作業療法士(OT)の平均給料・年収
厚生労働省の最新調査によれば、作業療法士の平均月給は約30万円、年間の平均賞与は約70万円で、全体の年収はおよそ431万円になります。これは全職種の平均月給31.2万円と比べると少し低めです。
平均月給 | 平均年間賞与 | 平均年収 |
---|---|---|
約30万円 | 約70万円 | 約431万円 |
さらに、医療分野の他職種と比較すると、看護師の平均月給は35.2万円、介護職員は25.8万円となっており、作業療法士はこれらの中間の位置づけにあります。
作業療法士の手取り
平均年収は430万円で、月給にすると約30万円です。
月給とは別でボーナスなど特別に支給される金額は平均約70万円となります。
ただし、この金額はあくまで総支給額で手取りはまた異なります。
住民税や所得税、社会保険料などが引かれるため、純粋に銀行口座に振り込まれる手取り額は2〜3割程度低くなるからです。
年齢にもよりますが、手取り月給は25万円程度で、ボーナスは50万円程度が相場といえます。
作業療法士のボーナス
作業療法士全体の平均賞与額は約66万円です。
年齢別では男性は50代のボーナスがピークとなり、50〜54歳で約108万円、55歳〜59歳で約110万円となります。
一方で、女性の年齢別ボーナスのピークは55歳〜59歳の約132万円となっていて、男性のピーク時の金額より22万円前後も高い金額です。
作業療法士の福利厚生
作業療法士の活躍する医療機関や介護施設などは、一般的な産業よりも待遇が手厚いケースが大半です。
作業療法士の資格手当をはじめ通勤手当や扶養手当、住宅手当、残業手当や休日出勤手当が充実している職場が一般的です。
また、休暇制度も年次有給休暇のほかに独自のリフレッシュ休暇や慶弔休暇を設けている場合が多く、待遇面で働きやすい職場環境となっています。
なお、入院病棟を持つ総合病院や基幹病院なら、看護師をはじめ従業員のための育児施設を設けていたり、シフト制で出産や育児、家事などをスタッフが調整しながら業務を進めている職場もあります。
とくに国公立や私立でも規模の大きな病院ほど、手厚い福利厚生を受けられるはずです。
作業療法士の男女別の平均月給
男性 | 女性 | |
---|---|---|
平均月給 | 約31.4万円 | 約28.7万円 |
平均年間賞与 | 約71.4万円 | 約68.2万円 |
平均年収 | 約448万円 | 約412万円 |
作業療法士の給与は性別によっても差が見られます。2022年の統計によると、男性作業療法士の平均月給は約31.4万円、年間賞与は約71.4万円で、年収換算で約448万円です。
一方、女性は月給約28.7万円、賞与約68.2万円で、年収は約412万円になります。
男性は女性よりも平均約2.7万円高い月給を得ていますが、これには社会的な要因も影響している可能性があります。例えば、女性は結婚や出産でキャリアが中断されやすいためです。
作業療法士の年齢別の平均月給
平均月給 | 平均年間賞与 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
20~24歳 | 約24.3万円 | 約33.0万円 | 約324.9万円 |
25~29歳 | 約26.1万円 | 約65.8万円 | 約379.2万円 |
30~34歳 | 約28.0万円 | 約69.9万円 | 約406.4万円 |
35~39歳 | 約30.5万円 | 約74.6万円 | 約440.4万円 |
40~44歳 | 約32.8万円 | 約88.1万円 | 約482.1万円 |
45~49歳 | 約34.0万円 | 約92.7万円 | 約500.1万円 |
50~54歳 | 約33.8万円 | 約99.4万円 | 約504.5万円 |
55~59歳 | 約37.6万円 | 約104.5万円 | 約555.8万円 |
60~64歳 | 約32.0万円 | 約68.8万円 | 約453.1万円 |
65~69歳 | 約30.1万円 | 約88.1万円 | 約448.7万円 |
これらのデータから明らかなように、作業療法士の給料は55~59歳で最高点を迎えます。この年齢層は役職が高くなることが多く、インセンティブや役職手当が増えるためです。また、60歳以上では再雇用による給与体系の変更が見られ、給料が減少する傾向にあります。
経験が増すにつれて専門性が高まり、より高い評価を受ける可能性が増すため、作業療法士はキャリアを重ねることで給与アップが期待できます。しかし、給与の増減はその他多くの要因にも依存しますので、個々の状況により異なります。
作業療法士の初任給
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、新卒世代の集中する20~24歳の作業療法士・理学療法士の平均月給は男性で23.5万円、女性で23.9万円です。
年間賞与などの特別給与額は男性で28.9万円、女性で55.2万円。年収として計算すると男性は約322万円、女性は352万円と開きがあります。
初任給は、勤務する事業所の経営規模や待遇、地域などにも左右されるので、あくまで目安です。
職場別の作業療法士平均給与額
医療施設
入院施設のある病院、整形外科などリハビリルームのある診療所やクリニックで多くの作業療法士が活躍しています。作業療法士の資格を持つ人のうち、およそ7割は医療施設で働いているというデータもあるほどです。
新卒で就職した作業療法士の多くは、こうした医療機関でスキルを磨いたり、患者とのコミュニケーションの方法を学んだりしながら、キャリアアップを図ることができます。
勤務者が多いこともあって、医療施設勤務の平均年収は作業療法士全体とほぼ同じレベルです。求人案件を見ると、350万円から450万円前後の施設が目立ちます。
年収は就職する医療施設の規模をはじめ年齢や経験、管理職かどうかにも左右されます。施設内で昇進していけば、基本給もアップ、役職手当も含めて年収600万円を超えることも少なくありません。
国立病院
国立病院で働く国家公務員の作業療法士は、給与規定で金額がはっきりしているのがポイントです。
新卒時の基本給は4年制大学の卒業者で18.4万円、3年制の短大の卒業者で約17.3万円。給与額は、独立行政法人国立病院機構給与規定の俸給表に従って支給されます。
実際には、基本給に通勤手当や住居手当のほか、特殊業務手当や業績手当などがプラスされます。国家公務員は、経験年数が上がると俸給表の通りに昇給するのがメリットです。
介護施設
人材不足が叫ばれる介護業界では、全体的に作業療法士の給料は高めのケースが多いです。医療施設勤務の平均年収は350万円から450万円程度ですが、介護施設は運営母体や地域によって500万円を超える求人も目立ちます。
デイサービスや訪問介護、訪問リハで活躍する作業療法士は、人出が足りない介護業界では重宝されています。医療施設より体力的にも精神的にもハードな場面も多いですが、その分給料や年収に反映されているといって良いでしょう。
施設によっては管理職にならなくても、一般職員のままで作業療法士全体の平均年収を超えることも珍しくありません。
介護施設は、介護に関心がある、高齢者や障がい者と関わりたいという作業療法士にはおすすめです。作業所や授産施設、デイサービスなど障害福祉や児童福祉関連の施設で働く作業療法士もいます。
福祉施設は公立やNPO法人が運営するなど、あくまで福祉サービスを提供するために運営されています。民間企業のように営利を目的としていないため、給与待遇で気になるところは多いでしょう。
障がいのある方や子供たちと触れ合う喜びは仕事のやりがいにつながりますが、福祉を通じての社会貢献と収入面とのバランスをどう考えるかが大切となります。
訪問リハビリ
訪問リハビリは常勤のほかパートで働くケースも多くなります。
介護求人サイトを見ると、月給より時給で募集をしている訪問リハビリステーションが少なくありません。
また、非常勤の作業療法士の時給よりやや高めになっています。
ちなみに、みんなの介護求人の求人情報を見ると、月給20万円~の施設が多く、時給は1,500円〜1,700円といった求人も目立ちます。
介護施設や医療施設で働く場合と同等またはそれ以上の給料が見込めるのが魅力です。
施設規模別の給料の違い
作業療法士の給与は、勤務する施設の規模によって異なります。
平均月給 | 平均年収 | |
---|---|---|
少人数(10~99人) | 約31.7万円 | 約431万円 |
中規模(100~999人) | 約29.1万円 | 約417万円 |
大規模(1,000人以上) | 約31.9万円 | 約473万円 |
これは大規模施設が多様なサービス提供と高度な専門性を求めるため、高い賞与と給与を反映していると考えられます。
施設の規模が大きいほど、より広範な責任とともに給与も増加する傾向にあります。
都道府県別の作業療法士の平均給料
作業療法士の給料に関する都道府県別の比較を行うと、地域によって大きな差が見られます。
特に東京都では高い給与が提示されており、その範囲は約20万円程度から約38万円程度に及びます。
これに対し、島根県の作業療法士は月給が平均して約17万円程度から約22万円程度となっており、東京と比べて5万円から10万円程度低い給料となっています。
これは、地域による最低賃金の違いや医療施設の数、求人の状況などに影響されるためです。
また、全国的に見ると、愛知県が平均年収でトップに立ち、約471万円を記録しています。
地域によって作業療法士の給料には大きな差があることが明らかになります。
生活費の違いや医療ニーズの多様性も収入格差の一因と考えられますが、専門性を高め、経験を積むことで、全国どこでも高い評価を得る可能性があります。
雇用形態別の作業療法士の平均給料
正社員
一般的に、フルタイムの正社員として働く場合、月給は24万円から30万円の範囲が多く見られますが、これには賞与が加わるため年収はさらに上昇します。
正社員の平均年収は約427万円であり、これは国内の平均と比較しても見劣りしない数字です。
地域や施設の規模、福利厚生の充実度によっても給料は変動しますが、正社員としての安定した雇用はキャリア形成において大きな利点となります。
経験や年齢が増すにつれて、特に管理職や専門職としての役割を果たすようになると、給料はさらに向上する可能性があります。
このように作業療法士の給料は、雇用形態だけでなく、勤務地や役割によって大きく異なりますが、正社員としての長期的なキャリアパスを築くことで、より高い収入を目指すことが可能です。
契約社員
作業療法士の契約社員としての給与は一般的に年収350万円から380万円の範囲にありますが、職場や業務内容によってはこの限りではありません。
求人情報によると、特定の条件下では年収が400万円を超えることもあります。
この給与差は、契約期間や勤務地、責任の範囲によって左右されるため、契約社員のポジションを選ぶ際にはこれらの要素を慎重に評価することが推奨されます。
パート・アルバイト
作業療法士のアルバイトやパートの給料は、時給制が一般的で、平均時給は約1,300円~1,700円が相場です。
この給料水準は、専門職である作業療法士の需要と資格が反映されています。
非常勤でも、フルタイムの正社員に比べて柔軟な働き方が可能で、家庭と仕事のバランスを取りやすいのが魅力です。
さらに、特定の専門分野での経験や特別な技能を持つ場合、時給はさらに高くなることがあります。
実際に、一部の求人では時給が2,500円を超えることもありますが、勤務地や施設によって差があります。
他の医療職との給料の違い
理学療法士との違い
作業療法士(OT)と理学療法士(PT)は、リハビリテーションの現場で欠かせない存在ですが、その役割や焦点には明確な違いがあります。作業療法士は主に日常生活の質を向上させることを目指し、食事や入浴、移動といった日常的な活動がスムーズに行えるよう支援します。これに対し、理学療法士は身体的な機能の回復を促すことに重点を置き、運動療法や物理療法を通じて、患者の動作能力の向上を図ります。
給与面では、作業療法士と理学療法士の差は意外と少ないです。平均年収はそれぞれ約400万円で、厚生労働省の統計によると、両者はほぼ同じ給与水準に位置しています。ただし、性別比率による給与の違いは見られ、女性が多い作業療法士の場合、管理職への進出が少ない傾向にあるため、全体としては理学療法士の方が高給取りが多い傾向にあります。
具体的には、作業療法士は32.9歳の平均で月給約29万円、年間賞与約66万円を受け取りますが、男女間で見ると年収に約20万円の差が存在します。理学療法士は体を動かすリハビリを主に行うため、体育会系のイメージが強く、スポーツリハビリなど特定の分野で特に需要が高いです。
看護師との違い
日本看護協会がまとめたデータによると、看護師の給料は総支給額で月給で平均約35万円、基本給は約25万円です。
基本給と手当などを含む総支給額との差が10万円あるのは、看護師には夜勤手当や資格手当をはじめ経験や能力に応じて昇給制度がしっかり整えているからと考えられます。
また、看護師は看護師長や認定看護師など役職や上位資格を取得するとさらに役職手当や資格手当が期待できます。
看護師は、患者の命を預かるハードな仕事です。体力面や精神面で辛い場面も多く、大きな責任が伴います。
入院病棟のある病院では、夜勤や準夜勤など交代制で深夜・早朝に働くことも。その分、まとまった手当は付きますが、仕事内容が異なるため、作業療法士の収入とは差が開いています。
介護福祉士との違い
介護現場で中心的に活躍する介護職員の資格に介護福祉士があります。
「処遇状況等調査結果」によると、介護職員全体の年齢別平均年収は40代から50代がピーク。男性は40〜49歳で平均月給約34万円。女性は50〜59歳で約30万円。
20代から50代にかけては女性より男性の方は多い年代で3万円程度、少ない年代で3万円ほど高くなっているのも特徴です。
作業療法士の平均月給のピークも40代から50代にかけてですが、介護職員に比べると男女とも8万円程度高め。介護業界より給与面では優遇されている状況です。
作業療法士が年収を上げる方法
作業療法士の給与を向上させる方法を紹介します。
資格を取得する
作業療法士の年収向上に向けた資格取得の道は多岐にわたります。
- 認定作業療法士:専門性を証明し、資格手当の対象となることも。
- 専門作業療法士:特定の分野において高い実践能力を持つことを証明。
- 認定訪問療法士:在宅リハビリの専門家としての資格。
- 呼吸療法認定士:呼吸リハビリに特化した専門性を示す。
- 理学療法士:作業療法士としての知見に加え、身体運動機能の回復支援能力を持つ。
- 介護支援専門員(ケアマネージャー):介護分野の知識を深め、介護計画の作成や調整能力を証明。
これらの資格を取得することで、作業療法士として専門性の高い知識・技術を身に付けることに繋がります。それに伴い、専門性の高いリハビリテーションサービスを提供することができ、給料アップにつながる場合があります。特に、資格手当が支給される資格を取得することは、直接的な給与アップに繋がります。
また、新たな資格取得には、継続的な学習と自己研鑽が必要です。現場での事例報告のまとめや協会が行う研修の修了など、一定の要件を満たすことで資格を取得できます。これらの努力は、作業療法士としての価値を高め、患者に対するより質の高い支援を可能にし、結果として年収アップにつながります。
管理職にキャリアアップする
作業療法士として給料を上げる一つの方法は、管理職へのキャリアアップです。
管理職に昇進することで、責任は増大しますが、それに伴い給与も上がります。役職に就いた場合、月給だけでなく、年間賞与にも影響が出るため、500万円以上の年収を目指すことも不可能ではありません。ただし、昇進は実際の業績とスキルに基づくもので、相応の努力が必要となります。
給料の高い職場に転職する
年功序列の色合いが濃い作業療法士では、同じ職場で働き続けるより、思い切って転職したほうが大幅な収入アップにつながることも考えられます。
ある程度働いて、それなりに職場に貢献しているのに思うような評価がされないなら、自分の能力やスキルを発揮できるまったく別の職場を見つけるのもおすすめです。
特に介護施設の作業療法士は人手不足の中、売り手市場。転職活動も進めやすいはずです。
今の職場のメリットやデメリットを自分なりに整理したうえで、次の職場でどういった働き方をしたいのか、また、評価制度や昇進・昇給制度がどうなっているのかを注意しながら転職活動を進めると良いでしょう。
今後作業療法士の給料は上がる
少子高齢化と要介護者の増加により、作業療法士の需要は増えそれに伴い給料も上昇傾向にあります。
現在は日本の平均給料よりも低いと感じるかもしれませんが、需要は増えていくため不安に感じることはないでしょう。
とはいえ、今すぐに給料アップを狙う方は自身のスキルアップや転職を活用していくことも良いもではないでしょうか。