ショートステイの予約管理を効率化できる新システム。活用により稼働率アップにつながるか
ショートステイ特化型のクラウド型予約管理システムが新登場
株式会社ペースノートが3月から提供開始
介護分野において現在ICTを活用して業務効率を上げる取組が様々進められています。その中で、ショートステイ特化型のクラウド型予約管理システムが新登場しました。
株式会社ペースノートは2022年3月から、ショートステイ向けのクラウド型予約管理システムの販売を開始し、現在介護業界で注目を集めています。
システムの特徴は主に3つあり、1つ目は利用予定表と空床数、問い合わせ内容などが見やすく可視化されている「スマート予約表」。
2つ目が、日々のデータを元に、稼働率・利用者属性・営業効率などを自動に割り出し、やるべきことを提示してくれる「分析ノート」。
3つ目が、利用者のフォローリストの抽出や営業先となる居宅介護支援事業所などへの自動FAX配信機能などを備えた「デジタル集客支援」です。
これらの機能を見ると、単なる予約管理を超えた、経営全般に関わる支援システムともといえます。料金プランは使用できる機能などに合わせて、シンプルプラン、スタンダードプラン、スタンダードプラスプランを選べるとのこと。
無料トライアルも利用できるので、まずはお試しで利用したい事業者は検討してみてはいかがでしょうか。
ペースノートの導入で可能になること
株式会社ペースノートのウェブサイトでは、実際に導入を行った施設の事例も紹介されているのでご紹介します。
例えば東大阪市にあるショートステイは、市内に4つの施設で事業活動を行っているそうですが、それまでは予約管理の仕方が施設ごとにバラバラでと統一されていなかったと言います。
しかも、利用者の入退所のチェックはすべて手作業で、施設内での情報伝達ミスも頻発していたそうです。
しかし、ペースノートの導入により、業務は大幅に簡素化。営業用のFAX送信、空床の計算などの作業がすべて自動で行われるので、作業負担が大幅に軽減されたとのこと。
予約管理に使用する「スマート予約表」はクラウド型であるため、市内の4施設の空床状況を職員であれば誰でもいつでもチェック可能となり、工数がかなり削減されたそうです。
高齢化の進展とともに、ショートステイの利用者数は年々増加しています。厚生労働省の資料によると、ショートステイ(短期入所生活介護)の受給者数は2009年時点では22万6,400人でしたが、2019年には33万8,000人となり、10年間で10万人以上も増加しました。

高齢化が進み、要介護者も増えていく中、ショートステイの利用者数は今後さらに増えていくと予想されます。
そうした状況において、ショートステイでの業務効率を大幅に向上できるペースノートのようなシステムが登場する意義は、極めて大きいといえます。
在宅介護を支えるショートステイ
ショートステイの目的の一つがレスパイトケア
そもそもショートステイとは、利用者が短期間のみ施設に入所して、食事や排せつの介助といった日常生活全般に関わるケアを受けるサービスのことです。
介護保険サービスであるため、65歳以上で要介護もしくは要支援の認定を受けた方が利用できます(特定疾病の方の場合は40~64歳以下も利用可)。
ショートステイを利用できる日数は、要介護認定の段階ごとに定められています。例えば「要介護1」の認定を受けている場合は、利用日数の目安は17日です。
最も重度の「要介護5」認定を受けていれば、最大で30日まで利用できます。上限を超えて利用すると保険適用外となり、全額自己負担とされます。
ショートステイが利用される最大の目的の一つが、介護者のレスパイトケアです。レスパイトケアとは、介護する側が介護負担から解放されることで、心身をゆっくりと休めることをいいます。
ショートステイにより、短期間とはいえ要介護者が施設に入所することで、家族介護者は介護をしなくてもよくなり、自分だけの時間を自由に使えるわけです。
こうした休みを効果的に取れる状況を確保することは、介護者のストレス解消につながり、ひいては介護疲れによる虐待や、介護者も倒れてしまう共倒れといった事態を避けることにつながります。
ショートステイによるレスパイトケアの重要性
実際、在宅介護の現場ではストレスを抱えている人が非常に多く、ショートステイによるレスパイトケアが持つ重要性は決して小さくはありません。
厚生労働省の『平成28年 国民生活基礎調査の概況』によれば、要介護者と同居している主な介護者に対して、「日常生活での悩みやストレスの有無」を尋ねたところ、「ある」との回答は68.9%にも上っていました。在宅介護をしている介護者の約7割が、日常生活において悩みを抱えているとの回答をしたわけです。
さらに、ストレス・悩みを抱えている介護者に対して「日常生活での悩みやストレスの原因」を尋ねる質問をしたところ(複数回答)、最多回答となったのは「家族の病気や介護」で、回答割合は男性の73.6%、女性の76.8%に上っていました。
悩み・ストレスを抱えている在宅介護者の7~8割近くは、同居の要介護者がその原因と答えているわけです。

在宅介護におけるこうした実情を踏まえると、ショートステイのレスパイトケアによる介護ストレス解消の意義は大きいといえます。
しかし、ショートステイへのニーズが今後も高まっていくと予想される一方、予約が大変になっているという問題も生じています。続いて見ていきましょう。
予約管理システム普及の必要性と今後の課題
予約管理システムで期待される作業負担の軽減
近年、ショートステイが直面している問題として、予約のしにくさが指摘されています。ショートステイを利用したいと思ってケアマネに相談して入居先を探しても、予約がいっぱいで入れないというケースが少なくないのです。
厚生労働省の調査によると、ショートステイの利用者のうち、利用する「1カ月~2カ月前」に予約申し込みをする利用者は全体の約5割にも達していました。
「3ヶ月以上前」と回答する人も16.4%おり、傾向としてかなり早い段階から予約をする人が多い実情がわかります。

また、ショートステイ事業所の側も、2カ月前から予約受け付けを開始しているケースが全体の約7割にも上っていました。
ショートステイの予約は利用日の約2カ月前からするものであり、より早く連絡した人から予約は決まっていくという状況が、利用者と事業者双方にとって一般的であるといえます。
このような実態に対しては、サービスを提供するショートステイ事業所側からすると、デジタル化された予約管理システムの利用は有効性が高いといえます。
ご紹介した事例にもありましたが、紙に手書きする形で利用者の管理を行っていたのでは、2カ月以上前から殺到する予約への対応は大変となるでしょう。ペースノートのようなシステムを活用すれば、業務効率は大幅にアップします。
予約管理システムの普及とより合理的な運用の必要性
ショートステイを対象に予約管理システムを提供するというサービス自体は、ペースノート以前から市場には登場していました。
例えば、株式会社ジーウェイブの「クローバー(CLOVER)」や、株式会社ワイズマンの「wiseman」などがその一例です。
介護人材が不足しつつある中、ショートステイの業務負担軽減化・生産性向上につながるこうした予約管理システムの開発およびさらなる進化は、今後も各企業が取り組みを進めていくと考えられます。
しかし、事業者側からではなく利用者側からすると、やはり2カ月も前から予約しないといけない、という状況が生じているのは問題であるともいえます。
特に正月やお盆など予約が集中する時期は、文字通り早い者勝ちとなっているのが現状と言えるでしょう。
こうした状況に対しては、今後、利用における重要性や緊急性に応じた合理的な予約システムの構築も重要であると考えられます。
もっともこれは企業のみで対応できる話ではなく、介護保険行政・自治体の取り組みも含めた、抜本的な改善策が必要となるでしょう。
今回は、ペースノートが開発したショートステイの予約管理を効率化できる新システムと、それにまつわる話題・問題について考えてきました。今後ショートステイの予約のあり方がどのように進化・改善していくのか、引き続き注目を集めそうです。
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2020年9月7日 制定