eスポーツが高齢者の健康維持に役立つ
高齢者の注意力を改善する効果が判明
熊本県の美里町では、熊本eスポーツ協会と共同で高齢者の認知症予防を目的とした事業を実施しています。
この事業は高齢者サロンなどで「eスポーツ」の指導にあたり、高齢者と子どもの世代間交流を図るというもの。
eスポーツとは、広義には電子機器を使って行われる競技や娯楽、スポーツ全般を指します。
この事業によって、参加した高齢者の約8割に注意力などの改善が見られたことが判明しました。さらに、77歳女性の脳の働きを検証したところ、脳の活性化が見られたこともわかっています。こうした結果を受けて、美里町ではさらなる事業の拡大を検討しています。
このように、高齢者とeスポーツをつなげる事業は、全国の自治体で広がりを見せています。
各地で広がるeスポーツを活用した取り組み
兵庫県神戸市では、NTT西日本などと連携して「withコロナ時代におけるeスポーツによる地域課題解決に向けた連携協定」を結びました。
その一環として、地域におけるコミュニケーションの活性化と、健康増進を目指した高齢者向けeスポーツの実証事業を開始しました。
この事業では、目的として「高齢者のフレイル予防」を打ち出し、市内のシニア向けサービス事業者を対象としてeスポーツ体験を広めていく方針です。将来的には、eスポーツを活用した新しいコミュニケーションのためのツール開発まで視野に入れています。
これまでも高齢者に向けた認知症予防のプログラムは、各自治体で実施されており、その割合は86.4%にのぼります。
eスポーツは直接的な接触を避けられるため、新型コロナの感染予防を行いながら進められる健康増進プログラムとして注目を浴びています。今後、美里町や神戸市が取り組んでいるような高齢者に向けたeスポーツ事業が全国に拡大していく可能性は大きいでしょう。
eスポーツが認知機能に与える影響
認知症予防に必要なこと
WHOが定めたガイドラインによると、認知機能が正常な人や軽度認知障がいなどを持つ人などの認知症の発症以前の人に対して、認知刺激(認知機能や社会機能の改善を目的とする活動への参加)や認知トレーニングは、通常のケアよりも効果的であることが示されています。
また、鳥取大学医学部附属病院では、代表的な認知機能として8つを挙げています。そのうえで、それらの機能向上を図ることが認知症予防になるとしています。
- 記憶力:覚えた情報を、しばらく保持している能力
- 遂行力:物事を計画したり、成し遂げたりする能力
- 視空間認知力:目から入った情報を処理して、空間の状態を把握する能力
- 注意力:一つのことに気持ちを集中させたり、複数のことに同時に注意を向けたりする能力
- 計算力:数を理解して計算する能力
- 判断力:物事を正しく認識・理解し、評価する能力
- 作業記憶力:作業を記憶する能力
- 思考力:物事を考える能力
それぞれの能力に対して、パズルゲームや連想ゲームなどのレクを実施して、高齢者の認知機能維持や向上を図る対策を打ち出しています。
デジタルゲームによる認知機能向上
デジタルゲームが認知機能に与える影響については、効果があるとする研究結果も得られてきています。獨協大学のデジタルゲームと認知機能に関する効果をまとめた論文によると、次のような認知機能を向上させる効果があるのではないかと示唆されています。
- 空間回転能力
- 視覚的な注意力
- 視覚にかかわる短期記憶
- コントラスト感度
ほかにも、3Dアクションゲームを2ヵ月間遊ぶことで、海馬や背外側前頭前野などの容積が増加することなどが報告されています。
また、デジタルゲームの脳トレなどを利用しての認知症予防プログラムは各自治体でも取り組みやすいというメリットがあります。
「実施可能もしくは現在でも実施している」「限定的ではあるが、実施可能である」と回答した自治体は、あわせて72.7%にものぼります。
その理由としては、「内容が取り組みやすい」「活動内容に関心のある人が多い」などが挙げられています。認知機能向上プログラムとしてのデジタルゲームを活用しやすいと感じている自治体は多いようです。
高齢者へのeスポーツ普及がもたらすこと
eスポーツの高齢者プロも育成
秋田県では、65歳以上の高齢者を対象にeスポーツのプロチームをつくろうとする動きも起きています。認知能力向上とともに世代間交流などをより深めようという狙いがあります。
秋田県在住の高齢者で、月数回の練習に参加するなどして、高齢者によるプロを育成する日本では初めての試みです。
eスポーツのプロプレイヤーは、20~30代が実力のピークと言われ、競技人口もこの世代が大半を占めています。
しかし、スウェーデンにはすでにシニアのみで構成されたプロチームもあり、競技で扱うゲームの種類によっては高齢者でも十分に活躍できる可能性があると言われています。
普及の鍵を握るのは高齢者の理解度向上
こうしたeスポーツを高齢者に普及していくためには、ゲームやIT機器に対する理解度を向上していく必要があります。高齢者の中には、相次ぐインターネットトラブルなどによって抵抗感を抱く人も少なくありません。
その一方で、コロナ禍の影響によってスマートフォンなどのIT機器を利用する高齢者は増加しています。
アクサ生命が行った『ニューノーマル(コロナ禍における新しい生活様式)と認知症に関する意識調査』によると、「新型コロナウイルス流行前と比べて利用頻度が増えたこと・減ったこと」として「動画視聴」が32.1%、「通販・ECサイトの利用」が27.7%と、それぞれ1位と3位を占めています。
『令和3年版高齢社会白書』でも、「高齢者が普段から利用している情報通信機器」としてスマートフォンを挙げる高齢者は44.5%に達し、ラジオや携帯電話を超えました。
このように、コロナ禍も相まって、高齢者のデジタル機器への理解度は急速に高まっています。それに伴い、eスポーツのさらなる進展も期待されます。
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2020年9月7日 制定