老人ホームでも広がる「アニマルセラピー」ストレス減少が期待できる反面ペットロスのリスクも
ペットとの死別で「ペットロス症候群」になってしまう
ペットロスで体調不良を感じる人は約6割
2021年6月、小池東京都知事が体調不良で入院しました。公には過労と発表されましたが、一部メディアでは愛犬との死別による心理的なストレスも一因ではないかと報じられました。
このようにペットを亡くすことによって体調不良を引き起こすことを一般的に「ペットロス」と呼びます。ペットを家族の一員として考える人は多く、近親者の死別に近い心理的ダメージを追うこともあります。
アイペット損害保険の調査によると、ペットと死別した後に体調不良を感じた人の割合は63.2%にのぼることがわかっています。

体調不良の主な症状は「突然悲しくなり、涙が止まらなくなる」が63.5%で最多。次いで「疲労感や虚脱感、無気力、めまい」37.2%、「眠れない」27.9%、「食欲不振(拒食症、過食症)」25.3%と続きます。
ペットロス症候群とは
日本医師会では、こうした状態に陥ることを「ペットロス症候群」としています。ペットを失った悲しみによって抑うつ状態に陥ってしまうのです。重度化すると幻聴や幻覚などが表れると言います。
ペットロスを克服するためには、無理をせずに悲しむことが大事だとも言われています。日本医師会はペットロスからの回復段階を次の4つに分けています。
- 第1ステップ:ショックのあまり事実を認められない
- 第2ステップ:絶望感と悲しみの日々
- 第3ステップ:少しずつ回復していく
- 第4ステップ:もとの生活へと戻る
概ね1ヵ月ほどで回復する傾向が強いようです。仮に1ヵ月以上も症状が続くようであれば、かかりつけ医や精神科医、心療内科医を受診することが推奨されています。人によってさまざまですが、ペットが飼い主の心身に与える影響は少なくないのです。
動物が高齢者に与える良い影響
高齢者の健康感を高めてくれる
動物とのふれあいは、高齢者や要介護者にとってプラスの効果を与えることが指摘されており、さまざまな研究が進められています。
例えば、首都大学東京や東京慈恵会医科大学などが共同で『犬猫を飼育する高齢者における13年後の要介護度予防効果』という研究結果を公表しています。
これは、1999年から2011年にかけて、犬猫を飼っている高齢者や要介護者を対象に、要介護度などの調査を行ったものです。
それによると、動物の世話をすることで高齢者や要介護者の主観的健康観(自分自身で健康だと思うこと)が高まり、それによって外出頻度などが増える可能性が示されました。
そして、主観的健康観が高いほど、要介護度が上昇することなく維持できる可能性を指摘しています。
そのほか、多くの研究で、ペットを飼う高齢者は心身面の健康が維持されやすいことやうつ予防効果なども報告されており、少なくない健康効果が期待できるとされています。
アニマルセラピーは認知症の人にも有効
こうした効果を利用して実施されているのが、認知症の人に対するアニマルセラピーです。
認知症の人が動物とふれあう時間を持つことによって、ストレスが減少し、活動量が増えると考えられています。
専門的には「動物介在療法」とも言われ、海外などでは広く取り入れられています。
名古屋経営短期大学健康福祉学科によるアニマルセラピーの研究によると、アニマルセラピーを受ける前と受けた後のストレス値が減少することが報告されています。

また、アニマルセラピーにかかわる介護職員が利用者と接する機会が増え、結果的にストレス軽減につながる可能性も示されています。こうしたセラピーを継続的に行うことで、認知症の人の生活の質(QOL)を高める活動は、国内でも広がりを見せつつあります。
高齢者におけるペットの必要性
ペットを飼う高齢者は減少傾向
高齢者や認知症の人に対する健康効果が認められている一方で、高齢者のペットの飼育率は減少しています。
ペットフード協会がまとめた『令和2年全国犬猫飼育実態調査』によると、犬の飼育率は前年比で60代は1.0%、70代で0.8%ほど減少。どちらの世代も猫の飼育率は横ばいです。

その要因の一つが、ペットの飼い方の変化にあります。
かつて犬や猫など、外出自由にして飼育することが一般的でしたが、現在はご近所トラブルなどを避けるため、家の中で飼うことが常識になりつつあります。
ペット不可のマンションなどで暮らす場合も、ペットを飼うことができません。
高齢者はどのようにペットと向き合うべきか
また、高齢者がペットを飼う際に気をつけなければいけないのが、ペットよりも先に高齢者が認知症にかかってしまったり、亡くなってしまったりするケースです。
ペットを家の中で飼うことが一般的になり、ペットの平均寿命も年々増加しています。
例えば、超小型犬は15.19歳、外に出ない猫は16.13歳と15年以上生きることが普通になってきました。
そのため、独居の高齢者がペットを飼っている場合、何らかの理由で飼い主が家にいられなくなると、ペットの引き取り手が必要になります。
こうした環境的、体力的な問題などから、ペットを飼うことをためらう高齢者が多いのです。
しかし、その一方で、動物とのふれあいが高齢者の心身にプラスの影響があることは事実です。独居の方にとっては寂しさを埋めてくれる存在にもなるでしょう。ペットの飼育をすすめる専門家も少なくありません。
環境省は、高齢世代になってペットを飼う際「手間がかからない小型犬か猫」「すでに成犬・猫になっている」などをおすすめしています。自身の状況を考えてペットと向き合うことが大切です。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント -件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定