社会福祉士とは
社会福祉士とは、福祉の相談援助に関係する高度な専門知識・スキルを持ち、福祉・医療の相談援助において重要な役割を担う専門職です。主な仕事内容はソーシャルワークの実践であり、具体的には在宅もしくは施設で生活している方の生活上の相談に応じ、必要な助言を行います。
また、状況に応じて利用できる制度や公的サービスを相談者に紹介し、サービス利用の調整役やサービス提供事業者間の連絡役となることも多いです。
相談者をサポートし、ご本人が直面している課題の解決を図ることが社会福祉士の仕事と言えます。
1.人数と男女比
厚生労働省『社会福祉士の登録者数の推移』によると、社会福祉士の登録者数は2018年度時点で22万6,283人。
近年の新規登録者数は横ばいで推移しており、2018年は新たに1万3,138件の登録が確認されています。
また、同省による『第31回社会福祉士国家試験合格発表』において、合格者12,456名のうち、男性が34.3%、女性が65.7%であることからも、現場では多くの女性が活躍していることがわかります。
2.介護福祉士・ケアマネージャーとの違い
介護福祉士は、障がい者や高齢者に対して、施設や自宅で、入浴などの身体介護や、家事などの生活援助を行う仕事です。
また、介護の専門家として利用者やその家族から介護の相談に乗ったり、施設や行政と調整してより良い介護が受けられるようにフォローしたりします。
一方、社会福祉士がかかわるのは、介護を必要とする人に限りません。
障がいや病気で働けない人や、失業や母子家庭などで経済面も含めて生活に困っている人まで、幅広い人たちをサポートします。
そして、相談やアドバイス、関係機関との連絡調整を行います。
つまり、介護福祉士は介護に特化しているのに対して、社会福祉士は高齢者や障がい者の福祉、生活保護や児童福祉など、福祉に関する総合的なコーディネーターの役割を持っています。
ケアマネージャーについても、介護サービスの利用者に対してケアプランの作成を行うことが主な業務のため、社会福祉士とは異なり、障がい者や児童への支援に携わることはありません。
社会福祉士 | 介護福祉士 | ケアマネージャー | |
---|---|---|---|
資格 | 国家資格 | 国家資格 | 都道府県認定資格 |
業務内容 | 高齢者、児童、障がい者への支援や相談援助を行う | 直接介護 身体介助や生活援助、助言などのを行う |
直接介護は行わない ケアプランの作成や給付管理 |
社会福祉士の仕事内容

社会福祉士は、日常生活をうまく送ることが難しい状態の障がい者や高齢者、一人親世帯などに対して、サポートやアドバイスを行う職業です。
1987年に始まった国家資格で、社会福祉施設や病院、官公庁、福祉団体で勤務したり、独立して事務所を経営したりする人もいます。
悩みを抱えている人から話を聞いたうえで、病院や福祉団体の窓口や、経済的問題を解決するための公的貸付制度を紹介するなど、悩みの解決まで支援します。
社会福祉士の仕事内容を、より具体的に見ていきましょう。
1.高齢者の支援
社会福祉士は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設で生活する高齢者や、デイサービスを利用する高齢者の生活全般をサポートします。
また、地域包括支援センターで働くこともあります。
業務内容は、入所に関する手続きや相談の受付や、家族との連絡、ほかの施設や在宅介護へ移行する手伝いもします。
高齢者は、年齢によるハンディキャップがあると同時に、病気や障がいなどを抱えていることが多く、本人や家族の生活環境や希望をヒアリングしながら、適切な支援を行っていきます。
2.子どもの相談援助
病気や怪我で身体や精神的にハンディキャップがある子どもの存在を、医療や教育の関係機関へ伝えて問題解決のために働きかけます。
また、育児放棄や虐待がなされていたり、貧困状態だったりする家庭の子どもへのサポートも大切です。
このほか、非行や不良少年にかかわることもあります。
社会福祉士は、こうした子どもたちへの支援を行う児童相談所や児童養護施設、障がい児入所施設などで働くこともあります。
3.障がいのある人と家族への相談・助言

身体障がい者や精神障がい者、知的障がい者など、さまざまな障がいを持つご本人とその家族に対して、悩みの相談にのってアドバイスします。
この場合は、障がい者支援施設などで生活相談員や支援相談員、作業指導員として働きます。
主な業務内容は、利用者の家族との連絡を行ったり、施設の入退所に関する手続きや関係機関との調整など、障がい者がスムーズに自宅や施設間の移動ができるように支援することです。
4.生活困窮者への支援
障がいや病気、家庭環境や経済的な問題が原因で生活に困窮する人をサポートします。
都道府県の福祉事務所などに勤務して、自宅訪問をしたり、窓口で相談に乗ったりしながら、アドバイスや手続きの手伝いを行うことが一般的です。
支援対象は、母子家庭や高齢者や障がい者、失業者をはじめとする貧困から抜け出せない人になります。
5.地域の住民へのアドバイス
各自治体の社会福祉協議会などで、生活に困っていて、福祉サービスが必要な地域住民の相談に乗ります。
地域包括支援センターや、介護施設、障がい者施設と連携して、市民ごとの事情に合わせた提案を行い、円滑な手続きを支援します。
また、町内会や自治組織といった地域に根ざした活動をしている団体に、福祉の立場からアドバイスやフォローを行う場合もあります。
社会福祉士になるには?

社会福祉士になるためには、国家試験に合格しなければなりません。
試験が実施されるのは、年1回のみです。
また、試験には受験資格が存在しており、学歴や実務経験などによって複数の方法があります。
1.受験資格を取得するためのルート
社会福祉士の受験資格を取得するには、6つのルートがあります。
「福祉系大学卒業ルート」「福祉系短大卒業ルート」「一般大学卒業ルート」「一般短大卒業ルート」「社会福祉主事養成機関ルート」「実務経験ルート」です。
以下ではそれぞれのルートについてご紹介しましょう。
1.【福祉系大学・短大ルート(1)】指定科目を履修
福祉系指定科目を福祉系大学や福祉系短大で履修した人は、卒業後に試験の受験資格が与えられます。
注意点として、福祉系短大で学ぶ場合は、卒業後に一定期間の実務経験が必要です。
- 福祉系大学(4年):指定科目履修
- 福祉系短大(3年):指定科目履修+相談援助実務(1年以上)
- 福祉系短大(2年):指定科目履修+相談援助実務(2年以上)
2.【福祉系大学・短大ルート(2)】基礎科目を履修
基礎科目を福祉系大学や福祉系短大で履修し、大学卒業後、社会福祉士短期養成施設で6ヵ月以上研修を受けた人に試験の受験資格が与えられます。
注意点として、福祉系短大で学ぶ場合は、卒業後に一定期間実務経験が必要です。
- 福祉系大学等(4年):基礎科目履修+短期養成施設(6ヵ月以上)
- 福祉系短大等(3年):基礎科目履修+相談援助実務(1年以上)+短期養成施設(6ヵ月以上)
- 福祉系短大等(2年):基礎科目履修+相談援助実務(2年以上)+短期養成施設(6ヵ月以上)
3.【社会福祉主事養成機関ルート】社会福祉主事養成機関で学ぶ
社会福祉主事養成機関では、社会福祉主事だけでなく社会福祉士の資格も並行して取得を目指すことができます。
社会福祉主事養成機関とは、社会福祉主事の資格取得に向けたカリキュラムを学ぶことができる大学や専門学校などのことです。
このルートの場合、社会福祉主事養成機関にて必要な履修を経た後、相談援助の実務経験を2年、さらに短期養成施設などで6ヵ月以上学ぶことが求められます。
福祉系の養成機関を2度に渡って通学することになりますが、2度目の通学先は1年以上通うことになる「一般養成施設」ではなく、通学期間が6ヵ月以上の「短期養成施設」と定められています。
4.【実務経験ルート】児童福祉司・身体障害者福祉司・知的障害者福祉司などの実務経験を踏む
児童福祉司・身体障害者福祉司・知的障害者福祉司・査察指導員・老人福祉指導主事のうち、いずれかの実務を4年以上経験した後、社会福祉士短期養成施設で6ヵ月以上研修を受けた人に試験の受験資格が与えられます。
5.【一般大学・短大ルート】一般の大学や短大に入学し履修
一般大学や一般短大を卒業後、社会福祉士一般養成施設で1年以上期間研修を受けた人に試験の受験資格が与えられます。
注意点として、一般短大で学ぶ場合は、卒業後に一定期間実務経験が必要です。
- 一般大学等(4年)+一般養成施設など
- 一般短大等(3年)+相談援助実務(1年以上)+一般養成施設(1年以上)
- 一般短大等(2年)+相談援助実務(2年以上)+一般養成施設(1年以上)
6.【相談援助実務経験ルート】相談援助実務を4年以上経験
相談援助実務を4年以上経験した後、社会福祉士一般養成施設で1年以上期間研修を受けた人に試験の受験資格が与えられます。
「福祉系大学で指定科目履修」以外は、短期/一般養成施設を修了後に受験できる
福祉系大学(4年)ルートの場合、「大学で指定科目を履修していたか」、または「基礎科目のみ履修していたか」でルートが分離。
指定科目を履修していた場合だと、そのまますぐに社会福祉士国家試験の受験対象者となります。
しかし、基礎科目のみ履修の場合では、6ヵ月以上短期養成施設などに通う必要があります。
3年制の福祉系短大の場合、指定科目を履修していれば相談援助の実務経験が1年、基礎科目のみ履修していた場合だと2年間の相談援助の実務経験が必要です。
2年制短大であれば、指定科目を履修済みの場合には相談援助の実務経験が2年間必要。
基礎科目のみ履修していた場合には相談援助の実務経験2年に加えて、6ヵ月以上短期養成施設などに通う必要があります。
2.2020年の国家試験合格率は29.3%
2020年2月2日に実施された第32回社会福祉士国家試験は、受験者の総数が3万9,629人、合格者が1万1,612人で、合格率は29.3%でした。
近年、合格率は25~30%ほどで推移し、「受験者の約3分の1が合格する」という状況が続いています。
国家試験の合格基準
合格基準は総得点の60%程度です。
試験は150点満点で構成されているため、例年90点前後が合格点となっています。第32回試験の合格基準点は88点でした。
また、試験問題の科目「18科目群」すべてで、1科目につき最低1問以上正解することも基準となります。
こうした試験の特徴を踏まえて、大学や養成施設での講義のポイントを整理して、理解しておく必要があります。
3.受験料
社会福祉士の受験料は、2020年現在、1万5,440円です。
精神保健福祉士も同時に受験する際は、2つ合計で2万8,140円、共通科目免除で受験するときは1万3,020円となっています。
ただし、今後制度が変更され、受験料の金額が変わる場合もあるため、自分が受験する年度の料金を必ず確認しておきましょう。
4.試験科目の種類
社会福祉士試験の試験科目は合計で18科目群もあります。
試験範囲は広範囲にわたるため、試験対策期間を十分に取る必要があるでしょう。
具体的な科目は以下の通りです。
- 人体の構造と機能および疾病
- 心理学理論と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 福祉行財政と福祉計画
- 社会保障
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
- 社会調査の基礎
- 相談援助の基盤と専門職
- 相談援助の理論と方法
- 福祉サービスの組織と経営
- 高齢者に対する支援と介護保険制度
- 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
- 就労支援サービス、更生保護制度
いずれも大学・短大・養成機関などのカリキュラムで学ぶ内容ですので、各講義・授業においてしっかりと学習しておくことが大切です。
5.試験内容
社会福祉士の試験は、毎年2月上旬に実施されています。
2019年度(第32回)の試験では、2020年2月2日(日)が試験日でした。
合格発表は毎年3月に入ってから行われ、2019年度(第32回)の試験は2020年3月13日(金)より合格者が発表されています。
なお、受験申込書の受付期間は例年9月上旬~10月上旬です。
2019年度(第32回)の試験は、2019年9月5日(木)~10月4日(金)と定められていました。
社会福祉士の給料はいくら?
『平成26年度 介護労働実態調査』によると、介護福祉士の賃金は次の通りでした。
月給 | 26万3,975円 |
---|---|
日給 | 14万9,025円 |
時間給 | 11万761円 |
社会福祉士の月給の相場は22万円から30万円ほど、年収の相場は320万円~550万円ほどです。
一般に、「福祉業界の給与はほかの業界と比べて高くない」と言われていますが、社会福祉士は比較的好待遇と考えて良いでしょう。
国家資格の社会福祉士には月額1万円から3万円程度の資格手当が支給されます(上記で紹介した社会福祉士の給与にはこの資格手当の金額が含まれます)。
また、福祉事務所や児童相談所などで働く場合は、公務員としての手当てが期待できます。
さらに、経験を積んでいけば管理職への道が開けるので、役職に応じた手当も支給されます。
社会福祉士の就職先は?
1.介護施設などの福祉関係施設や事務所
特別養護老人ホームや介護老人保健福祉施設、有料老人ホームなどの高齢者福祉施設では、社会福祉士は「生活相談員」として、施設利用者とその家族などに対して、日常生活に関することや介護サービスの利用法など多様な相談に応じます。
また、相談業務だけでなく、社会福祉士が食事や入浴などの介護を実際に行っているという施設も珍しくありません。
ときには介護報酬の計算のような事務作業も行うこともあります。
生活相談員として働きながらも、介護スタッフや事務スタッフとして施設の運用にかかわることも多いです。
社会福祉士は障がい者福祉施設でも勤務しています。
障がい者福祉センターでの勤務の場合は、障がい者およびその家族に対する相談対応が中心です。
一方、グループホームのような入所施設での勤務の場合は、相談業務に加えて、利用者への介護業務も行います。
2.社会福祉協議会・地域包括支援センター
社会福祉協議会や地域包括支援センターでは、高齢者の方とその家族を対象とした相談業務が主な仕事です。
相談内容は、日常生活のことや経済的なこと、さらに介護のことや介護サービスの利用法についてなど多岐にわたります。
例えば、介護・福祉に関する総合相談窓口である地域包括支援センターにおいては、保健師、主任マネージャー、社会福祉士の3職種が配置され、相互に連携や役割分担を行いながら相談業務を行うのが一般的です。
3.学校
社会福祉士は、普通学校や特別支援学校、フリースクールなどで、「スクールソーシャルワーカー」として働くことも多いです。
学校の先生や保健所、保護者などと連携しながら、生徒が直面している問題、課題の解決にあたります。
その際、子どもの家庭環境や地域環境の特徴を理解するなど、状況に合わせた適切な対応が必要です。
4.医療・司法関係機関
医療機関では医療ソーシャルワーカーとして働き、患者とその家族の経済的、社会的な問題の相談に応じ、社会復帰に向けた支援を行います。
また、司法関係機関では司法ソーシャルワーカーとして勤務。
法の助けを必要としている高齢者や障がい者の相談に応じ、課題解決にあたっています。司法と福祉の両面から、高齢者・障がい者をサポートするわけです。
施設長へキャリアアップも可能

貧困問題やDV、児童虐待といった社会問題が多発するなか、福祉に対するニーズはますます高まるばかりです。
そのため、福祉の相談窓口となる社会福祉士の将来性はとても高いと思われます。
社会福祉士は、自治体の福祉担当部署や社会福祉事務所をはじめ社会福祉協議会など公的機関で働く人もいますが、多くは福祉施設や病院に勤務します。
それゆえキャリアにあわせて、さらに自分の能力やスキルが発揮できる職場を探すことも可能です。
また、勤務先で経験を積んで施設長や管理職といった役職も目指す道もあります。
社会福祉は独立が可能な国家資格です。
社会福祉士事務所を開設してから、相談業務や、ケアマネージャーと連携した総合的なサポートを行うケースもあります。
このように、国家資格で、かつ需要が大きく独立も可能な社会福祉士は将来性が高く、やりがいのある職業と考えて良いでしょう。
悩みを抱えている人の問題解決にやりがい

国家資格である社会福祉士は福祉業界でも高い評価を受けており、さまざまな施設や官公庁で就職して活躍できる仕事です。
社会福祉士は、高齢者はもちろん、経済的に困窮している人や、虐待で傷ついた子どもたちへの支援など、社会的に困っている人たちを積極的にサポートするという有意義な仕事です。
近年、社会福祉に対するニーズが高まっていることからも、仕事の重要度はますます高まっていくことでしょう。
社会福祉士の重要な業務は、身体的、精神的、そして経済的に困っている人たちに手を差し伸べて解決へと導いていくことです。
相談内容はそれぞれの家庭環境や経済的な事情によって千差万別なので、相談者とじっくり向き合って、長い目で継続的な援助をする必要があります。
社会福祉士の立場から福祉サービスや公的サービス、そのほかさまざまな可能性を相手に提示したうえで、一緒になって未来のことを考えていきます。
社会福祉士は仕事をするなかで、相談者の生活基盤や家庭環境が改善するなどの成果が、目に見えてわかったときに大きなやりがいを感じられるでしょう。
また、仕事の内容からも相談者やその家族からとても感謝される仕事です。
日常生活の営みがうまくいくようになった相談者から「ありがとう」「助かった」といった言葉をもらえると、社会福祉士を続ける活力にもなります。
もちろん、ひとりの相談者の人生をサポートするというのは並大抵のことではありません。
そのため、年々変化する福祉制度や介護保険、医療さらに福祉行政の制度内容についても日々勉強の必要があるでしょう。
しかし、こうした努力の積み重ねで管理職や独立を目指したり、ステップアップができる職場に転職したりできます。
人と協力することが得意な人に適性がある

社会福祉士はさまざまな人たちとかかわる仕事のため、コミュニケーション能力の高い人がふさわしいといえます。
また、障がい者や高齢者、子どもなど、立場が弱い環境にいる人たちが多いので、相手の気持ちを汲みとってうまくニーズをとらえる力も必要です。
相手の立場に立った話し方をしたり、言葉や表情から、「どのようにしてほしいのか」「どういった悩みがあるのか」などをしっかりと把握する必要があります。
さらに、社会福祉士は、相談者だけではなく職場はもちろん福祉の関連施設や行政機関、医療機関などと連携して、総合的に相談者をサポートしなければなりません。
そのため、自分がかかわるさまざまな施設や関係機関の動きをしっかり確認することや、制度改正などの最新知識を学ぶ前向きな姿勢が求められます。