用いられています。
この鍼の刺激によって、患者の自然治癒力が高まり、身体の不調に対応できます。
単なる痛みの緩和だけでなく、予防医学の原点ともいわれています。
灸(きゅう)で血行改善や免疫力アップ効果
灸とは、ヨモギなどの薬草からできた「もぐさ」を使った治療法で、体のツボにもぐさを乗せ、それを燃やして熱刺激を与えるものです。
この熱は高温ではなく、むしろリラックスできる温かさが特徴です。
このように灸によって体に適度な熱刺激を与えることで、血行の改善や免疫力の向上などの効果が期待できます。
灸治療は東洋医学の考え方に基づくもので、病気の発症前の「未病」の段階で治療を行い、自然治癒力を高めて怪我や病気を未然に防ぐことを目的としています。
また、鍼灸治療は薬物を使わないため、薬の使用に制限がある子供や妊婦でも受けられるというメリットがあります。
欧米でも注目を集めており、様々な症状に対応できる治療法として期待されているのです。
鍼灸以外の治療法
鍼灸師は、鍼と灸を中心とした東洋医学の治療法に加えて、様々な療法を組み合わせて実施することがあります。
例えば低周波鍼通電療法では、鍼に電流を流して刺激を与え、遠赤外線治療では身体の深部までを温めます。
また、吸い玉(カッピング)は皮膚を吸引して血行を促進する手法です。
その他にもテーピング療法や骨盤矯正、マッサージ、運動療法、食事療法なども取り入れられています。
このように鍼灸以外の多様な治療法を組み合わせることで、より総合的で効果的な施術が可能になります。
鍼灸師は東洋医学に基づく伝統療法に加え、新しい治療法も取り入れながら、患者一人ひとりに最適な施術を行っています。
事務作業・雑務
鍼灸師の業務は、患者への治療のみならず、様々な事務作業やスタッフ業務も含まれます。
受付対応では、患者の予約管理や問診票の記入案内を行います。
カウンセリングでは、患者の病歴や症状、要望を確認し、適切な治療方針を立案する必要があります。
さらに院内業務として、清掃や整理整頓、電話対応、カルテ管理、売上管理なども担当します。
多くの鍼灸院が小規模であることが多いため、鍼灸師自身がこのような雑務を一手に引き受けることも少なくありません。
治療に加えて、こういった事務的な業務にも時間を費やさなければならず、幅広い業務遂行能力が鍼灸師には求められているのです。
鍼灸師の給料
鍼灸師の平均年収は350万円〜400万円と言われています。
医療施設などに勤務する場合は300万円~400万円、月収では18万円~25万円程度が一般的です。
経験や技術が高いほど収入は上がります。
開業に成功すれば、勤務先よりも大幅に高収入を得られる可能性があり、年収1,000万円を超えるケースもあります。
さらに、固定給に加えて指名回数や売上による歩合制を取り入れている施設もあります。
完全歩合制の業務委託制度を採用している施設もあり、売上の50%~60%程度の収入が得られます。
全体としては、他の職業と比べて特に高収入というわけではありませんが、経験を積み、独立開業するなどすれば、収入アップを目指せる職業といえます。
鍼灸師になるには
はり師・きゅう師免許が必要
鍼灸師になるためには、「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格を取得する必要があります。
大学または専門学校の鍼灸養成課程に3年以上在籍し、所定の教育を受けなければなりません。
その後、はり師試験ときゅう師試験のいずれか、あるいは両方の国家試験に合格しなければいけません。
視覚障害者の場合は、中学卒業後に5年以上の養成施設教育を受ければ受験資格が得られる特例措置があります。
はり師・きゅう師試験概要
この国家試験の概要は以下の通りです。
試験日程
- 願書等提出:12月上旬~中旬
- 試験日:2月下旬
- 合格発表:3月下旬
試験形式
- 筆記試験:4択の選択肢形式
- 実技試験:なし
試験科目
【共通科目】
- 医療概論(医学史を除く)
- 衛生学・公衆衛生学
- 関係法規
- 解剖学
- 生理学
- 病理学概論
- 臨床医学総論
- 臨床医学各論
- リハビリテーション医学
- 東洋医学概論
- 経絡経穴概論
- 東洋医学臨床論
【非共通科目】
- はり理論
- きゅう理論
受験資格を取得するための流れ
鍼灸師を目指す人は、指定された養成施設での十分な専門教育を経た上で、国家試験合格を目指さなければなりません。
一定の教育課程と試験合格が、鍼灸師になるための必須の流れとなっています。
【専門学校】養成施設で3年間履修
全国に約100校ある鍼灸師養成施設では、国家試験の受験資格を得るために最低3年以上の修学期間が設けられています。
養成施設では、現代医学の人体解剖学や病理学、東洋医学概論、そして実際の治療学や治療実習などを専門的に学習します。
多くの施設では、はり師ときゅう師の両方の知識と技術を併せて習得することができるカリキュラムが組まれています。
そこで修得した専門知識と臨床実習の経験を活かして、最終的には国家試験の合格を目指します。
【大学(4年制)】はり師・きゅう師関連の学部で学ぶ
大学で鍼灸師を目指すメリットは、専門科目以外にも幅広い教養科目を修得できる点にあります。
鍼灸または関連学科に所属し、4年間の修学期間を経れば、専門学校よりも1年長いものの、卒業後の選択肢が広がります。
「鍼灸に興味はあるが、他の進路の可能性も残しておきたい」という方には、大学の鍼灸関連学科が適しているでしょう。
4年間で鍼灸の専門知識を身につけつつ、様々な教養も修得できます。
その上で大学卒業後に鍼灸師の国家資格を取得すれば、医療の他分野も視野に入れた多様な進路を歩めるというメリットがあります。
試験内容
鍼灸師(はり師・きゅう師)の国家試験の科目は以下の通りです。
- 共通科目: 医療概論、衛生学、関係法規、解剖学など
- 非共通科目: はり理論、きゅう理論
はり師ときゅう師の試験では、共通科目の内容が同一です。
そのため、両方の資格を同時に取得する場合、申請により共通科目の一方が免除されます。
受験料
鍼灸師(はり師・きゅう師)の国家試験を受験するための手数料は、2020年2月時点で14,400円とされています。
この受験手数料の納付方法は、公益財団法人東洋療法研修試験財団の指定する銀行口座または郵便局の口座に振り込む形となります。
一度納付した受験手数料は返還されませんので、受験に際しては注意が必要です。
合格基準
鍼灸師の国家試験の合格基準は、総得点の6割以上を獲得することが必要です。
試験の満点は150点なので、90点以上を取得すれば合格ラインに達することができます。
鍼灸師の試験範囲は広範囲にわたるため、受験に向けて十分な準備が重要です。
最新の国家試験情報は、公益財団法人東洋療法研修試験財団のウェブサイトでご確認ください。
合格率は7割
2020年に実施された第28回試験では、はり師の合格率が73.6%、きゅう師の合格率が74.3%と、いずれも7割を超えています。
鍼灸師の国家試験における合格率は高めに推移しています。
一方で、3割近くの受験者が不合格となっているのも事実です。
同日に行われたあん摩マッサージ指圧師国家試験の合格率は84.7%と、鍼灸師の試験よりも合格率が高い傾向にあります。
つまり、鍼灸師の試験はあん摩マッサージ指圧師の試験と比べ、やや難関であると言えるでしょう。
試験日と合格発表日
鍼灸師の国家試験は毎年2月下旬に実施されています。
通常は、受験地や受験番号の掲示などが行われますが、2020年は新型コロナウイルスの影響により、ホームページでの掲示と受験者への成績・合否結果の通知のみに変更されました。
試験日程や合格発表の詳細について、事前に把握しておくことが大切です。
鍼灸師の勤務先
鍼灸師の就職先は多岐にわたります。
近年は、高齢化社会の進展に伴い、介護分野での活躍が期待されています。
具体的な就職先としては以下のようなものが考えられます。
- 鍼灸院・鍼灸接骨院
- 美容サロン、エステサロン
- 訪問治療院
- 病院や整形外科クリニック
- 介護施設
- スポーツジム・フィットネスクラブ
次より、詳しくみていきましょう。
鍼灸院・鍼灸接骨院
鍼灸師の就職先の中でも特に多いのが、専門的にはり・きゅう治療を行う鍼灸院やマッサージ院です。
近年では鍼灸をメインに扱う鍼灸院と、鍼灸もおこなう鍼灸接骨院(整骨院)の二種類に分けられます。
接骨院は骨折や捻挫、肩こりなどの治療も行うため、鍼灸師がそれ以外の業務を任されることもあります。
求人では鍼灸治療の割合が明示されていることもあるので、事前確認が重要です。
美容鍼灸院・エステサロン
近年、美容医療の人気の高まりに伴い、美容鍼灸の需要も高まっています。
美容鍼灸専門の施術所のほか、エステサロンでも美容鍼灸のメニューを取り入れているところが増えています。
女性客が多い店舗では、施術者も女性中心となっていますが、男性の美容意識の高まりから、男性客も増加傾向にあります。
また、土日祝日や夜間に営業している店舗も多く、休日や仕事終わりにも通えるような体制が整っています。
鍼灸師にとって、美容分野は新たな就職先の選択肢となっています。
訪問治療院
近年、高齢者や障がい者の在宅医療や在宅介護の需要が高まるなか、自宅や施設を訪問して施術を行う「訪問鍼灸マッサージ院」が注目されています。
このような訪問治療院では、鍼灸治療に加え、あん摩マッサージ指圧師の資格を持つことが優遇されます。
また、機能訓練と組み合わせて実施することも一般的です。
日勤のみのシフト制が基本で、車での移動が必要なため、運転免許証が必須となっています。
訪問治療院は、高齢化社会に対応した新しい鍼灸師の就職先として注目されています。
在宅医療や介護の現場で、専門的な鍼灸治療サービスを提供できる魅力的な職場といえるでしょう。
病院や整形外科クリニック
鍼灸師の就職先として、病院や診療所も選択肢の一つです。
数は多くはありませんが、鍼灸治療を積極的に取り入れている医療機関もあります。
大学病院では、鍼灸センターを設置し、複数の診療科と連携しつつ東洋医学的な治療法を導入しているところもあります。
一方、一般の診療所では、内科や整形外科、歯科などで鍼灸治療を行っているところもあります。
病院や診療所での勤務には、西洋医学に関する知識も求められるため、鍼灸師としての能力向上につながる良い機会といえます。
介護施設
鍼灸師は、一定の条件を満たせば、介護施設における機能訓練指導員として勤務することができます。
機能訓練指導員は特別養護老人ホームやデイサービス、ショートステイなどの介護事業所に配置されています。
機能訓練指導員の業務内容は、利用者の健康状態に合わせてリハビリプログラムを計画・実施し、その評価を行うことです。
デイサービスやショートステイの場合は、送迎業務なども含まれる場合があります。
日勤中心の職場であるため、働きやすい環境ですが、鍼灸治療を行う機会は少ないのが特徴です。
鍼灸師資格に加えて、鍼灸師以外の機能訓練指導員が配置されている事業所で、6ヶ月以上の実務経験を有することが必要となりますので、資格取得後の就職先として検討してみるのも良いでしょう。
スポーツジム・フィットネスクラブ
スポーツの分野でも鍼灸治療の需要が高まっています。
スポーツ選手を対象に、怪我の治療や予防、コンディショニングのための「スポーツ鍼灸」を行う施設も増えています。
スポーツジムやフィットネスクラブでは、スポーツトレーナーとして鍼灸師を採用しているところもあります。
業務内容は、トレーニングメニューの作成・指導、食事管理、接客、設備のメンテナンスなさまざまです。
一方で、鍼灸治療をまったく行わないケースも多いようです。
スポーツ分野での活躍を希望する鍼灸師は、「スポーツ鍼灸」を学べる学校への入学をおすすめします。
鍼灸師の働き方
鍼灸師の一日の流れ
鍼灸院で働いた場合の具体的な例を紹介します。
時間 | 活動内容 |
---|---|
8:30 | 出勤 ・ミーティングで当日の予定確認 ・受付や施術道具の準備 |
9:00 | 診療開始 ・来院する患者さんに対する接客と施術 ・1患者あたり30~60分の施術時間 |
12:00 | 昼休憩 ・予約状況に応じた休憩 ・場所により最大1時間半の休憩 |
13:00 | 午後の施術 ・接客と施術の続行 ・初診患者には長めの問診 |
18:00 | 診療終了 ・カルテ作成や清掃などの事務作業 ・翌日の準備 |
18:30 | 退勤 |
鍼灸師は朝早くから夜遅くまで患者さんと向き合う仕事です。
幅広い施術スキルと同時に、接客力も重要といえるでしょう。
鍼灸師の休日の過ごし方
鍼灸師の休日は、施設によってさまざまです。
土日祝日も営業している施設もあれば、平日のどこか1日や日祝を休みとしている施設もあります。
シフト制による週休2日や週休1.5日という体制をとっている職場もあります。
ただし、年末年始やゴールデンウィークなどの書き入れの時期は、長期休暇を取得できる職場は少ないのが一般的です。
鍼灸師は、患者さんの症状改善に日々取り組むことから、休日の過ごし方にも工夫が必要です。
身体的・精神的な疲労を軽減し、次の治療に備えることが大切です。
自身の健康管理を怠らず、リフレッシュできる休日の過ごし方を見つけることが、鍼灸師にとって重要な課題といえるでしょう。
鍼灸師のやりがい
鍼灸師が感じられるやりがいには以下のようなものがあります。
患者の状態改善への貢献
鍼灸治療により、患者の身体の不調や痛みが緩和されると、患者は喜んでくれます。
自分の施術が患者の健康に寄与できたことを実感できるのが、鍼灸師の大きなやりがいの一つといえるでしょう。
患者との信頼関係の構築
鍼灸師は患者とのコミュニケーションを大切にする必要があります。
患者の体調や心情を理解し、適切な施術につなげていくことが重要です。
そうした努力によって、自然と患者との信頼関係が築かれていきます。
患者から鍼灸師と治療を信頼されていると実感できるのもやりがいの一つです。
自身の成長と向上
鍼灸師には、日々の学習と知識の習得が求められます。
最新の治療法や知見を身につけることで、患者へのサポート力が高まります。
自身の成長を実感できるのも、鍼灸師ならではのやりがいと言えるでしょう。
鍼灸師の大変な面
鍼灸師の職業は、高い専門性と献身的な対人サービスを要求される大変さがあります。
患者の詳細な身体状況の把握から適切な施術の提供まで、幅広い専門知識と技術が必要です。
日常的に勉強し練習することでのみ、この職業に必要な技術の習得が可能になります。
また、患者さんの痛みや不安を理解し、信頼関係を築きながら最適な施術プランを提案するには、優れた対人コミュニケーション能力も必須です。
一日中立ちっぱなしでの施術は体力的に要求が高く、常に最良の体調管理を求められます。
解剖学や生理学といった専門知識はもちろん、細かな手の動きを要する施術技術、そして集中力と忍耐力も鍼灸師にとって不可欠です。
患者一人ひとりに合わせた個別の対応が求められるため、これらの能力や条件が職業を大変なものにしています。
鍼灸師に適している人
鍼灸師になるためには、細かな手作業が多く、それを丁寧に続けることができる忍耐力が求められます。
また、患者の痛みや不快感に対して共感し、心からの思いやりを持って接することも大切な役割の一つです。
専門的な知識を深めるための学びの姿勢も不可欠であり、解剖学や生理学といった分野に対する深い理解が求められます。
これらのスキルや資質は、鍼灸師として国家資格を取得し、患者さんに適した施術を提供するために必要とされるものです。
次に詳しくみていきましょう。
意思疎通能力が高い人
鍼灸師として成功するためには、患者さんとの意思疎通が非常に重要な要素です。
患者さんが抱える症状や心配事に深く共感し、その不安を理解して支えることは、鍼灸師にとって大切な役割です。
治療計画の説明やアドバイスを、分かりやすく優しく伝えることができれば、患者さんとの信頼関係が生まれ、より良い治療結果につながります。
高いコミュニケーション能力を持ち、丁寧な態度で患者さんに接することができる人は、鍼灸師として特に適していると言えるでしょう。
また、医療用語を患者さんが理解できる言葉に置き換えて説明する能力も、鍼灸師にとっては不可欠です。
患者さんの疑問や不安を解消し、治療に対する理解と安心感を提供することが、優れた鍼灸師に求められるスキルなのです。
細かな手作業が得意な人
鍼灸師にとって、繊細かつ精密な手の動きは日常業務の重要な部分です。
施術の正確性を求められるこの職で成功するためには、手先の器用さや正確な手さばきが不可欠であり、患者さんの身体の特定の箇所を正しく、かつ安全に扱う能力が必要です。
また、施術中の集中力を維持し、高度な注意を払うことは、安全かつ効果的な治療を提供する上で重要となります。
手先が器用で、細かい作業を巧みにこなせる人は、鍼灸師として特に優れた才能を持っています。
体力がある人
鍼灸師の仕事は体力を要するため、充宜な体力と持久力を備えている人が適しています。
一日を通して患者の施術にあたることは、立ち仕事が中心であり、同じ体勢や動作の繰り返しによる肉体的な負担が大きいです。
加えて、小さな子どもから高齢者まで、幅広い年齢層に対応する必要があるため、しっかりとした体調を維持する能力が求められます。
健康的な生活を送り、日々の体調管理に気を配れる人は、患者への連続した高品質な施術を提供することができるでしょう。
学習意欲旺盛な人
鍼灸師として成功するためには、学習意欲が非常に重要です。
この職業は、最新の医学知識や治療技術を常に習得し、患者一人ひとりの状態を正確に把握して適切な治療を施すことが求められます。
また、施術技術を継続的に向上させるためには、専門性を深めるための研鑽が不可欠です。
このため、鍼灸師は資格取得後も自己学習と実践を通じて、知識と技術の両面で成長を続ける必要があります。
鍼灸師の現在と将来性
人数と男女比
鍼灸師の国家資格登録者数は年々増加しており、この資格の人気が高まっています。
2018年時点で、はり師は約17.6万人、きゅう師は約17.5万人が登録されています。
男女比に関しては、過去には男性が多い傾向にあり、専門学校の入学者において男性が6から7割、女性が3から4割を占めることが一般的でした。
しかし、近年では女性の鍼灸師が増え、鍼灸の職場で目立つようになっています。
この傾向は、医療現場での多様な活躍の機会が広がる中で、さらに多くの女性が鍼灸師として活動することを示しています。
このように、鍼灸師という職業は性別を問わず選ばれるようになってきており、将来的には男女比が均等になり、誰もが等しく鍼灸師を目指せる環境が整備されることが期待されています。
将来性
鍼灸師の将来性は非常に高いと評価されています。
これは、高齢化社会の進行に伴い、さまざまな年齢層からの鍼灸治療への需要が増えているためです。
さらに、スポーツケアや美容分野においても鍼灸の利用が広がっており、これらの分野での活躍の場が拡大しています。
また、一般的に鍼灸師は鍼灸院でキャリアをスタートし、経験を積んだ後に独立開業する道を選ぶことが多いです。
独立後は、自分の理想とする治療スタイルを追求することが可能になります。
業界データを見ると、就業鍼灸師数と施術所数は増加傾向にあり、2002年から2020年にかけて就業者数は約7.4万人から約12.7万人へ、施術所数は約4.7万か所から約7万か所へと増加しています。
このようなデータからも、安定した就職環境と職業としての成長性がうかがえます。