ケアマネが対応する保険外サービス
通院同行や掃除など求められるニーズは多種多様
人手不足が叫ばれる介護業界では、ケアマネや介護職員に過度な負担がかかっているケースがあります。厚生労働省と日本総合研究所は、利用者が求める介護保険外サービスに現場のケアマネがどのように対応しているのか実態を調査しました。
そこで実際にあった利用者の要望について聞いたところ、最も多かったのは「利用者が受診中の時間の付き添い」で56.5%、次いで「大掃除」55.9%、「使わない部屋の掃除」44.1%でした。

どれも専門的な介護ではない日常的なサービスになります。利用者が求めるニーズが、介護だけでなく広い分野にまで渡っていることがわかります。
ケアマネに報告なく現場判断で対応するケースも
こうした利用者の要望に対して、事業所はどの程度対応しているのでしょうか。
同様の調査によると、現在要望に対応している事業所の割合は「大掃除」34.4%、「使わない部屋の掃除」32.4%、「話し相手」24.2%、「利用者が受診中の時間の付き添い」60.4%、「利用者とその家族分の食事の用意」29.2%となっています。
要望の詳細を見ると、家族分の食事の用意などのケースでは同時一体的な提供を求める声が多く、無償で対応している事業所が多い傾向があります。
こうした要望があった際、ほとんどのケースでケアマネージャーに連絡・共有がされています。しかしケアプランに位置付けられていない要望だった場合、「必ず連絡・共有する」割合が低下することもわかっています。
ケアマネージャーに連絡しない理由は「介護保険の対象サービスではないから」「単発での依頼が多いから」「不定期・突発的な依頼が多いから」などの理由が挙げられています。
このように一定の割合で、現場の判断で対応するケースが発生しています。ケアプランを作成するケアマネージャーがサービスの実態を知らされないこともあるのです。
介護保険外サービスが求められる2つの理由
家族が介護するうえでの課題
利用者が介護保険外サービスを求める理由は、大きく2つあると考えられます。1つは、「介護者の家族が抱える問題」です。
前出の調査では、介護に取り組む人の半数以上が「仕事と介護が両立できていない」と回答しています。なかでも女性の正社員では、その割合が6割に達していることがわかりました。
両立を阻んでいる最大の要因は、介護保険制度などに関する情報が十分でないことです。
以下の表にあるように、両立できていない理由は「介護保険制度や会社の制度の情報量が少ない」が38.6%、次いで「勤務時間が柔軟でない」29.0%、「相談相手がいない」28.9%となっています。

また、こうした悩みを抱える人の情報源は、ケアマネージャーが約6割となっています。そのほか、地域包括支援センターや自治体なども情報発信を行っていますが、まだ十分ではないようです。
いまだ進まない地域の連携体制
もう1つの理由は、地域の連携が進んでいないことです。介護保険外サービスの担い手として、国は地域包括ケアシステムを早急に構築して、連携して取り組むよう通知しています。しかし、今のところ個別事例についての地域での連携はあまり進んでいません。
特に、介護事業者と民間企業との連携には課題が残ります。地域課題について検討する「地域ケア会議」において、産業を管轄する部署などと個別事例を検討しているのは7.1%です。
介護保険外サービスを展開している民間企業は多くあり、介護保険外サービスを安価に提供している自治体もあります。しかし、利用者への情報の拡散と、地域での連携にはまだまだ課題があります。
自治体や地域産業との包括連携
自治体は情報発信の強化が求められている
国は介護保険サービスと介護保険外サービスとの一体的な提供を求めて、自治体に広く通知し、普及・啓発活動を促すようアドバイスをしています。しかし、国の動きに対して、自治体の反応には温度差があります。
とりわけ小規模な自治体になればなるほど、普及・啓発活動がおろそかになる傾向があります。
普及・啓発活動を実施した自治体は都道府県だと90.2%ですが、政令指定都市では66.7%、特別区で73.3%、中核市で75.0%、その他の市で57.0%まで低下します。

このように、住民と間近に接する自治体のレベルでの普及が徹底されておらず、地域連携のみでなく一般市民への周知も進んでいないことがわかります。こうした活動は、自治体だけでなく、民間企業との連携などによって効果が表れるケースもあります。
まずは地域での連携と関連団体による情報共有を進めることが、情報発信力を高める一助となるでしょう。
ニーズを見極めてサービスの提供を
そもそも介護保険外サービスは、制度とは関係なく事業者側が価格を設定できるうえに、介護職でなくてもできるものも少なくありません。
「利用者が受診中の時間の付き添い」「掃除」などの本当に必要とされるサービスであれば、たとえ有償であっても頼みたいという人は多いでしょう。
介護保険外サービスを取り扱う事業者などが着実に増えているのは事実ですが、まだまだその存在は広く知られていません。自治体や地域ケア会議が主導して、こうしたサービスを効果的に展開していくことが大切ではないでしょうか。
その際、ポイントとなるのは利用者がどのようなニーズを求めているのか的確に把握すること。
よりニーズに沿ったサービスを展開できるよう工夫を凝らす必要があるでしょう。
そのために、ケアマネージャーが実施している介護保険外サービスの実情を知ることは大切です。
今、介護現場で本当に求められているサービスを改めて考え直す時期に来ているのではないでしょうか。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 3件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定