栄養士の平均給料・年収
栄養士の月給は平均で25.5万円、年間のボーナスは60.9万円で、これによる年収は約367万円となります。
栄養士の平均給料には、年齢や勤務地、職場環境による違いが顕著で、特に医療法人が運営する病院と地域の保育園では、年収に大きな差が生じています。
これに対し、一般の給与所得者の平均月給は約31.3万円、年間ボーナスは約66.6万円で、年収は約443万円と栄養士よりも高めです。
このデータから、栄養士の給料が全職種平均と比較してやや低い傾向であることがわかります。
栄養士の手取り
毎年の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」やみんなの介護求人の求人情報などから計算すると、栄養士の手取りは平均約18万円〜20万円程度。
基本的に統計調査や求人情報に記載されている給与額は、総支給額です。実際に振り込まれる手取り給料額とは2割ほど差があります。
栄養士の手取りは、残業や夜勤がある職場かどうかによっても大きく変わります。たとえば、病院や介護施設で栄養士も夜勤を担当する施設では深夜手当がつくので手取りも大きくなります。
一方で、学校や給食センターのように勤務時間が短く日中にかたまっている勤務先では、手取りもそれほど高くはなりません。
栄養士のボーナス
栄養士の場合、平均年間ボーナスは約60.9万円となっています。
栄養士のボーナスは、勤務先の経済状況や従業員の成果に基づいて支給されます。
一般的には、ボーナスの支給時期は夏と冬の年2回で、それぞれ6月から7月、11月から12月にかけての期間が多いです。
ボーナス額は、基本給の複数月分として計算されることが一般的で、例えば基本給が20万円の場合、ボーナスを4ヵ月分とすると約80万円となります。
しかし、毎月の手当が多くても基本給が低い職場では、ボーナス額も比較的少なめです。
栄養士の手当・福利厚生
栄養士の給料には、基本給の他に様々な手当が加算されます。
栄養士の資格を持つことで、2,000円から5,000円の資格手当が付くことが多く、管理栄養士では5,000円から10,000円の手当が付くこともあります。
この他にも、法定手当と法定外手当の2種類の手当てがあります。
法定手当には、残業手当(超過勤務手当)があり、8時間を超える勤務に対して支給されます。
また、休日に勤務した場合の休日労働手当や、夜間や早朝に働いた場合の夜勤手当もあります。
このような資格手当は、職場によって異なるため、就職活動の際には事前の確認が推奨されます。
さらに、福利厚生としては、慶弔休暇のほか、スポーツクラブ利用の補助など、従業員の健康維持やプライベートの充実を図るための支援を整えている職場が多いです。
栄養士の年齢別の平均月給
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、女性の栄養士の平均月給は22.5万円、年間賞与などの特別給与額は58万円となっています。
女性栄養士の年齢別の給料をまとめました。
年齢 | 平均月給 | 平均年間賞与 |
---|---|---|
20~24歳 | 約19.3万円 | 約31.3万円 |
25~29歳 | 約21.5万円 | 約58.7万円 |
30~34歳 | 約22.5万円 | 約56.3万円 |
35~39歳 | 約24万円 | 約65.5万円 |
40~44歳 | 約24.4万円 | 約69.1万円 |
45~49歳 | 約24.7万円 | 約70.2万円 |
50~54歳 | 約26.2万円 | 約81.2万円 |
年齢が上がるにつれて、緩やかに月給が上がっていき、それに応じて賞与などの特別支給額も増加しています。
栄養士の初任給
栄養士の初任給は一般的に月額約16万円から20万円の範囲です。
この初任給は公務員と民間の病院や給食センターといった職場でほぼ同額です。
初任給には基本給の他、各種手当が加わりますが、社会保険料や税金が差し引かれた後の手取り金額が実際の給料となります。
ボーナスを含む年収は、公務員の場合、約320万円となりますが、民間の場合は昇給のペースが遅いこともあります。
職場別の栄養士の平均給料
栄養士の仕事は栄養指導に限らず、多様な業界でその知識が求められています。
主な勤務地としては、病院や介護施設が一般的ですが、スポーツクラブや美容業界でも専門的な知識を活かすことができます。
これらの職場によって年収にも大きな差があり、地域や施設の規模によって異なる給料の構造が見られます。
職場環境や所在地によって、栄養士の給料は幅広い範囲で変動するため、具体的な情報を得ることが重要です。
病院
病院で勤務する栄養士は、患者や高齢者の栄養管理、献立作成、食事提供など多岐にわたる役割を担います。
特に、食事制限が必要な患者の栄養指導は、専門的な知識を持つ管理栄養士に限定されることが多いです。
病院による給料の差も大きく、平均月給は約18万円から27万円の範囲で、平均年収は約350万円となっています。
この職場環境では、栄養士の専門性が重視され、それに伴う報酬も設定されています。
福祉施設
福祉施設全体での栄養士の平均月給は約18万円から22万円で、平均年収は約305万円です。
これらの給料は年齢や勤務地、職場環境による違いが大きく関係しています。
有料老人ホーム
老人ホームで働く栄養士の給料は、みんなの介護求人の求人情報をみると、約16万円から20万円からのスタートが多くみられます。
平均年収は約400万円となっていて、時給は約900円〜1,000円台からの施設が目立ち、栄養士全体の金額とほぼ同じとなっています。
老人ホームに勤務する栄養士の業務内容は、入居者の毎日の食事づくりが主な仕事です。
高齢者や障害者で病気を抱えている人が多いため、一人ひとりに合わせた食材の組み合わせや栄養のバランス、塩分や糖分、タンパク質の制限などを気をつけなければなりません。
また、病気や加齢で飲み込みづらい、いわゆる嚥下障害のある入居者のためとろみや液体の食事を増やすといった特別食の配慮も必要です。
グループホーム
認知症患者が小人数で介護職員と集団生活を行うのがグループホームです。栄養士が勤務したときの収入は平均約15万円~20万円前後から働き始める場合が一般的です。
介護求人の転職サイトを検索しても、10万円台後半の月給で募集している施設が目立ちます。ただ、経験やスキル、前職までの勤務先の規模などで、能力給が評価されて25万円を超す給与で採用される場合もあります。
グループホームでは病気や身体機能の衰えに気を配りながら、栄養バランスの取れた献立づくりや栄養管理が求められます。
また、認知機能の低下によって食事摂取に問題がある入居者には、食事の取り方やメニューの立て方を個人に変えていく工夫も大切といえるでしょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームの給料をみんなの介護求人の募集案件で見ていくと、平均月給約16万円から20万円前後のスタートが目立ちます。
公立やNPO法人など、運営主体によっては14.5万円から採用するといった施設もあるようです。栄養士の資格手当は施設によってまちまちですが、数千円から1万円が相場となっています。
ただし、特別養護老人ホームのある地域の産業や物価、運営する団体の経営状態なども特別養護老人ホームの給与待遇に大きな影響を与えます。
特養とも呼ばれる高齢者施設のため、加齢で食が細くなったり、病気で栄養や食事に気をつけなければならない入居者も少なくありません。そのため、一人ひとりの栄養管理を徹底して、食べる喜びや健康維持につながる献立・食事を提供することが大切です。
保育園・幼稚園・学校
栄養士の給料には、勤める施設や地域、さらには役職によっても大きな違いがあります。
特に注目したいのが、教育機関で働く栄養士の給与です。学校での栄養士は主に二つのタイプに分けられます。一つは、栄養士資格のみを持つ学校栄養職員で、この役職では学校給食の栄養管理や衛生管理が主な仕事です。もう一つは、栄養教諭で、これには食育や個別栄養指導も含まれますが、栄養士資格に加えて教諭の免許が必要です。
また、保育園や幼稚園で働く栄養士の年収は平均で約300万円程度とされています。ここでは、離乳食が必要な乳幼児から幼児期までの子どもたちに対して、栄養バランスと味覚の両方に配慮した食事の提供が求められます。これには、献立の計画、食材の発注、調理、栄養指導といった多岐にわたる業務が含まれます。
このように、栄養士の給与はその職場環境や担う責任によって異なり、専門性を高めることが収入向上につながることも明らかです。
一般企業
食品関連企業で活躍する栄養士の役割は多岐にわたります。
具体的には、新商品の企画・開発ではレシピの考案や試作、さらに市場調査とパッケージに記載する栄養成分の表示作成を担当します。これに加え、原材料や商品の品質管理分析も重要な業務です。
特に、健康食品や機能性表示食品の開発においては、科学的根拠を要するため、専門性が求められます。
また、栄養士は商品開発に限らず、病院やドラッグストアを訪れ、科学的根拠に基づき製品を説明する営業としても働いています。
食品メーカーでの栄養士の平均年収は約360万円とされており、開発や研究職に就く栄養士は特に高待遇が期待されます。
一方、公務員としての栄養士も安定した昇給が見込まれますが、求人倍率が高く競争が激しいことが課題です。
このような情報は、栄養士としてのキャリアパスを考える際に重要な指標となります。
公務員
公務員としての栄養士は、その安定性と進行するキャリアパスで魅力的な選択肢となっています。
初任給は管理栄養士で年約323万円、栄養士で約300万円と民間企業に比べやや低めですが、長期的に見ると、公務員の給与システムがその差を覆します。
経験年数が20年を超えると、平均年収は管理栄養士で約600万円、栄養士で400万円から500万円にまで上昇し、多くの民間企業を凌ぐことがあります。
また、公務員栄養士は、国立病院や自衛隊、保健所、公立学校など、国または地方自治体が運営する様々な施設で重要な役割を果たします。
給料体系は勤務地の自治体によって一律で決められ、地方公務員の場合、保健所や地方自治体の病院などが勤務地となります。
このような背景から、公務員栄養士は初めは低いものの、年功序列に基づく確実な昇給があり、加えて育休や時短勤務などの福利厚生も充実しています。
これにより、出産や育児を経てもキャリアを継続しやすい環境が整っており、中長期的な視点で見ると非常に経済的な利益が得られる職種です。
雇用形態別の平均給料
常勤(正社員)の場合
栄養士の職場における雇用形態は多様であり、それぞれに応じた給与の差が存在します。
特に、正社員として働く栄養士は他の雇用形態に比べて、収入や待遇面で有利です。
栄養士の月給は平均で25.5万円、年間のボーナスは60.9万円で、これによる年収は約367万円です。
正社員の栄養士は、安定した雇用と共に福利厚生やボーナスが充実していることが大きな特徴です。
これに対し、アルバイトや派遣の形態では、ボーナスが少ないまたは無いケースが多く、基本給や時間給の違いも収入格差を生んでいます。
栄養士としてのキャリアを考える際、これらの情報は重要な判断材料となるでしょう。
契約社員の平均給料
契約社員として働く栄養士の平均年収は約257万円です。
この雇用形態では、正社員ほどの福利厚生は期待できませんが、一定の安定は保証されています。
パート・アルバイトの平均給料
栄養士としてパートやアルバイトで働く場合、平均年収は約135万円で、正社員に比べると待遇面で大きな差があります。
非正規雇用の栄養士は、同じ業務をこなしながらも給与面での不満が多い一方で、勤務の柔軟性がメリットです。
具体的には、家事や育児、副業との両立が可能で、扶養控除内で働くことも容易です。
また、短期契約であるため、他の職場への転職や正社員への移行もしやすい点が魅力的です。
しかし、多くの場合ボーナスが無く、これが収入面で大きな影響を与えています。
他職種との給料比較
管理栄養士との給料の違い
栄養士の平均年齢は35歳で、平均月給は約24万円、そして平均ボーナスは約57万円です。
一方で、管理栄養士は平均年齢36歳、平均月給約27万円、平均ボーナスは約107万円となっています。
月給では約3万円、ボーナスとなるとさらに大きな差があるのが特徴です。
月給やボーナスに差があるのは、管理栄養士と栄養士とでは資格手当の金額が異なるからと考えられます。
資格手当の金額は管理栄養士の場合、5,000円から10,000円が相場ですが、栄養士の場合は2,000円〜5,000円程度です。
つまり、年間で比較すると、資格手当だけでも最大およそ10万円の差があるというわけです。
調理師との給料の違い
栄養士と調理師の給料を比較すると、栄養士の方が平均的に高い傾向にあります。
具体的な数字を見てみると、調理師の場合、男性の平均月給は約29万円、女性は約20万円で、企業規模が1,000人以上の大企業では男性の月給が約30万円に達します。
栄養士は栄養管理や健康支援の専門知識が求められるため、資格を活かした職場での需要が高いです。
また、給料をさらに向上させるには、管理栄養士としての追加資格や、専門分野での継続的な教育が効果的です。
保育士との給料の違い
厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均月給は10人以上の従業員の企業全体で男性約26万円、女性約24万円とのデータがあります。
栄養士の平均月給が約25万円なので、女性はほぼ同じ水準、男性は保育士の方が高めだとわかります。
栄養士が給料を上げる方法
管理栄養士などの資格を取得する
栄養士よりも上位の管理栄養士資格取得者は、より高い給料を得ることが多いです。
管理栄養士は国家資格であり、病院や福祉施設などでは管理栄養士の資格が必須の職場も多く、資格手当が加わるため給与が上がります。
ただし、管理栄養士へのステップアップは、受験資格を満たした後、約20%の合格率の国家試験をクリアする必要があります。この資格を得ることでより専門的な業務を行い、給与アップを実現できるでしょう。
このように、栄養士の給料を上げるには、専門性を高めることが推奨されます。
- 管理栄養士
- 公認スポーツ栄養士
- 栄養経営士
- フードスペシャリスト
このような栄養や健康に関連した多様な資格を取得することで、キャリアの幅を広げ、高い給与を目指せます。
これらの資格によって、病院や学校、食品業界など、異なる分野での専門職としての活動が可能になります。
また、栄養士会などの団体は、栄養士向けのスペシャリスト認定や研修を提供しており、これらを活用することもキャリアアップにつながります。
給料の高い職場に転職する
栄養士がさらに給料を上げるためには転職が効果的な手段とされています。
特に給食センターや大手食品メーカー、病院などは高い給与を提供する傾向にあります。
例えば、給食センターでは業務の規模が大きいため、比較的高い給料を得ることが可能です。
転職を考える際は、勤務先の給料水準と福利厚生を確認し、転職サイトなどで比較検討することが大切です。
これらのポイントを押さえることで、自分のスキルや経験をより高く評価してもらえる職場を見つけ、適切な給与待遇で働くことが期待できます。
また、専門性を高めることも重要で、管理栄養士などの上位資格の取得を目指すとより良い条件での転職が可能になります。
栄養士の給料が低い理由
業務独占資格ではない
栄養士の給料が比較的低い理由の一つは、栄養士が持つ「名称独占資格」という性質にあります。
この名称独占資格は、栄養士と名乗ることを許可しているもので、その業務自体は資格を持たない人も行うことが可能です。
例えば、献立作成や栄養指導などがそれに該当します。
これに対して、医師や看護師などの「業務独占資格」を持つ職種は、資格がなければその業務を行うことができないため、給料が高く設定されがちです。
これにより、名称独占資格である栄養士の給料が他の医療関連職種と比較して低くなる傾向にあります。
栄養士は、名称を保有しているものの、その業務が広く他者にも開かれているため、給料アップのためにはさらなる資格取得や専門性の向上が推奨されます。
利益に繋がりづらい
栄養士の給料が比較的低い一因は、業務が直接的な利益創出につながりづらいからです。
特に、病院や介護施設での食事提供は、給食費の上限が法律や政策により厳しく制限されており、栄養士が努力してもその影響は限定的です。
例えば、診療報酬での栄養指導点数は他の医療行為に比べて低く、給食費負担額も固定されています。
これらの制約が、栄養士の給料が他の医療職に比べて低めに設定される主な理由です。
また、利益への貢献度が直接給料に反映されにくいという業界の構造的な問題も存在します。
キャリアの中断が起きやすい
栄養士業界では女性が多数を占めており、結婚や出産といったライフイベントがキャリア中断の一因となっています。
このため、キャリアの途中で離職し再就職する際には、前職時と同等の給料を維持することが困難となり、給料水準が低く抑えられる傾向にあります。
これらが栄養士の給料を他の専門職に比べて低い水準にとどめる要因となっています。