管理栄養士の平均給料・年収
管理栄養士の年収は、職場環境や個々のスキルセットによって大きく変わりますが、管理栄養士の平均年収は350万円~400万円と言われています。
公務員か民間企業かなどの就職先や勤務地によってもこの数値は変動しますが、経験豊富な管理栄養士は、平均を上回る収入が見込める場合もあり、職場によって給料には大きな差が見られます。
管理栄養士の手取り
手取りは総支給額から税金や社会保険料などを引き、2割ほど少なくなります。管理栄養士の平均年収はおよそ350万円で、およそ280万円が手取りとなります。
また、職場によっては財形貯蓄や株式購入、福利厚生のための職場で集まる会費など、さまざまな金額が差し引かれている場合があります。毎月の給与明細書で総支給額と手取り額を確認するようにしましょう。
管理栄養士のボーナス
管理栄養士のボーナスは、業績や個々の成績により大きく変動します。一般的には、基本給の1ヶ月分から4ヶ月分が夏冬の2回に分けて支給され、場合によっては6ヶ月分を一度に支給する職場も存在します。新卒で初任給が17万円の場合、ボーナスは1回あたり20万円から30万円、年間で40万円から50万円を受け取ることが可能です。
月給が少ない場合でもボーナスが多ければ年間のやりくりがしやすくなる一方、月給が高い職場ではボーナスが少なくなりがちなので注意が必要です。
管理栄養士の年齢別の平均月給
管理栄養士の平均月給は年齢が上がるにつれて緩やかに増加し、賞与や特別支給額もそれに伴って高くなります。一般に、管理栄養士は栄養士と比較しても給料が高めです。加えて、男性は女性に比べて、どの年齢層でも約3万円から6万円高い給料を受け取る傾向にあります。これは、男性が管理職に就く率が高く、結婚や育児によるキャリアの中断が少ないためです。
年齢 | 平均月給 |
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20~24歳 | 約22.2万円 |
25~29歳 | 約24.5万円 |
30~34歳 | 約25.1万円 |
35~39歳 | 約26.8万円 |
40~44歳 | 約27.4万円 |
45~49歳 | 約29.1万円 |
50~54歳 | 約28.6万円 |
55~59歳 | 約31.9万円 |
60~64歳 | 約28.7万円 |
65~69歳 | 約30.4万円 |
70歳以上 | 約22.5万円 |
このデータは、管理栄養士の経験とスキルが反映された結果であり、特に中高年層での月給は高くなる傾向にあります。
管理栄養士の初任給
管理栄養士の初任給は、月額約17万円程度からスタートし、公務員でも民間企業でもほぼ同額です。この金額に通勤手当や住宅手当、資格手当が加わります。中途採用者の場合、前職の経験やスキルに応じて給料が決まり、能力に応じた給与が即時または試用期間後に加算されます。
20万円まで届かない初任給の職場でも、勤続年数を重ねると毎年少しずつ昇給していくところがほとんどです。
職場別の管理栄養士の平均給料
管理栄養士は多様な職場で活躍し、給料は職場によって大きく異なります。
病院
病院での管理栄養士の年収は、一般的に約300万円から440万円の範囲ですが、職場の規模や業務の特性によって差が見られます。
国立病院では年収が平均440万円に達し、公務員のため、定期的な昇給や各種手当が充実しています。基本給の他に、宿直手当、特殊業務手当、住居手当、通勤手当などが加わり経済的な安定感があります。
病院勤務の管理栄養士は、入院患者の栄養状態を評価し、病気に応じた食事の提供を行います。
また、病院における管理栄養士には法律に基づく一定数の配置が義務付けられており、求人倍率も高くなっています。この職に就くには、臨床栄養の深い知識が求められ、継続的な学びや研修が不可欠です。そのため、常に最新の栄養学を学び、臨床現場での経験を積むことが重要です。
給食業者
給食センターで働く管理栄養士の平均年収は高めで、約600万円の年収を得ている方もいます。この理由は、人手不足による高需要と離職率の低減を目的とした積極的な採用戦略にあります。
管理栄養士は学校給食、企業の社員食堂、保育園のおやつ提供など、献立の計画から食材の発注、調理、栄養管理まで多岐にわたる業務を担当します。また、経費管理も重要な役割の一つであり、効率的な運営が求められる職場です。
老人ホーム
老人ホームでの管理栄養士の平均年収は約430万円ですが、施設の規模や提供するケアの種類によって、300万円台から500万円以上に及ぶ場合もあります。主な業務は以下の通りです。
- 献立作成:利用者の栄養バランスと食事制限を考慮した食事の計画。
- 食材管理と調理:栄養価が高く、消化しやすい食材の選定と発注、ミキサー食やソフト食などの特殊な食事形態の提供。
- 栄養相談とケアマネジメント:入居者やその家族からの栄養に関する相談対応、高齢者の栄養不足の防止と改善策の立案。
介護福祉施設では、年収は一般的に260万円から310万円とやや低めですが、残業が少なく、未経験からの応募が可能など、ワークライフバランスを重視する求職者には魅力的な選択肢です。さらに、高齢化社会の進行と共に求人数が増加しており、将来的には待遇改善による給料の増加が期待されます。
公務員
公務員としての管理栄養士は、その安定性と勤務先の多様性で注目されます。初任給は平均で約323万円と他の民間職と比べると低めですが、公務員の給与体系は年功序列であり、勤続年数が長くなるほど昇給が見込めます。40代での平均年収は633.3万円に達し、多くの民間企業の同職種を上回ります。
公務員の管理栄養士は、保健所、保健センター、公立病院、公立保育園や幼稚園など、自治体が運営する施設で働くことが多く、勤務形態によっては特別職国家公務員として自衛隊や防衛技官として独自の業務を担うこともあります。これにより、特有の給料体系と昇給の機会が設けられています。
公務員としてのキャリアを積むことにより、給与の上昇だけでなく、仕事の安定性と公的な福利厚生の充実も得られるため、長期的なキャリアプランにおいて魅力的な選択肢となります。
法人や一般企業
管理栄養士が一般企業や法人で働く場合、その給与は業界や企業規模、職種によって大きく異なります。特に食品メーカーや医薬品メーカーでの勤務は、研究職や臨床検査薬情報担当者(DMR)、医薬情報担当者(MR)など専門性の高い職種を担うことが多く、平均年収は450万円前後に達することがあります。
また、週休2日の求人が多いという利点も、ワークライフバランスを重視する管理栄養士には魅力的です。
管理栄養士はその専門性を活かして多様な職場で活躍可能であり、特に専門的な研究や開発に携わることで、他の施設や企業で働く同職種よりも高水準の年収を得ることが可能です。
さらに、管理栄養士が自身の業務の成果を発表することで存在価値を伝えられる事もあります。
都道府県別の管理栄養士の平均給料額
管理栄養士の年収は勤務地によっても大きく異なります。特に給与と待遇を重視する場合、地域別のデータを参照することが推奨されます。
茨城県が全国で最も高く、平均年収は442万円となっています。続いて香川県、鳥取県の423万円となっています。興味深いことに、年収が特に高い地域に大都市圏は含まれていないことが多く、地方都市や中規模の都市が上位にランクインしています。
雇用形態別の管理栄養士の平均給料
管理栄養士は、その雇用形態によって平均給料に大きな差が存在します。
正社員 | 長期雇用と安定性を提供し、フルタイムでの勤務が一般的。育児や介護との両立を望む人には、フレキシブルな勤務形態が求められることがあります。 |
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契約社員 | 一定期間の契約を結び、その期間限りでの勤務が基本。プロジェクトや特定の仕事に関連する場合が多いです。 |
アルバイト・パート | 短時間勤務で、柔軟性が高い。主に時間を選んで働きたい人に適しています。 |
正社員の平均給料
管理栄養士の正社員としての平均年収は約350万円から400万円です。
民間企業や公務員など、勤務先により給料は大きく異なります。また、正社員は安定した雇用と共に、昇進の可能性があり、それに伴う給料の増加が期待できます。
さらに福利厚生が充実している企業では、諸手当も含めた収入が増えます。
転職時の給料は前職の経験やスキルに左右されますが、新卒の初任給より下回ることはないため、キャリアアップを目指す者には魅力的な選択肢です。
契約社員の平均給料
契約社員として働く管理栄養士の給料は、職場により大きく異なりますが、多くの求人で年収300万円から360万円の範囲が提示されています。この就業形態は正社員とアルバイト・パートの中間に位置し、一定期間の契約のもとでフルタイムに近い勤務が求められることが一般的です。
性別 | 平均月給 |
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男性 | 約19.7万円 |
女性 | 約23.8万円 |
比較すると、フルタイム勤務の契約社員は正職員と比べて月給が3万円から7万円程度低くなることが多いです。また、柔軟な勤務形態を提供している職場も少なくなく、短時間勤務や日勤のみのオプションを設けているところもあります。これにより、ライフスタイルに合わせた働き方が可能となっています。
パート・アルバイトの平均給料
パートやアルバイトで働く管理栄養士の平均時給は約1,400円で、月平均給与は約12万円です。これには平均的な賞与として約7.6万円が加わり、年収は約242万円になります。
管理栄養士は専門性の高い業務をおこなうため、資格手当なども含めて賃金が高めに設定されています。
フリーランスの平均給料
フリーランスはどの企業にも所属せず、自分で営業して仕事をするスタイルです。そのため、頑張った分だけ収入に反映されます。働き方としては、セミナーや講演活動、個人や企業向けの栄養相談などが主です。
最近はスポーツクラブやプライベートジムの中にアスリートのための栄養指導に力を入れているところが増えていて、クラブやジムの紹介で会員メンバーの栄養相談に個別に乗るといった仕事も増えています。
フリーランスは、成功すれば管理栄養士の平均年収を大きく上回って1,000万円超を目指せる働き方です。ただし、実力と経験を兼ね備えた人でなければ、仕事を勝ち取るのは難しいでしょう。
そのため、まず民間企業や公務員として管理栄養士のキャリアを積んでから独立するケースがほとんどです。
他職種との給料比較
栄養士との給料の違い
管理栄養士と栄養士の間には、その資格がもたらす給料の差異が見られます。特に公務員の場合、管理栄養士の初任給は平均で年収約323万円に対し、栄養士は年収約300万円です。この差は民間企業でも顕著で、給食センターや病院などで働く管理栄養士は栄養士よりも高い給料を得ています。
介護施設や食品メーカーでも、管理栄養士は栄養士より高い報酬を得る傾向があります。この資格による収入の差は、専門知識と責任の大きさを反映しています。
管理栄養士が給料を上げる方法
献立作成や衛生管理のスキルアップ
管理栄養士として活躍するには、栄養学や病気や健康分野の知識も大切ですが、病院や施設で実際に患者や入居者に合わせた献立を作成したり、調理を担当したり、現場の経験も重要です。
年収アップのためには、栄養管理や栄養相談に加えて、積極的に患者や入居者に寄り添った献立作りや、食事の調理を豊富に経験しておくことが大切といえます。
さらに、公認スポーツ栄養士などの専門資格を取得することも給料アップに繋がるため、キャリアアップを目指す管理栄養士にはおすすめです。
実際、専門性の高い業務を担当することで、特定の手当が加算される職場も多くあります。これらのスキルと資格は、直接的に患者や入居者の生活品質向上に貢献し、職場での評価を高める要因となります。
専門分野の資格を取得する
管理栄養士の給料を上げるためには、専門分野の資格取得が効果的です。基本の管理栄養士資格を持っているだけでも十分ですが、さらなるキャリアアップを目指す場合、以下の専門資格を取得することをおすすめします。
特定分野管理栄養士 | 特定保健指導、静脈経腸栄養管理、在宅訪問栄養食事指導など、専門性を高める資格。 |
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認定管理栄養士 | 特定の専門領域での高度な知識と技術を証明。 |
公認スポーツ栄養士 | アスリート向けの栄養指導に特化。 |
栄養教諭 | 学校での食育活動を担う。 |
ケアマネージャー | 介護サービス分野でのキャリアアップを目指す。 |
これらの資格は、管理栄養士の業務範囲を広げ、専門性をさらに深めることで、高い評価とそれに伴う給料アップを実現します。
特にケア施設や病院、スポーツ関連の職場では、これらの専門資格が高い給料を得るための鍵となります。各領域のスペシャリストとしての認定も、将来のキャリアビジョンに合わせて検討すべきです。
栄養指導の経験を積む
病院や高齢者施設の管理栄養士の重要な仕事の1つが、栄養指導業務です。前職までに栄養指導の経験を積んでおくと、採用時の評価が高くなって転職活動がスムーズに行きやすいといわれています。
大きな病院ほど、中途採用でキャリアアップをしたいなら、栄養指導経験は大切です。病院によっては実務経験3年以上を1つの目安にして、応募者を限定しているケースも目立ちます。
そのため、いざ希望する転職先があっても、栄養指導経験者などの応募条件であきらめることのないよう、しっかりと経験を積んでおくことが大切です。
とくに個別栄養指導業務は入院病棟や外来で栄養指導が必要な医療機関にとって管理栄養士に求められる仕事です。年収アップのためにも、栄養指導の経験を積んでおきましょう。
給料の高い職場に転職する
管理栄養士として給料を上げる一つの有効な手段は、より待遇の良い職場への転職です。
病院や高齢者施設など、ニーズが高い場所では積極的に採用が行われており、特に人手不足が顕著な地域では、より高い給与が提示されることもあります。
転職を成功させるためには、待遇、勤務条件、職場環境など、細かな情報を集め、自分に合った職場を見極めることが重要です。
転職エージェントの活用もおすすめです。書類作成、面接対策など転職活動全般をサポートしてもらえるため、日々の業務に追われる中でもスムーズに転職活動を進めることができます。
経験を活かせる場所や新たな挑戦を求める場所を見つけることが、給料アップへの近道です。また、特定の専門性を要求される場所では、専門スキルに応じた高待遇を得られる可能性も高くなります。
管理栄養士の給料が低い理由
業務独占資格ではない
管理栄養士の賃金が比較的低い背景には、その業務が「業務独占資格」に該当しないため、非資格者も同等の仕事を行うことが可能である点が挙げられます。
管理栄養士以外でも栄養相談や給食の献立作成を法的に問題なく実施できます。このため、業務が資格非所持者に容易に代替され得る状況が、給与の抑制要因となっているのです。
さらに、この領域では名称の使用が制限されているものの、実際の業務執行は資格の有無によらず可能とされています。この現状が管理栄養士の給料に影響している重要な点です。
利益を生み出しにくい
管理栄養士の給料が低い理由の一つに、業務が直接的に高い利益を生み出すことが難しい状況があります。
特に病院や介護施設では、管理栄養士が関わる栄養指導や献立計画からの直接的な収益が限られています。
例えば、病院で提供される食事に対する国の診療報酬は、1食あたり640円に固定されており、これは食事の質にかかわらず変わりません。
そのため、管理栄養士がいくら努力しても、その努力が収益向上に直結しにくいのです。
この収益構造が、給料の低さに直接影響していると言えます。
管理栄養士の数が多い
管理栄養士の給与が低い根本的な理由の一つに、供給過剰があります。
厚生労働省によると、令和2年度には約25万人の管理栄養士が在籍しており、毎年約1万人が新たに資格を取得しています。
しかし、これに見合うほどの雇用機会は提供されておらず、過剰な供給が給与水準の低さを引き起こしています。
多くの応募者が存在するため、雇用者は給与や待遇を引き上げる必要性を感じにくく、これが低賃金の継続につながっています。
この状況は、短期間での改善が難しいとされ、管理栄養士の待遇改善への道のりは厳しいものがあります。