今回お話を伺ったのは、介護士歴2年目の元バスガイド・菅原陽子さん。長年勤務した観光業から異業種転職し、介護付き有料老人ホーム・みよし悠生苑(運営:株式会社メディカルライフケア)で働いています。多くのツアー客と接することで身に付けた、高いコミュニケーション能力が彼女の強み。「どんな経験も人生の糧になる」という言葉は、転職で悩む人にとって力強い後押しとなるでしょう。

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Profile 介護士 菅原 陽子さん

高校卒業後、バスガイドとしてバス会社に就職。国内のさまざまな観光地で案内業務を行う。持ち前の明るさと対応力を武器に活躍していたが、コロナの影響で乗務が激減。以前から興味のあった介護業界への転職を決意した。2021年4月から介護士として働いている。

経歴
2005年〜2021年 高校卒業後、バスガイドとして観光案内業へ従事
2021年4月 株式会社メディカルライフケアへ入社
長所 明るい、誰とでも打ち解けられる
短所 おっちょこちょい
趣味 音楽鑑賞
特技

明るくポジティブに!指名の取れる人気バスガイドとして活躍

以前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

バスガイドの仕事です。高校卒業から2021年の春に転職するまでの約16年間、観光バスに乗ってさまざまなツアーをご案内していました。

バスガイドさん!素敵ですね。

私自身は特に旅行好きというわけでもなく、自分がまさかバスガイドになるとは思ってもみませんでした(苦笑)。高校卒業後は就職しようとは決めていましたが、これといって特にやりたい仕事もなくて。すると、学校の先生が「明るさと人懐っこさを持つ菅原は、ガイドという職業にきっと向いているよ」と、とあるバス会社を推薦してくださいました。正直戸惑いましたが、せっかくのご縁なので入社することにしたんです。

  Before After
雇用形態 正社員 正社員
業種 観光業 介護付き有料老人ホーム
職種 バスガイド 介護士
勤務時間 常勤 常勤
休日 月8日のシフト制 月9日のシフト制
仕事内容 観光案内・車掌業務 身体介助・生活介助

バスガイド時代、お仕事でどんな苦労がありましたか?

40人のお客様の前に立つということ自体、はじめは緊張で足が震えました。

また、所属する事業所では、関東近郊をはじめ近畿や東北地方を巡るツアーも運行しており、走行ルート・観光地情報・道中の豆知識など覚えることが山積みです。必要な情報やご当地ネタをまとめたノートを、エリアごとに何冊もつくって勉強を重ねました。1つのツアーが終わって帰宅しても、また次の乗務に備えた予習が必要なので、なかなか気が抜けない点が苦労と言えるかもしれません。

情報をインプットして、それをどう伝えるかが難しそうですね。

教科書で覚えた通りに杓子定規に話しても、実際はまったく面白みがないんですよ。伝え方のセンスやお客様の気持ちの掴み方も含め、自分なりの接客スタイルを確立していく必要がありました。

例えば、バスガイドのミスも余興のひとつとして面白がってもらうという「遊び」があった方が、自分も相手も楽しいんです。観光案内で説明をうっかり間違ってしまっても「あはは、先日行った所と間違っちゃいました」と、図太く笑いに変えられる余裕と度胸さえ持っていれば、ツアー現場でそれは失敗にはなりません。車内の一体感や明るい雰囲気をつくれるかは自分次第。この自由度の高さが、バスガイドの醍醐味だと感じていました。

菅原陽子さん(1)

先生の予想通り、ガイドのお仕事に適性があったのでしょうね。お客様からもかなり人気があったのでは?

ありがたいことに、社員旅行などで定期的に貸切ツアーをご利用いただくお得意様から「今回もガイドは菅原で」とご指名をいただくことも多かったですね。バスガイドとして1つの成果を出せたという達成感が得られ、それがモチベーションの基盤となりました。

コロナで変わる旅行業界。変化を好機と捉えて介護の世界へ

充実した日々を過ごされていたように思いますが、退職の理由は何だったのでしょうか?

コロナの影響による乗務の激減が大きな理由です。それまでは、繁忙期には休みらしい休みが取れないことも珍しくなく、体力的にかなりハードな一面がありました。それでも、長年の慣れと勢いで適応できていたんです。

けれど、2020年以降は休みが増え、ふと立ち止まる時間ができてしまいました。その状況が長引くにつれ、コロナ収束後にまた以前と同じように「2泊のツアーの翌朝、朝5時集合で今度は3泊ね」と突然オファーが来るようになっても、私はちゃんと対応できるのか?と不安を覚えるようになりました。

モチベーショングラフ

それに加えて、コロナをきっかけに、バスガイドの立ち位置がわからなくなってしまったという感覚も引き金でした。

例えば修学旅行なら、道中のレクリエーションは楽しみのひとつだったでしょう?生徒さん達と一緒に旅行を盛り上げ、少しでも思い出に残る時間を演出したいという想いで私も乗務してきました。

けれど今は、なるべく騒がないことが修学旅行の第一条件になっています。「あれもダメ、これもダメ」と色々な制約を受ける若い子たちの姿を見るのが辛かったし、私自身も接客の正解が分からなくなってしまいました。そういったことの積み重ねが、退職を決めた理由です。

転職先として介護業界へ目を向けたのはなぜでしょうか?

28歳の時、それまで長く病気を患っていた母が亡くなりました。10年以上も献身的に闘病生活を支え続けた父の姿を見てきたので、残された父のためにも、いずれは私も介護の知識を身に付けたいと考えていたんです。

そこで、コロナで時間に余裕ができたことをチャンスと捉え、念願の初任者研修の勉強を始めました。資格を取得したことでバスガイドの仕事を辞める踏ん切りも付き、2021年春に介護士として再スタートを切ることになりました。

菅原陽子さん(2)

現在お勤めの「みよし悠生苑」は介護付き有料老人ホームですね。こちらの施設へ就職を決めたのはどうしてですか?

入居型施設で働きたいというのは当初からの希望でした。利用者様の生活全体に対して支援を行うことは、介護初心者の自分にとって学びが多いだろうと考えたからです。通勤のしやすさなども考慮し、こちらが一番条件が良かったというのも決め手となりました。

現在の勤務スタイルを教えてください。

主な業務内容は利用者様の身体介助です。日勤も夜勤も入っており、夜勤は月5回程度。お休みはシフト制で月9日いただいています。以前は、お休みの日も次の乗務に向けた勉強をすることが多く、自分のためだけの時間を確保するのが大変でした。でも今は、好きなアーティストのDVDを観たりふらっと散歩に出かけたり、ゆっくりと過ごせています。

1週間のスケジュール

高いコミュニケーション力とエンターテイナー精神が介護の現場でも大ウケ

介護士として働き初めて丸1年が経ちました。前職と比べて、ギャップを感じるのはどんな部分ですか?

前の職場では、一度バスに乗ってしまうと、多少のトラブルが起こっても自分ひとりで決断することが求められました。イレギュラーには自分の代替案で乗り切り、お客様が笑顔で予定時刻通りに帰着できればツアーは成功です。

反対に福祉施設では、スタッフ同士のチームプレイとケアプラン通りの実践がとても重要。

また、質を保ったまま介助の効率性を追求する意識が必要だと身に染みますね。疑問があればその都度上司や先輩に確認し、安易な自己判断に走らないよう注意しています。

菅原陽子さん(3)

介護の現場で最も活かされていると感じるスキルは?

コミュニケーションのスキルかな。勤務初日から、入居者様との会話に困ったことはありません。前職の経験で培った、どんなタイプの方にも応対できる臨機応変さが役に立っています。お相手のご出身地をガイドしたことがあればなおさらですね。その土地の思い出話やご当地ソングを披露すると、皆さん本当に喜んでくださいます。

利用者の皆さんも、菅原さんとお話するのを心待ちにされているでしょうね。

「あなたと話していると楽しいよ」なんて言ってもらえると、この仕事をやって良かったなぁとしみじみ感じます。ただ、介護の現場では、利用者様にこちらの意図がうまく伝わらない時も多々あります。認知症の方も多いため、予想していない反応にびっくりすることも。接し方や話し方をもっと工夫する必要があると感じ、模索を重ねる日々です。

では菅原さん自身が、特に楽しいと感じるのはどんな時ですか?

昨年、いくつかのレクリエーションを企画させてもらいました。とにかく楽しい時間を提供したいというバスガイド魂に火がついて、夏祭りでは「おたふく」や「ひょっとこ」のお面を被って余興を披露しました。期待通り、皆さん最高に盛り上がってくれて、「よっしゃ!」と心の中でガッツポーズでしたね(笑)。

それは面白そう(笑)。

スタッフもみんな協力的で、何か提案すると「やろう!やろう!」と乗ってくれるため、私もすごく楽しみながら担当させてもらっています。

施設外観写真

無駄な経験なんてひとつもない。自分のキャリアに誇りを持って

お話を伺っていると、菅原さんは自分の強みや弱点をとても客観的に分析されているなと感心します。

今までたくさんの人と接する機会があったからこそかもしれません。バスガイドの現場では、自分の言動一つひとつに対してお客様からダイレクトに反応が返ってきます。否が応でも反省・改善せざるを得ず、自分の長所を伸ばすためにはどうすべきかと、常に自問自答する毎日でしたから。

今までのご経験が存分に活かされていますね。

異業種からの転職って、やはり不安になりがちだと思うんです。でも、これまで積み重ねてきた経験は、必ずどんな職場でも役に立つものだと実感しました。人生に無駄なことはひとつもなく、誰もがそれを強みに変えていけるものだと思っています。

菅原陽子さん(4)

これからの夢や目標を教えてください。

まずは介護福祉士の資格取得を目指し、実務者研修の勉強を頑張っています。ゆくゆくは、居宅支援などほかの業態の職種も経験してみたいですね。そのためには、まず知識を増やし、より多くのケースに関わりながら学んでいきたいです。

菅原さんが介護職の魅力に惹き込まれているのが分かります。

利用者様からいただく「ありがとう」の言葉が、私の原動力になっています。バスガイドの時にお客様からいただいていた感謝の言葉に比べて、何というか「重み」が違うんですよ。

私は「どんな時でも笑顔で働くこと」をモットーにしているのですが、利用者様と介護者だけに限らず、ご家族や関係機関といった介護に関わる人みんなが笑顔でいられる施設づくりのお手伝いができればと思っています。

最後に、介護業界を目指す方にメッセージを!

介護士とは、相手の暮らしや生き方そのものに密着する仕事。ケアを受けられる皆さんは介護士を信頼し、驚くほど隠し事のない、ありのままの姿を見せてくださいます。そして私たちスタッフも、その気持ちに応えたいからこそ、より良いケアの実践に向けた試行錯誤と努力を重ねる日々です。転職2年目の今、人と人との結びつきや絆を強く感じる職業だなと改めて実感しています。

未経験の方は「介護職って大変そうだな」といった漠然としたイメージがあるかもしれません。でも、一歩足を踏み入れてみれば、この仕事の面白さがきっと分かってもらえるはず。迷っている皆さんの、ほんの少しの勇気を待っています!

菅原陽子さん(5)

撮影:丸山剛史

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株式会社メディカルライフケア