大介護時代の到来に従って、政府予算も限界に達し、見直しの動きが広がってきています。そこで、生活支援サービスや要介護1、2の人向けの生活援助などが、介護サービスの縮小に舵を切っています。
厚生労働省の試算によると、日本で介護が必要な人は約584万人。
これは、人口の約4.5%に該当します。
また、要介護1、2の人は全国に約200万人です。
これだけの人数を、本来であれば介護保険で賄うことが理想ですが、現実はそうはいきません。
具体的には、車椅子や介護ベッドなどの適用を外し、できるところは自力でやってもらうことによって、増え続ける社会保障費を削減していく方針です。
そこで今回は、軽度要介護者への介護サービスを縮小し、舵取りを進めようとしている「予防給付」の具体的な内容について解説していきます。
要介護者のうち、要介護1は5割を占める。軽症者の自立と重症化予防へ
介護制度全体を、予防重視型システムへの転換へ
要介護者とは、「身体上もしくは精神上の障害があるために入浴、排泄、食事等の日常生活における基本的な動作の全部もしくは一部について厚生労働省が定める期間にわたり継続して常時介護を要するもの」の状態の人のこと。
高齢化社会に伴って、要介護1の人が増加し、全体の5割を占めています。
国は、要介護1などの軽度の介護者に対して、従来の手厚いサービスから、予防への転換をはかろうとしています。本来の介護の原則に立ち戻って、総合的な介護予防システムの確立を目指しているのです。
そのためには、予防給付の創設が不可欠です。
予防給付とは、要介護1の人に対して、現在の状態に応じた介護予防プランを制定し、筋力向上トレーニング、転倒骨折予防、低栄養改善、口腔ケア、閉じこもり予防などの予防支援策を実施すること。
介護度の進行の予防を目的としています。
現状、要支援者のほとんどは、外出や食事などの生活の基本となる身の回りの動作は可能なものの、買い物や、薬の内服管理、簡単な調理の自立などが困難な状況です。
特に困難なのが買い物の自立で、多くの要介護者・要支援者は自力で買い物に行くことが難しい状況に陥っています。
これを、介護予防・日常生活支援総合事業とし、配食等の生活支援サービスにつなげていく考えです。
要介護の度合いが低くなるにつれて、生活援助型の割合が増えていく傾向に
要介護度が上がるにしたがって、身体介護の割合は増えていきます。
介護度が進まないように、この生活援助中心型の割合を増やし、自分でできるところは自分でしてもらい、寝たきりや重症化しないように進めていくことが大事です。
生活のヘルパー的役割にシフトし、増え続ける高齢者のうち、自立できている人を増やすのが目的です。

たとえば千葉県印西市などでは、高齢者を週に一度は必ず“健康貯筋“運動に参加してもらう取り組みを実践。
健康づくりや介護予防に関心のある住民を対象にして、地区リーダーやサポーター等を担い手として住民主体で歩いていける場所で、心身機能の維持・改善、仲間づくり、地域づくりを目的に、体操や筋力向上運動を実施しています。
一方で、自力で移動でき、自分の足で集まることのできる場所づくりも大切です。地域のボランティア的リーダーが主体となり、地域リーダーもまた、60代、70代の人が担っています。
ボランティアが主体で運営されており、時間にゆとりのある高齢者のうち、元気な人が、リーダー的役割を担ってくれています。
地区の集会所を会場としており、特別な設備を必要としないため、介護予防予算はそれほど大きく膨らまず、貯筋運動に必要なダンベル・おもり・バンド・CD・個人のバイタル記録表やおもりの結果表、体操メニューの保管ファイルなどは、市が無償提供することとなっています。
このように、自治体主導での筋力トレーニングなどが、今後は多くの自治体で増えていくものと見込まれます。
軽度のうちに体力を向上しておき、要介護度の進行を防ぐことが目的です。
自治体としても、市がサポーター養成講座を開催し、担い手の育成をはかるために、市の介護福祉課や地域包括支援センター、健康増進課などが連携し、こうした取り組みを進めています。
シルバー人材の活用と、その将来像は一体どうなる?
高齢者を介護の担い手にする試みはスタートしています
高齢者は増え続けており、団塊の世代が後期高齢者になる2020年前後には、必要となる介護人材は20万人とも試算されています。
厚生労働省が発表した訪問介護の業務の専門性を問うアンケート調査では、「介護に関する知識・技術をそれほど有しないものでもできる」または「介護に関する基本的な知識・技術を備えたものであればできる」と答えた人が8割を占めています。
訪問介護員に至っては、60歳以上の構成割合が3割を超えています。
これらの人材をさらに確保し、比較的簡単な仕事である訪問介護の仕事を、元気なシルバー世代に担ってもらうということも必要ではないでしょうか。

訪問介護の実態はというと、生活援助(掃除・洗濯・衣類の整理・ベッドメイク)の実施状況は、介護福祉士でも約7割がほぼ毎日実施しています。
介護福祉士の3年未満の初心者が多いことから、比較的身体に負担のない介護サービスを提供することができていることがわかります。
定期巡回は生活援助を重点的に行い、そこに筋力トレーニングや認知症予防の運動などを取り入れていけば、介護予防の専門性は低いままでも、大きな効果をあげることが期待できます。
予防介護の観点と、シルバー人材の活用で超高齢化社会を乗り切る
自治体レベルではすでに、予防給付への動きが加速しています。
総合事業の実施は2017年4月まで猶予可能となりましたが、いち早い対応が期待されます。
また、時間をかけてじっくりと予防介護へのシフトを行うことも可能です。
2018年には、ほぼすべての保険者を、予防給付などの総合事業に移行していくイメージとなっています。
すでに総合事業への移行に対応している自治体はあり、生活支援のサービス活動の今後の展開に関する方向性の決定を行った自治体が36.7%に至り、通いの場のサービス・活動の今後の展開に関する方向性の決定を行った自治体が40%にのぼります。
総合事業移行済み自治体
対応済み | 対応中 検討中 |
検討を開始していない | |
---|---|---|---|
生活支援のサービス・活動の今後の展開に関する方向性の決定 | 36.7% | 58.3% | 5.0% |
通いの場のサービス・活動の今後の展開に関する方向性の決定 | 40.0% | 56.7% | 3.3% |
地域の声を適切に把握して、地域課題に即した施策をオーダーメイドで行政として作っていくことが大切です。
また、専門性が低いとはいえ、専門家からのちょっとした助言は有用です。
技術的なサポートも含めて、予防介護に対しての場所の提供や、情報の提供などが必要とされるでしょう。
予防介護の総合事業が目指すものは、住民主体の地域づくりです。まずは介護関係者や自治体との間で認識を統一し、問題意識を共有していくことが大切なのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定