なんとサービス付き高齢者向け住宅の廃業が260件も
全国で、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の廃業が260件あったという衝撃のニュースが2017年3月、流れました。
ですが、国としてはサ高住の推進の姿勢は変わらず、利便性も高いため、老人ホームへの入居を考えている人にとっては、大事な選択肢のひとつであることには変わりありません。
では、倒産しない、潰れないサ高住を選ぶには、どうしたらいいのでしょうか。
施設の入居を希望する高齢者は多いです。
国は2010年からサ高住の建設を促進してきました。
ですが、NHKの調査によると、全国でこれまで260件もの廃業や登録取り消しの手続きを行った施設がありました。
専門家によると、ニーズのない地域に過剰に建設されるなどして需要と供給のバランスが崩れていたとのことですが、いったいこの背景には何があるのでしょうか?
サ高住はバリアフリーで、専門スタッフの常駐、安否確認、生活相談などのサービスが受けられる賃貸住宅のことです。
入居希望者も多く、国も補助金を出し、税金を優遇したりなどして建設を促しています。
全国で6,600棟、21万5,000戸が整備されました。
ですが、全国の44都道府県で263件もの廃業がありました。
終の棲家としてサ高住に入居した人がほとんどで、これは非常事態ではないでしょうか。
突然、サ高住が閉鎖になると…
突如として閉鎖になったサ高住の住人は、新しい住まいを見つけなければなりません。とはいえ高齢者に賃貸住宅を貸してくれるアパートは多くなく、生活保護を受給している人も少なからずいるため、家賃の折り合いがつかないということも起こり得ます。
突然、サ高住が閉鎖・廃業になると、スタッフは完全廃業までのわずかな時間を使って、あたらしい受け入れ先探しに奔走することになります。
市に頼ろうにも、「県に言ってくれ」と冷たくあしらわれ、県に言ってもなかなかうまく動いてくれません。
困り果てたスタッフは、知り合いの施設に声をかけるなどして、なんとか露頭に迷わずに済んだ…という事例があちこちで見られます。
利用者は住まいを売り払って、年金だけで施設に入居しているのに、施設から退去を迫られ、行くあてのないまま放り出されることになります。
こうした無責任なサ高住が増えたワケは
原因は、無謀な経営計画にあったことは明らかです。なぜこのような無責任なサ高住の経営が増えたかというと、ひとつに、介護事業への参入のしやすさが挙げられます。
参入のしやすさは、同時に失敗のリスクも高めます。誰でも簡単に参入できることで、大勢の人が参画して、競争が激化し、淘汰され、退出を余儀なくされる人が出るのです。
介護事業の本質は、人による丁寧なケアとサービスの質です。そのため、人材不足に陥れば事業経営は困難を極めます。経営は非常に舵取りが難しく、利益目的であれば尚更です。利潤追及のみをすれば、サ高住・業界全体の質を悪化させることに繋がりかねません。
補助金目当て!?サ高住優遇の現状
とはいえ、サ高住の登録自体は、右肩上がりに増えています。
2017年2月の時点でも、すでに6600棟、21万5000戸の建設が行われており、利用者も増える一方です。
2025年の団塊の世代が後期高齢者になる超高齢化社会において、サ高住のニーズは高まるばかりで、それを追いかけるように供給も増えています。
なぜこれだけサ高住の建設が増えるのかということについては、需要が高いということの他に、補助金がたくさん出るというのが考えられます。
新築の場合、建築工事費の1/10以内で上限120万円/戸、高齢者支援施設を併設する場合は、上限1000万円、有料老人ホームが助成金の期待ができないのに対して、サ高住は在宅の介護に該当するため、補助金が出るのです。
また、所得税・法人税にかかる割増償却や、固定資産税の減額などがあります。そして不動産取得税の軽減措置などの税制の優遇があり、建設は非常に恵まれており、国によって後押しされています。
これが老人ホームの建設が伸び悩むなか、サ高住の建設が増えている大きな要因のひとつでもあります。
サ高住は介護度が低い高齢者を対象としており、まだまだ介護の必要はないけれども、生活の支援をしてほしいというニーズに沿って生まれたものです。
施設への出入りが自由で、居室内に風呂があるなど、他の介護施設と違って自由度が高く、体の自由がきく高齢者にとってはありがたい施設です。
入居者の同意のない一方的な契約解除も難しいため、安定した住まいを確保できるのが魅力でした。
しかし、倒産してしまっては、退去せざるを得ません。
サ高住の今後はどうなる!?
今後もサ高住は増え続けると予想されます。有料老人ホームは入居金や月額料金が高額のためハードルが高く、入居をためらう高齢者も多いため、その代替となる施設として2011年10月に「高齢者住まい法」が改正されました。
サ高住の存在により、特別擁護老人ホームへの待機者問題も解決できることから、ニーズが高まりました。
入居一時金はゼロ円、そして月額利用料も10万円前後で介護サービスを外注し高い自由度を実現。
医療の発達により、元気な高齢者が増えている今、その成長は急激に伸びているといえます。
しかし、数だけで見ると有料老人ホームの数のほうが多く、2012年末の時点で7500施設、入居定員も31万人を超えています。
サ高住との差別化もはかられており、ターミナルケアと呼ばれる看取りのサービスを強化し、介護サービスに重点を置くなどして、有料老人ホームも生き残ろうとしています。
そんななか、サ高住はどのようにして利用者を確保すれば良いのでしょうか。まずは補助金目当ての安易な起業をやめ、利用者目線に立った運営が求められます。
利用料金が安価にしろ、問題というのは、やはり起こり得てしまいます。
利用者側も、お金で決めるのではなく、サービスがどこまで受けられるのか、買い物代行などの生活支援サービスが受けられるのか、また、入浴介助や排泄介助などの身体介助サービスが受けられるのか、なども事前に確認すべきではないでしょうか。
医療を必要としている方は、医療ケアサービスがどれだけ充実しているかも事前に確認する必要があります。
どうすれば良いサ高住を見極められるのか!?
サ高住はたくさんあります。
その中でも、経営がうまくいっているかどうかを見極めるのは非常に重要なことです。
可能なのであれば財務諸表などを見せてもらい、経営状況を確認することも重要です。
民間が運営しているサ高住は、実は倒産の危機にひんしていることも少なくないのです。
良いサ高住を見分けるためには、まずは経営がうまくいっているかを見極めることが重要です。サービスを開始してから1年以上経過しているのにもかかわらず、入居率が50%を切っているようだと、それは運営がうまく行っていません。
やはり入居率はサ高住の売上に直結しますので、どれだけの人がそのサ高住を使っているのかをデータとして出してもらうのも重要です。
6600棟の建設があって、260件の廃業は、割合としては少ないかもしれませんが、追い出される当事者にとっては大変な問題です。
倒産しないサ高住を見分けるためにも、経営環境をよくチェックして、良いサ高住を見分けて行きましょう。終の棲家を突然失わないためにも、事前によく内情を確認することが重要です。
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2020年9月7日 制定