レクリエーションの選び方
レクリエーションは介護職にとって重要な業務の一つ です。
多様なレクがあるため、務めている施設にはどのようなレクがフィットするのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで、レクを選ぶ4つの切り口を紹介します。
- どれぐらい体を動かせるか
- 認知症予防に効果があるか
- 道具を使うか
- 季節を感じるか
それでは運動強度から順に紹介していきます。
どれぐらい体を動かせるか
レク選びは利用者の要介護度に大きく左右されます。
無理なく、ほどよい負荷で楽しめるレクを探しましょう。
体操レク・運動レク

動かないでいると骨や筋肉はどんどん細く、関節は固くなっていきます。無理のない範囲で楽しく体を動かすレクを取り入れることで、長く健康を保つことにつながります。
【誰でも簡単】老人ホームの体操レクで楽しく介護予防
座ってできるレク
利用者の中には歩行が難しい方もいるでしょう。
そこでおすすめなのが座ってできるレクリエーションです。
動作によっては腕だけでなく腹筋背筋、さらには脚の筋肉も使うので、全身運動になります。
代表的なのはスリッパの飛距離を競うスリッパ飛ばしです。
無理なく全身運動をおこなうことができますよ。
ほかにも座ってできるストレッチや体操などもありますよ。
認知症予防に効果があるか
レクは認知症の予防や進行抑止につながります。代表的なものを3つご紹介します。
【レクネタあり】認知症の方向けのレクリエーションで心身機能の維持
脳トレレク

クイズやパズル、計算、漢字問題、塗り絵などに挑戦してもらうことで脳を活性化させます。
幅広い分野の脳トレを行うことでより大きな効果が期待できるので、様々な脳トレレクを実践するとよいでしょう。
【脳を活性化】脳トレ・クイズのレクリエーション
回想レク
回想レクリエーションは、アメリカで導入が始まった認知症対策の心理療法をもとにしています。
子供のころに夢中になった遊びや習慣について話してもらいます。
昔の記憶を思い出しながら話すことで脳細胞のネットワークのつながりを活性化させます。
リラックスレク

施設で犬や猫などの動物を飼育し、動物との触れ合いを楽しんでもらうアニマルセラピーや植物から抽出された香りのある精油を使って、リラックス効果をもたらすアロマテラピーなどがあります。
活動的なレクと併用して行うのがおすすめです。
道具を使うか
じゃんけんやクイズなど身一つでできるものから、輪投げやボーリングのように専用のグッズが必要なものまで、色々なレクがあります。
施設の広さによっては、介護用品や生活必需品以外を置く余裕がないケースもあるかもしれません。
道具なしでできるレクや、場所をとらない小道具で足りるレク、仕事で使う「あのグッズ」を使ったレクを紹介します。
道具なしでできるレク

ラジオ体操などをはじめとする体操レクや、クイズ、散歩など、道具なしでできるレクは沢山あります。
忙しいときはしりとりなど、職員が仕切らなくても実践できるレクがおすすめです。
創作・工作レク
折り紙、絵描き、俳句など紙一つでできるレクです。脳を刺激するという点では脳トレと近いですが、手や指先も動かすことが多いため、身体機能の低下を防ぐ効果も期待できます。
ホワイトボードレク
職場にあることが多いホワイトボードを使うレクです。
関係のあるキーワードを連想していく連想ゲームや、熟語等の一文字を歯抜けにした穴埋めクイズ、マグネットを使った福笑いなどがあります。
工夫次第で新ネタを生み出しやすいのがホワイトボードレクです。
季節を感じるか
季節の移り変わりを大事にしている利用者は多いものです。
正月、ひなまつり、クリスマスなど季節にちなんだ行事は積極的におこなっていきたいところです。
行事レク

クリスマス会、ひなまつりなどの大きなイベントは入居者のご家族や地域の方々も呼んでにぎやかにおこなうこともあり、とても楽しみにしている入居者も多いです。
自宅では行うのが難しいため、こういった行事は老人ホームに入居するメリットの一つと言えます。
【動画でわかる】老人ホームのクリスマス会で盛り上がる職員の出し物
【動画】介護施設で使えるクリスマスレクリエーション
【動画】ひな祭りレクリエーションで介護現場を盛り上げよう
おやつレク
おやつづくりも人気のレクです。
旬の食材を使ったパンやケーキ、季節を感じられる月見団子や桜餅、入居者の方が子供だった頃に流行っていたお菓子などを作ります。
楽しいと感じてもらうだけでなく、調理という作業を通じて手や指を細かく動かすことで、心と体に良い刺激を与えることにもなります。
【かんたんレシピ集】老人ホームのおやつレク・調理レクでおすすめのメニュー
歌・音楽レク
歌ったり演奏したり、音楽にまつわるクイズなどを行ったりするレクリエーションです。
歌うことで心肺機能の向上・改善につながり、リズムにあわせて体を動かせば身体機能維持にも役立ちます。
【試してみよう】老人ホームで行える歌や音楽のレクリエーション集!高齢者のストレス発散や健康増進に効果的!
レクリエーションの目的と効果
レクリエーションの目的
人は誰しも、年齢を重ねてくると身体機能が低下していきます。
自分の体が衰えてきたことを実感している最中、家族や職員に運動指導を勧められても、「高齢だから」「病気だから」と運動に消極的な方が多いです。
しかし、体を動かさずにいると、骨や筋肉、関節の機能低下が発生し、より運動量が減るという悪循環になります。
そんなとき、レクリエーションを通して、楽しく適度な運動を取り入れることは最適な手段だと言えます。
レクリエーションの効果

介護現場ではどんなレクリエーションが行われているのでしょうか。
体を動かすレク、頭を使うレク、指先を使うレク、音楽を使ったレクなど、たくさんの種類のレクリエーションを用意しています。
クイズなど頭を使う遊びや、折り紙など指先を使う遊びをすることで、脳が活性化し、認知症の予防や進行を食い止める効果があります。
また、軽い運動で体を動かすことにより、身体機能維持の効果も期待できます。
孤独を感じている高齢者がレクリエーションにより、周囲の入居者と交流することで、再び社会的活動の楽しさを知るきっかけになるなど、精神状態の改善にもつながりますよ。
レクリエーションは「ただ遊んでいるだけ」と誤解されがちですが、上記の効果をもたらす、大切な役割を果たしています。
レクリエーションの進め方
続いてレクリエーションの初めから終わりまでの一連の流れを紹介します。
スムーズに進めることで参加者の満足度も高まりますよ。
- 準備
- まずはレクリエーションができる場所を作ります。その後、利用者のもとをまわり、「レクリエーションを始めること」「プログラムの内容」などを伝えて誘導します。
- オープニング(導入)
- 利用者の状態はさまざまなので、全員揃うまで時間がかかることがあります。そのときはBGMをかけるなどしてリラックスした雰囲気の中で待ちましょう。全員が揃ったところで簡単に挨拶をします。挨拶があるとメリハリがつくので利用者も取り組みやすくなります。このとき、今回のプログラムの内容を改めて説明します。また、「何時頃に終わるのか」「途中で気分が悪くなったらどうするのか」などを事前に説明することで、利用者の不安がやわらぎます。
- 本番(展開)
- レクレーション中は利用者の行動や発言、表情、ほかの利用者とのコミュニケーションなどを観察します。不安そうにしている利用者には再度ルールを説明したり、障害を持っていること方でも参加しやすいように工夫を施したりします。プログラムを終わらせることではなく、あくまでも「楽しい時間」の創造が目的であることを忘れずにいましょう。
- クローズ(まとめ)
- 今日の感想をたずねたり、次回の予定を説明したりします。最後はオープニング同様、挨拶をして終了します。
レクリエーションを行う際のポイント
1.安全に配慮する

現在、介護の現場では人手不足という現状があります。
そのため、レクリエーションに参加する高齢者に対して、進行や見守りを行う介護職員が不足するケースも考えられます。
参加者が転倒や怪我をしないように介護職員が目を配り過ぎて進行に集中できないと、参加者の集中力も下がってしまいます。
レクリエーションを行うにあたっては無理をせず、身体状況に合った「安全」に配慮するようにしましょう。
たとえば椅子に座った状態でできるレクリエーションを導入すれば、座ったまま行えるので、転倒や怪我のリスクを大きく減らすことができます。
2.自尊心を傷つけない

レクリエーションにはさまざまなメリットがありますが、その一方で、入居者がレクリエーションへの参加を嫌がることも少なくありません。
レクリエーションでは合唱や折り紙などが行われますが、そうした取り組みが子どもっぽい内容に感じられて、自尊心が傷つくという人もいるのです。
また、対戦式のゲームをすると、負けた側の自尊心を傷つけてしまい、そのことが人間関係に悪影響を与えるということも起こり得ます。
子どもっぽく感じられたり、自尊心を傷つけたりしないようなレクを行うことも大事だと言えるでしょう。
3.無理強いはしない

レクリエーションを行う上で大切なのは、参加の呼びかけは行っても、参加を無理強いしないということです。
本人がやりたくないと感じているときは、本人の意思を尊重することが大切です。
参加するよう強く求めると、そのことにストレスを感じるようになり、レクリエーションの場から遠ざかる原因にもなりかねません。
本人が参加してもよいと感じているときに、参加してもらうようにしましょう。
レクリエーション運営のコツ
職員はこんな工夫をしている
レクリエーションによる身体機能の維持や向上、脳の活性化、精神状態の向上などの効果が見直されてきて、レクリエーションで利用者を楽しませることができる職員を求める施設が多くなっています。
レクリエーションによって、利用者に楽しい時間を過ごしてもらうことは、介護の仕事の重要な要素のひとつです。
職員がどのような工夫をしているのか、具体的に見ていきましょう。
仕切るのは最初だけにする
「人前に出て盛り上げるのが苦手」という方に意識してほしいことがあります。
それは「職員が前に出て楽しませるのではなく、利用者が自分たちで自然に盛り上がっていく」レクを目指すべきということです。
利用者たちが自発的にコミュニケーションをとって楽しんでもらえるレクのほうが、脳の活性化や健康促進の面からみても効果的といえるでしょう。
時間配分を工夫する

せっかくレクリエーションを行っても、長すぎて利用者が飽きてしまうこともあります。
それを避けるためには、時間配分を考慮する必要があります。
例えば、レクリエーションの時間が長いのなら、ひとつだけではなく、ふたつのイベントを準備しておくのが良いでしょう。
また、初対面の方同士で間が持たない場合には、アイスブレイクを用意しておくと緊張をときほぐすのに効果的です。
ただし、計画通りに進むとは限らないということも心得ておかなければなりません。
レクリエーションの目的をしっかり伝える
レクリエーションに参加する人たちが楽しむためには、その内容をしっかり考えることが大切です。
このレクリエーションをなぜ行うのか。
利用者に楽しんでもらう、脳トレ、認知症予防のきっかけに、というような目的をしっかり掲げ、レクリエーションの計画を立てます。
一緒に取り組む職員の方も、目的がわかれば、レクリエーションに取り組む意欲が上がります。
大きな声でゆっくりと喋る
高齢者の方の中には、難聴などで耳が不自由な方もいます。
いくら楽しいレクリエーションでも、参加者に声が届かなければ、楽しさは半減してしまいます。
大きな声で、ゆっくりと話すことが大切です。
ときどき、参加者に「私の声が届いていますか?」「早口になっていませんか?」と確認を取ると良いでしょう。
また、常に笑顔で、ポジティブな言葉かけをすることを心がけましょう。
周りの人に協力してもらう
今回のレクリエーションは自分の担当だからということで、1人だけで切り盛りしようとしても、なかなかうまくいきません。
そのような場合は周りの職員に一緒に盛り上げてもらうと良いでしょう。
職員の中には、レクリエーションが得意という人もいるでしょう。
そういう人には積極的にアドバイスをしてもらいましょう。
また、参加者に進行を割り振るのもひとつの方法です。
高齢者の方は自分が頼られたと感じることで、自信を取り戻すことにつながるかもしれません。
ボランティアの力を借りる
デイサービスは利用者の「機能訓練」が主な目的のひとつなので、基本的にはレクリエーションを毎日行っています。
規模が小さなデイサービスでは、レクリエーションの担当になることが多く、職員の負担になることもあります。
そんなときは、施設の近くにある趣味サークル(囲碁、ゲートボール、お菓子作り)などに協力してもらうこともひとつの方法です。
楽器の演奏やダンス、マジックショーなど、いろいろな特技を持つ人が担当することで、今までとは違った楽しいレクリエーションになるかもしれません。
笑顔を心がける

レクリエーションを盛り上げるには、まず笑顔を絶やさないということが大切です。
レクリエーションが苦手だという人の多くは、緊張して表情がこわばっているのではないでしょうか。
自分自身が楽しむことができればベスト。
そのためには、ニコニコと笑うことが大切です。
それだけでその場がかなりリラックスした雰囲気になります。
3.専門資格を取ってみる
最近の介護施設では、高齢者の方がレクリエーションを通じて、日々を楽しく過ごしていくことが、喜びや生きがいにつながると認識されていて、レクリエーションの重要さがますます注目されています。
介護レクリエーションを学びたいという方は増えています。が、「初任者研修」や「実務者研修」といった公的な研修ではレクリエーションについて深く学べません。
近年、施設のレクリエーション活動に生かせる資格として注目を集めているのは、日本レクリエーション協会が認定している「レクリエーション・インストラクター」「福祉レクリエーション・ワーカー」、日本アクティブコミュニティー協会が認定する「レクリエーション介護士」。
こういった民間の資格は、全国で講習会も開催されています。
機会を見つけて参加してみるという選択肢もあるのではないでしょうか。
レクのネタを生み出す方法
好評なレクでも何回か行うと飽きられてしまいます。
仕方なく新しいレクを行おうとしても、うまくルールをわかってもらえず苦労することってありますよね。
そこで、「新しく」「わかってもらいやすい」レクを考えるための発想法、オズボーンのチェックリストを紹介します。
慣れたレクから派生させる
オズボーンのチェックリストとはブレインストーミングの生みの親であるアレキサンダー F. オズボーン(Alexander Faickney Osborn)氏が考案した発想法です。
「転用」「応用」「変更」「拡大」「縮小」「代用」「再配置」「逆転」「結合」の9つの視点から発想を試みて、既存のアイデアから発展させたアイデアを生み出していきます。
例えば「結合」を例にとってみましょう。
とある施設ではボールを使った的あてゲームが好評だったけど利用者たちは飽きてきた様子です。
的を狙って点を稼ぐルールは理解しています。
そこで折り紙を的あてゲームと「結合」して、自分で折った飛行機で的を狙うゲームにするのです。
慣れてきたら飛距離を競うゲームに「変更」してもよいかもしれません。
新しいネタは覚えるのが大変
新しいルールを覚えるのは負担が大きく、参加意欲がそがれてしまうこともあるでしょう。
できればすでに知っているルールをもとに楽しめるゲームにできるとよいですね。