福祉用具専門相談員とは
福祉用具専門相談員とは利用者の心身の状態やニーズを考慮して、適切な福祉用具の選定や使用方法のアドバイスを提供する専門家です。
この職業は、介護保険法に基づき、福祉用具貸与・販売事業所での配置が義務付けられており、常勤換算で最低2名以上の相談員が必要です。
主な役割としては、ケアマネージャーと協力し、利用者の自立を支援する福祉用具の選定や提案があります。
また、利用者やその家族に対して、福祉用具の調整や使用方法を説明し、生活の質の向上を図ります。
福祉用具専門相談員の役割・仕事内容
福祉用具専門相談員は、介護が必要な人々やその家族に、最適な福祉用具の選び方や使用方法をアドバイスする職種です。
介護保険サービスの中で重要な役割を果たし、利用者の状態や生活環境を総合的に分析して、適切な福祉用具を選定します。
この職の主な仕事内容は以下の通りです。
- 福祉用具の選定相談
- 利用計画の作成
- 適合・取扱説明
- 訪問によるモニタリング
これらの業務を通じて、福祉用具専門相談員は、介護を受ける人々の自立支援と生活の質の向上に寄与します。
選定相談
福祉用具専門相談員の選定相談では、利用者の心身の状態や生活環境を詳細に把握し、最適な福祉用具を選び出します。
2018年10月から、福祉用具の貸与額に上限が設定されたことで、相談員は利用者に対し、全国平均貸与価格と当該事業者の貸与価格の両方を説明する義務があります。
これにより、適正な価格での福祉用具提供が求められ、利用者にはさまざまな選択肢が提示されます。
このプロセスは、利用者や家族が気付かないニーズにも対応し、より良い生活の質向上をサポートする役割を果たしています。
利用計画作成
福祉用具専門相談員は、利用者やその家族との深い相談を基に、具体的な福祉用具の利用計画を作成します。
この計画は、ケアマネージャーが作成したケアプランに沿って進められ、利用者の生活改善のために必要な福祉用具を選定します。
計画作成の流れです。
- 利用者と家族からの悩みや希望を聴取
- ケアプランと連携し、適切な福祉用具を選定
- 利用計画書の作成と利用者の同意
このプロセスを通じて、福祉用具のレンタルが決定され、利用者の日常生活の質が向上します。
適合・取扱説明
福祉用具専門相談員は、利用者の実際の使用環境や体の状態に合わせて、福祉用具の適合性を確認し調整します。
このプロセスには、設置後の快適さや介護のしやすさをチェックすることも含まれます。
さらに、安全かつ効果的な使用を促進するために、利用者や家族に対する取扱説明が重要です。
これにより、福祉用具は利用者の生活を支え、より良いケアの実現に貢献します。
モニタリング・訪問確認
福祉用具専門相談員によるモニタリングや訪問確認は、利用者が福祉用具を適切に使用しているかをチェックするための重要なプロセスです。
これには、定期的な点検や交換・修理の必要性の確認が含まれます。
年2回の訪問が義務付けられており、この際には使用状況を評価し、必要に応じて福祉用具の再調整や利用計画の見直しを行います。
この取り組みにより、利用者は常に最適な支援を受けることが可能です。
福祉用具専門相談員になるには
福祉用具専門相談員の資格を取得
福祉用具専門相談員の資格を取得するためには、都道府県知事が指定した研修事業者で提供される「福祉用具専門相談員指定講習」を受講し、最終的な筆記試験に合格する必要があります。
この講習は、通常50時間のカリキュラムで構成され、7日間にわたって行われます。
受講資格は特に設けられていないため、介護未経験者も参加できますが、スクールによっては特定の基準を設けている場合があります。
福祉用具専門相談員講習
福祉用具専門相談員講習は、介護の専門家として必要な知識と技術を習得するためのカリキュラムで構成されています。
この講習は50時間にわたり、各都道府県の指定研修機関で受講することができ、オンラインでの受講も可能です。
講習期間は通常6~8日で、働きながらでも受講しやすい設計となっています。
科目 | 内容 |
---|---|
1.福祉用具と福祉用具専門相談員の役割 |
福祉用具の役割 福祉用具専門相談員の役割と職業倫理 |
2.介護保険制度等に関する基礎知識 |
介護保険制度等の考え方と仕組み 介護サービスにおける視点 |
3.高齢者と介護・医療に関する基礎知識 |
からだとこころの理解 リハビリテーション 高齢者の日常生活の理解 介護技術 住環境と住宅改修 |
4.個別の福祉用具に関する知識・技術 |
福祉用具の特徴 福祉用具の活用 |
5.福祉用具に係るサービスの仕組みと利用の支援に関する知識 |
福祉用具の供給の仕組み 福祉用具貸与計画等の意義と活用 |
6.福祉用具の利用の支援に関する総合演習 |
福祉用具による支援の手順と福祉用具貸与計画等の作成 |
この講習を修了し、評価試験に合格することで、福祉用具専門相談員としての資格が取得できます。
福祉用具専門相談員試験の難易度・合格率
福祉用具専門相談員試験の合格率については、合格率は非公式ながらほぼ100%だと言われています。
この試験は、講習の内容をしっかり理解すれば通過できるよう設計されており、不合格の場合でも、補講やレポート提出、再試験の機会が与えられるため、受講者は資格取得を目指しやすい環境にあります。
講習が免除される国家資格
次のような国家資格を持っていると福祉用具専門相談員とみなされるため、介護保険の指定する福祉用具の貸与や販売を行う事業者で働くことができます。
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 保健師
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 義肢装具士
一方、ホームヘルパー1級・2級や介護職員基礎研修、初任者研修などの資格を持つ場合は、2015年の制度改正以降、福祉用具専門相談員として業務を行うことが認められなくなりました。
このため、福祉用具専門相談員として活動するには、指定講習を受講し、資格を取得する必要があります。
福祉用具専門相談員の職場
福祉用具貸与・販売事業所は最も一般的な勤務地で、法律により2名以上の相談員が必要なため需要が高く、多様な職場選択が可能です。
- 福祉用具住宅改修事業所
- ホームセンター
- スーパーの介護福祉用品売り場
- 生活用品店
- ドラッグストア
- 福祉用具メーカー
- 介護施設
特養や老健などの介護施設でも活躍の機会があります。ここでは福祉用具の知識を活かすだけでなく、介護スキルも身につけることができるため、多面的なキャリア形成が期待できます。
福祉用具貸与・販売事業所
福祉用具専門相談員の主な勤務先は、福祉用具の貸与や販売を扱っている事業所です。
介護保険の法律によってこういった事業所には、福祉用具専門相談員を2名以上配置する義務があるためです。
なお、一般に福祉用具を取り扱う事業所には、介護保険の対象になっている福祉用具のレンタルや販売を行う事業所をはじめ、以下のような場所があります。
- 訪問介護事業所
- スーパーやホームセンター
- 百貨店などの介護福祉用品コーナー
- ドラッグストア
このように、福祉用具専門相談員の活躍の場が広がっている理由は、高齢者や障がい者で介護福祉用品を必要としている人たちが増えていること、家族が介助する際に役立つ福祉用具を実際に店頭に訪れて選びたいという人が増えていること、などが考えられます。
スーパーやショッピングモール、ドラックストアのなかには、介護や福祉用具のコーナーを拡大して、地域の介護のニーズに応えている店舗も多く見られるようになりました。
工務店やリフォーム業者・住宅メーカー
福祉用具専門相談員の大切な業務の1つである、住宅リフォームや改修工事に関する職場でも、専門の知識や経験を活かすことができます。
地域の工務店やリフォーム業者などで、介護を必要とする人たちに適した手すりやバリアフリー化をアドバイスするニーズも高まっています。
ちなみに、工務店や住宅メーカーでさらに活躍の場を広げたいときは、福祉住環境コーディネーターの資格もお勧めです。
福祉用具専門相談員と隣接する分野の知識が問われる資格なので、介護や福祉のさらに専門的な観点から、リフォームプランや改修工事の提案が可能となるでしょう。
福祉用具専門相談員の給料
福祉用具専門相談員の平均年収は一般的に280万円から350万円で、介護職員と比較して大きな差はありません。
しかし、ハローワークのデータや職業情報提供サイトによると、平均年収は381万円とも報告されています。
介護施設や訪問介護職員の給料よりは高い傾向にありますが、ケアマネージャーに比べるとやや低いです。
また、福祉用具の貸与・販売事業所では2名以上の専門相談員の配置義務がありますが、多くの場合他の職種と兼任しています。
大手企業やメーカー関連の会社ではより良い給与や待遇が期待できます。
経験やスキルが向上し、業績が評価されれば給与アップや昇進のチャンスもあります。
さらに、医療・介護関連の国家資格を持っている場合、給与面で有利になることもあるでしょう。
福祉用具専門相談員の仕事がきついと言われる理由
福祉用具専門相談員の仕事がきついと感じられる理由は多岐にわたります。
まず、福祉用具の搬入や組み立ては身体的に負担が大きく、特に古い集合住宅などエレベーターのない場所での作業は、腰痛などの体へのダメージを引き起こすことがあります。
次に、営業面でのプレッシャーも一因です。一部の職場では福祉用具専門相談員に新規契約件数や営業回数のノルマを課すことがあり、営業が苦手な人には大きなストレスになります。
さらに、この仕事は高度なコミュニケーション能力を要求されます。利用者やその家族、ケアマネージャーとの信頼関係を築くことが求められ、特にケアマネージャーとの関係は業務の成功に直結します。
また、高齢の利用者に対して最新の福祉用具の使い方を根気強く教える必要があるため、このコミュニケーションが苦手な人にとっては特に大変な業務となります。
福祉用具専門相談員に向いている人
福祉用具専門相談員に向いている人は、コミュニケーション能力が高く、根気強い方です。
また、営業や重い物の搬入に対しても柔軟に対応できる体力が求められます。
高いコミュニケーション能力
福祉用具専門相談員には、高いコミュニケーション能力が必要です。
利用者やその家族のニーズを的確に理解し、ケアマネージャーや他の介護サービス提供者との信頼関係を築くことが重要です。
これにより、利用者の紹介や問題解決に繋がり、効果的なサービス提供が可能となります。
観察力のある人
福祉用具専門相談員とは、利用者の細かい変化に敏感で、年に2回のモニタリングを通じて家族環境や体調の変動を察知します。
役立つ福祉用具の選定や再選定を行うには、利用者が直面する困難を把握し適切なサポートを提供する必要があります。
この職業は、常に利用者の最適な生活をサポートするための知識と技術が求められる分野です。
最新の情報に敏感な人
福祉用具専門相談員は、最新の介護技術や商品に敏感である必要があります。
福祉用具メーカーの新商品情報を常に追い、利用者の生活をサポートする最適な選択をする必要があります。
この仕事は、展示会参加やインターネットの活用で情報を得て、常に学び続ける意欲が求められます。
興味と知識を更新し続ける人に適しています。
福祉用具専門相談員のやりがい
福祉用具専門相談員のやりがいは、利用者が自宅で自分らしく生活する手助けをすることです。
利用者それぞれの要望に合わせた福祉用具を提案し、彼らの生活を向上させる解決策を見つけ出す過程には、大きな達成感があります。
また、福祉用具専門相談員として活動することで、利用者やその家族との信頼関係を築き、長期にわたる支援を提供する中で人との絆を深めることができます。
適切な福祉用具の提案により、利用者が生き生きと生活する様子を見ることで、その役割の重要性と充実感を感じます。
福祉用具専門相談員のキャリアアップ
資格を取得する
資格を取得することで、福祉用具専門相談員はキャリアアップに繋がります。
「福祉用具プランナー」や「福祉用具選定士」「福祉住環境コーディネーター検定試験」の取得が、知識を深める手段となります。
福祉用具プランナー
福祉用具プランナーは、福祉用具の専門的アドバイス、調整、計画作成を行う資格です。
この民間資格は公益財団法人テクノエイド協会により認定され、福祉用具専門相談員の公的資格とは異なります。
資格取得には、福祉用具専門相談員としての実務経験や介護福祉士、介護支援専門員としての実務経験が必要です。
カリキュラムは座学48時間と実技・実習・認定試験52.5時間の合計100.5時間で、試験合格後に認定証が授与されます。
福祉用具選定士
福祉用具選定士は、福祉用具専門相談員の質を高めるための民間資格で、一般社団法人日本福祉用具供給協会が認定しています。
この資格を取得するには、福祉用具選定士認定研修会を経て筆記試験を合格する必要があります。
研修はA研修(3日間)、B研修(2日間)で構成され、比較的短期間での取得が可能です。
資格取得には、福祉用具専門相談員や介護福祉士の資格保持と2年以上の実務経験が求められます。
福祉住環境コーディネーター検定試験
福祉用具専門相談員にとって、福祉住環境コーディネーター2級の資格は、職務の幅を広げるのに役立ちます。
この資格を持つことで、住宅改修工事に関わる「理由書」の作成が可能になり、利用者の住環境を整えるアドバイスや福祉用具の選定を行えます。
また、福祉住環境コーディネーター検定試験には3級から1級まであり、特に受験資格がなく、直接2級の受験も可能です。
この資格は、利用者の住みやすい環境を提案する仕事に興味のある方に適しています。
福祉用具専門相談員の将来性
福祉用具専門相談員の将来性は非常に高く、多くの福祉用具の種類や介護知識を駆使して、利用者に最適なアドバイスを提供します。
高齢者や障がいを持つ人々が増える中、福祉用具専門相談員の需要はますます高まります。
また、介護保険法により福祉用具貸与・販売事業所では2名以上の配置義務があり、事業所での求人ニーズは安定しています。
さらに、人間的なコミュニケーションが必要なため、AIに取って代わられることはなく、将来的にも安心して活躍できる職種です。