メディカル・ケア・プランニング株式会社が運営する、グループホームつどい入間川(埼玉県・狭山市)。管理者を務める小林真由美さんは、接客業から介護の世界へ異業種転職した一人です。子育てとの両立を目指して現在のお仕事を始めたという小林さんに、転職前後のライフスタイルや仕事観の変化などをインタビュー。「転職を通して、自分に大きな自信がつきました」と語ってくれました。

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Profile 管理者 小林 真由美さん

飲食店など接客業に長年従事。接客以外にも新店舗立ち上げをはじめ幅広く活躍していたが、家庭との両立が難しく、2018年にメディカル・ケア・プランニング株式会社へ転職。当初はパート勤務だったが「グループホームつどい入間川」開所時に管理者へ抜擢された。

経歴
2000年〜2015年 飲食店やテーマパークなどで接客業に従事
2015年〜2017年 レストランにてマネージャーとして勤務
2018年〜 メディカル・ケア・プランニング株式会社入社
長所 ポジティブ
短所 熱しやすく冷めやすい
趣味 旅行
特技 歌、料理

もっと子どもと向き合いたい。家庭との両立を目指して転職を決意

以前はどんなお仕事をされていましたか?

高校卒業以降、ずっと接客の仕事をしていました。有名テーマパークのキャストや複数の飲食店スタッフを経験し、今の職場へ転職する前は、レストランのマネージャーとして、スタッフ管理や新店舗の立ち上げなど運営業務にも携わっていました。

レストランを退職されたのはいつですか?

3年前です。退職のきっかけは両親の引っ越しですね。私はシングルマザーなんですが、近所に住んでいた実家の両親が3人の子どもの子育てをサポートしてくれていました。その両親が田舎へ転居することになり、それまで母に頼っていた家のことを私一人でこなすようになったんです。けれど当時の職場は、繁忙期になると帰宅が深夜を回ったり、休みが取れず連勤になるなど、誰かの手助けなしでは子育てとの両立はまず不可能でした。

  Before After
雇用形態 正社員 正社員
業種 レストラン グループホーム
職種 マネージャー 管理者
勤務時間 10:00~25:00
(シフト・季節により変動)
9:00~18:00
休日 月8日(シフト制) 月9日(主に土日・シフト制)
仕事内容 接客・スタッフ管理・管理業務全般 施設運営
身体・生活介助

家庭との両立を第一条件に、転職活動をはじめたんですね。

金銭的な不安もあり、とにかくがむしゃらに働く毎日でした。でもその分、日々の子どもたちの成長を肌で実感することが少なかったように思って。このままだと、母親として子どもと正面から向き合わないうちに、彼らは大人になってしまうんじゃないかと恐怖を感じたんです。これを機会に、自分の生き方や家族との関係性を見つめ直したいという気持ちになりました。

転職活動では、介護だけでなく他業種の面接も受けました。メディカル・ケア・プランニングを選んだ大きな理由は、こういった家庭の事情を考慮した勤務形態を提案してもらえたことです。

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当初はパートタイムでのご入社だったとお聞きしました。

はい。事務職と介護スタッフの兼任で、デイサービス事業所にパート勤務していました。でもやっぱり、人と接する仕事が好きなんですよ。事務所でパソコンとにらめっこする作業だけでは物足りず、現場にばかり立つようになっちゃって。

思いのほか介護の仕事が楽しかったことと、この会社でなら家庭との両立ができると手応えを感じたため、ほどなくして正社員登用してもらいました。そして今年3月の「グループホームつどい入間川」オープンに伴い、管理者として異動してきたんです。

現在はどのような勤務スタイルですか?

基本的に平日9〜18時のフルタイム勤務で、残業はほとんどありません。人手が足らずどうしてもという時は夜勤も入りますが、ごく稀ですね。お休みの日は溜まった家事をこなすだけで終わってしまいますが(笑)、子どもたちと過ごす時間も増え、第一の目的だった「家庭との両立」を実現できていることにホッとしています。

1日のスケジュール

自分の失敗を許すことで、相手の役割も尊重できるように

管理者としてのお仕事はいかがですか?

まず、自慢してもいいですか?(笑)私、本当に素晴らしいスタッフたちに囲まれているんです。当ホームでは、管理者である私は日々のケアに関して細かい指示出しはしません。現場スタッフが自分たちで臨機応変に考え、実践し、判断に悩む部分や重要なことだけ私へ相談するというスタイルで回っています。みんなSOSを素直に発信してくれるから、安心して任せることができるんですよ。

おかげで私は、施設運営のためのマネジメント業務に専念できています。もちろん、忙しい時は現場のフォローへも入りますが、そこでの主役はあくまでスタッフたち。利用者様が心穏やかに過ごせる施設であるためには、まずスタッフ自身が高いモチベーションとやりがいを持って働くことが重要です。そのための職場環境を整えることが、管理者としての腕の見せ所だと思っています。

スタッフを信頼して仕事を任せるのも、寛容さや大きな勇気が必要ですよね。

私はもともと、仕事を抱え込むタイプでした。相手の能力を信用していないからじゃなく、変に気を回してしまっていたんです。「負担にならないか」「大変だと思ってないか」など考え始めると、誰かに頼むという勇気が出なくて。結果、自分が全部なんとかしなきゃというプレッシャーを勝手に感じてメンタルを壊すという(苦笑)。それってただの一人相撲だし、周りの人の活躍の場を奪っているのと同じですよね。

だから、それまで自分のキャパシティだと思っていた量を、半分に減らしてみたんです。まずは「できない私」を許してあげること。「だって自分はできないんだから、人に頼むのも仕方ないじゃん」と、思考を変えてみました。すると、素直に周囲を頼って、仕事を任せられるようになりました。

モチベーショングラフ

発想を転換することができたきっかけが何かあったのですか?

会社が私を信頼して、この施設を任せてくれたことが大きいですね。日頃の仕事ぶりを評価されたことで、自分に自信がつきました。矛盾しているようだけど、自信がついたことでようやく「自分を許す余裕」が持てるようになったんです。同じように、私もスタッフを信頼して現場を任せてみよう。そうすれば周りももっと輝くことができるんじゃないかと思って実践した結果、うまく歯車が回り出したように感じます。

それでも、管理者へ着任してしばらくは悩みましたよ。就業後は近所の公園でひとり反省会(笑)。近くに入間基地があって、航空自衛隊の飛行訓練が見られるんですが、ジャングルジムの上でぼんやりと飛行機を眺めながら、折れそうになる自分の心を奮い立たせていました。

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試行錯誤しながら走り続ける小林さんの姿に、スタッフの皆さんも大きく感化されているのではないかと感じます。今の職場の雰囲気をつくるために、特に意識して取り組んできたことはありますか?

空いている時間は施設内を巡回して、スタッフへ声がけしています。失敗や心配事で表情が固まっているスタッフへは、しっかり話を聞いた上でポジティブになるようサポートします。これは私だけの意識ではなく、スタッフ同士でもお互いを気遣い、尊重し合いながら仕事に取り組んでくれているので、みんなにはいくら感謝しても足りないですね。

日々深まっていく利用者様とスタッフの絆

これまでのご経験は、どういった形で今のお仕事に活かされていますか?

長い間、接客の仕事でさまざまな職場や人を見てきました。テーマパークにいた頃はホスピタリティの理念を研究・実践できたし、飲食店では年代・性別問わずさまざまなお客様へ対応することで多くの学びがありました。そのすべてが、利用者様と接する際に役立っています。また、うちのスタッフは20代から70代と年齢層が幅広く、留学生も働いているんですよ。多様なスタッフと円滑なコミュニケーションを取れているのは、これまでの経験のおかげかな。

こちらの施設の概要を教えてください。

グループホームは、認知症の方が介護スタッフと一緒に家庭に近い環境で暮らすことで、症状の緩和や日々穏やかにお過ごしになられることを目的とした施設です。地域密着型であることも特徴のひとつ。ご入居は市内在住の方のみとなりますので、慣れ親しんだ地域で暮らしていくことができます。ここ「グループホームつどい入間川」では、9人のユニットが2つ。全部で18名の利用者様がいらっしゃいます。

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開所から8ヶ月経ち、変化したことなどはありますか?

利用者様の中には、認知症に加えて精神的なご病気で、睡眠が断片的にしか取れない方もいらっしゃいます。慢性的な睡眠不足のせいか、不穏な状態になることも多かったんですが、こちらでの暮らしに慣れるうちに落ち着かれてきて、今では夜も長時間お休みできるようになりました。はじめて夜勤スタッフから「◯◯さん、昨夜はぐっすりお休みになっていました!」と申し送りがあった時は、みんなで手を取り合って大喜びしましたね。

おつらい状態の利用者様を見るのは、私どもスタッフも胸が締め付けられますし、なんとか穏やかに過ごしていただきたい一心でさまざまな工夫をしています。新米管理者の私に至らないところは山ほどあるし、スタッフたちも技術的にはまだまだな部分があります。それでも、日々、利用者様とスタッフ間の絆が深まって、まさに施設が「育っている」という感覚ですね。これも、少人数で一人ひとりに合わせたケアができる、グループホームならではの醍醐味かもしれません。

利用者様の状態に好転が見られるのは嬉しいですね。

そうですね。利用者様同士でお世話をしたり、お互いに声がけをする姿が見られるようにもなりました。誰かのことを気にかけたいというお気持ちを尊重することも認知症ケアの一環ですから、良い傾向だなと思いながら見守っています。

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人とのめぐり合わせを大切に。成長させてくれた人たちへ恩返しを

これからの目標を聞かせてください。

今はとにかく、管理者という役職に慣れるため、無我夢中で動いています。インプットの毎日で正直いっぱいいっぱい…(苦笑)。そんな半人前の状態で大それたことは言えませんが、施設を任せてもらえた会社の期待に精一杯応えていきたいと思っています。運営に関わる立場になったことで、自社の利益や発展に貢献できる人間になりたいという意識が芽生えるようになりました。

私は、介護への熱い想いや、誰かを助けたいといった崇高な気持ちを持ってこの業界へ飛び込んだわけではありません。でも、この仕事を通してめぐり合ったたくさんの人たちから、自己を成長させる機会をいただき、多くのパワーを得ることができました。これからもこの世界で頑張る姿を見せることで、周囲の皆さんに恩返しをしていきたいですね。

皆さん、小林さんのことを温かく見守っているんですね。

新米である私を心配してくれているんだなぁとありがたく感じています。社長も、折に触れて電話で様子を聞いてくれたり、ふらりと立ち寄ってくださったりするんですよ。何かと気にかけていただいていることを心から感謝しています。

あのタイミングでこの仕事に出会わなければ、また転職を繰り返して落ち着かない日々だったかもしれないし、不規則な生活で子どもたちに我慢を強いていたかもしれない。そう考えると、今の安定した状況をとても感慨深く感じます。

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私は小林さんと同世代ですが、タイミングや人とのご縁って大切だなとこの歳になってさらに実感しています。

うん、すごく感じますよね。人生いろいろ経験してきて(笑)、人とのめぐり合わせをさらに大事にしたいと思うようになりました。

私は接客の仕事は好きですが、実は人付き合い自体は苦手なんですよ。プライベートで出かけるのは一人の方が気楽だし、誰かに見つからないようにちょっと変装するくらい(笑)。それが今になって変わってきたなぁと実感しています。自分から初対面の人に声をかけたり、はじめての場所に行ったり、積極的に動けるようになりました。これも、今の職場に転職して、新しいことに挑戦する勇気や自分への自信が持てるようになったことが、変化のきっかけかもしれませんね。

異業種からの転職に悩まれている方にメッセージを。

介護の仕事には、人の命を預かる怖さや緊張感があります。私は人一倍それを感じていたかもしれません。もちろん、研修できちんと勉強をしてからの実践でしたが、万が一怪我をさせたり、相手に不快な思いをさせてしまったりしたらどうしよう…と「できない自分」に切羽詰まっていました。

でも、それを乗り越えてきた分、はじめて介護に携わる方々がどういった不安を抱えるのかがよく分かります。だからこそ、その戸惑いや心細さをしっかり傾聴・共感し、その上で問題解決のための対話をすることを心がけています。

自分の殻を打ち破りたい方、現状を変えてみたいと感じている方。ぜひ私たちと一緒に、この仕事にチャレンジしてみてください。自分が変われるチャンスかもしれませんよ。

あなたのその笑顔

撮影:丸山剛史