介護業界の給料相場
介護職とひと括りに言っても、職種や年齢、立場によって給料はさまざま。
まずは介護業界の基礎的な給料データから見ていきましょう。
都道府県別の平均給料
介護職の給料は地域によって大きな差があり、首都圏が高く地方では低い傾向にあります。
介護報酬は地域ごとに8段階の加算率が設定されており、この加算率は全国の平均賃金を基に算出されます。
平均賃金と連動して介護職の賃金も都心部と地方で差が生じています。
給料相場の高い都道府県TOP3
1位 東京都 400万円、2位 京都 399万円、3位 神奈川県 391万円となっており、関東・関西圏の都府県が上位を占めています。
給料相場の低い都道府県TOP3
1位 沖縄県 292万円、2位 宮崎県 300万円、3位 島根県 302万円となっており、1位と47位では100万円以上の開きがありました。
しかし、中央値を見ると339万円となっており、都心部が突出して高い傾向があります。
人気職種の雇用形態別の平均給料
資格・職種名 | 雇用形態 | ||||
---|---|---|---|---|---|
正社員 (月給) |
契約社員 (月給) |
パート・ アルバイト (時給) |
|||
介護職 | 介護福祉士 | 19.7~ 23.8万円 |
17.7~ 20.4万円 |
1,067~ 1,251円 |
|
介護職員 初任者研修 |
18.6~ 22.7万円 |
17.1~ 19.5万円 |
1,075~ 1,283円 |
||
介護福祉士実務者研修 | 19.6~ 23.3万円 |
17.7~ 20.4万円 |
1,099~ 1,321円 |
||
ケアマネージャー | 21.8~ 25.9万円 |
20.8~ 23.9万円 |
1,247~ 1,403円 |
||
看護師 | 准看護師 | 21.7~ 26.8万円 |
20.6~ 24.1万円 |
1,347~ 1,536円 |
|
ソーシャル ワーカー |
社会福祉士 | 20.5~ 25.1万円 |
19.3~ 22.0万円 |
1,121~ 1,262円 |
|
リハビリ 専門職 |
理学療法士 | 23.5~ 28.5万円 |
22,2~ 26,0万円 |
1,535~ 1,774円 |
正社員の給料
介護福祉士を例にとってみてみると、正社員の場合19.7~23.8万円となっています。
正社員は長期的に安定して働ける点が魅力です。
また、毎月の給与以外に賞与や退職金が支給されるほか、福利厚生や研修制度も整い、昇給・昇進制度も整備されていることが多く、非正規職員に比べると待遇・教育面が充実しています。
契約社員の給料
契約社員では17.7~20.4万円です。
契約社員は給与額や福利厚生が正社員に近い一方で、残業や転勤などがほぼないので、プライベートと仕事の両立がしやすい点が魅力です。
パートアルバイトの給料
有資格者ということもあり一般的な仕事よりも給与額は高めです。
平均時給は1,067~1,251円です。
パート・アルバイトで働くことの最大の利点は、働く日時を自分で自由に決めることができる点です。
「平日の午前中だけ働く」「週末は家族との時間を過ごしたいから休みたい」など、自分の都合に合わせた働き方が可能です。
【一覧】資格・職種別の平均給料
【一覧】介護サービスの種類別の平均給料
![介護職員の月収・年収のイメージイラスト](https://media.job.minnanokaigo.com/unique/image/0dc8fab2-70d6-4bc9-aa74-3729be916b8c.png)
介護サービスの種類別の給料TOP5
順位 | 施設名 | 平均給与額(常勤) |
---|---|---|
1 | 特別養護老人ホーム | 34万5,720円 |
2 | 介護老人保健施設 | 33万9,390円 |
3 | 訪問介護 | 32万4,690円 |
4 | 特定施設入居者生活介護 | 32万3,660円 |
5 | 介護療養型医療施設 | 31万7,040円 |
介護サービスの種類別の月給
介護サービスの種類 | 就業形態(月給) | |
---|---|---|
常勤 | 非常勤 | |
特別養護老人ホーム | 34万5,720円 | 19万6,970円 |
介護老人保健施設 | 33万9,390円 | 28万6,970円 |
介護療養型医療施設 | 31万7,040円 | - |
訪問介護 | 32万4,690円 | 21万4,450円 |
デイサービス | 28万8,880円 | 17万0,780円 |
特定施設入居者生活介護 | 32万3,660円 | 23万0,500円 |
グループホーム | 29万6,180円 | 19万4,540円 |
施設サービスの給料
ここからは各サービスごとの概要と、平均給与についてみていきましょう。まずは施設で提供するサービスから。
特別養護老人ホーム
社会福祉法人や地方自治体が運営している特別養護老人ホーム。利用者からは比較的低料金で手厚いサポートが受けられるので、人気がある施設です。
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると特別養護老人ホームの平均給与は 34万5,590円となっています。
平均年収は約410万円で、介護事業所の中で最も高い給料相場となっているため、魅力的です。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は、「病院から退院してすぐに自宅での生活に戻るのは不安…」という方が、リハビリに取り組んで在宅復帰を目指すための施設です。
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると介護老人保健施設の平均給与は 33万8,390円となっています。
年収ベースで平均約392万円です。
介護療養型医療施設
病院に併設されていることが多く、運営元も医療法人であることが多い介護療養型医療施設(療養病床)。
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると介護療養型医療施設の介護職の平均給与は 28万7,070円となっています。
年収は平均約377万円。一般に、地方よりは都会、規模が小さい施設よりは大きい施設のほうが高い傾向があります。
ちなみに、より生活の場としての機能を充実させた施設である介護医療院が登場したことで、介護療養型医療施設は2012年以降新設されていません。現在、経過措置・移行期間が2024年3月31日までと定められており、それまでに介護医療院に転換されていく予定です。
グループホーム
認知症の高齢者が、専門スタッフの援助を受けつつ5人から9人のユニットで共同生活する介護福祉施設「グループホーム」。
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によるとグループホーム(認知症対応型共同生活介護事業所)の平均給与は29万1,460円となっています。
デイサービスよりはやや高いものの、介護老人福祉施設や介護老人保健施設、訪問介護事業所などと比べると、やや低い傾向があります。
特定施設入居者生活介護
特定施設入居者生活介護とは、行政によって定められた基準をクリアした施設のこと。
行政に認められるレベルの設備、運営基準などがなければ、特定施設入居者生活介護の施設を名乗ることができません。
特定施設入居者生活介護の介護職員の給料相場は、常勤の場合で月収32.2万円になります。
施設サービス以外の給料
続いて施設サービス以外のサービスについても見ていきます。
デイサービス
![介護職員の月収・年収のイメージイラスト](https://media.job.minnanokaigo.com/unique/image/ad28103e-ecb2-4077-8241-b25b3bbc1e95.png)
デイサービス事業所に通い、入浴や食事、そのほか日常生活の介護を受けられるデイサービス。
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によるとデイサービス(通所介護事業所)の平均給与は 27万8,180円となっています。
また、パートの時給は1,000円から1,600円前後が相場です。
デイサービスの施設の規模やエリア、年齢や経験などによって給料は異なります。また、給料には基本給のほか各種手当、ボーナスも含まれるので、実際の手取りは先ほど紹介した相場の8割程度です。
訪問介護
介護士などの資格を取得したプロを自宅に招き、各種サービスを受ける訪問介護。
厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると訪問介護事業所の平均給与は 31万4,590円となっています。
こちらの給料についても、勤務先の規模や種類によって差があります。
介護職の給料が上がる可能性
ここまで介護職の給与について見てきましたが、今後介護職の給与はこの先あがっていくのか。気になるところですよね。
介護職の給料は低いのか
実際のデータを確認すると、「介護職=給料が安い」といった一般的なイメージとちがって、それなりの待遇を得ていることがわかります。
しかし、身体的にも精神的にもハードな介護職の仕事内容から考えると、低いと感じるかもしれません。なぜ介護職の給料はアップしづらいのでしょうか。
介護報酬が一定のため上がりにくい
介護施設や事業所は介護報酬を収入源として職員への給料を支払っています。原資である介護報酬の金額は国が定めており、自由に設定することができません。
そのため、介護施設は収入を大きく増やすことが難しく、給料も上がりにくい構造になっているのです。
介護職の給料アップは国策
介護人材の不足が社会問題となって以来、介護職の賃金アップは国や介護業界が推進しているテーマのひとつです。
岸田政権が掲げる「新しい資本主義の実現」の政策目標のなかにも、介護職の待遇改善が公約となっており、具体的に以下のような施策に取り組んでいます。
ベースアップ等支援加算
2022年2月から9月にかけて、介護職の給料を現在の収入から3%程度引き上げる措置が実施さ話題になりました。
月額ベースで9,000円となります。2022年10月以降も介護職の給与を継続的に底上げする目的で、ベースアップ等支援加算制度が創設されました。引き続き月給ベースで約9,000円、収入を約3%アップすることを目指します。
なお、ベースアップ等支援加算は、加算総額の3分の2以上を基本給、または毎月固定で支払われる手当として給与に反映することが定められています。
特定処遇改善加算手当
ベースアップ等支援加算のほかにも、介護人材の確保のため、国はさまざまな待遇改善の制度を整備してきました。
2019年10月に創設された「特定処遇改善加算手当」もその一つです。勤続10年以上のキャリアがある介護福祉士の給料を約8万円アップする制度です。
施設側が一定の条件をクリアした場合に介護報酬として請求できるため、介護職と事業所にそれぞれ効果のある施策といえます。
介護人材の慢性的な不足は社会問題でもあり、国や介護業界ではさらなる待遇改善を目指して制度の拡充を続けることが期待されています。
8年間で13%上昇した実績もある
介護人材の確保のためのさまざまな政策が続けられるなか、ここ最近の介護職の給与は上昇傾向が続いています。2012年の介護職の平均年収は約310万円でしたが2019年には約350万円になっており、8年で13%アップしています。
介護事業所は人材の確保が大きな課題となっている今、売り手市場の介護業界では今後も給与アップが期待されています。
介護職の給料については、介護施設での勤務経験のある芸人『オカリナさん』と学ぶ連載企画「カイゴのおカネクラブ」で、時事的な内容も含めて詳しく取り上げているので、気になる方はぜひご覧ください。
介護職員が給料を上げる方法
![介護職員が給料を上げられるポイントのイメージイラスト](https://media.job.minnanokaigo.com/unique/image/f75f48a1-3f1e-46d0-a135-4c47a13bca47.png)
介護職員が、給料をアップさせるための代表的な方法は、「資格を取得する」「管理職などの役職にキャリアアップする」「転職する」の3つがあります。
それぞれの方法について、具体的に解説していきます。
資格を取得する
介護福祉士を目指す
介護職員初任者研修は、介護職員として働くうえでの最も基本となる資格で、取得者も多いため、これだけでは大幅な給料アップは期待できません。そこで、介護関連のほかの資格取得がおすすめです。
とくに、実務経験後に介護福祉士の資格を取得することをおすすめします。
資格取得の手順として、介護職員初任者研修終了後、3年以上の実務経験(3年以上介護事業所に就業して従事日数が540日を超える)ののちに、450時間の実務者研修を受講すれば、介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。この試験に合格すれば介護福祉士になれるのです。
介護福祉士は国家資格なので、これを取得しているだけでもスキルが証明でき、資格手当が付くことも少なくありません。
取得が簡単な資格ではありませんが、経験を積んで専門知識を身につけていることを証明できるので、全国どこででも通用する人材として給料アップを望めます。
期間内に介護福祉士国家資格試験の受験申し込みをする
介護福祉士の国家資格を取得するためには、試験を受験し合格しなければなりません。
介護福祉士国家試験の受験申し込み時期は例年8月上旬から9月上旬までとなっているので、受験を考えている方は詳細を確認しておきましょう。
試験対策にお困りの方は『ケアスタディ』がおすすめ
試験対策に悩んでいる方や過去問選びで困っている方は、介護福祉士国家試験対策アプリ「ケアスタディ」をご活用ください。
過去6年分の問題を完全無料で解けるため、苦手な科目を効率的に学ぶことができます。
ケアマネージャーを目指す
給料をアップさせたい方は、将来的にケアマネージャーを目指すこともおすすめです。
高齢者やその家族の相談を受けケアプランの作成などを行うケアマネージャーは、介護福祉士よりもさらに上の給料相場になります。
また、ケアマネージャーは要介護者の体に触れるといった直接介護は行わず、ケアプランの作成や給付管理が主な業務になるため、体が肉体的に衰えても介護の仕事を続けやすいといった利点があります。
夜勤を入れて手当を増やす
老健やグループホームのように夜勤をともなう二交代制、三交代制の施設に勤務しているなら、夜勤回数を増やして夜勤手当を多くもらう方法もあります。また、夜勤をメインに働く「夜勤専従」のスタイルも、給料アップにつながります。
このように、日勤のみより収入アップにつながりやすい夜勤を中心にしたワークスタイルは、体調管理ができればおすすめの方法です。
管理者などの役職に就く
介護職員として経験を積んで管理職にキャリアアップすれば、給料アップが望めます。介護施設での管理職には、リーダー職や施設長などの管理者という役職があります。
これらの役職は、勤続していれば必ずなれるものではありません。まずはリーダー職として介護職員と管理者との間に立つなど、実践で経験を積み、マネジメント力があるかどうかが見極められます。
決して簡単な道ではありませんが、介護業界で長く働き続けたいという人には、キャリアアップを目指すのも給料アップの方法になるでしょう。
別の職場に転職する
現在の職場でこれ以上給料アップが望めない、という限界を感じている場合は、思い切って転職をするのもひとつの手段です。
介護施設によって給料が大きく異なることも少なくありません。
現在働いている施設とは別の介護サービスに転職するだけで、給料がアップすることもあります。例えば、特別養護老人ホームや介護老人保健施設は、平均給料で見てもほかの施設よりも高めの水準です。
給料アップをしたい!と考えている方は、現在勤めている施設とは別の種類の施設への転職を検討するのも良いかもしれません。