【事例付きで解説】介護職に必要な観察力とは?気づきを共有して信頼を生む4つのポイント

介護現場で働き始めたばかりの新人職員にとって、利用者さんの小さな変化を見逃さず、適切に対応することは簡単ではありません。 時には「いつもと違う」という違和感を覚えても、それを言葉にできなかったり、自分の担当外だからと見過ごしてしまったりすることもあります。
しかし、観察力を養い、感じたことを適切に伝え、責任を持って行動することで、利用者さんの安全を守り、チームの一員として信頼される介護職員へと成長できるのです。
この記事では、新人介護士のカイゴさんとうめが、業務の中で重要な能力の一つである観察力を身につけ、活用するコツをご紹介します。


小さな変化に気づく「観察力を養う」
夜勤明けの朝の起床時間。カイゴさんはいつも通り利用者さんの着脱介助を行っていました。

声掛けをしましたが返事がなく、カイゴさんは一瞬戸惑いました。しかし、朝が苦手な利用者さんと認識していたため、眠気でぼんやりしているだけだと判断し、そのまま着替え介助を続けました。
しかし昼食時、食事に手を付けていないことに違和感を覚え、別のスタッフが検温すると熱発していました。朝の時点ですでに体調を崩し始めていたようです。
NG例:普段と同じに見えて変化を見逃す







OK例:ちょっとした違和感もメモして報告


また別の日に声掛けをしてみましたが、普段に比べ反応が薄かったため、記録用紙に「表情が赤みあり/反応がやや遅い」と記載し、念のためバイタルを確認。
無理に起こさず、保冷枕をあて安静にし、朝の申し送りで報告しました。
- 体温:37.3℃
- P:89
- Bp:127/48mmHg
- SpO2:92%
- 表情が赤みあり/反応がやや遅い
上記の報告のおかげで看護師がすぐに確認することができ、早めの対応につながりました。



POINT
- 小さなサインはすぐにメモ&申し送り
- 表情・反応・声の調子などを前日比で見よう
担当外にも目を向ける「視野の広さ」
ある日のお昼ごろ、カイゴさんはトイレ誘導を行っていました。

歩行を見守りながら廊下を進んでいると、隣のフロアにいる別の利用者さんがひとりで立ち上がりかけているのが目に入りました。

そのまま誘導を続けていたところ、ガタンという大きな音がしました。確認してみると、立ち上がりかけていた利用者さんが椅子ごと転倒しそうになっていました。幸い通りかかったスタッフが転倒寸前のところで支えたため、ケガはありませんでした。
NG例:自分の仕事じゃないといって放置







OK例:気づきを共有して事故を未然に防止


その後、すぐにピッチでフロア担当の職員に声をかけたおかげで、その利用者さんは無事に誘導され、転倒を防ぐことができた。



POINT
- 迷ったらまず声かけで様子を確認
- 優先順位を考えつつ、周囲の安全も確保する
- 気づいた人が最初のアクションを起こす
申し送りや会議で意見を伝える「発言力」
定例のカンファレンスは、利用者さんごとの心身の状態や適切な介護技術を共有する大切な時間です。利用者さんの最近の変化について問われたとき、カイゴさんは一瞬手を挙げかけましたが、躊躇してしまいました。

結局発言ができないまま会議は終了してしまいました。
NG例:感じたことをうまく言葉にできない







OK例:「事実→気づき→提案」で3行発言を意識

翌週の会議。カイゴさんは事前に話す内容を整理して臨んだ。

何が要因となっているのかを確認した方が良いと思っています。職員側で対応ができそうな内容であれば、私の方で対応したいと思いますがいかがでしょうか?
他のスタッフからも同意の声が上がり、結果カイゴさんの提案が採用されました。



POINT
- 伝えるときは事実→気づき→提案の順で整理
- 具体例・前後の比較があると説得力アップ
- 短く簡潔に自分の考え・言葉を話す
タスクをきちんとやり遂げる「責任感」
レクリエーションの片づけをしていると、カイゴさんは先輩から利用者さんの洗濯物を取り込むよう指示を受けた。

そう返事をしたものの、すぐに別の利用者からトイレ誘導を頼まれ、その後はお茶出しの時間に。バタバタしているうちに、洗濯物のことはすっかり頭から抜けてしまいました。その後、先輩から確認され、思いだしたカイゴさんは急いで洗濯物を取り込みました。
NG例:「後でやる」がトラブルのもとに







OK例:頼まれたことはすぐにメモをして整理


頼まれごとがあるたびにすぐにメモを取り、タスクが終わるたびに完了マークを付けていったおかげで、複数ある頼まれごとを抜け漏れなく対応することができました。



POINT
- 頼まれたことはその場でメモして可視化する
- 頭だけに頼らず、ツールやメモ帳を活用する
- 完了したらチェックし、小さな達成を積み重ねる
まとめ:新人介護職に必要な観察力の4つのポイント







小さな気づきを大切にし、視野を広く持って行動すれば、利用者さんの変化を見逃すことなく、安全で安心な介護を提供できます。 一つずつ意識して、確実なケアにつなげていきましょう。

