居宅療養管理指導が改定!効率的な運用で必要なサービスを届けられるか
令和3年介護報酬改定で居宅療養管理指導が変更
居宅療養管理指導の単位数が改定
令和3年介護報酬改定で居宅療養管理指導が改定されました。改定内容をまとめると下記となります。
- 単一建物居住者月1人および単一建物居住者月2~9人について、単位数が引き上げられた
- 月10人以上で医師が在医総管または施設総管を算定する場合の居宅療養管理指導費が引き下げられた
また、新型コロナウイルス感染症対応の特例として、2021年9月30日まで居宅療養管理指導費および介護予防居宅療養管理指導費の1ヵ月分所定単位数の0.1%に相当する単位数を上乗せすることとされました。
さらに、自宅に訪れる医師は、利用者の社会生活面の課題にも目を向けるように努めることとされています。
居宅療養管理指導とは
そもそも居宅療養管理指導とは、要支援や要介護と認定され、かつ通院が困難な方に対するサービスです。
医師や薬剤師、管理栄養士などの医療や介護に関する専門職が利用者の自宅に訪れ、健全な療養生活を送るためのアドバイスや健康管理などを行い、利用者が自宅でも安心して生活できるようにサポートします。
具体的なアドバイスや健康管理などは、以下の通りです。
- 体重の変化や食事摂取状況の確認
- 良好な栄養状態を保つための食事提案
- 嚥下に対する適合食材の選定
- 食事時の姿勢に関するアドバイス
- 食べやすい食事の作り方
医師や薬剤師、管理栄養士などの専門職が自宅に訪問し、指導を行ったら、報告書を作成します。3ヵ月ごとなど定期的な訪問を継続し、体調の変化を観察します。
利用者の自己負担は、訪問1回につき300~500円ほど。
厚生労働省が行った調査によれば、例えば管理栄養士が利用者宅を訪問してサービスを行った場合、利用者1人あたりの滞在時間は同じ建物に居住しているかに関わらず、「30~50分」がもっとも多い傾向にありました。
ある程度の時間をかけて、丁寧に栄養管理に関するアドバイスを提供している様子がうかがえます。
通院が困難な方に対して、自宅でケアをするのは良策であるように思えます。しかし、居宅療養管理指導が抱える問題も同時に顕在化しています。
通院できる方も利用しているのが問題
薬剤の自己管理が難しい
利用者宅では、利用者本人が自分の服用している薬剤に対して理解できていない、また、処方されている通りにきちんと飲めていない、といった問題が起きています。
数種類の薬剤が処方されていると、正しく保管するのが困難なケースもあります。軽度であれ認知症の兆候がある方の場合、薬剤を飲んでいないと不安になって処方された以上の薬剤を飲んでしまうこともあるからです。
医師や薬剤師、管理栄養士などの専門職が自宅を訪問して、初めて現状が明らかになることも。
約9割の方が服薬の管理を全て自分で行っていると回答している調査もあります。
問題なく自分で管理できていればよいですが、処方された薬剤を正しく使用するうえで居宅療養管理指導は重要な役割を果たします。
改定前の居宅療養管理指導は利用者の絞り込みが不十分だった
そもそも、居宅療養管理指導は、定期的に利用者の自宅に訪問して管理および指導を行った場合の評価であり、本来継続的な管理・指導の必要のない方や通院が可能な方に対して安易に算定してはいけないものです。
独歩で家族や介助者などの助けを借りずに通院ができる方など対象外の方が利用しているケースもあるため、きちんと見定める必要があります。
令和3年介護報酬改定では、本来なら算定の対象とすべきでない利用者の明確化をポイントにおいています。
もし、居宅療養管理指導の要件を満たさない場合は、医師やケアマネージャーに今後の対応について相談すべきだと明記されました。
通院が難しい状態の方でも、薬剤やリハビリの効果を得て、通院が可能となるケースもあります。定期的に居宅療養管理指導の要件を満たすかチェックをする必要があるわけです。
しかし、実際のところは居宅療養管理指導の利用者の中に、>これからの居宅療養管理指導に期待すること
各専門家との連携・協働の促進
居宅療養管理指導には、医師や薬剤師、管理栄養士、ケアマネージャー、歯科医師、介護スタッフなど多くの方がかかわります。
今後さらに居宅療養管理指導のサービスの質の向上を目指すには、チーム医療の確立が必要不可欠です。
例えば、薬剤師と看護師が連携を取る必要もあります。薬剤師から看護師に、医薬品の情報提供や薬剤訪問指導の内容共有、副作用チェックポイントの説明などを行わなければいけません。
一方で、看護師は薬剤師に、訪問時の副作用チェックの結果報告や症状変化時の相談などを行います。また、利用者の生活環境や経済状況などを詳しく知っているケアマネージャーも介在する必要があります。
薬剤が大量に余っている、複数回分の薬剤を一度に服用している、薬剤の服用を拒絶している、などの情報提供ができていると、関係者で連携して適切な指導を行え、利用者の課題の解決に至るケースもあります。
介護支援専門員との情報共有の効果を調査したデータによると、関係者間で情報提供を行ったことで、「利用者の服薬の状況が改善された」と回答した割合は65.4%、「服薬管理に関する取り組みを行うことができた」と回答した割合は52.8%にも達しました。
離島や中山間地域に居住する高齢者にも行き届いたサービスを
居宅療養管理指導の費用額は、下記のグラフのように年々増加している状況です。
その費用をどこから捻出するか、という問題もありますが、費用を抑えることばかりに注目してしまい、本当なら居宅療養管理指導を利用すべき方にサービスが行き届かない事態は避けたいところです。
平成30年度介護報酬改定では、離島や中山間地域に居住する要支援者・要介護者に対するサービスの質を向上させる観点から、「特別地域加算」「中山間地域等における小規模事業所加算」「中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算」を新たに創設しました。
そして、令和3年介護報酬改定では、居宅療養管理指導のサービス提供の状況や移動時間、滞在時間などの効率性を勘案し、より実態を踏まえた評価とする観点から、単一建物居住者の人数に応じた評価について見直しを行いました。
無駄を省き、効率性を重視しながらも、必要とする方に必要なサービスを届けられるよう、仕組みづくりは今後も継続して模索する必要があります。
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2020年9月7日 制定