誤嚥性肺炎や心疾患の死亡者が急増!予防には「コロナフレイル」対策が必要か⁉
コロナ禍以降に急増した死因
「老衰」「心疾患」「誤嚥性肺炎」が大きく増加
毎年公表されている人口動態統計の2021年版が10月に発表されました。それによると、2021年の死亡者数は前年比で約6万7,101人増加となり、戦後最多を記録しました。
新型コロナウイルス感染症による死亡者数は1万6,766人で前年比で約1万3,000人増加しています。
しかし、それよりも伸びが大きかったのは「老衰」です。2021年は15万2,027人となり、前年よりも1万9,587人の増加となっています。老衰は、「高齢者且つ他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用いる」とされています。
つまり、特別な疾患にかかったわけではなく、身体機能が低下して亡くなった方が増えていることを示唆しています。
また、ほかにも「心疾患」が前年比9,114人増の21万4,710人、「誤嚥性肺炎」が同比6,742人増の4万9,488となっており、死因別の伸び率では顕著な傾向を示しています。
近年、これら3つの項目は増加傾向にあり、特に誤嚥性肺炎は死因別で第6位にまで上昇するなど、対策が急務となっています。

在宅生活の長期化がもたらした健康被害
こうした死因が増加したのはコロナ禍によって、高齢者の医療機関や介護サービスの利用控え、社会参加などの低下などが要因として考えられます。
外出や人との交流が減ったことで、心身機能が低下するフレイルの増加が懸念されています。
フレイルとは、「加齢により心身が老い衰えた状態」を指し、健康な状態と日常生活でサポートがいる介護状態の中間にあると位置づけられています。おもな症状は以下の通りです。
- 体重減少
- 疲れやすい
- 歩行速度の低下
- 握力の低下
- 身体活動量の低下
このような状態になると、やる気がなくなり、あらゆる疾患のリスクが上昇すると考えられています。内閣府でも在宅生活の影響によるフレイルを「コロナフレイル」と位置付け、注意喚起を行っています。
フレイルの予防で有効とされているのが次の3つです。
- 栄養(食と口腔機能)
- 身体活動(運動や非運動性活動等)
- 社会参加(人とのつながりが特に重要)
特に誤嚥性肺炎は、口腔の状態に大きく左右されるため、フレイル状態で口腔ケアを怠っていたりすると、発症しやすくなるとされています。
これまで自治体でも高齢者のフレイル予防として、体操教室などを展開していましたが、コロナ禍によってその活動率が低下しています。
野村総合研究所が行った自治体へのアンケート調査によると、「感染症流行前と同様に実施している」は7.1%にとどまり、85.4%が「方法などを一部見直したうえで実施している」ことがわかっています。なお、活動自体を取りやめた自治体も7.5%に上っています。

マニュアル改定が検討される心疾患・誤嚥性肺炎のケアマネジメント
ケアマネジメント改定への流れ
現在、厚生労働省では「適切なケアマネジメント手法」をまとめるべく、調査・実証事業を日本総合研究所と共同で進めています。
これまで、ケアマネジメントはケアマネージャーそれぞれの資質に依存する傾向が多く、その経験によっても適正なケアプランが立てられているかどうか差が生じていました。
国はより具体的にケアマネジメントの適正化・標準化を図るため、2016年から継続的に調査研究を行い、マニュアル化しています。
このマニュアルは、調査が進むたびに改定が繰り返されており、2021年3月には「心疾患」「誤嚥性肺炎」のそれぞれに対するケアマネジメントの項目も盛り込まれました。
この調査研究は2026年度まで続けられる予定で、2027年の介護報酬改定では、制度として何らかの指針が示される可能性もあります。
誤嚥性肺炎・心疾患の具体的なケアマネジメントとは
現時点での調査研究では、誤嚥性肺炎のケアマネジメントで重要なのは日頃の生活の様子を把握することだとされています。
そのためには、誤嚥リスクや誤嚥による肺炎のリスク評価をする専門職との連携が不可欠です。ケアマネージャーが利用者のアセスメントをする時点で状況を把握するだけでなく、モニタリングを通じて継続的に状況把握することが必要だとも指摘しています。
一方、心疾患は確実な服薬の支援、水分・塩分の摂取や体重及び排泄状況の管理など、医学的な管理が確実に実施できるような支援体制の構築が必要だとしています。
このように「心疾患」「誤嚥性肺炎」をケアマネジメントで予防・支援していくためには、多職種での連携を基本としています。ケアマネージャーには、法定研修で対応策を学び、ケアプランに盛り込むことが求められるでしょう。
誤嚥性肺炎・心疾患ケアの現状と課題
介護事業所で取り組まれる口腔ケア
誤嚥性肺炎を予防するためには口腔ケアが非常に重要だとされています。誤嚥性肺炎は、食べ物と一緒に飲みこんだ細菌などが大きな原因になるため、正しく咀嚼して飲み込む能力の維持、清潔な口内環境がカギを握るのです。
そのため、予防策として有効とされているのは口腔周辺の筋力を維持する体操や、適切な歯のブラッシングなどが挙げられます。いずれも日常的な予防策であり、介護施設などでも取り組みが進められています。
例えば、香川県の三豊総合病院では、介護老人保健施設を併設しており、歯科衛生士や管理栄養士が介入して入居者たちの口腔ケアを実施しています。その結果、取り組みから3年で肺炎の発症者をゼロに抑えることに成功しています。
こうした取り組みを推進するためには、介護事業者だけで行うのは困難であるため、地域にある医療機関などを活用する必要があります。そのため、ケアマネージャーによる多職種連携が対策の大部分を占めると考えられます。
疾患に対応できるケアプランの必要性
今後のケアプランでは、利用者の疾患別に想定される支援内容や留意すべき事項を取りまとめる必要性が、より求められていくことでしょう。
特に、複数の疾患がある利用者のケアマネジメントでは、相反する支援内容が想定される場合もあるため、どの支援内容を優先して検討すべきかという知識の体系化も必要になります。
しかし、ケアマネジメントの拡充によって、ケアマネージャーが取り扱う知識は幅が広くなり、研修などを行うにしても個々人がそれぞれの専門領域を身につけるのは困難です。
また、多職種連携をするにしてもシステムが構築されていない自治体もあり、場合によっては連携体制の構築から始めなければなりません。現状でも業務過多ともいわれるケアマネージャーにとって、非常に困難な状況です。
こうした現状を打破するためには、自治体や民間も含めた包括的な体制を迅速に構築することが大切です。医療機関や介護施設とをつなぐデジタルツールの導入なども含め、ケアマネジメントを支える仕組みづくりが成否のカギを握っています。
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2020年9月7日 制定