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認定社会福祉士とは?仕事内容から資格の取得ルート、資格取得のメリットを解説

社会福祉士の上位資格として「認定社会福祉士」という資格があるのをご存じでしょうか。社会福祉士として経験を積んだ人に認められる資格で、より高度な専門能力があることを証明することができます。 こちらでは認定社会福祉士という資格制度の内容やほかの資格との違い、資格の取得方法、平均給与額、さらに将来性についてご紹介します。 これから社会福祉士の資格を目指して勉強しようと考えている人、あるいはすでに社会福祉士の資格を持ち、さらにキャリアアップを考えている人は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

認定社会福祉士とは

認定社会福祉士の資格は、社会福祉士のキャリア向上をサポートし、日常業務を行うための知識や技術はもちろん、多職種連携や地域福祉に取り組む実践力があることを認めるものです。

以下では、認定社会福祉制度はなぜ創設されたのか、認定上級社会福祉士や認定医療社会福祉士などの資格とどのような違いがあるのかなどについて詳しく解説します。

1.認定社会福祉士制度

認定社会福祉士制度とは

認定社会福祉士制度とは、社会福祉士の知識やスキル、多職種との連携、地域福祉への取り組み状況などの実践力を評価する認定制度です。

特に社会福祉士の資格は、実務経験がなくても取得できるので、資格を持っているだけではどのくらいの経験を持つのか判然としない部分があります。しかし、認定社会福祉士の有資格者であれば、経験に基づく知識やスキルを豊富に持っていることを証明できるため、転職の際にも有利となるでしょう。

社会福祉士について詳しく知りたい方は、「社会福祉士とは?仕事内容から受験資格、就職先を解説」をご参照ください。

認定社会福祉士制度におけるスーパービジョン

認定社会福祉士認証・認定機構では、「スーパービジョン(施設の施設長や管理者などから教育、指導を受けること)」を規定しています。この枠組みに従って指導を受けることにより、認定社会福祉士の取得および更新に必要な「スーパービジョン実績」の単位を所得することができます。

ここでの目的は、「社会福祉士としてのアイデンティティを確立すること」「所属組織にてソーシャルワーク業務を確立して、担えるようになること」「専門職としての職責や機能を果たせるようになること」などです。

認定制度のスーパービジョンは、スーパービジョンを受ける人「スーパーバイジー」と実施する人「スーパーバイザー」が1年間の契約を締結することで実施されます。その後、1年間で6回以上、1回1時間以上実施することになっています。

実施にあたっては、「スーパーバイジー」が「スーパーバイザー」に実施を依頼することも必要です(両者の関係は、職場内か職場外、同様の専門分野か異なる専門分野かなどは問われません)。

認定制度の枠組みに沿ったスーパービジョンを年間6回以上受ければ、2単位を取得できます。認定社会福祉士として申請するには、合計10単位、5年間のスーパービジョンを受ける必要があります。

スーパーバイザーの役割

スーパーバイザーとして登録するには、以下のいずれかの区分での申請が必要です。

  1. 認定上級社会福祉士であること
  2. 認定社会福祉士の更新者であること
  3. 認定上級社会福祉士に準じる者であること
  4. 社会福祉士
  5. 施設機関などにおいて職員のスーパービジョンを担当している者であること
  6. 教員などでスーパーバイザーとして豊富な経験、実績を持っている者であること

社会福祉士の資格を持っていない人でも、施設などでスーパービジョンを実施している場合は区分⑤で申請できます。ただし、区分⑤でのスーパーバイジーは限定されるので注意が必要です。

①~④、⑥の登録者が実施するスーパービジョンは、認定社会福祉士の資格取得に必要な「スーパービジョンを受ける」という実績の単位対象とされます。

2.ほかの資格との違い

認定上級社会福祉士との違い

認定上級社会福祉士との違い

認定社会福祉士は、社会福祉士の資格を持ち、所属組織における相談援助部門においてリーダー的な役割を果たします。

一方、認定上級社会福祉士は認定社会福祉士の上位資格です。社会福祉士の資格を持ち、所属組織内だけでなく、地域内で開催される各協議会で活動します。そのため、認定上級社会福祉士は所属組織内の人材育成や指導を行うだけでなく、地域全体のサービスや組織づくりにおいてその役割を果たさなければなりません。

認定社会福祉士よりも高度な能力や豊富な経験を持ち、地域社会全体の福祉向上に貢献できる人材が、認定上級社会福祉士だと言えるでしょう。また、認定社会福祉士がキャリアアップを図る際に目指す資格として位置づけられています。

認定医療社会福祉士との違い

認定医療社会福祉士は、医療ソーシャルワーカーを対象とする資格制度です。以下のような能力を担保するために創設されています。

  • 統合的実践力
  • 総合的および保健医療分野の専門的知識
  • 保健医療分野の専門的技術
  • 患者アドボケイト能力
  • リーダーシップ能力
  • 組織内ネットワーキング能力
  • 組織外ネットワーキング能力
  • コンフリクトマネージメント能力
  • 業務運営能力
  • スーパービジョン能力
  • 研究能力

いわば医療分野におけるソーシャルワーカーの専門能力を証明する資格であり、社会福祉士としての総合的な知識・スキルを問う認定社会福祉士とは異なります。

認定医療社会福祉士は2016年度で経過措置となる新規申請期間が終わり、2017年度から正規の申請が開始されています。

ソーシャルワーカーについて詳しく知りたい方は、「ソーシャルワーカーとは?必要な資格・なれる職種を一覧で解説」をご参照ください。

3.認定社会福祉士登録名簿人数

認定社会福祉士の登録名簿人数は952名です(2021年2月10日現在)。

都道府県別にみると東京都が87名と最も多く、以下大阪の51名、福岡の45名、神奈川の44名と続いています。また、分野別にみると高齢分野が356名、障がい分野が132名、児童・家庭分野が61名、医療分野が275名、地域社会・多文化分野が128名です。

認定社会福祉士制度の登録者数

登録者が所属する組織は、市区町村役場や介護老人福祉施設、社会福祉事務所、医療法人、地域包括支援センターなど多岐に渡ります。

社会福祉士になるには

1.資格取得のルート

認定社会福祉士の資格を取得するルートは大きく分けて「通常ルート」と「認定研修ルート」の2種類があります。

認定社会福祉士の取得ルート

通常ルートの場合、研修30単位(共通専門研修10単位、分野専門研修10単位、スーパービジョン実績10単位)を取得した後に認定社会福祉士認定申請を行い、実務経験5年以上を有することと、所定の実績を評価されることで登録が完了します。

認定研修ルートは複数あります。具体的には、「日本社会福祉会現経過措置移行ルート(2017年度の受講者のみ対象なのですでに終了)」「日本社会福祉会生涯研修ルート」「日本医療社会福祉協会研修ルート」「スーパーバイザー登録者ルート」「ベテランルート(時限措置)」「大学院(教育基幹ルート)」です。認定研修ルートの場合、「認定社会福祉士認定研修」を受講する必要があります。

2.取得に必要な基礎研修科目

通常ルートの場合、取得する研修の科目名と単位数は以下の通りです。

科目の分類・名称 科目名 単位数
共通専門研修 ソーシャルワーク理論系科目群Ⅰ ソーシャルワーク理論系科目Ⅰ 計10単位
福祉倫理
権利擁護・法学系科目群Ⅰ 権利擁護・法学系科目Ⅰ
サービス管理・人材育成・経営系科目群Ⅰ 人材育成系科目Ⅰ
サービス管理・経営系科目Ⅰ
地域開発・政策系科目群Ⅰ 地域開発・政策系科目Ⅰ
実績評価・実績研究系科目群Ⅰ 実績評価・実績研究系科目Ⅰ
分野専門研修 「高齢分野」「障がい分野」「児童・家庭分野」「医療分野」「地域社会・多文化分野」(いずれかの分野の制度などの動向で1単位、「支援の実際」にかかわる科目群から9単位取得) - 計10単位
スーパービジョン - - 10単位

 

3.受講費用

認定社会福祉士に新規で認定を申請する場合は、1科目あたり3万円の申請料が必要です。また、認証された研修は有効期間があり、更新の際は別途1万円がかかります。

認証研修の受講費用については、認定社会福祉士認証・認定機構による基準や制限などは提示していません。研修の主催者が適正に設定します。

4.更新・申請要件

認定社会福祉士の資格更新を行うには、以下のような条件を満たす必要があります。

  1. 認定社会福祉士の有資格者であること
  2. 更新する分野における相談援助実務経験を過去5年以内で2年以上有すること
  3. 申請時に更新要件に定められた研修を修了していること
  4. 所定の実績を有すること

③の更新要件に定められた研修は、「各分野の制度などの動向(認定を受けている分野)」で1単位、スーパービジョン(を受ける)または更新スーパービジョン(集合研修方式)で2単位、「研修受講」「スーパービジョン」「定められた実績」において合計7単位の計10単位が必要です。

5.認定上級社会福祉士

認定上級社会福祉士になるには

認定上級社会福祉士になるには、前提条件として認定社会福祉士の資格を保有していなければなりません。

そのうえで、教育や研究、社会活動において実績を持っていること、所定の口述試験と論述試験に合格することなどの要件を満たすことが必要です。

教育や研究、社会活動における実績とは、具体的には相談援助実務経験が社会福祉士資格を取得してから5年以上あり、この期間に社会福祉士制度が定める指定施設および職種に準ずる業務を行っていることを指します。

もし、社会福祉士の資格取得後、複数の分野で実務経験を有する場合は、認定を受ける分野(高齢分野、障がい分野、児童・家庭分野、医療分野、地域社会・多文化分野)で2年以上の経験があることが必要です。

認定社会福祉士の給料は?

1ヵ月あたりの実賃金

社会福祉士の額面給料は、平均で月収20万円台後半~30万円台前半です。20代だと20万円以下となるケースもありますが、40代~50代になってくると、30万円台が平均です。額面給料から税金・社会保険料などを天引きした手取り額は、一般的にこれよりも数万円ほど低い金額で、手取り27万円程度が目安と考えられます。

また、ボーナスの額は約70万円で、最低だと60万円、多いケースだと150万円前後です。夏と冬の2回支給され、1回の支給額は、月給1ヵ月分が最低水準といえます。

認定社会福祉士は社会福祉士の上位資格です。これをふまえると、勤務先によってはこの資格のより高い専門性が評価されます。その場合、認定社会福祉士の平均給与額は、一般的な社会福祉士の平均額よりも数万円程度高くなることもあります。

認定社会福祉士の将来性

認定社会福祉士の将来性

1.キャリアパス

認定社会福祉士は、一般的な社会福祉士よりも高度な知識、スキルを持つと評価される貴重な人材です。職場でより指導的な立場を任される、講師の依頼を受けるなど、仕事の幅も大きく広がるでしょう。認定社会介護士の将来性は十分に高いと言えます。

さらに近年では、高齢者・障がい者福祉の充実を求める声が日本社会の中で高まりつつあります。その影響もあって福祉サービスの内容は細分化・多様化し、福祉に携わるスタッフには高度な専門性が要求されるようになりました。福祉のプロフェッショナルとして地域社会を支える認定社会福祉士の活躍の場は、将来的に拡大していくと予想されます。

2.資格を取得するメリット

認定社会福祉士の資格は自らの社会福祉士としての専門性や実践力を証明することになるため、取得することでクライアントや関係者からの信頼が高まります。

また、個別援助の場のみならず、所属組織全体さらには地域社会における福祉の増進を行うことも認定社会福祉士に課せられる任務です。より広い視野で福祉の業務に携われるようになる点も、大きな利点と言えるでしょう。

さらに認定社会福祉士には、経験の浅い社会福祉士のスーパーバイザーとして、スーパービジョンを実施する責務も果たします。所属組織・地域で活動する社会福祉士への指導や能力向上に貢献できるという点も、やりがいにつながるでしょう。