理学療法士(PT)の給料・年収
厚生労働省の統計によると、理学療法士の平均年収は約430万円程度であり、これには月収約30万円と賞与約70万円が含まれます。
特に、国公立と私立施設では初任給に差がありますが、長期的には国公立施設の方が昇給率が高い傾向が見られます。
平均月収 | 約30万円 |
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平均年間賞与 | 約70万円 |
平均年齢 | 約34歳 |
平均勤続年数 | 約6年 |
比較すると、全産業の平均年収は約463万円で、理学療法士は若干低めですが、総労働時間(平均167時間/月)を考慮して時給換算すると約2,419円になるため、バランスの取れた職業と言えるでしょう。
また、年齢が上がるにつれて、経験と共に給料の増加も期待できます。
理学療法士の手取り
理学療法士の月額での手取り額は、勤務先、年齢、勤続年数などによって変わってきますが、男性だと約20~27万円、女性だと約16~19万円です。
しかし、理学療法士は男女ともに20代、30代が全体の約8割を占めています。他職の20代、30代と比べてみると、この手取り額は決して安いとは言えないでしょう。
理学療法士の手取り額については若年層の勤務者が多いため、全体平均が安くなりがちです。しかし、同じ年代ということを踏まえると特別手取り額が少ないというわけではないと言えます。
理学療法士のボーナス
理学療法士のボーナス支給額は、平均で約70万円です。
理学療法士の平均賞与額を年齢別に男性と女性で示しています。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 29.0万円 | 35.8万円 |
25~29歳 | 64.9万円 | 66.6万円 |
30~34歳 | 73.1万円 | 65.8万円 |
35~39歳 | 81.9万円 | 65.5万円 |
40~44歳 | 83.5万円 | 94.3万円 |
45~49歳 | 92.6万円 | 92.7万円 |
50~54歳 | 91.0万円 | 107.0万円 |
55~59歳 | 94.8万円 | 114.7万円 |
60~64歳 | 72.6万円 | 54.1万円 |
65~69歳 | 86.4万円 | 89.9万円 |
年齢や性別によって平均賞与額に差があることが示されています。ただし、これらの数字はあくまで平均値であり、個々の理学療法士の実際の賞与額はさまざまな要因によって異なる場合があります。
理学療法士の福利厚生
福利厚生の一部を紹介します。
- 通勤手当
- 住宅手当
- 扶養手当
- 時間給制度
- 退職金制度
- 託児所制度
勤める施設によって福利厚生は様々ですが、働きやすさや職場での満足度に直結するため重要なポイントです。
理学療法士の生涯年収
理学療法士の生涯年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査のデータを元に計算すると、男性の場合は約1億8,000万円、女性の場合は約1億7,000万円です。
男女間の年収差については全世代的に多少発生していますが、勤務先や個人レベルの経歴や能力に基づく差が大きく、男女間に大きな差があるとは言えないでしょう。
最終的な生涯年収の差も1,000万円ほどで、キャリアを積んだベテランの女性理学療法士であれば、男性よりも生涯年収が高くなるということは十分に考えられます。
理学療法士の年齢別、男女別の月収
理学療法士の給料は年齢や経験、勤務地によって大きく異なることが特徴です。
20代は初期の段階では男女間で大きな差は見られませんが、男性は平均で約24.9万円、女性は約25.4万円の月収があります。
30代~50代は年齢が上がるにつれて、男性の平均月収は30万円台後半から40万円台に増加し、女性も同様に増加する傾向にありますが、50代でピークを迎える傾向が見られます。
理学療法士の給料は年齢や性別、経験年数によって大きく変わり、特に中堅からベテランにかけての収入増加が顕著であることが分かります。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 24.9万円 | 25.4万円 |
25~29歳 | 27.7万円 | 26.6万円 |
30~34歳 | 30.5万円 | 27.7万円 |
35~39歳 | 33.3万円 | 29.8万円 |
40~44歳 | 36.2万円 | 31.2万円 |
45~49歳 | 37.5万円 | 32.8万円 |
50~54歳 | 34.3万円 | 34.8万円 |
55~59歳 | 39.5万円 | 38.0万円 |
60~64歳 | 34.3万円 | 26.0万円 |
65~69歳 | 33.3万円 | 19.6万円 |
理学療法士を目指す方や現在活動中の方は、これらの情報を参考に自身のキャリアプランを見直し、より良い条件の職場を目指すことが重要です。
理学療法士の理学療法士の初任給
理学療法士のキャリアをスタートさせる際の初任給は、男女共に平均で約24万円とされ、この数値は新卒者の国内平均初任給を上回る傾向にあります。
特に、20代前半の男性は平均で約362万円、女性は約324万円の年収が見込まれ、20代後半では男性が約395万円、女性が約386万円へと増加します。
これらのデータは、理学療法士としての初歩のステップである初任給が、一般的な大卒者の初任給と比較しても決して低くないことを示しています。
賞与を含めた年収では、初年度の理学療法士は約290万円程度が期待でき、男女間の給与差も20代後半には縮小する傾向があります。
経験やキャリア形成を積むことで、性別に関係なく将来性のある働き方が可能です。
また、勤務地や施設の規模によっても初任給には差が出るため、職場選びに際してはこれらの点を考慮することが重要です。
理学療法士は医療・介護分野の重要な専門職として高い需要があるため、その初任給も国内平均を上回る水準にあります。
職場別の理学療法士の平均収入
職場環境によって異なる理学療法士の平均給与を掘り下げます。
医療施設
医療分野の勤務先に勤めている理学療法士の平均年収は約474万円であり、介護分野などの勤務先に比べると待遇は良い場合が多いです。
医療機関は労働組合がしっかりと形成されているのが一般的で、給与面はもちろんのこと、福利厚生の面でも充実している傾向があります。
ただし、勤務先の病院が市立病院や厚生年金病院などの公立病院か医療法人などが運営している民間病院かによって、給与のあり方は大きく変わるのが一般的です。
公立の施設だと初任給は民間の施設よりも低めですが、給与の昇給率は民間よりも高めとなっています。
一方、民間の施設だと初任給が高めになる一方、給与の伸び率は低めの傾向にあります。
介護施設
医療分野が高めである一方、収入が低めなのが介護分野であり、平均年収額でみると介護分野は約419万円。医療分野よりも50万円以上も低いです。
しかし、現在日本は高齢化が急速に進行し、2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者世代を迎えることもあり、介護分野における理学療法士へのニーズは、ここ数年のうちに急速に高まると予想されています。
特に、体力面での負担が大きい訪問介護・訪問リハビリの事業所では、理学療法士が高待遇で迎えられるケースが増えているようです。
高収入を目指すなら、待遇の良い介護施設を探してみるというのも1つの方法でしょう。理学療法士の資格を持ち一定の実務経験があれば、年収400万円前後から勤務スタートという場合も珍しくありません。
訪問介護
訪問介護に特化した理学療法士は、独自のキャリアパスを描き、高い収入を目指すことが可能です。
介護業界の中でも、体力的な負担と人材不足が深刻な問題となっているため、経験豊富な理学療法士は特に価値が高く、優遇される傾向にあります。
特に訪問リハビリの分野では、成果に応じたインセンティブ制度を導入している施設が増えており、これにより理学療法士は自身のスキルと努力を直接的な収入アップにつなげることができます。
さらに、キャリアが浅い理学療法士であっても、新人研修をしっかりと行っている施設では就職の門戸が開かれています。
クリニック
病院に比べて整形外科クリニックなどでは、基本給の設定が高い傾向にありますが、総合的な福利厚生の面では病院が上回るケースも少なくありません。
また、病院はシフト制が多く、日曜日も仕事があるケースが多いですが、クリニックは休みの曜日が固定である場合が多いです。
そのため、ワークライフバランスを比較的取りやすいと言えるでしょう。
施設規模別の平均給料
施設規模に応じた理学療法士の給料の違いを詳細に分析します。
施設規模 | 平均月給 | 平均年間賞与 |
---|---|---|
1,000人以上 | 31.9万円 | 90.1万円 |
100~999人 | 29.1万円 | 68.1万円 |
10~99人 | 31.7万円 | 50.8万円 |
これらのデータから、特に賞与の面で大規模施設が優位であることがわかります。
一方、月給は施設の規模による大きな差は見られません.
これにより、理学療法士が高収入を目指す場合、大規模施設での勤務がおすすめです。
さらに、役職に就くと、その責任範囲に応じて手当などの待遇改善が期待できます。
都道府県別の理学療法士の平均給料
都道府県別に理学療法士の給料を見ていくと、東京都が高い給与水準となっています。
実際、みんなの介護求人に掲載されている介護付き有料老人ホームなどの求人では、月給22.3万~24.3万円、月給27.5万~37.5万円で募集している求人もあります。
パート、アルバイトの場合でも1,500円~2,500円と、高時給な求人が目立ちます。施設数の多さに加え、求人数も多いのが特徴です。
施設によって福利厚生はさまざまなこともあり、賞与や通勤手当の有無など施設ごとの特徴も吟味する必要があります。
一方、島根県が給料が安く、平均300万円ほどです。
みんなの介護求人に掲載されている特別養護老人ホーム、訪問看護やデイケアの求人では、月給18.8万~22.3万円と東京都と比べて月額で5~10万円ほどの差があります。
40代、50代歓迎の求人や新卒・未経験可の求人、一度理学療法士の現場から離れ、ブランクがある人も歓迎している求人もあり、さまざまです。
ほかの医療系専門職との給料比較
理学療法士の給料は他の医療専門職と比較してどうなのか、見ていきましょう。
職種 | 平均年収 |
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薬剤師 | 548万円 |
看護師 | 480万円 |
理学療法士 | 431万円 |
最新の調査によると、薬剤師が平均年収約548万円、看護師が約480万円となっており、これらは理学療法士の平均年収431万円と比べて高い数字です。
理学療法士の給料は、夜勤が少ないことを踏まえると、他の夜勤が必須の医療職種と比べると割と高めの部類に入ります。
また、薬剤師が最も高い年収を得ているのは、長い期間にわたる専門教育と必要とされる高度な知識が影響しています。
作業療法士
理学療法士は主に患者の基本動作のリハビリに注力するのに対し、作業療法士は日常生活の応用動作をサポートします。
給料面では、特に30代以降、理学療法士の方が少し高い傾向にあり、この差は年齢と共に拡大することがデータから読み取れます。しかし、初期段階ではその差は限定的です。
昇給制度も両職種で似通っており、患者のリハビリテーションを支援する基本的な使命感は同じであると言えるでしょう。
看護師
日本看護協会がまとめた2013年のデータによると、看護師の給料は総支給額で月収で平均約35万円、基本給は約25万円です。
看護師の場合、夜勤や休日出勤を要求されることが多く、ハードワークではありますが、別途手当が支給されるため待遇は悪くありません。看護師は患者の命に関わる仕事も多く、心身ともに負担が大きな業務を任されるため、リハビリを専門とする理学療法士よりも全般的にみると給与は高めです。
実際の給与額は勤務先によっても変わり、総合病院のような規模の大きな職場だと年収が高くなる傾向があります。
歯科衛生士
歯科衛生士は理学療法士と同様、国家試験の合格が求められる資格です。しかし合格率は9割を超え、所定の養成学校で必要なカリキュラムを終えれば、問題なく合格できます。
歯科医師の補助業務を行うことがメインであるため、医療系の専門職ではありますが、年収は理学療法士よりも比較的低めというのが実情といえます。
ただし、勤務先の医院の規模によって収入は変わる傾向があり、大きな病院に勤めている歯科衛生士ほど平均年収が高いです。
理学療法士が給料を上げる方法
資格を取得する
理学療法士の給料アップを目指すなら、資格取得が鍵です。特に、ケアマネージャーや専門理学療法士など、他職種や専門分野の資格は、介護施設での需要拡大に伴い、給与向上に繋がります。
これらの資格は、身体への負担を減らしつつ、キャリアアップのチャンスを広げます。
管理職にキャリアアップする
理学療法士が収入を大きく伸ばす一つの道は、管理職への昇進です。通常、40代で管理職に就くことが多く、高い専門性はキャリアアップに役立つため、若い時期からのスキルアップと経験積み重ねが重要。
上位資格取得も価値向上に繋がります。管理職へは少数しか進めず、努力と時間が必要ですが、役職手当の追加で年収は大幅に上がります。
ただ、特定の役職では残業代が出ないケースも。長年の勤務で収入は増えるものの、大きな飛躍は管理職昇進時に期待。
給料の高い職場に転職する
理学療法士としての収入向上を目指す場合、転職は一つの有効な手段です。重要なのは、転職先選びで待遇や仕事内容を細かく確認し、実績や技術を積んでから動くこと。
特に、訪問リハビリなど収入を増やせる分野への転職は、単価の高さとインセンティブにより効率的に稼げますが、負担も大きいため慎重に選ぶ必要があります。
勤続年数や前職での経験も転職時の評価に影響するため、最低1年以上は勤務してから次のステップを考えるとよいでしょう。
病院、診療所、老人介護福祉施設など、さまざまな就業場所から自分に合った条件の良い職場を見つけることが、収入アップへの鍵となります。
独立開業する
理学療法士が独立開業を目指すには、直接の開業は資格制約のため難しいですが、他のルートでの事業立ち上げは可能です。具体的には、鍼灸師や柔道整復師などの開業権を持つ資格を取得することで、自分のクリニックや整体院を開く道が開けます。
これには再教育と投資が必要になりますが、介護予防事業所の開設など、理学療法士の知識を活かせる他の形態での独立も選択肢の一つです。
成功すれば、理学療法士としてのスキルを活かしつつ、収入の大幅なアップも期待できます。
理学療法士の給料が安い理由
理学療法士の給料が比較的低い主な原因は、夜勤の機会が少なく、他の医療職と比べても基本給が低めに設定されていることです。
加えて、昇給の機会が限られており、診療報酬制度の影響も受けやすい職種です。
このような状況は、理学療法士の給与体系に大きく影響しています。
理学療法士の役割は非常に重要ですが、給料の面では課題があります。
理学療法士の数が増えている
理学療法士の業界では、近年、専門家の数が飛躍的に増加しています。
公益社団法人日本理学療法士協会のデータによると、令和4年度には会員数が136,357人に達し、過去10年間で52,418人もの増加を記録しました。
この増加は、高齢化に伴う需要の高まりと密接に関連していますが、供給過多の状態を招き、給料の上昇にブレーキをかける一因となっています。
さらに、理学療法士国家試験の合格者数も増え続け、令和5年度には11,312人が合格し、専門家のプールをさらに拡大しました。
この状況は、給与の上昇が期待しにくい業界の現状を示しています。
厚生労働省の推計では、2040年には理学療法士の供給数が需要の約1.5倍に達すると予測されています。
しかし、介護分野での需要は引き続き増加することが予想され、特に実力のある理学療法士への需要は変わらず高いでしょう。
この競争の激しい環境で、理学療法士が差別化を図り、より多くの職場から求められる専門家になるためには、専門性の向上や継続的な学習が鍵となります。
このような努力によって、理学療法士は業界内での自身の価値を高めることが可能です。
経験やスキルが給与に反映されにくい
理学療法士の給与構造は、時間単位での診療報酬制度に基づいており、リハビリテーションのセッション数に応じて報酬が定められています。
1セッションは通常20分であり、8時間の勤務日では最大で24セッションが可能ですが、実際には会議や記録作成などの他の業務もあるため、平均的には18から24セッションに収まります。
これにより、経験豊富な理学療法士も給与の大幅な向上を期待することが難しくなっています。
特にリハビリの種類による単位数の上限や、公立病院など勤務先による昇給の差異が存在しますが、全体的に昇給率は控えめであり、給与アップの見込みが限られているのが現状です。
このように、給与面での挑戦と機会は存在しますが、勤務地や施設によって異なります。
診療報酬制度の制限を受ける
理学療法士の給料に大きく影響を与える要素の一つに、診療報酬制度があります。
この制度は、医療行為に対して厚生労働大臣が定める点数基準に基づいて報酬が計算され、全国どこでも患者が一定の自己負担で医療サービスを受けられるようになっています。
しかし、日本が直面している超高齢社会の影響で医療費が膨大になり、国の財政負担が増大していることから、診療報酬の上昇は抑制されがちです。
特に理学療法士の報酬は、医療機関の利益増大と直結しにくい構造を持っており、患者数の増加が直接給料の上昇に繋がるわけではありません。
このため、診療報酬単価の抑制は理学療法士の給与水準にも影響を及ぼし、2016年の財政制度分科会の資料によると、理学療法士の給与水準は過去20年でほぼ横ばいであり、2000年代前半と比較して実際には減少しているとの報告があります。
この背景には、国民の医療費負担を軽減するための政策が働いており、理学療法士を含む医療従事者の報酬上昇が限定的になる要因となっています。
これらの情報は、理学療法士の給料が安定しづらい一因として理解することが重要です。
理学療法士としてのキャリアを築く上で、このような報酬制度の制約を認識し、給与以外の職場選択基準やキャリアアップの機会を検討することが有益です。