歌・音楽を使ったレクのメリットと効果
老人ホームや介護施設で行う音楽を使ったレクリエーションは、高齢者の心身の健康に多くの効果をもたらします。
歌うことで、心肺機能が向上し、健康を維持することができます。また、懐かしい曲を使えば、過去の思い出が呼び起こされ、脳が活性化されるため、認知症予防にもつながるとされています。
さらに、リズムに合わせて体を動かすことで、身体機能の維持も期待できます。楽しい音楽を仲間と共有することで、生活の質を高めることができるのも大きな魅力です。
音楽療法は、全国の高齢者ケアで広がりつつあり、積極的に取り入れることで、身体機能の維持だけでなく、精神面での回復や生活の質の向上も目指すことができます。
認知症の予防
昔の懐かしい歌を歌うことで、眠っていた記憶が呼び覚まされ、脳が活性化されます。 これが認知症予防に効果的とされています。
音楽に合わせて体を動かすことや、楽器を演奏することでも大脳が刺激を受け、心身の活性化につながります。
さらに、認知症が進んでいる人でも楽器演奏に参加でき、歌詞を思い出す過程が脳のトレーニングとしても機能します。
身体機能の維持・改善
音楽に合わせて体を動かすことは、基本的な日常生活動作(ADL)の維持や向上に役立ちます。歌うことで、口腔機能や肺機能を高めることも期待でき、特に腹式呼吸を意識しながら歌うことで抑うつ感の解消にもつながります。
さらに、楽器演奏も身体機能の維持に効果的です。マラカスやタンバリンなど、音が出しやすく軽い楽器を使うと、多くの高齢者が楽しみながら参加できるでしょう。
気持ちが安定し、生活の質が向上
音楽を活用することで、高齢者の感情を安定させ、ストレスを軽減する効果が期待できます。 例えば、元気な曲を聴けば気分が上がり、静かな曲はリラックス効果をもたらします。
また、合唱や合奏を通じて他の利用者とのコミュニケーションが生まれ、孤独感の軽減にもつながります。さらに、好きな歌を歌うことで、心の満足感を得られ、生活の質が向上します。
コミュニケーションの場になる
音楽レクリエーションは、高齢者同士のコミュニケーションを促進する効果があります。 合唱や曲当てクイズなどを通じて、自然と会話が生まれ、楽しみながら交流を深めることができます。
また、ゲーム形式の活動では、勝負を楽しむことで社会的なつながりを感じ、やりがいを見つけることも可能です。
高齢者向けの音楽レクリエーション
歌うレクリエーション
カラオケ
カラオケは、高齢者向けの音楽レクリエーションとして人気が高く、認知症予防やストレス解消に効果的です。 1人でも複数人でも楽しめ、参加者全員が楽しめる曲を選ぶことがポイントです。
懐かしい曲はもちろん、現在のCMやドラマで使われている流行曲も取り入れると、幅広い年代の利用者が楽しめます。カラオケを通じて、楽しい時間を共有し、気分をリフレッシュしましょう。
童謡・わらべ歌
童謡やわらべ歌は、音楽レクリエーションの中でも特に効果的で、誰もが知っている懐かしい歌を通じて、参加者同士が自然に交流できる場を作り出します。
懐かしい歌を歌うことは、記憶を刺激し、脳の活性化に役立ちます。 これにより、記憶力の維持や向上が期待できるだけでなく、歌うことで体の各器官にも良い刺激を与えます。
また、歌うことで音感やリズム感が鍛えられ、高齢者の感覚を活性化させる効果もあります。介護者は、歌う様子や反応から利用者の体調や心の状態を把握することができるため、定期的に取り入れる価値があります。
誰もが知っている歌を選ぶと、より多くの参加者が楽しむことができ、カラオケ設備を使用して順番に歌うなど、工夫次第で楽しみ方も広がります。
歌合戦
歌合戦は、2つのチームに分かれて別々の歌を歌い競うゲーム感覚で行えるレクリエーションです。
同時に異なる歌を歌う「スタントコーラス」は、脳トレ効果が期待できる活動です。 例えば、『富士の山』と『スキー』や、『早春賦』と『知床旅情』など、コード進行が似た曲同士で合わせると、きれいに聞こえます。
まずは、簡単な曲から始め、ゆっくり歌いながら練習します。慣れてきたら、テンポを速めて難易度を上げていくのがポイントです。
歌合戦を進める際は、各チームにリーダーを決めることで、歌が合いやすくなります。また、歌を一節ごとに交互に歌う形式もあり、対戦形式にすると一層盛り上がります。
うまく歌が合ったときの達成感が、参加者の満足感を高め、楽しい時間を提供します。高齢者の身体機能の維持・向上や、認知機能のトレーニングとしても有効です。
歌を使ったレクリエーション
「もしもし亀よ」8421体操
「もしもし亀よ」を歌いながら行う「8421体操」は、歌に合わせて肩を叩くリズム体操です。
この体操は、楽しみながら歌い、体を動かすことで脳と体を同時に使うため、脳トレ効果が期待できます。 リズムに合わせて肩を叩くことで、身体機能の維持にも役立ちます。
遊び方の手順は以下の通りです。
- 「もしもし亀よ」を歌いながら、右肩を8回、左肩を8回リズムに合わせて叩く
- その後、右肩を4回、左肩を4回叩く
- さらに、右肩を2回、左肩を2回叩く
- 次に、右肩を1回、左肩を1回叩く
- 最後に歌が終わると同時に胸の前で両手を「パン」と叩いて終了
この体操は、リズム感を養いながら、歌うことで楽しく行えるのが魅力です。最初は難しい場合もあるので、スタッフが見本を見せながらゆっくり進めると良いでしょう。徐々に慣れてきたらスピードを上げて行うと、さらに効果的です。
童謡カルタ
童謡カルタは、誰もが知っている童謡を使ったゲーム感覚で行えるレクリエーションです。
童謡の歌詞を聴いて、その最後のフレーズが書かれた札を取り合うことで、楽しみながら脳を刺激し、記憶力を活性化させる効果があります。
遊び方は以下の通りです。
- 童謡の最後の歌詞が書かれた大きな札を準備する
- 例:「きらきら星」なら「きらきらひかる おそらのほしよ」と書かれた札を作成し床やテーブルに並べる
- 歌が流れたら参加者は最後の歌詞を思い出しながらその札を探して取っていく
さらに、札の裏に点数をつけることでゲーム性を持たせ、得点を競う楽しさも加わります。また、歌詞の2番や3番のフレーズを入れて難易度を上げると、ドキドキ感が増してより盛り上がるでしょう。
歌が得意な方に読み手を担当してもらうなど、それぞれの強みを活かすこともできます。
イントロクイズ
イントロクイズは、曲の冒頭部分を聴いてその曲のタイトルを当てるゲームです。
高齢者に馴染みのある曲を使い、曲名を思い出すことで脳が活性化され、記憶力や集中力を高める効果があります。 特に、昔聴いた懐かしい曲を思い出す過程が脳の刺激となり、認知機能の維持に役立ちます。
遊び方としては、まず高齢者が知っている曲を録音したCDや音源を用意し、そのイントロ部分を再生します。曲名がわかったら、参加者が手を挙げて答えます。正解者には拍手を送り、雰囲気を盛り上げましょう。間違えても「惜しいですね」などのフォローで、参加者が楽しく挑戦できるように配慮します。
曲は誰でも知っているものを選ぶと、より多くの人が楽しめるでしょう。
歌いながらボール回し
歌いながらボール回しは、歌を歌いながらボールを回すことで、頭と体を同時に使うレクリエーションです。
この活動では、脳トレ効果とともに、バランス感覚を養うことができます。 特に、異なる大きさや重さのボールを使うことで、体の重心を移動させるため、バランス感覚の向上が期待できます。
遊び方は以下の通りです。
- 10人ほどの参加者が輪になり歌を歌いながらボールを隣の人に回していく。
- 使用するボールは大きさや重さの異なる3種類を準備。
- 歌は「ずいずいずっころばし」など誰もが知っている歌を選び歌詞カードを見ながら進める。
ボールの回す方向を途中で変えることで、頭の切り替えも促し、さらなる脳トレ効果が期待できます。最初はゆっくりとしたペースで進め、慣れてきたらスピードを上げていくのがコツです。
また、体の不自由な参加者には、スタッフがサポートして進行することで、全員が楽しめるレクリエーションとなります。
文字抜き合唱
文字抜き合唱は、歌詞の中から特定の文字を抜いて歌い、その文字を「パン」と手を叩いて代わりに表現するというレクリエーションです。
歌詞の中の文字を抜くことで、歌いながら考える力が求められ、脳トレ効果が期待されます。 さらに、手を叩く動作を加えることで、頭と体を同時に使い、より脳の活性化が促進されます。
遊び方は以下の通りです。
- 全員が見えるように歌詞を大きく書いて掲示する
- 例えば、「七つの子」を歌う際には、「か」の文字を抜き、その部分で「パン」と手を叩く
- 例:「(パン)らーすー、なぜなくのー、(パン)らすはやーまーにー」と進める
- 他にも、「春が来た」の「た」や「く」を抜いたり、「黒田節」の「の」を抜いて歌うバリエーションもある
進め方としては、特定の文字を抜くことが難しい場合もあるので、最初はゆっくりと進行し、参加者が慣れてきたらスピードを上げて楽しむのがポイントです。歌詞カードを用意することで、参加者全員が歌詞を確認できるようにすると良いでしょう。
また、間違えてしまったときは、参加者同士がつられてしまわないように注意が必要です。難易度が適度に高いため、成功したときの達成感が大きく、参加者にとって充実した体験となります。
リズム体操
リズム体操は、音楽に合わせて体を動かすレクリエーションで、身体機能の向上やストレス発散に効果的です。
『365歩のマーチ』や『幸せなら手をたたこう』など、馴染みのある曲に合わせて体を動かすことで、楽しく運動できます。
座りながらできる体操を取り入れると、体力に自信のない高齢者でも参加しやすく、みんなで一緒に楽しむことが可能です。
曲名神経衰弱
曲名神経衰弱は、歌詞カードと曲名カードを合わせるゲームです。
トランプの神経衰弱のようにカードをめくることで、記憶力を鍛えながら楽しめる音楽レクリエーションです。 参加者は、順番に2枚のカードを引き、歌詞と曲名が一致すれば、その歌を歌います。
歌を歌うことで、脳の活性化が期待でき、さらに手拍子を加えることで、場の雰囲気がより一層盛り上がります。
もし、参加者が知らない曲を引いた場合は、みんなで歌うなど、全員が楽しめる工夫をすると良いでしょう。
楽器を演奏を演奏するもの
楽器を演奏する
楽器を演奏する音楽レクリエーションは、身体機能の向上とともに、集中力を養う効果があります。
楽器の演奏は、感覚を刺激し、脳を活性化させるため、認知症予防にも役立ちます。 仲間と息を合わせて演奏することで、一体感や達成感を得られ、施設内のコミュニケーションも活発になります。
使用する楽器は、軽くて持ちやすく、誰でも音を出しやすいものがおすすめです。鈴やタンバリン、カスタネットなど、振ったり叩いたりすれば簡単に音が出る楽器が良いでしょう。
楽器がない場合は、手拍子や足踏みでリズムを刻む「ボディパーカッション」も有効です。演奏を楽しむことで、高齢者が孤独感を和らげ、生活の質向上にもつながります。
レクリエーションの進め方
レクリエーション準備と進め方
目的の明確化 | 参加者の体力や興味を考慮してレクリエーションの目的を決める |
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準備と環境整備 | 必要な道具や材料を準備し参加者が安全に楽しめる環境を整える。椅子の配置や参加者が移動しやすいスペースを確保する。 |
ウォームアップ | 怪我の防止のため、軽い体操や深呼吸を行い体をほぐしてから始める |
レクリエーションの実施 | プログラムに沿って参加者が楽しく参加できるよう無理なく進行する。 |
休憩と水分補給 | 途中でこまめに休憩を挟み水分補給を促す。特に高齢者は体力が続かない場合もあるので無理をさせないようにする。 |
当日の進行のポイント
司会進行を担当する職員は、曲に関連した質問を投げかけて、場を盛り上げましょう。
「この曲は何歳のころに聴きましたか?」や「どんな思い出がありますか?」といった質問で、参加者同士の会話を促進します。
これにより、利用者同士の交流が深まり、レクリエーションの満足度が高まります。
音楽レクリエーションをする際の注意点・コツ
全員が分かる曲を使用する
音楽レクリエーションでは、できるだけ全員が知っている曲を選ぶことが大切です。
知らない曲を使用すると、一部の参加者が疎外感を感じる可能性があります。 また、歌詞を覚えていない方もいるため、事前に歌詞カードを準備しておくと良いでしょう。
参加者に声掛けをする
参加者が音楽レクリエーションに積極的に参加できるよう、個別の声掛けが重要です。
「△△さんも一緒にやってみませんか?」や「何を歌いたいですか?」といった声掛けで、参加者が安心して輪に入れるようにしましょう。
全員がルールを理解しているか確認し、恥ずかしがっている人にも配慮します。また、「せーのっ!」や「うまいですね!」といった全体への声掛けで、場を盛り上げることも効果的です。
参加者の身体機能に合った内容にする
音楽レクリエーションを成功させるためには、参加者の身体機能に合わせた内容にすることが大切です。
激しい動きが必要な活動は、体を動かすのが難しい方には負担が大きくなるため避けましょう。 さらに、曲のキーやテンポを調整し、誰もが歌いやすいように工夫することも重要です。
手本を見せる
歌や楽器を使ったレクリエーションでは、介護職員が手本を見せることが大切です。
車椅子の方や立位が難しい方もいるため、座ったままでできる動作のお手本を示すと、全員が参加しやすくなります。
また、利用者の緊張を和らげるために、最初に失敗例を見せるのも効果的です。大きな声で楽しそうに行い、動作もゆっくりと示すことで、安心感を持って参加してもらえます。