歌・音楽を使ったレクのメリットと効果

老人ホームや介護施設で人気のレクリエーションのひとつが歌や音楽を使ったレクリエーションです。
歌を歌うことで肺を使うので、心肺機能の向上・維持につながります。
また、懐かしの音楽を使うことで昔を思い出して気持ちが若々しくなったり、精神を安定させたりする効果も。過去を思い出して言葉にすることで脳を活性化する「回想法」のエッセンスも入っているので、認知症予防になるという報告もあります。
リズムを感じながら体を動かせば、身体的な機能維持にも繋がりますし、仲間と楽しい音楽に触れることで、生活の質が向上するという効果もあります。
こうした音楽の持つ特性を利用した音楽療法は、高齢者のケアにおいて全国でも広がりつつあります。
心身の回復や機能維持、生活の質の向上などを図るケア療法として多くの効果があるため、ぜひ積極的に音楽を使ったレクリエーションを取り入れてみましょう。
1.認知症の予防が期待できる
認知症予防や症状の進行を抑えるための心理療法として、懐かしい写真などを見ながら、昔の思い出について語り合って脳を活性化させる「回想法」があります. これに音楽療法を合わせた「音楽回想療法」が、認知症予防に高い効果を持つと言われています。
昔流行した懐かしい歌を聴いたり、歌ったりすることにより、眠っていた記憶を呼び覚まし、脳を活性化させられるというわけですね。
また、音楽のリズムにのること、音楽に合わせて指や手を使うことでも、大脳は大きな刺激を受け、心身の活性化につなげることができます。
2.身体機能の維持・改善にもつながる
音楽に合わせて体を動かすことで、基本的日常生活動作(ADL)の向上を目指すことができます。
基本的日常生活動作(ADL)とは、日常生活で必要な最低限の行動のこと。
移動や食事、更衣、排泄、入浴、整容などを指します。
大きな声を出して歌うことは、口腔機能や肺機能を高めるうえで有効です。
また、腹式呼吸をしながら、姿勢を正して声を出すことで、抑うつ感を発散することにもつながるでしょう。
人前で歌うことが苦手な人は、居室でカラオケを楽しむというのもひとつの方法です。
居室でならリラックスして声を出せるので、歌うことで得られる身体機能の維持や改善効果を十分に期待できます。
3.気持ちが安定し、生活の質が向上する

気分が沈んだときには活性効果のある音楽を、イライラしているときは鎮静効果のある音楽を用いることで感情をコントロールすることができ、情緒を安定させられます。
また、同年代同士で合奏や合唱をすることでお互いにコミュケーションが生まれるようになると、孤独感がやわらいでいくでしょう。
さらに、好きな歌を歌うことは心の快感や満足感につながります。音楽により深く興味を持っていけば、日々取り組むことで満足感を得る機会が増えるので、生活を充実させることができます。
高齢者向けの音楽レクリエーション9選
1.「もしもし亀よ」8421体操
概要

誰もが知っている童謡、「もしもし亀よ」を歌いながら、リズムに合わせて自分の肩を叩いていく体操です。
歌って楽しいだけでなく、頭と体を同時に使うことができるので、脳トレ効果も見込めるレクリエーションです。
- <遊び方の手順>
- 「もしもし亀よ」を歌いながら、右肩を8回、リズムに合わせて叩きます。
- 右肩を叩いたら左肩を8回。
続けて「右肩4回、左肩4回、右肩2回、左肩2回、右肩1回、左肩1回」という風に、左右の肩を叩いていきます。 - 最後は、歌が終わると同時に両手を「パン」と胸の前で叩きましょう。
- 歌う、リズムに乗る、数を数えながら肩を叩くを同時に行うことで体と頭を活性化します。
進め方のコツ
最初は難しいと思いますので、スタッフが向かい合わせになって見本を見せながらやってみましょう。
ゆっくりはじめて、慣れてきたら徐々にスピードを上げていくなど、何回かやってみるといいですね。
2.童謡・わらべ歌を歌う
概要

音楽を取り入れたレクリエーションで最も基本的なものは、歌を歌うことです。
懐かしい歌を歌うことは、昔を思い出すことに繋がります。
こうした行動は脳を刺激し記憶力などを活性化するだけでなく、音感やリズム感などの感覚を使うことで様々な器官を刺激することにも繋がります。
ケアする側としては、歌う声量、音を聴く様子、歌詞の理解などから高齢者の健康状態を読み取ることもできます。そのため、介護施設や在宅介護では、定期的に取り入れたい時間です。
- <遊び方の手順>
- 準備するのは、歌詞カードとカラオケ音源や歌の入ったCDなど。
- 歌詞を見ながら歌ってもらってもいいですし、何回か歌詞カードを見ながら歌った後に、一部を空白にした歌詞カードを渡して、覚えているかどうかチェックしてしてみることもできます。
- 誰もが知っている選曲の方が多くの方に参加してもらえます。また、カラオケ設備などを使って順番にマイクを回していってもいいでしょう。
進め方のコツ
人前で歌うことが苦手な高齢者の方には、無理強いせずに、本人の意志を尊重しましょう。
音楽は、聴いているだけで心が癒やされます。
リズムに乗る、情景を思い浮かべるなどといったことだけでも利用者の方の心にプラスの効果をもたらします。
3.童謡カルタ
概要

高齢者の方なら誰もが知っているような童謡を使ったカルタをしていくレクリエーションです。歌を聴いて、その童謡の最後の歌詞が書いてある札を取り合います。
札の裏に点数を書くことで、ゲーム的な要素も加わり、楽しみながら頭と体を使うことができます。
- <遊び方の手順>
- まずは、童謡の最後の歌詞が書かれた札を用意します。
(例:「きらきら星」なら「きらきらひかる おそらのほしよ」と書く)
高齢者の方も見やすく、取りやすいように、段ボールや画用紙で大きめの札を用意しましょう。 - 難易度を上げるために、いくつかの札には歌詞の2番や3番などと書いておくとレクリエーションにもドキドキ、ハラハラの要素が加わり楽しめます。
- まずは、カルタを床やテーブルに並べ、順番に読み手が歌っていきます。
参加者は、最後の歌詞を思い出しながら札を探し取っていきます。
進め方のコツ
カルタの札の裏に得点を書き、最後に取った札の合計点で競い合うようにすれば、単純に取った枚数ではなく点数で勝ち負けが決まるので、最後まで勝負の行方が分からずスリルが増します。
歌の好きな高齢者の方に順番に読み手になってもらうなど、高齢者の方それぞれの得意分野を活かすこともできます。
4.イントロクイズ
概要

高齢者ならだれもが知っているような曲の冒頭部分(イントロ)を流し、その曲のタイトルを当ててもらいます。
一番早く曲名をあてた人が勝ちとなります。
参加者はその曲がどんなタイトルなのか、なるべく早く判断する必要があります。
そのため、集中力を養う効果があります。
また、ずっと前に聞いた曲を思い出しながら考えるので、脳が活性化されます。
遊び方の手順
高齢者になじみの深い曲が録音されているCDやテープと、それを再生する機械を用意します。
そして曲の冒頭部分を流します。
曲名がわかった方が挙手をして、司会者は一番早く手を挙げた方を指名し、タイトルを当ててもらいます。
最初に挙手をした方が間違っていれば、次に手を挙げた方を指名します。
進め方のコツ
曲は誰でも知っているものを選びます。
曲のタイトルが正解だった場合は、みんなで拍手をして、その場の雰囲気を盛り上げましょう。
たとえ間違って答えても、「惜しい」「次は頑張ってくださいね」などと声をかけると、間違えて気恥ずかしい気持ちも軽減するでしょう。
5.歌いながらボール回し
概要

まず、10人ほどの人数で輪になり、歌を歌いながら、大きさや重さが異なる3種類のボールを隣の人に回していきます。
感触の違うボールを使うと体の重心を移動させることが必要になるので、バランス感覚を養うことができます。
また、歌う、ボールを送るという2つのことを同時に行うことで、頭と身体を使い、脳トレ効果も期待できます。
遊び方の手順
用意するものは、大きさや重さが違う3種類のボールと「ずいずいずっころばし」の歌詞カード。
円状に配置した椅子にかけ、「ずいずいずっころばし」を歌いながら、3つのボールを順に隣の人に送ります。
ボールを送る向きは、右回り、左回りと交互に行います。
「ずいずいずっころばし」の歌詞カードを見ながら歌う、大きさが違う3つのボールを隣の人に渡す、という動作を同時に行い、頭と体を活性化します。また途中でボールを送る向きを変えることも効果的です。
進め方のコツ
慣れないうちはゆっくり歌って、それに合わせてゆっくりボールを送るようにします。
3つのボールを隣の人に渡すということは、身体が不自由な方にとっては困難かもしれません。
その場合は、スタッフが手伝うと良いでしょう。
6.文字抜き合唱
概要

歌を歌うときに、決められた1文字か2文字を歌わず、代わりに「パン」と手を叩く、というゲームです。
歌っているときに、歌詞の中の特定の文字を抜くのはけっこう難しく、頭を使います。
また、手を叩くという動作を加えることにより、さらに脳を刺激し、活性化するという効果が期待できます。
遊び方の手順
歌詞がわからない方もいるので、歌詞を大きく書いて、みんなが見えるところにあらかじめ掲示しておくと良いでしょう。
例として、「七つの子」を歌う場合、「か」抜きとし、「か」のところは歌わずに、「パン」と手を叩きます。
「(パン)らーすー、なぜなくのー、(パン)らすはやーまーにー」という具合に歌います。
ほかにも「春が来た」の「た」「く」抜き、「黒田節」の「の」抜きなどにも挑戦してみてください。
進め方のコツ
決められた特定の文字を抜いて歌うということは、高齢者には少し難しいかもしれません。
歌詞カードのようなものがないと、なかなか歌えないので、歌詞を大きく書いた紙を用意しておきます。
何人かで歌うときは、ほかの人が間違えた場合、自分もつられて間違えないよう注意しなければならないので、参加者は気を抜けません。
ほどほどの難易度があるので、参加者は成功した際に、達成感や充実感を味わうことができるでしょう。
7.楽器を演奏する
概要

音楽レクリエーションとして楽器を演奏します。
身体機能の向上はもちろん、曲をよく聴いて合わせることで、集中力も養われます。
また、楽器の演奏は人間の感覚を刺激し、脳を鍛えます。
仲間と呼吸を合わせて楽器を演奏することで、高揚感や一体感を得られます。
それは施設での人間関係にも良い影響をもたらします。
また、孤独を感じやすい高齢者の方も社会とつながるきっかけになり、結果、生活の質の向上が期待できます。
遊び方の手順
使用する楽器は軽くて持ちやすいことや、演奏が簡単で誰にでも音が出しやすいことを基準に選ぶと良いでしょう。
もし楽器がない場合でも、「ボディパーカッション」という方法があります。
手拍子や足踏みなど、自分の体を叩いてリズムを刻み、その音の重なりで音楽を奏でることができます。
進め方のコツ
たとえ楽譜が読めなくても、仲間と呼吸を合わせて手拍子を取ったり、リズムを刻んだりして楽しめます。
高齢者の方ができる範囲で、演奏に加わってもらいましょう。
仲間と一緒に演奏すれば、達成感や一体感を味わうことができるでしょう。
8.曲名神経衰弱
概要

歌詞とタイトルを書いたカードを裏返しにして並べ、トランプの神経衰弱の要領で、カードをめくるというゲームです。
歌詞カードとタイトルが合えば、その歌を歌ってもらいます。
トランプの神経衰弱ゲームのように、カードをめくるときのワクワク感や、どこに目的のカードがあるかという記憶力を刺激するなど、脳の活性化の効果があります。
また歌詞カードを引き当て、歌う楽しさを味わえます。
遊び方の手順
用意するものは、歌詞やタイトルを書いたカードです。
カードを裏返しにして、適当に並べます。
そして1人1人、順に2枚のカードを引いてもらいます。
めくった歌詞カードとタイトルが合えば、その歌を歌ってもらいます。
進め方のコツ
もし当てた歌が、知らない歌だったり、人前で歌うことが苦手だったりした場合は、みんなでその歌を歌いましょう。
本人は歌えなくても、仲間が歌うのを聴いているだけでも、心は癒やされ、仲間との連帯感も高まってきます。
曲によって手拍子などを加えれば、その場の雰囲気もぐっと盛り上がります。
9.歌合戦
概要

2つの違う歌を同時に歌います。
このような歌い方を「スタントコーラス」といいます。
別々の歌とはいえ、コード進行がよく似た歌ならば、音程とテンポを合わせることで、きれいに聴こえます。
スタントコーラスに合う歌としては以下を参考にしてみてください。
- 「富士の山」と「スキー」
- 「早春賦」と「知床旅情」
- 「証城寺の狸」と「かたつむり」
- 「雨降り」と「鳩ぽっぽ」
- 「花咲じじい」と「金太郎」
- 「春が来た」と「雪やこんこ」
違う歌を相手に合わせるというのはけっこう難しく、脳トレ効果があります。
遊び方の手順
2チームに分かれ、それぞれ別の歌を歌います。
まずは難易度が低い歌から歌ってみましょう。
最初はゆっくり歌い、慣れてきたら徐々にスピードをあげて歌います。
「富士の山」と「スキー」は比較的合わせやすいです。
「早春賦」と「知床旅情」の組み合わせは少し難しいようです。
進め方のコツ
別々の歌を同時に歌うのは難しいので、それぞれに歌をリードするリーダーを決めておきましょう。
うまく合わせることができれば、とてもきれいに聞こえます。
うまく歌うことができると、高齢者の方も満足感を得られ、楽しい印象が残るでしょう。