介護負担の重い女性の現状
コロナ禍で女性の介護負担が増加
現在、介護施設の入所者数は約95万人、居宅介護サービスの利用者は約386万人。日本では、このように在宅介護の割合が大きくなっています。さらに新型コロナウイルス感染症の予防なども考慮すると、介護の担い手は家族が中心にならざるを得ないのです。
『日経新聞』で公表された東京理科大学菅原慎矢准教授と日本大学客員教授の中村二朗の研究によると、コロナ禍で家庭内での女性の介護負担が増大していることがわかりました。
その研究結果では、「感染者数が増加すると通所介護や訪問介護を回避する傾向がある」「男女ともに労働時間が減少しているが、男性はその時間を介護に使っていない」という2つが示されています。
いわゆる「密」を避けるために通所介護サービスの利用が減りましたが、訪問介護への切り替えも感染症を恐れるあまり進んでいません。
介護サービス利用が減少しているにもかかわらず、在宅介護における男性からの支援は得られず、女性の負担が増加したと考えられています。
日本では女性の介護者が多い
もともと日本では、家庭内での介護の担い手は主に女性でした。主な介護者の割合は、「要介護者との同居」が54.4%で最多で、次いで「別居の家族など」が13.6%となっています。
同居する家族が介護者の場合、その割合は配偶者が23.8%、子が20.7%、子の配偶者が7.5%となっています。さらに同居する主な介護者のうち、男性は35%、女性は65%で、女性比率が高くなっています。

こうした介護の性差は、構造的に長らく変わっていません。家庭内介護において女性は主たる介護者になりやすく、親の介護をした後に配偶者の介護をするケースも増えています。
女性の介護者が抱えている問題
仕事をしている女性はさらに負担が大きい
女性が介護のために仕事を続けられず離職してしまう「介護離職」も大きな問題です。
厚生労働省が公表している『仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業』によると、「介護をしながら現在の職場で仕事を続けられるか」という質問に対し、「続けられると思う」との回答が26.0%だったのに対し、「続けられないと思う」と「わからない」は合計で74.0%を占めていました。

その理由として挙げられているのは「勤務先に介護休業制度などの両立支援制度が整備されていないため」が33.5%で最多。
次いで「代替職員がおらず、介護休業などの両立支援制度の利用ができないため」24.2%、「収入が減るので、勤務先の介護休業などの両立支援制度を利用できないため」20.2%と続きます。
介護と仕事の両立を支援する制度が整備されていないことが大きな問題となっていることがわかります。
働く女性の介護者は大きなストレスを抱えている
支援制度が整っていないことで、介護をしながら働く女性は大きなストレスを抱えていることが考えられます。労働者健康福祉機構、働く女性健康研究センターでは、働く女性が介護で受けるストレスについて調査しました。
その結果によると、「介護対象者の認知機能障がい」「認知機能障がいに伴う問題行動」「排泄介助」などが介護者にストレスを与える要因だと示唆されています。中でも、異性であるしゅうとの介護に従事した女性は、非常に大きなストレス反応を示したそうです。
女性活躍のためにも支援制度の充実が急務
家族介護をする働く女性への支援が不足
こうした日本の現状に対して、国連の女性支援団体であるUNウィメンと国連開発計画(UNDP)は警鐘を鳴らします。
新型コロナの影響に伴う女性保護政策の統計結果で、日本は暴力対策と経済保障強化の措置はあっても、無報酬の育児や介護にかかわる女性への支援策が少ないと指摘されています。
中でも、介護離職に対する自治体の支援策が不足していることは明らかです。
厚生労働省の調査によると、「家族介護者の介護離職防止」に関する市町村の取り組み状況は「実施している・過去に実施していた」が13.0%、「実施していない」が83.5%と大半を占めています。

家族介護者に対する支援制度は整備されつつありますが、「介護離職防止」に対する支援はまだまだ不足しているのです。
家族介護と仕事の両立を支援
今後の家族介護者に対する支援では、「家族介護と、仕事や社会参加、自分の生活を両立すること」と「心身の健康とQOLの維持」が重視されています。
これまで女性を始めとする家族介護者は、支援の対象として見られていませんでした。しかし、女性活躍が叫ばれる現代社会において、こうした家族介護の負担の偏りは改善すべきものです。
『ニッポン一億総活躍プラン』の中で、「介護離職ゼロ」の実現が目標として掲げられています。女性が家族介護の主たる担い手である現状を鑑みるのであれば、その問題に焦点を絞った支援策が必要になるのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定