あん摩マッサージ指圧師とは
あん摩マッサージ指圧師は東洋医学に基づく手技療法の専門家です。
あん摩マッサージ指圧師とは、「あん摩」(押さえるとなでる動作)、「マッサージ」(ドイツ医学を基にした方法)、そして「指圧」(指を使った圧力)という3つの手技を駆使して、患者の体調不良を和らげます。
主に、徒手で筋肉や組織に直接的な刺激を与え、血行を促進し、痛みやコリを軽減することが役割です。使用するのは手のみで、特別な器具は使わず、身体を柔軟にし機能回復をサポートします。
あん摩マッサージ指圧師になるには、特定の学校での専門教育と国家試験の合格が必要です。施術は、一般的な医療処置とは異なり、骨折や脱臼、伝染病や腫瘍がある場合は施術を受けることができません。
あん摩マッサージ指圧師の仕事内容
![手を用いた施術で体調不良の患者を改善するイメージイラスト](https://media.job.minnanokaigo.com/unique/image/9f25bf5d-be3c-4671-b83a-87f5dd15c544.png)
「あん摩」「マッサージ」「指圧」の3つの技術を駆使し、患者の肩こりや腰痛、頭痛などの不調を改善し、自然治癒力を高めます。
手だけを使って「なでる」「揉む」「押す」「さする」といった動作で血行を促進し、健康をサポートします。
この職業は、治療院や介護施設、病院、スポーツの現場、企業内など様々な場所で活躍します。
施術前には問診や検査を行い、不調の原因を特定してから治療を進めます。
あん摩マッサージ指圧師は、医師の診断なしで施術を行うことが可能ですが、脱臼や骨折、禁忌症などの症状がある場合は治療を避ける必要があります。
あん摩
あん摩は、中国から日本に伝わった古代の治療法で、東洋医学に基づいています。
「あん」は押さえる、「摩」はなでるという意味です。これらの手法を使い筋肉を緩め、血流を改善します。
心臓から離れる方向に向かって行われる「遠心性」の施術が特徴で、衣服の上からでも効果的に施すことができます。
この手技は、身体の自然な治癒力を引き出し、肩こりや冷えなどの症状を和らげることに役立ちます。
あん摩マッサージ指圧師は、これらの技術を用いて、人間が本来持つホメオスタシス(恒常性)に働きかけ、健康な状態へ導きます。
マッサージ
マッサージは、ヨーロッパ起源の治療法で、患者の皮膚に直接触れ、心臓に向かって体をなでる「求心性」の施術を行います。
特に、リンパの流れや血液の循環を改善することを目的とし、オイルやクリームを使用して肌の摩擦を軽減します。
マッサージとあん摩は類似していますが、マッサージはリンパに対するアプローチが特徴的です。
この技術を用いることで、腰痛や肩こりの緩和、自律神経の乱れの改善など、様々な健康効果が期待できます。
指圧
指圧は日本発祥の治療法で、あん摩マッサージ指圧師によって幅広く使用されます。
この手法は、衣服の上からツボや筋肉に指で圧を加えることで、体の不調を整えることが目的です。
大正時代に体系化された指圧は、反射や経絡理論に基づいて身体機能を調整し、筋肉の疲労物質を取り除きます。
指圧は、あん摩やマッサージと共に「器具を使用しない」点で共通しており、世界各地で認知されている手法です。
この技術を駆使して、あん摩マッサージ指圧師は患者のコリをほぐし、身体のゆがみや心身の不調を改善します。
あん摩マッサージ指圧師と他の資格との違い
あん摩マッサージ指圧師は、人体を治療する医師や看護師と同様の国家資格を有する専門職です。
この資格は「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」により設定され、あん摩、マッサージ、指圧を施す業務を独占しています。
資格がなければ、あん摩マッサージ指圧師として治療行為を行うことは法律違反とされています。
理学療法士との違い
理学療法士とあん摩マッサージ指圧師はどちらも医療系の国家資格を持つ専門職ですが、役割や治療へのアプローチには重要な違いがあります。
理学療法士は怪我や病気で障害を持つ患者に対し、リハビリテーションを通じて生活の自立をサポートします。
この過程で運動療法や物理療法が用いられ、マッサージはリハビリの一環として施されます。
ただし、これは医師の指示に基づく治療の一部としてのみ許され、独立したマッサージ治療は認められていません。
一方、あん摩マッサージ指圧師は、あん摩やマッサージ、指圧を主体とする手技を駆使して患者の不調を改善するスペシャリストです。
医師の指示なしに独立して治療を行うことができ、その技術を用いた開業も可能です。
つまり、理学療法士と異なり、マッサージ治療を生業とする権利があるのです。
あん摩マッサージ 指圧師 |
理学療法士 | |
---|---|---|
資格 | 国家資格 | 国家資格 |
治療の目的 | 不調の回復 | リハビリ |
マッサージ | 可能 | 可能 (医師の指示のもと) |
マッサージ師 としての開業 |
可能 | 不可 |
このように、両者は国家資格を持つ医療専門職でありながら、その役割と活動範囲において明確な差があります。
理学療法士について詳しく知りたい方は、「理学療法士とは?仕事内容から受験資格、就職先を解説」をご参照ください。
整体師との違い
整体師は、関節あるいは骨格のゆがみを、手・足を使った施術法で矯正する人を指す言葉で、「あん摩マッサージ指圧師」も含まれます。
「整体師」として開業する場合、国家資格は必ずしも必要ありません。
各種団体が主催している専門学校などで技術を身につけて、その団体が認定している免状をもとに開業するというケースも多いです。
柔道整復師の違い
柔道整復師とあん摩マッサージ指圧師の違いは、治療の目的と対応できる身体の痛み、手技を行える範囲にあります。
柔道整復師は、患部にアプローチし、骨折や脱臼、打撲、ねんざなどの急性症状の「回復」を目指します。
リハビリテーション業務も担当し、治療は医師の指示に基づくことが多いです。
対して、あん摩マッサージ指圧師は、不調の「回復」を目的とし、腰痛や肩こりなどの慢性的な不調を主に扱います。
あん摩、マッサージ、指圧を自己の判断で施し、医師の指示は不要です。
あん摩マッサージ 指圧師 |
柔道整復師 | |
---|---|---|
資格 | 国家資格 | 国家資格 |
治療の目的 | 不調の回復 | 怪我の治療 |
主な施術 | マッサージ | 手技やテーピングなど |
開業 | 可能 | 可能 |
このように、治療法や対象となる症状が異なるため、それぞれの専門性を活かしたアプローチが求められます。
柔道整復師について詳しく知りたい方は、「柔道整復師とは?仕事内容から受験資格、就職先を解説」をご参照ください。
あん摩マッサージ指圧師になるには
あん摩マッサージ指圧師になるためには、国家資格の取得が必須です。
高校卒業後、文部科学大臣または厚生労働大臣が認定する専門学校や短大、大学などの養成施設で3年以上学びます。この期間中に、専門科目を集中的に学び、実習を通じて技術を習得します。
養成施設は全国に限られた数しかなく、入学競争が激しい傾向にあります。
取得後は、東洋療法研修試験財団が実施する国家試験に合格し、名簿登録を経て正式に免許が交付されます。あん摩マッサージ指圧師は、独立開業が認められている点で、セラピストや整体師と異なります。
国家試験の受験資格を取得
あん摩マッサージ指圧師の国家試験受験には、特定の教育機関での養成課程修了が必要です。
文部科学省または厚生労働大臣が認定した、「専門学校」、「短大」、「大学」の施設で3年以上の学習が求められます。
多くの養成学校では、はり師・きゅう師の資格も取得可能なカリキュラムが設けられています。
専門学校
あん摩マッサージ指圧師養成コースのある専門学校で3年以上学ぶことで、国家試験の受験資格を得ることができます。
卒業しても大卒などの学歴は得られませんが、3年間集中的にあん摩、マッサージ、指圧に関する体系的な理論を学べるので、身につけることができる知識・スキルは質・量ともに多いです。
また、大学・短大では専門科目以外の教養・語学系の単位を取得する必要がありますが、専門学校ではそのような授業を受けなくても卒業することができます。
短期大学(3年制)
短期大学の中にもあん摩マッサージ指圧師養成コースを備えた学校があります。ただし医療・看護系の短期大学であるため、通学期間は3年です。
卒業前に国家試験を受験して合格し、卒業直後から「あん摩マッサージ指圧師」として働き始めるというのが一般的な進路となっています。
卒業により短大卒の学歴を得ることもできるので、その点は専門学校にはない強みといえるでしょう。
大学(4年制)
あん摩マッサージ指圧師養成コースを備えた4年制大学で、受験資格を得ることもできます。
卒業までに4年かかるため、専門学校ルートや短大ルートよりも働き始めるまでに時間が必要です。また、通学期間が長い分、学費も高くなってきます。
しかし、「4年制大学卒」という学歴を得ることができることに加え、4年という時間的余裕もあることから、在学中にあん摩マッサージ指圧師以外の資格取得も目指しやすいです。
働きながら資格取得を目指す
あん摩マッサージ指圧師の資格取得は、日中の仕事を続けながらでも可能です。
夜間課程を提供する専門学校もあり、これにより昼間働く人も学びながら資格を目指せます。
ただし、夜間開講の養成施設は首都圏に集中しており、住む場所によってはアクセスが難しい場合があるため、事前に近くの学校を確認することが大切です。
夜間の授業料は比較的安価な傾向にあります。
試験内容や合格率など
あん摩マッサージ指圧師の国家試験は年1回、2月に実施され、受験には養成校での学習が必須です。
試験は筆記のみの実施となります。国家試験の概要をまとめました。
実施日 | 毎年2月ごろ |
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受験料 | 14,400円 |
合格基準 | 150点中90点以上かつ 「あん摩マッサージ指圧理論」で3割以上正解 |
合格率 | 約85%前後 |
試験科目 |
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あん摩マッサージ指圧師の平均給料
あん摩マッサージ指圧師の平均給料は、月給約20万円となっています。これは勤務地や経験、技術によって異なります。
平均月給 | 約23万円 |
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平均年収 | 約400万円 |
これらの情報は、病院や治療院に務める方の平均給料になります。
あん摩マッサージ指圧師は独立開業ができるため、経験を積んだ後自身の治療院やマッサージ店を開業するケースも少なくありません。
独立開業した場合の年収は経営手腕や技術力によって異なり、1,000万円を超えることもあります。
あん摩マッサージ指圧師の給料について詳しく知りたい方は、「あん摩マッサージ指圧師の給料を職場や雇用形態、都道府県ごとに徹底解説!」をご参照ください。
あん摩マッサージ指圧師の就職先・職場
![就職先は、介護施設や治療院などの場で活躍イメージイラスト](https://media.job.minnanokaigo.com/unique/image/80341b93-c386-414a-92ec-3469b78e822e.png)
あん摩マッサージ指圧師とは、幅広い分野で活躍できる専門職です。この資格を持つと、多様な職場での就業が可能になります。
主に、以下のような場所で働くことができます。
- 治療院・病院:医療現場でのリハビリテーションや患者さんのケア
- 介護施設:高齢者や障害を持つ方々の身体的なサポートを提供
- エステサロン:美容分野においてリラクゼーションや体調管理のためのマッサージ
- スポーツ施設:アスリートのコンディショニングや怪我の予防・治療に貢献
これらの職場では、あん摩マッサージ指圧師の技術が高く評価され、患者や利用者からの信頼も厚いです。今後も健康と美容に対する関心の高まりとともに、この職種の需要は拡大していくと予想されます。
介護施設
あん摩マッサージ指圧師が介護施設で果たす役割は多岐にわたり、主に高齢者の健康維持と身体機能の向上を目指します。
老人ホームやデイサービスでの施術や、健康体操・筋トレのサポートを通じて、入居者の健康をサポートします。
さらには機能訓練指導員として、高齢者の身体機能の維持や改善を目指し機能訓練計画の作成と実施を行います。介護施設では、この役割を担うためにあん摩マッサージ指圧師の配置が求められることがあります。
また、在宅の高齢者に対する訪問マッサージなどの施術で施設に通えない高齢者のケアにも寄与します。
また、あん摩マッサージ指圧師は、5年の実務経験を積むことでケアマネージャー(介護支援専門員)の受験資格を得ることができ、医療と福祉の分野で幅広く活躍する道が開けます。経験を積んだ後、自身のクリニックを開業することも可能です。
病院や治療院
病院では主にリハビリテーション科で活動し、患者の症状改善や機能回復を目的に整形外科やリハビリ科で施術を提供します。電子カルテの記入や電話対応など、他の医療職種との連携も重要な業務です。
医師の指示のもと、幅広い症状を持つ患者に対して施術を行い、病院での経験を通じて専門知識を深めることができます。
治療院では、独立開業したあん摩マッサージ指圧師のもとでスキルを磨きながら実務経験を積むことができます。訪問マッサージやスポーツ選手へのトレーナー派遣も行う場合があります。
独立開業
ほかには、鍼灸師や柔道整復師なども取得したうえで、治療院を独立開業する人がいます。
また、訪問リハビリマッサージの事務所を開設して仕事を始める人も増えていますし、プロやアマチュアのアスリートを対象としたスポーツ専門の治療院を開設することも可能です。
自ら経営を行うには、顧客を獲得する必要があります。そのためにも病院や治療院などでスキルを磨き、必要な知識を蓄えてから挑戦してみるのも良いでしょう。
あん摩マッサージ指圧師はきつい?向いている人とは
![腕や指を使うため、体力に自信がある人向けのイメージイラスト](https://media.job.minnanokaigo.com/unique/image/0d482ffa-8b86-48f2-b8ca-6044cd0a4d86.png)
あん摩マッサージ指圧師の仕事は、体力とコミュニケーション能力を要求される職業です。この専門職に向いている人の特徴や必要なスキルを解説します。
- 体力のある人
- 自身の健康管理ができる人
- コミュニケーション能力の高い人
あん摩マッサージ指圧師は、1日の大部分を立った状態で過ごします。患者の身体に圧を加える施術は、手、腕、足腰に大きな負担をかけるため体力が求められます。
患者のつらい症状を和らげるため、施術師自身も健康を維持し、体力を高める必要があります。
また、コミュニケーション能力も重要です。患者は自分の症状を客観的に説明できないことが多いです。そのため、あん摩マッサージ指圧師は、ヒアリングを通じて患者の悩みを正確に把握することが求められます。
近い距離で患者と接するため、人と関わるのが好きな社交的な性格が向いています。雑談を交えながらの施術もしばしばあり、その際にスムーズな対応ができることが望ましいです。
あん摩マッサージ指圧師は、人の健康をサポートするやりがいのある職業です。体力とコミュニケーション能力を持ち合わせた人には、この職種が非常に適しています。
あん摩マッサージ指圧師のやりがい
あん摩マッサージ指圧師は、患者の身体的な不調を改善することで、大きなやりがいを感じることができます。
自身の施術によって患者の不調が和らぐ様子を目の当たりにでき、様々なケースに対応するために技術を磨く過程でその成長を実感することで職業としての満足感が得られます。
これらの経験は、あん摩マッサージ指圧師にとって、日々の仕事が直接的な影響をもたらすことの証しであり、多くの専門家がこの道を選ぶ理由の一つです。
あん摩マッサージ指圧師資格は意味ない?将来性を解説
あん摩マッサージ指圧師は、将来的に非常に需要の高い職業です。
医師以外であん摩、マッサージ、指圧を行える唯一の国家資格保持であり、その専門性が求められるシーンは多いです。
日本の高齢化が進む中、介護施設での機能訓練指導員としての活躍が期待され、今後もますます重要な存在になるでしょう。
これらの点から、あん摩マッサージ指圧師は長期的に安定したキャリアを築くことができます。