デイケア(通所リハビリテーション)とは
デイケアとは介護保険サービスの一種で、要介護認定を受けて在宅生活を送っている高齢者が、病院や診療所、介護老人保健施設などに通って、日帰りでリハビリや食事、入浴などのサポートを受けるサービスのことです。
デイケアには理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などリハビリの専門職が常駐し、リハビリに使用する機器類が充実しています。
また、看護師や介護士も常駐し、要介護度の高い方への対応力も高いです。
要介護状態となり、リハビリテーション病棟などから退院して在宅復帰したものの、引き続きリハビリを行いたい方や長期的なリハビリを必要とする方に適した介護サービスと言えるでしょう。
また、デイケアには精神障害を持った方を対象とした精神科デイケアもあり、1日6時間体制で、利用者一人ひとりにあったプログラムを、グループ単位で実施しています。
1.サービス内容と特徴
デイケアは主にリハビリのサービスを提供している通所施設です。
具体的には、専門的な器具・機器を用いたリハビリ、理学療法士などの専門家の指導による運動機能の向上、さらに口腔機能向上を目的としたリハビリ、栄養改善などのサービスを受けることができます。
健康チェック
デイケアでは、利用者に対して体温や血圧の測定といった健康チェックが必ず行われます。
チェックの結果、もし問題があると認められた場合は、館内に常駐している医師や看護師、あるいは併設されている病院・診療所で対応。健康面で問題のある利用者も、安心して利用できます。
個別リハビリテーション
個別リハビリテーションとは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリの専門家が、利用者と1対1で実施するリハビリのことです。関節や筋力などの機能回復訓練をはじめ、日常生活動作の訓練なども行います。
個別リハビリテーションで行われる具体的なリハビリサービスの内容は施設ごとに違うので、利用者は担当者と相談のうえ、自分に合った施設を利用するのが通例です。
体操
デイケアでは、体操による集団的なリハビリも行われています。全身を使ったものから、車椅子の方でもできるものまで幅広く実施。心身状態や要介護度に関係なく、利用者誰もが参加できる内容となっています。
利用者が楽しめるように、運動レクリエーションのような形で行われることも多いです。
入浴介助
デイケアでは入浴のサービスも提供しており、体の状態をチェックしたうえで、安全を最優先にして介助が行われます。
ただし、利用者の体調が悪いときなどは基本的に実施しません。その場合、入浴の代わりにあたたかいタオルで体を拭く、足のみをお湯につける足浴などを行います。
2.一日の流れ
デイケアの利用時間は、大きく分けて1日利用と短時間利用の2種類があります。
1日利用の場合、午前中にリハビリや入浴を提供することが多いです。昼食後、午後からはその日の利用者が集まって、集団での体操やレクリエーションを行います。
利用者のなかには集団で何かをすることが苦手な方もいるので、その場合は個別で対応するのが基本です。
短時間利用の場合は、バイタルチェックを行ったあと、個別のリハビリのみを集中して行います。短時間利用を希望する人は、リハビリのみを利用目的としているのが一般的です。
利用者によっては入浴を希望する方もいますが、その場合は体力のことを考えて、リハビリ後に提供します。
3.利用者の平均年齢、平均介護度
デイケアは介護保険サービスであるため、特定疾病などのケースを除くと、原則として利用者は65歳以上の高齢者です。
そのため利用者の平均年齢は高く、2016年の厚生労働省による調査によれば、デイケアを利用している人の平均年齢は80.1歳。同じ高齢者でも、かなりご高齢の方が多く利用しています。
利用者の平均介護度は、同調査によると「要介護1.75」。要介護認定は1~5段階で構成され、5が最も容体が重いです。要介護1.75ということは、比較的軽度の要介護度の方が多く利用していると言えます。
しかし、全体的には軽度の人が多く利用しているとはいえ、要介護4、5という重度の方への対応力は高いです。デイケアでは医師や看護師も配置され、医療的ケアも行うことができます。
4.施設基準
介護保険サービスを提供する施設は、すべて介護保険法により厳格な設備基準、人員配置基準が定められています。デイケアも例外ではなく、法律に基づいた基準を満たしていないと、開業はできません。
特にデイケアは、リハビリに特化した通所施設であるため、必要とされる設備や、配置すべき人員の要求水準は高いです。
しかしそれだけに、持病を持っている要介護者も安心して利用でき、またリハビリの専門職の方や医療関連の有資格者は、就労できる機会を確保しやすいとも言えるでしょう。
スタッフの人員基準
病院や介護保険施設の場合
専任の常勤医師が1人以上勤務している必要があります。また、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、さらに看護師、准看護師、介護職員の配置も必須です。
利用者数によっても基準は異なり、リハビリ単位ごとに利用者数が10人以下のときは、サービス提供時間中、デイケアにかかわる従事者を1人以上確保する必要があります。
リハビリ単位ごとに利用者数が10名以上となる場合は、サービス提供時間を通して、利用者数を10で割った数のデイケアにかかわる従事者の配置が必要です。
診療所の場合
医師の配置基準は、同時に利用する利用者の数が10人を超える場合は専任常勤医師を1人以上、10人以下の場合は1人配置する必要があります。
病院・介護老人保健施設と同様、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、さらに看護師、准看護師、看護職員の配置が必須です。
これら専門職の配置は、リハビリ単位ごとに利用者数が10人以下のときは、サービス提供時間中に専属で従事する者を1人以上配置。リハビリ単位ごとに利用者の数が10名以上のときは、利用者数を10で割った数の専属でデイケアに従事する者を配置します。
設備基準
デイケアの施設基準は、リハビリ専用室3平米に対して、利用定員に乗じて計算された面積を持つこととされています。
利用定員が多いデイケアは、その分広いリハビリ室を確保しなければなりません。また、リハビリの実施に必要な専門の機会および器具なども必須です。
こうしたリハビリに関する設備基準は、同じ通所施設であるデイサービスにはありません。リハビリに特化しているデイケアだからこそ、要求されている基準であると言えます。
ほかのサービスとの比較
1.デイサービス(通所介護)との違い
デイサービスでもリハビリを受けることはできます。しかし、医師や看護師が常駐し、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった リハビリに特化した専門職が多く常駐しているのがデイケアです。
医療的なケアを常時必要とする方、あるいは病院を退院したばかりで、引き続きその病院でのリハビリを受けたい方が利用するのがデイケアと言えるでしょう。
リハビリを必要とする人のなかには、最初にデイケアにおいてデイサービスの機能訓練でも対応できるほど機能回復を目指し、そのあとにデイサービスに移行するというケースもあるようです。
なお、デイケアはデイサービスよりも利用までの手続きに時間がかかる傾向があります。
2.訪問リハビリとの違い
要介護認定を受けて在宅で生活している方の場合、リハビリを受けられる介護サービスとしては、デイケアのほかに訪問リハビリもあります。
訪問リハビリは、利用者宅に理学療法士などのリハビリの専門職が訪問し、リハビリを行うというサービスです。
一般的に、訪問リハビリは病院などからの退院後、自宅の環境に適応するために利用される傾向があります。例えば、自宅にある浴槽をまたぐための訓練を行う場合、自宅から近所の買いものスポットまで転倒せずに歩きたい、といった場合です。
そのため利用の傾向としては、最初にデイケアに通って基礎的な身体機能を回復・向上させ、デイケアで一定の成果が出た後に、訪問リハビリを利用して自宅での生活動作のリハビリを行う、というケースが多く見受けられます。
リハビリと機能訓練の違い
機能訓練はデイサービスでも提供されていますが、そもそも機能訓練とリハビリは、似ているようで大きな違いがあります。
どちらも心身機能の維持、回復を目的としたサービスですが、リハビリが医師の指導を事前に受ける必要があるのに対して、機能訓練は医師の指導を必要としません。
デイケアに医師の常駐が義務付けられているのは、機能訓練ではなくリハビリを提供するためであるわけです。
医師の指導を受けずに心身機能の回復を図る場合は、デイサービスでも問題はありません。しかし、病院から退院した直後など、医師の指導に基づいた本格的な機能回復を目指したい場合は、デイケアを利用することが望ましいわけです。
デイケアの仕事
1.仕事内容
デイケアはリハビリを提供する施設ですので、「リハビリの実施」が第一義的な仕事内容です。
しかし、デイケアで提供されているサービスはそれだけではありません。勤務している職員がそれぞれの専門性を活かしながら、多様なサービスを提供しています。以下ではリハビリ以外の仕事内容についてご紹介しましょう。
まず、デイケアは通所施設であるため、利用者を自宅から施設へと送り迎えをする送迎サービスが欠かせません。
送迎にあたっては、専属のドライバーが雇用されている施設とそうでない施設があります。もし専属ドライバーがいない場合は、手の空いている専門職が送迎を行うのが通例です。
また、所属する介護職員や看護職員は、食事、入浴、排泄の介助を行う必要があります。利用者は要介護認定を受けている人であるため、特に重度の利用者であれば、これらの介助は必須です。
さらに、デイケアではレクリエーションも日々行われているため、その企画、運営も行う必要があります。少しでも多くの利用者に参加してもらい、喜んでもらえるよう、実施内容を工夫し、楽しめる内容にすることが大事です。
2.働くために必要な資格
デイケアは医師の常駐が必須であり、そのほか、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士なども配置されています。
医療職もしくはリハビリの専門員として勤務する場合は、これら資格を取得している必要があります。
ただし、リハビリや医療分野の職務に携わらず、介護職員として働く場合であれば、上記の医療・リハビリ関連の資格は必要ありません。
3.雇用形態別の給料
デイケアで働く場合、どのような専門領域で働くかによって給与額は大きく変わってきます。
医師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、あるいは看護職員の場合は、病院に勤務した場合に準じる給与額と考えられるでしょう。
ただ、デイケアに介護職員として働く場合であれば給与額はデイサービスに準じる形となり、正社員であれば平均で月給約26万円、パート・アルバイトであれば時給900~1,100円ほどが相場です。
良いデイケアとは?選び方のポイント3つ
1.デイケアの目的、条件をまとめる
利用者がデイケアを利用するにあたっては、どのような生活課題に直面しているかを明確にし、デイケアに対して希望することを確認する必要があります。
例えば、デイケアでは送迎サービスが行われていますが、希望する出発時間や帰宅時間があれば、事前に伝えておくことが大事です。
また、利用者によっては長時間の座位姿勢を取ることができないため、座っていられる時間を伝える必要もあります。もし車椅子を利用しているなら、専用の送迎者を依頼することも必要です。
さらにデイケアを一日利用する場合は昼食を提供しますが、その際も利用者は、塩分制限やアレルギー食品など、食事制限の有無を確認する必要があります。嚥下機能が弱っている場合は、おかゆやきざみ食の提供が欠かせません。
利用者によっては多人数と交流するのが苦手なため、利用者人数の少ない施設を希望することもあります。こうした諸条件に対応できる力が、デイケアには求められるわけです。
2.設備やサービス内容を確認する
送迎サービスや食事サービス、あるいは施設内の利用環境などは、デイケア施設ごとに大きく変わってきます。
例えば、リハビリ器具の中には、浴槽をまたぐためのリハビリを行うための専用の器具をすべての施設が用意しているわけではありません。
各施設がどのような設備体制であるのかを、利用者は事前に確認する必要があります。もし筋力をつけたいという場合は、専用のマシントレーニングの機器がどのくらい整備されているかも重要になるでしょう。
また、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の配置状況も施設によって違います。どの専門職からどのようなリハビリを受けたいのか、1対1の個別リハビリをどのくらい受けられるのかも、事前に利用者が確認すべき事項です。
3.事前に見学、体験利用をする
ほとんどのデイケアでは、実際に利用する前に見学を行えます。自宅からの送迎時間や施設内の設備状況、職員やほかの利用者の雰囲気などは、実際に現地に行かなければ確認できません。
利用後すぐに「自分には合わなかった」といって通うのをやめる、という事態を防ぐためにも、事前に見学を行う利用者は多いです。
また、デイケアのなかには、一日体験利用サービスを行っているところもあります。体験利用をすれば、実際に施設の送迎用の自動車が自宅までやってくるなど、受けられるサービス内容は、利用を開始した場合とまったく同様です。
もちろん、夕方の帰宅時も自宅まで送ってくれます。体験利用によって、よりその施設のことを理解し、後悔のない選択を行えるでしょう。
デイケアの利用方法は?
1.要支援・要介護認定された人が対象
デイケアは介護保険サービスであるため、利用にあたってはまず住んでいる市区町村自治体に対して、要介護認定の申請を行う必要があります。
そのため、要介護認定を受けないまま、直接施設側に利用申請をしても利用はできません。
要介護認定を申請し、要支援1~2、要介護1~5のいずれかの認定を受けた場合に、担当のケアマネージャーと相談してケアプランを策定したうえで、デイケアの利用ができるわけです。
ただし、申請すれば必ず要支援・要介護認定を受けられるわけではありません。該当しないほど元気であると認められる場合は、「非該当」の認定が通知されます。非該当となった場合は、介護保険適用でのデイケアの利用はできません。
2.利用料金
一日あたりの自己負担額
デイケアの利用料金は、要介護認定の段階と利用時間によって違います。自己負担1割の場合の利用料金は、以下の通りです。
時間区分 | 要介護度 | 自己負担額(円/回) ※1単位10円の地域の場合 |
単位 |
---|---|---|---|
1時間以上 | 2時間未満要介護1 | 331円 | 331単位 |
要介護2 | 360円 | 360単位 | |
要介護3 | 390円 | 390単位 | |
要介護4 | 419円 | 419単位 | |
要介護5 | 450円 | 450単位 | |
2時間以上 | 3時間未満要介護1 | 345円 | 345単位 |
要介護2 | 400円 | 400単位 | |
要介護3 | 457円 | 457単位 | |
要介護4 | 513円 | 513単位 | |
要介護5 | 569円 | 569単位 | |
3時間以上 | 4時間未満要介護1 | 446円 | 446単位 |
要介護2 | 523円 | 523単位 | |
要介護3 | 599円 | 599単位 | |
要介護4 | 697円 | 697単位 | |
要介護5 | 793円 | 793単位 | |
4時間以上 | 5時間未満要介護1 | 511円 | 511単位 |
要介護2 | 598円 | 598単位 | |
要介護3 | 684円 | 684単位 | |
要介護4 | 795円 | 795単位 | |
要介護5 | 905円 | 905単位 | |
5時間以上 | 6時間未満要介護1 | 579円 | 579単位 |
要介護2 | 692円 | 692単位 | |
要介護3 | 803円 | 803単位 | |
要介護4 | 935円 | 935単位 | |
要介護5 | 1,065円 | 1,065単位 | |
6時間以上 | 7時間未満要介護1 | 670円 | 670単位 |
要介護2 | 801円 | 801単位 | |
要介護3 | 929円 | 929単位 | |
要介護4 | 1,081円 | 1,081単位 | |
要介護5 | 1,231円 | 1,231単位 | |
7時間以上 | 8時間未満要介護1 | 716円 | 716単位 |
要介護2 | 853円 | 853単位 | |
要介護3 | 993円 | 993単位 | |
要介護4 | 1,157円 | 1,157単位 | |
要介護5 | 1,317円 | 1,317単位 |
時点
こちらは前年度の1ヵ月あたりの利用者数が平均750人以内となる通常規模型のデイケアを利用する場合となります。
なお、利用者数が平均900人以上となるデイケアを大規模型(II)といいます。通常規模型と大規模型の基本サービス費を視覚的にわかりやすいようグラフで表したものが下記となります。
利用時間、要介護度が上がるにつれて自己負担費用も上がっていることがわかります。
医療保険と介護保険は併用できない
リハビリは医療保険も利用できますが、原則として医療保険と介護保険は併用できません。
高齢者の場合、心身状態においてどちらの保険でもサービスを利用できる場合は、介護保険によるリハビリを優先するのがルールです。
ただし、がん末期など特別な事情があるときは医療保険における疾患別リハビリの対象となるケースがあり、この場合は一定期間の併用ができます。
そのほかにかかる料金
デイケアでは介護保険の自己負担額のほかにも、実費の負担が必要です。例えば、食事やおやつ代は実費を支払う必要があります。
実際の金額は施設ごとに異なるため、デイケアを利用する場合は事前の確認が必要です。
また、自宅から施設までの送迎は基本料金でまかなわれますが、個別リハビリや入浴などは別途加算される介護保険サービスに該当します。
そのため、利用すると自己負担額が少しだけ高くなるので、この点も利用者は注意する必要があるでしょう。
デイケアを利用するメリット・デメリット
1.メリット
デイケアを利用することの最大のメリットは、専門家の指導のもと、心身機能の回復や体力の維持・向上を図ることができる点です。
また、ケアプランに沿って決められた時間に外出することになり、自宅での引きこもりを防止できます。
ほかにも、家族以外の人とコミュニケーションを取れるという点も大きなメリットです。自宅で介護を受ける生活を送っていると、会話のやり取りが家族のみに終始します。
一人暮らしの場合は、会話の回数そのものが少なくなることが多いです。デイケアを利用すると、ほかの利用者や施設のスタッフと会話を楽しむことができます。
ほかにも、介護者である家族と同居している場合、デイケア利用中に介護負担から解放される、というメリットも挙げることができるでしょう。デイケアを利用することで得られるメリットは大きいです。
2.デメリット
一方、デイケアにはデメリットもあります。その1つが、施設によってリハビリ設備に差があるという点です。
デイケアを実施している病院、介護老人保健施設、診療所は、施設ごとに規模が違います。整備されている設備も異なるので、自宅の周辺地域にどのような施設があるかによって、その人が受けられるサービスの質が変わることも多いです。
受け入れ人数の多い施設だと、一人ひとりに目を配られる時間が少なくなることもあります。
また、人とコミュニケーションを取ることが苦手な人は、デイケアに通うことにストレスを感じやすいです。集団でレクリエーションや体操を行う場合、ほかの利用者と一緒に楽しめることが不可欠。そうしたことに苦痛を感じる人にとっては、デイケアは利用しにくいサービスともなり得ます。