医業類似行為者の給料(月収・年収)
1.医業類似行為者の初任給
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、医療類似行為者の初任給は約19万~22万円程です。個別の集計がないため、これは「その他の保健医療従事者」の平均給与額です。
実務経験や実績などによっても、給与額は変動します。就職してすぐの頃はこれから学習する立場ということもあり、ほかの職業に比べて賃金は低めです。しかし、就職後に勤務先の先輩や院長に認められることで、昇級による給与アップも可能でしょう。
2.手取りは額面給料の7~8割
月給の手取り額は額面給料の7割前後となるのが一般的です。厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によれば平均月給額は約31万円のため、手取り額は約21~24万円前後です。
柔道整復師の場合、「みんなの介護求人」で条件として提示されている平均月給は20~25万円程度です。手取り額は14~20万円程度になると考えられます。
ただし、以上の額はあくまで平均値です。勤続年数が多い人や、勤務先の病院・治療院で顧客からの指名が多い人なら、給与額・手取り額は多くなるでしょう。
3.ボーナス
医療類似行為者のボーナスは、約70万円前後です。
ただし、医療類似行為者が受け取れるボーナスの金額は勤務先や開業しているかにもによって大きく変わってきます。大きな病院、人気のある治療院だと給与3ヵ月分をもらえることも多くあります。
しかし、個人経営の小さな医院・治療院だと、全体としての収入が少ないこともあり、ボーナスが支給されないケースもあるようです。
医療類似行為者として就職する場合は、ボーナスの支給状況について事前に確認しておく必要があるでしょう。
4.手当、福利厚生
正社員の医療類似行為者として勤務する場合、社会保険完備、有給休暇、産休、育児休職制度、各種休職・休暇制度など、基本的な福利厚生が受けられるのが一般的です。
しかし、個人経営の医院・治療院の場合、規模の大きい病院・治療院ほど福利厚生が整備されていない場合もあります。就職の際は必ずチェックしておきましょう。
5.年齢別、男女別の平均給与
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、医業類似行為者の平均月給は男性33.1万円、女性29.8万円でした。
女性よりも男性の方が高い給与となっています。
次に年齢別に見た平均給与です。以下の表にまとめました。
年齢 | 平均月収 |
---|---|
~19歳 | 19.6万円 |
20~24歳 | 21.7万円 |
25~29歳 | 24.4万円 |
30~34歳 | 27.7万円 |
35~39歳 | 29.8万円 |
40~44歳 | 31.1万円 |
45~49歳 | 33.4万円 |
50~54歳 | 35.0万円 |
55~59歳 | 35.9万円 |
60~64歳 | 33.3万円 |
65~69歳 | 30.0万円 |
70歳~ | 23.8万円 |
10代が一番低く、年齢が上がるごとに給与は上がっていき、50代で最も高くなります。
6.勤続年数ごとの給料
「みんなの介護求人」によると、正社員のあん摩マッサージ指圧師を募集している病院や治療院だと、月給額として19~38万円が提示されているケースが多くなっています。月給額は本人の経験によって変わります。前職での勤続年数が長い場合は、給与額が40万円前後になることもあるのです。
柔道整復師においても前職の経験によって募集する際の月給額は変わるのが一般的です。柔道整復師は初任給だと17~20万円前後。しかし、勤続年数が高く経験を豊富にもっているほど給与額はアップします。例えば、神奈川県の介護付き有料老人ホームにおける中途採用者の募集では、月給28万円が提示されています。
鍼灸師の場合でも状況は同じです。20代の新人であれば平均月収は20万円に届きません。そのため、年収は200~300万円台にとどまります。しかし、50代近くになると550~600万円程度となるケースも珍しくありません。
資格による給料の違い
1.あん摩マッサージ指圧師
東洋療法学校協会の調査によると、2020年時点のあん摩マッサージ指圧師の有資格者の平均月給は19.8万円です。平均値でみると、男性の方が女性よりも給与額が高くなる傾向があります。
あん摩マッサージ指圧師の給料について詳しく知りたい方は、「あん摩マッサージ指圧師の給料を職場や雇用形態、都道府県ごとに徹底解説!」をご参照ください。
2.柔道整復師
「ほねつぎ」や「接骨師」とも呼ばれる柔道整復師の平均年収は、厚生労働省のデータを踏まえると300~400万円です。ただし、勤務先が個人経営の接骨院なのか、それとも大手のチェーン店なのかによって大きく給与額は変わってきます。
柔道整復師の給料について詳しく知りたい方は、「柔道整復師の給料を職場や雇用形態、都道府県ごとに徹底解説!」をご参照ください。
3.鍼灸師
鍼灸師(はり師・きゅう師)の平均給与額は19.8万円です(東洋療法学校協会のデータより)。平均値では女性より男性の方が高いですが、近年では美容鍼灸、レディース鍼灸など女性を対象とした施術のニーズが高まっており、女性鍼灸師に対する需要も増えつつあります。
鍼灸師の給料について詳しく知りたい方は、「鍼灸師の給料を年齢や職場、都道府県ごとに徹底解説!」をご参照ください。
働く場所ごとの平均給与額
1.介護施設
有料老人ホーム
有料老人ホームは高齢者が生活する民営の入所施設です。医療類似行為者が就職した場合、利用者に対して施術する業務に従事します。給与額としては、あん摩マッサージ指圧師だと21~28万円、柔道整復師だと18~25万円、鍼灸師だと25~27万円程度です(「みんなの介護求人」のデータより)。
新規に開設する有料老人ホームだと、医療類似行為者の募集を行っているケースが多いので、就職・転職を考えている人には狙い目です。ただし実務経験が1年以上ある人のみを募集していることも多いのが実情です。募集条件にあうかどうかを確認のうえ、応募しましょう。
デイサービス
デイサービスは要介護認定を受けた方を利用対象とした、心身機能の維持や回復を図る通所施設です。給与額はあん摩マッサージ指圧師だと19.5~29.5万円、柔道整復師だと17万円前後~30万円、鍼灸師だと20~26万円程度となっています(「みんなの介護求人」のデータより)。施設によっては仕事内容に送迎が含まれることもあるため、運転免許証を取得している方が望ましいです。
訪問リハビリ
訪問リハビリは、要介護認定を受けた方の自宅に専門職が訪問し、リハビリテーションのサービスを提供する介護サービスです。訪問リハビリを実施している事業所では、リハビリテーションを行う専門職として医療類似行為者の採用を行っています。訪問の際に社用車を使用することが多いので、就職・転職の際は車の運転免許証を取得しておくのが望ましいです。
訪問リハビリにおける医療類似行為者全体の給与額は、23~40万円程度となっています(「みんなの介護求人」のデータより)。勤務先、実務経験年数によって給与額は大きく変わるのが一般的です。
2.病院・治療院
医療類似行為者が病院・治療院に勤務する場合、月給額としては正社員だと19~38万円、契約社員だと19~25万円、パート・アルバイトだと900~1,500円程度です(「みんなの介護求人」のデータより)。
勤務先となる病院・治療院の規模によって、実際の給与額は大きく変わってきます。規模の大きい病院であれば待遇面は良好になりやすいですが、個人経営の医院・治療院だと給与額は低めとなることが多いです。
3.接骨院・整骨院
接骨院・整骨院に医療類似行為者が勤務する場合だと、月給額は18万円~40万円程度となるのが一般的です。本人の実績・経験や勤務先の規模によって給与額は違ってきます。人気の接骨院・整骨院であれば店としての収入が大きいため、比較的高めの給与額を期待できるでしょう。一方、個人経営で顧客数の少ない接骨院・整骨院だと、店舗としての収入が少ないため、給与額は低めとなる傾向があります。
4.鍼灸院
近年、鍼灸院のチェーン店が全国各地にあり、鍼灸師の有資格者だとそれら鍼灸院の院長として働くこともできます。顧客の数にもよりますが、利用客数が多い店であれば、月給額が50万円以上となることもあるようです。
しかし未経験で店長として働くことは難しいため、まずは店舗勤務または自分のお店で経験を積んで、就職・転職の際に評価されるだけの実績・スキルを得る必要があります。
医業類似行為者が給料を上げるには?
1.資格を取得して施術の幅を広げる
給料を上げる方法のひとつとして、可能な施術を増やすことが考えられます。
利用者にとっては、複数の資格を持っている人に施術をお願いする方が信頼できます。勤務先の施設・事業所でも、それだけのスキルが評価されることで、待遇を改善してもらえる可能性があります。
医療類似行為者の資格としてはあん摩マッサージ指圧師やはり師、きゅう師、柔道整復師があります。中には、理学療法士の有資格者もいます。また、整体師やエステティシャンのような民間資格も多いようです。
資格を多く取得していると、医療類似行為者としての視野が広がり、スキルアップにつながります。就職・転職の際も面接官から評価され、好待遇で迎えられるでしょう。
2.スキルを磨く
医療類似行為者として勤務するうえで必要な知識・スキルを継続的に収集して、自分の力を磨くことも給与アップにつながります。医療や健康、心理、接遇など、仕事にかかわる知識・スキルを身につけることで、医療類似行為者としての価値を高める努力を続けましょう。国家資格取得に求められる水準以上のスキルや知識を取得すれば、顧客にも喜ばれるため、職場での評価が高まります。
3.転職する
医療類似行為者が活躍できる場は病院や治療院をはじめ、有料老人ホームや通所介護事業所、スポーツジムなど多数あります。
給与・手当・福利厚生のあり方は職場によって大きく変わってくるため、現状の待遇に不満があり、給与アップを図りたい場合、思い切って転職するのも一つの方法です。現在の職場で複数の関連資格を取得しておくと、転職先でその点が評価され、給与アップにつながることもあります。
ただし、実際に転職する場合は、提示された各種条件をきちんとチェックし、納得のいく職場を選ぶことが大切です。「転職先の方が待遇が良くなかった」という事態は避けるようにしましょう。
4.独立・開業する
病院や治療院など各種施設で実務経験を積み、自分の手腕だけでもやっていけると判断できるならば、独立開業も選択肢の一つです。
ただし、独立して働く場合、開業地の地域性などを考慮した営業活動を自分自身で行う必要があります。また、開業費として数百万円~1千万円以上がかかると言われており、資金面でのハードルも高いのです。
独立・開業して成功すると、大幅な年収アップが期待できます。しかし、リスクを負うこともふまえたうえでの決断が必要です。