認定社会福祉士とは
認定社会福祉士は所属組織の相談援助部門でリーダー的存在として、職場内で主導性を発揮し実習指導などを担当したり、地域や外部機関との窓口となり緊急時や苦情対応を行ったり、他職種と連携して専門性の高い相談援助を実践するなどの役割を行います。
そこで、豊富な実務経験と高度な知識・技術を持つ社会福祉士を認定する制度として設けられたのが「認定社会福祉士制度」です。
この制度では、「認定社会福祉士」と「認定上級社会福祉士」の2種類が存在します。
「認定社会福祉士」は、所属する組織の相談援助部門でリーダー的存在として活躍します。
「障害分野」「高齢分野」「児童・家庭分野」「地域社会・多文化分野」「医療分野」の分野ごとに、他職種と連携して福祉課題の解決に当たります。
「認定上級社会福祉士」は、さらに高度な知識と卓越した技術を持ち、人材育成やシステム構築などの役割も担います。
組織内だけでなく地域全体での活動も期待されている資格といえます。
認定社会福祉士制度におけるスーパービジョン
スーパービジョンとは、新しい職場や職務に就いた職員(スーパーバイジー)が、経験豊かな専門家や管理者(スーパーバイザー)から指導やアドバイスを受けることです。
認定社会福祉士制度におけるスーパービジョンは、スーパーバイザーとスーパーバイジーが1年間の契約を結び、年間6回以上のスーパービジョンを実施します。
社会福祉士としての自己認識の確立や専門職としての職責や機能の遂行、個別支援、組織、地域の実践力の向上などの目的でスーパービジョンが行われます。
この実績を積むことで、認定社会福祉士の取得や更新に必須な単位を取得できます。
認定社会福祉士制度では実践力を体系的に育成するための仕組みが設けられているのが特徴です。
スーパーバイザーの役割
認定社会福祉士制度では、スーパーバイザーとしての資格が設けられています。
スーパーバイザーには以下のような方が登録できます。
- 認定上級社会福祉士
- 認定社会福祉士の更新者
- 認定上級社会福祉士に準じる者
- 社会福祉施設などでスーパービジョンを担当している社会福祉士
- 教員など、スーパーバイザーとしての豊富な経験と実績を持つ者
ここで重要なのは、社会福祉士の資格がなくてもスーパーバイザーとして登録できる点です。
ただし、この場合のスーパーバイジーは限定されます。
認定社会福祉士の資格取得にはスーパービジョンの受講実績が必要不可欠です。
そのため、上記のようなスーパーバイザーによるスーパービジョンが、認定社会福祉士の実践力育成に大きな役割を果たしているのが特徴です。
認定社会福祉士になるには
認定社会福祉士になるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 社会福祉士の国家資格を保有していること
- 所定の分野で5年以上の実務経験があること
- 分野ごとの個別面接試験と論述試験に合格すること
認定社会福祉士は、「高齢分野」「障害分野」「児童・家庭分野」「地域社会・多文化分野」「医療分野」のいずれかの分野ごとに認定を受けます。
認定社会福祉士の認定審査は、日本社会福祉士会が運営する「認定社会福祉士認証・認定機構」が行います。
申請者は、これらの要件をすべて満たした上で審査を受ける必要があります。
資格取得の流れ
認定社会福祉士の資格取得には、主に「通常の取得」と「認定研修による取得」の2つのルートがあります。
通常の取得
通常の取得では、まず社会福祉士の資格を有している必要があります。
次に、相談援助実務経験が5年以上、そのうち認定分野での経験が2年以上などの実務経験を満たしている必要があります。
認定機関が定める研修(30単位)を受講する必要があり、認定申請と審査に合格することで資格を取得できます。
認定研修による取得
上記の通常の取得に加えて、以下の取得方法があります。
- 日本社会福祉士会の現経過措置による取得方法
- 日本社会福祉士会の生涯研修による取得方法
- 日本医療社会福祉協会研修による取得方法
- スーパーバイザー登録者による取得方法
- ベテランルート(時限措置)による取得方法
- 大学院(教育基幹)による取得方法
- 認定社会福祉士認定研修の受講が必要な取得方法
いずれのルートでも、社会福祉士資格と実務経験、認定機関の定める研修の受講が共通の要件となります。
実務経験の要件は複数分野にまたがる場合でも、認定分野で2年以上あれば可能です。
取得に必要な基礎研修科目
認定社会福祉士の資格取得には、通常ルートの場合、以下の研修科目を合計30単位修了する必要があります。
共通専門研修 (10単位)
- ソーシャルワーク理論系科目
- 権利擁護・法学系科目
- 人材育成系科目
- サービス管理・経営系科目
- 地域開発・政策系科目
- 実績評価・実績研究系科目
分野専門研修 (10単位)
- 対象分野(高齢、障害、児童・家庭、医療、地域社会・多文化)の制度動向
- 対象分野の「支援の実際」にかかわる科目
スーパービジョン (10単位)
- 合計10単位の実績が必要
受講費用
認定社会福祉士の資格取得には、新規申請が1科目あたり3万円で更新申請に1万円かかります。
加えて、認証された研修の受講費用については、認定機構による特別な規定はなく、研修の主催者が適正に設定することになっています。
申請時の納入期間は、9月1日から10月10日までとなっています。金融機関が休業日の場合は、翌営業日までが納入期限となります。
このように、認定社会福祉士には申請料や更新料といった一定の費用負担が発生するため、計画的な備えが必要不可欠です。
更新・申請要件
認定社会福祉士の資格は5年ごとの更新が必要です。
更新には以下の条件を満たす必要があります。
- 認定社会福祉士の有資格者であること
- 過去5年以内で認定分野の相談援助実務経験が2年以上あること
- 所定の更新要件研修(10単位)を修了していること
- 所定の実績要件を満たしていること
また、新規申請の際は以下の要件が必要となります。
- 社会福祉士の資格を有していること
- 相談援助実務経験が5年以上(認定分野で2年以上)
- 指定の研修(共通専門研修10単位、分野専門研修10単位、スーパービジョン10単位)を修了
- 日本のソーシャルワーカー団体の正会員であること
認定社会福祉士の給料(年収・月給)
認定社会福祉士の年収は、月収が30万円台前半、ボーナスが60〜150万円程度と見られます。
手取り額では、月収27万円前後、年収600万円〜800万円超とも考えられます。
社会福祉士の平均月収は、20代で20万円台後半から30万円台前半、40代〜50代では30万円台が一般的です。
手取り額は、さらに数万円程度低くなり、27万円程度が目安となります。
認定社会福祉士は社会福祉士の上位資格です。
この専門性が評価されることで、一般的な社会福祉士の平均給与よりも数万円程度高くなっています。
所属する職場の評価や経験年数などによって、給与水準は一定の幅があると言えるでしょう。
他の資格との違い
認定社会福祉士と認定上級社会福祉士との違い
認定社会福祉士
認定社会福祉士は、社会福祉士の資格を持ち、さらに特定の福祉分野で専門的な能力と実践力を備えた専門家です。
彼らは、所属する組織の相談援助部門においてリーダーとしての重要な役割を担い、チームを指導し、プロジェクトの計画や実行を主導します。
高齢者福祉、障害者福祉、児童・家庭福祉といった分野で、高度な実践力を発揮しています。
認定社会福祉士の役割はただ専門知識を活かすことにとどまらず、福祉の質を向上させるために理論と実践のギャップを埋め、利用者に対してより効果的なサポートを提供することにあります。
認定上級社会福祉士
認定上級社会福祉士は、認定社会福祉士の上位に位置する資格であり、社会福祉分野でのさらなる専門性とリーダーシップを求められる専門家です。
この資格を持つ者は、自身の所属組織内だけでなく、地域全体の福祉向上に寄与し、各種協議会や地域プロジェクトにおいても活動します。
彼らの役割は組織内のシステム作りや地域福祉政策の形成に貢献することにあり、その影響は組織の内外に広がります。
認定上級社会福祉士は、他の社会福祉士への教育や指導を行うことで、実務におけるスキルの向上と科学的根拠に基づく実践を促進します。
両者の違いは、活動範囲や期待される役割の広がりにあると言えるでしょう。
認定社会福祉士と 認定医療社会福祉士(認定医療ソーシャルワーカー)との違い
認定社会福祉士と 認定医療社会福祉士(認定医療ソーシャルワーカー)との違いについて詳しくみていきましょう。
下記は両者の違いについて分かりやすく示した表になります。
認定社会福祉士 | 認定医療社会福祉士 | |
---|---|---|
認定機関 | 認定社会福祉士認証・認定機構 | 日本医療ソーシャルワーカー協会 |
資格取得対象者 | 社会福祉士 | 医療ソーシャルワーカー |
専門分野 | 高齢、障害、児童・家庭など幅広い分野での実践力 | 医療分野におけるソーシャルワーカーの専門能力 |
特徴 | 組織内外での地域福祉への貢献が期待される | 統合的実践力、リーダーシップ、スーパービジョン能力などが評価される |
つまり、認定医療社会福祉士は医療分野のソーシャルワーカーに特化した上位資格であり、認定社会福祉士とは異なる位置づけにあります。
一方で、両者共通するのは、高度な知識と技術を持ち、クライアントの支援に大きな貢献ができることです。
このように、認定社会福祉士と認定医療社会福祉士は、対象分野の違いから期待される役割が異なりますが、いずれも社会福祉専門職として高い能力を発揮できる資格と言えるでしょう。
認定社会福祉士の資格を取得するメリット・デメリット
この資格を持つことで、顧客や関係者からの信頼が高まったり、個別支援だけでなく、組織や地域全体の福祉向上に貢献できたり、経験の浅い社会福祉士のスーパーバイザーとしての役割を果たたりなどのメリットがあります。
一方で、5年ごとの更新が必要で、その都度15,000円の費用がかかるというデメリットもあります。年間にすると3,000円程度となります。
認定社会福祉士の将来性
認定社会福祉士登録名簿人数・認定分野
認定社会福祉士は、社会福祉の分野において高度な知識とスキルを有する貴重な人材です。
全国の認定社会福祉士の登録者数は952名(2021年2月時点)で、以下の5つの専門分野があります。
- 高齢分野 (356名)
- 障がい分野 (132名)
- 児童・家庭分野 (61名)
- 医療分野 (275名)
- 地域社会・多文化分野 (128名)
最も多いのが高齢分野、次いで医療分野となっています。
登録者の所属する組織は、市区町村役場、介護施設、社会福祉事務所、医療法人、地域包括支援センターなど、多岐にわたっています。
このように、認定社会福祉士は様々な分野で活躍しており、高い専門性を発揮しているのが特徴と言えます。
キャリアパス
認定社会福祉士は、一般の社会福祉士よりも高度な知識とスキルを持つ、きわめて貴重な人材です。
職場では指導的立場を担うことができ、講師の依頼も受けるなど、大きな活躍の場が広がります。
近年、高齢者・障がい者福祉に対するニーズの高まりから、福祉サービスの内容が細分化・多様化しています。
その中で、地域社会を支える福祉のプロフェッショナルとしての認定社会福祉士への期待は今後ますます高まっていくと考えられます。
認定社会福祉士の資格取得は、社会福祉士としてのキャリア向上にも大きくつながります。
現在、社会福祉士として勤務されている方は、認定社会福祉士への挑戦を視野に入れると良いでしょう。
専門性を高め、より高い舞台で活躍できるチャンスが広がります。