株式会社フレンドが運営する「グループホームふれんど芳賀」(栃木県芳賀郡芳賀町)のホーム長・手塚紀幸さんに、現在の仕事と転職についてお話を伺いました。手塚さんの前職は警察官。「たくさんの人に『警察官を辞めるなんてもったいない!』と言われたけれど、今の仕事の方が自分にはあっていて、やりがいを感じています」とにこやかに語ってくださいました。

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Profile ホーム長 手塚 紀幸さん

高校卒業後、警察官として10年間勤務。「たまたま試験に合格したからなった」仕事へのモチベーションを保ち続けることが難しいと感じ、28歳で退職。デイサービスで働く母親のすすめで介護の世界に興味を持ち、フレンドに入社。現在は奥様と2人暮らし。

経歴
2004年3月 高校を卒業
2004年~2014年 警察官として勤務
2014年9月~ フレンド入社
長所 「とりあえずやってみる」という前向きな姿勢
短所 計画性が足りないところ
趣味 おいしいものを食べること
特技 料理

うだつが上がらずモヤモヤしていた警察官時代

以前はどのようなお仕事をされていたのですか?

高校卒業後、栃木県で警察官として10年間勤務していました。と言っても、警察官になったのは、なりたくてなったわけではなく、たまたま試験に受かったからなんです。

私は小学校の高学年から柔道をはじめ、高校まで続けていました。勉強はまったくダメで、友人には「手塚くんは授業中寝ている姿しか記憶にない」と言われるほど。かと言って推薦で大学に行けるほど柔道が強いわけではなく…担任の先生には「どうするんだ!?行ける大学ないぞ!」と心配されるばかりでした。

公務員模試を受けてみたらそれなりにいい結果だったという理由で、警察官・自衛隊・消防士の試験を受け、合格した警察官として働くことになりました。

どうして転職を考えるようになったのですか?

「たまたま受かったから」という理由で警察官になったので、モチベーションが続かなかったのです。周りの「小さいころから警察官になりたかった」という人たちの熱意に圧倒されてしまう自分がいました。同期や後輩がどんどん出世していく中、上司の顔色を伺って仕事をしているのが辛くなり、30歳を前にして「やり直すなら今だ」と退職を決意しました。

計画性のない私のことですから、辞めた後どうするかを考えていたわけでもなく、家族にも退職した後で伝えたくらいです。

心配した母が「次の職が決まっていないなら、介護の仕事はどう?」とすすめてくれたことが、今につながりました。実は母も、無資格・無経験から介護の世界に飛び込んだひとり。現在、デイサービスの職員として働いています。

母の働き方をみて「悪くないかも」と思った私は、ハローワークの職業訓練で「介護職員初任者研修」を取得しました。その際、実習先だったフレンドの方に声をかけてもらって、警察官を辞めてから半年後にパートとして入社することになりました。

研修先はデイサービスの事業所でしたが、グループホームに配属してもらいました。夜勤がある方がたくさんお給料をいただけるというのが理由です(笑)。その後、入社半年で正社員に登用されました。2年ほどして、今のグループホームふれんど芳賀へ異動となりました。

  Before After
雇用形態 地方公務員 正社員
業種 警察官 グループホーム
職種 配属による 施設管理者
勤務時間 3交代 シフト制
休日 配属による(基本土日) 月休9日のシフト制
仕事内容 配属による 施設管理・
身体介助など

介護業界では「横のつながり」で助け合える

現在の業務内容を教えてください。

グループホームとは、認知症の利用者さんたちが5人から9人のユニットで共同生活を営む介護福祉施設です。グループホームふれんど芳賀は、定員9名の平屋の施設で、家庭的な雰囲気が特徴です。

私は介護士として身体介助や生活支援などの介護業務を行うのにプラスして、この施設に来て半年経った頃から、ホーム長として施設管理の仕事もするようになりました。

ホーム長としての仕事は、シフトを組んだり、利用者さんの金銭管理や従業員の給与管理をしたり、あとは職員からの相談に乗ることですね。管理者としての勉強は、まだまだ足りていないと実感しています。ただ、事務的な面では会社のシステム的なバックアップがあるのでとても助かっています。

また、警察官時代に身に着けたコミュニケーションスキルやパソコン操作は、今の仕事でも活かせていますね。

現在はどのような働き方をされていますか?

早番、日勤、遅番、夜勤のシフト制で、夜勤は月5~6日あります。月9日が公休ですね。

警察官時代と現在の介護士としての働き方の大きな違いは、よほどのことがない限り、介護の仕事は時間内で終われるところです。警察官の頃は、勤務時間の終わりかけに事件が起こったら、そこから現場に向かうわけですから「今から何も起こるなよ」といつも願っていましたね(笑)。

ホーム長としての主な仕事は、早番の仕事終わりにこなすことが多いです。会議があったり、人手が足りないときに現場に出たりしていると、勤務時間が長くなってしまうこともあります。そんなときは、ほかのスタッフたちが気を配って「ホーム長、今日はもう帰って大丈夫ですよ!」と言ってくれたりして…ありがたい限りですね。

プライベートでは、転職して変化がありましたか?

施設の管理者になったことで自分に自信が持てるようになり、結婚を決めることができました。妻は、異動前の施設で一緒に働いていた人です。

私は食べることが好きなので、新型コロナウイルス感染症が流行する前は休みの日にはよくおいしい店を探しがてら、妻とドライブに出かけていましたね。近頃は、近所の精肉店で牛すじを買って煮込むなど、ゆっくりと料理を楽しむようになりました。

転職していなかったら、妻とも出会えていなかったわけですから…あのまま警察官を続けていたら、今頃どうしていたのだろうと思ってしまいますね(笑)。

職場の人たちとはどのような関係ですか?

職場の人間関係は、警察官時代の完全なトップダウンとまるっきり違い、横のつながりを大切にしている感じです。

私には計画性が足りないところもあるので、スタッフたちには日々とても助けられています。特にケアマネさんが配属されてから、うまくチームが回り始めていると感じています

実は私自身もシフトに入っているので、スタッフ全員といつも顔を合わせられるわけではありません。そこでメンバーの連絡事項や相談ごとなどは、いったんケアマネさんに集約し、それを彼からまとめて私に伝えてもらうようにしました。すると、スタッフからの意見や提案が増えたんです。スムーズにメンバーの本音を知って、現場を改善できるようになりました。

以前は「全部自分でやらないと」と考えすぎて苦しくなることもありました。今のように任せられる部分をスタッフに任せるようにしてみたら、結果としてケアの質を向上させることができたと感じています。

「とりあえずやってみる」性格がいい方向に

ご自身はどのような性格だと思われますか?

よく言えば「とりあえずやってみる行動力がある」、悪く言えば「計画性がない」性格だと思っています。前職の警察官は「とりあえずやってみる」では許されない職種だったので、今思うと息苦しさを感じていたのかもしれません。

一方、介護の仕事ではこの性格がいい方向に働いていると思います。例えば、今の施設に異動してすぐの頃、利用者の皆さんとの小旅行を提案したことがありました。移動に車で数時間かかるため、「トイレはどうするの?」など当時のスタッフからたくさんの心配の声が上がりました。でも「行ってしまえば何とかなる」と思い、対策を立てて旅行を実現しました。

結果、とても楽しい時間をみんなで過ごすことができました。「翌年はさらに足を延ばして県外まで旅行してみよう」となったくらいです。

私の「とりあえずやってみよう!」に対して、足りない部分を補ってくれるスタッフがいるおかげで、今では安心して新しい取り組みに挑戦することができています。

やりがいを感じるのはどんなときですか?

私は料理が好きなので、余裕があるときには手づくりのおやつを配るときもあります。自分がつくったものを食べて利用者さんが「おいしい!」と言ってくれたら、「またつくろう!」という気になりますね(笑)。自分が得意なことで利用者さんが喜んでくれるのは、とても嬉しいです。

あとは「認知症紙芝居」や「RUN伴(ランとも:認知症の人やそのご家族、支援者、一般の人がリレーをしながら、ひとつのタスキをつないでゴールを目指すイベント)」を通じて、自分の活動の場を広げられたときにやりがいを感じます。

「自分は出たがりだったんだ!」と意外な一面に気づきましたね。警察官のときは、引っ込み思案な方だと思っていたのですから…ここは素の自分を出せる場所なのでしょうね。

「認知症紙芝居」とは何ですか?

認知症についてわかりやすく伝える紙芝居です。会社研修の一環で、講座を受講したのがきっかけで取り組み始めました。

グループホームは認知症の方たちのための住まいであり、地域に密着した施設であることを目指しています。グループホームふれんど芳賀は、まだ新しい施設。この紙芝居で認知症のことを広く地域の人に知ってもらえたら…と考えていたところ、同年代の社会福祉協議会の方と知り合い、地域のサロンや小学校の授業などの紙芝居を聞いてもらう場をたくさん紹介いただきました。

地域に活動の幅を広げていくというのは、介護の仕事としては必須ではないかもしれません。毎日同じ時間に来て、同じことをしているだけでもお給料はもらえます。ただ、自分の意志で活躍の場を広げていけることが、私にはやりがいを感じられるポイントでした。

介護士としての学びに終わりはない

グループホームふれんど芳賀はどのような職場ですか?

「利用者さんも、スタッフさんも穏やかな雰囲気ですね」と言われることが多いですね。そして、どんなことに対しても前向きに考えてくれるスタッフたちが揃っているのが自慢です。

例えばコロナ禍で利用者さんの外出が難しくなると、「では、今の環境で生活の質をあげるにはどうしたらいい?」とスタッフたちからどんどん意見が出てくるのです。私ひとりがはりきっても空回りすると思います。皆がいてくれるからこそ、今のいい状況があるのは確かですね。

会社(フレンド)に関していえば、幹部も若く、熱意があれば若くても責任ある仕事をやらせてもらえる環境があると思います。パートから半年で正社員になれたのも、異動して5ヵ月でホーム長を任せてもらえたのも、私の「やる気」が認められたからだと思いますね(笑)。

管理者としてどのような施設を目指していますか?

利用者さんが「自分の家」だと思って過ごせる場所にしたいと思っています。「家」なら、かしこまりすぎては疲れてしまいますよね。だからといって身内ではないので、言葉づかいや態度など、逸脱してはならない境界線は意識しています。このバランスには気を配っていますね。

介護の仕事は、やればやるほど知りたいことが増えてきます。知識や経験がまだまだ不足していると感じているので、ずっと学び続けて、自分のレベルを上げていきたいと思っています。

介護業界への転職を考えている方に、一言お願いします。

介護士は、生活に直結している仕事です。だから私みたいに料理が得意だったらそれも役立ちますし、歌や工作などの趣味もレクリエーションに活かせます。

私は絵を描くのも好きなので、この施設に異動してきた際、「この施設のある芳賀町のすごろくつくって!」と頼まれました。そのときつくったものは、今でもレクリエーションに使っています。

こんなに仕事中に思いっきり笑える職業も少ないのではないでしょうか。認知症の方は接する人の感情に敏感に反応されるので、自分が笑うことで、利用者さんにも笑顔が広がっていくのですよね。そういう点でも「楽しみながら頑張る」というのは大切なことだと思っています。

「自分は仕事ができない」なんて自信がない人ほど、思い切って飛び込んできてほしいですね。きっと自分の「好き」や「得意」を活かせる場が、介護の仕事の中に見つかると思います。

撮影:工藤晴生

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