日本デイサービス協会が「デイ5選」を発表。理想的なケア・サービスのあり方とは?
2023年デイサービス5選が発表
日本デイサービス協会が2022年から実施しているイベント
一般社団法人日本デイサービス協会は3月15日、日ごろから模範となる優れた取り組みをしている通所介護事業所を「デイサービス5選」として選出。エントリーした全国1,831事業所の中から5事業所が選ばれました。
日本デイサービス協会は2022年から、変革期にある介護分野において優れた取り組みをしているデイサービスを「デイサービス5選」として認定する事業を開始しています。現場のデイサービスにとってのロールモデルの形を示すため、好事例を収集・発信していくことが目的です。
第2回目となる2023年大会において選ばれたのは、以下の事業所です。
- 株式会社ツクイ「ツクイ帯広WOW」
- 株式会社3eee「カラダラボ」
- Body Pioneer株式会社「リハデイnoie」
- 株式会社ソフトアップJ「エントレリハ」
- 株式会社ウェルフューチャー「桜美林ガーデンヒルズ サクラデイサービス」
デイサービスは「通い」による利用となるため、外出に制限が必要だったコロナ禍による影響を強く受け、厳しい経営環境に直面しました。そんな中、モデルケースとして選ばれたデイサービスはどのような取り組みを続けてきたのか、現在注目が集まっています。
競争が激化し、多様化するデイサービスの現状
デイサービスとは、高齢者が自宅での生活を継続できるように、心身機能の維持・向上を図るために通いで利用する介護サービス提供事業所のことで、介護保険制度で「通所介護」と呼ばれるサービスを提供しています。
提供されるサービスは、利用者の自宅から事業所までの送迎サービス、入浴・排泄・食事の介助、機能訓練、レクリエーション・体操などです。要介護の方へのケアから介護予防への取り組みまで、利用者の心身状態に合わせて幅広い目的で利用されています。
また、大きく分けて「1日型」と「半日型」の2種類があり、1日型だと朝から夕方まで、半日型だと午前、午後のどちらかの利用です。どちらの場合でも送迎サービスを提供します。「お泊り型」「リハビリ特化型」「娯楽型」など、サービス内容に特徴を持たせたデイサービスも多いです。
現在、デイサービスを巡っては、ニーズの多様化への対応、事業所間の競争の激化など、厳しい経営環境が続いています。
特に競争の激化に関しては、現在国内には、地域密着型のデイサービスも合わせると4万3,000を超える事業所があり、参入が多い一方で倒産・廃業に直面している事業所も少なくありません。サービス・設備に独自色を持たせないと、生き残りが難しくなりつつあるのが現状です。
デイサービス5選の選出方法と応募するメリット
デイサービス5選の応募・選出方法
「デイサービス5選」への応募は、主催者である一般社団法人日本デイサービス協会(所属事業所数約2,840)に申し込むことで可能です。自薦の場合は自ら、他薦の場合は推薦者がエントリーシートに記入をして協会に提出します。
第1回大会であった昨年(2022年)の応募事業者数は1,191だったので、1,831事業所の応募があった第2回大会(2023年)はそれよりも740事業所も増えています。
提出されたエントリーシートに対しては、まず1次審査が実施されます。協会によると、1次審査では審査員が直接発表を聞きたい事業所を10~30選出する、としていますが、昨年も今年も、1次審査を通ったのは16事業所のみ。この1次審査の段階で、選出対象事業所が一気に絞られるわけです。
二次審査では選ばれた16事業所は、WEBプレゼンテーションを実施。発表の様子は動画サイトで誰でも視聴可能です。発表後は審査員から質問が行われます。発表・質疑応答の内容を踏まえて、そこからロールモデルとなる事業所が5つ選ばれるわけです。
デイサービス5選に応募するメリットとは
日本デイサービス協会によると、デイサービス5選に応募することには以下のようなメリットがあるといいます。
- 全国のデイサービス事業所のロールモデルに・・・全国規模でマスコミに取り上げられて注目。取材・見学の申し入れが相次ぎ、知名度アップ、利用者増につながる。
- 職員のモチベーションアップ・・・全国的に有名なデイサービスで働くこととなり、勤務する職員のモチベーションが高まる。離職率減少、人材確保のしやすさにつながる。
- デイサービス5選認定のロゴを使える・・・日本デイサービス協会が認める5社しか使えない「デイサービス5選」認定ロゴを使える。パンフレットやホームページでも使用可能。イメージ向上。
デイサービス業界は競争傾向が強まり、他事業所にはない特徴・特色を持つことが求められています。デイサービス5選への選出は、それ自体がそのデイサービスにとっての大きな強み・特徴となるでしょう。なお、一次審査を通った16事業所も、二次審査の場で全国に向けて発表の機会が与えられるので、一次審査を通るだけでも上記のメリットはある程度得られるのではないでしょうか。
デイサービス5選に選ばれたのはどんな事業所?今後のデイサービスのあり方とは
2023年(第2回大会)のデイサービス5選の事業所とその取り組み
では、実際に2023年(第2回大会)で選ばれたデイサービス5選の事業所と、その選出理由について以下で簡単にご紹介しましょう。
- 株式会社ツクイの「ツクイ帯広WOW」・・・デイサービスを中心に地域コミュニティの形成を図った点が評価されました。行政との協力による有償ボランティアの受け入れ体制の整備、不登校児童の受け入れ、市民活動団体に対する相談窓口の設置、就労継続支援B型事業所との連携・物品販売などの取り組みを行っています。
- 株式会社3eeeの「カラダラボ」・・・株式会社3eee全体での取り組みが評価されています。同会社に属するデイサービスでは、独自の専用ポータルサイトを開設。人工知能による質問の受付、動画コンテンツの充実化、介護サービス関連の書類のダウンロード対応などの取り組みを行っています。また、ポータルサイトを通しての情報共有などにより、管理職の業務負担軽減も実現しました。
- Body Pioneer株式会社の「リハデイnoie」・・・利用者に対して家事作業や畑仕事などの「用事」を行ってもらうという、デイサービスとしては斬新な形での自立支援ケアを実施。利用者は任された役割を果たすことで自分に自信を持つことができ、生活意欲向上につながっています。どのような役割を任せるかは、利用者一人ひとりと面談し、本人の心身状態や残存能力を踏まえて決定します。
- 株式会社ソフトアップJの「エントレリハ」・・・「脳ぽち」という独自のタッチパネルを使用した脳トレのプログラムを導入。利用者は楽しみながら認知機能の維持・向上を図れます。トレーニングの結果に対する評価も自動作成され、その内容を見ることで脳トレの効果・成果も判断可能です。タッチパネルではオンラインショッピングも行えます。
- 株式会社ウェルフューチャー「桜美林ガーデンヒルズ サクラデイサービス」・・・デイサービスで「子ども食堂」を運営しています。子ども食堂とは、貧困家庭や孤食(週の半分以上、1日すべての食事を1人で食べている状態)の子どもに対して、栄養のある温かい食事を提供する場のことです。しかも普通に食事を提供するのではなく、献立のメニューが変わる「ガチャ献」などの遊び要素も取り入れ、子どもたちに喜ばれています。デイサービスのイメージ向上に貢献したとして評価されました。
デイサービス5選に見る今後のデイサービスに求められること
2023年のデイサービス5選の特徴は以下の点にまとめられます。
- AI・ICTの活用・・・「カラダラボ」「エントレリハ」。最新技術を活用していることで選出。サービスの質向上につなげている。
- 地域とのつながりを重視・・・「ツクイ帯広WOW」「桜美林ガーデンヒルズ サクラデイサービス」。ボランティア・不登校児の受け入れ、子どもの居場所提供など。
- 利用者に向き合うサービス・・・「リハデイnoie」。利用者に丁寧にヒアリングを実施。一人ひとりに向き合いながらサービスを提供。
デイサービス5選はあくまで通所介護事業所に限ったものですが、取り組み内容自体は、有料老人ホーム・介護施設などの入所施設でも参考になる点は大きいのではないでしょうか。
今回は一般社団法人日本デイサービス協会が去年からスタートさせた「デイサービス5選」について注目してきました。こうしたイベントがデイサービスのみならず、訪問介護や老人ホームなど、他のサービス種でも広がっていくと、介護業界全体のイメージがより向上するのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定