アニマルセラピーの効果は?動物を飼っている高齢者は寿命が延びるというデータも
認知症高齢者のケアを中心に、アニマルセラピーが注目を集めている
認知症高齢者のケアを中心として、アニマルセラピーやドッグセラピーが注目を集めています。動物とともに時間を過ごすことによって、ストレスが減少し、笑顔などが増え、動物の活動につられて高齢者の活動量も増え、全体的に生活の質(QOL)が向上するのです。
アニマルセラピーは、大学病院などでも研究が進められており、臨床の現場でも高い効果が見込まれています。
アニマルセラピーによって、高齢者の寿命が伸びるという研究報告も。
動物を世話し、ともに暮らすことで、どのような効果があるのでしょうか。
高齢者の介護の現場で、アニマルセラピーはどのように役立っているのでしょうか。
高齢者の健康とアニマルセラピー。科学的な根拠は?
日本社会医学会が発表している「我が国の高齢者における犬猫飼育と二年後累積生存率」という研究によると、犬猫の飼育と主観的健康感との間には、相関関係が明確に見て取れました。
自分のことを「とても健康である」という人が40.5%ととても多く、犬猫を飼育している人たちは、そうでない人たちに比べて、主観的に見て健康であると感じることが多かったようです。

また、犬猫を飼育している人たちは生活満足度が高く、趣味活動をしており、手段的支援もあり、高収入であることもわかりました。
これは統計学的に関連が見られたものです。
アニマルセラピーは、科学的な根拠があるのです。
実に4割以上の人が、とても健康であると実感しているとのデータがでました。
施設でアニマルセラピーを導入するには、衛生管理上の問題点などもありますが、高齢者のQOL向上のためにも、一考する価値はあるのではないでしょうか。
アニマルセラピーと生存率との間にも関連性が!?
では、犬猫を世話していると、寿命が長くなる、というようなデータはあるのでしょうか。
同じく日本社会医学会の調査によると、犬猫を飼っている人と飼っていない人では、二年後生存の可能性が、飼っている人98.2%飼っていない人97.8%と、わずかながら、飼っている人のほうが長いというデータが出ました。

ちゃんと世話しているかどうかの調査でも、「犬猫の世話をよくしている」と答えた人は、「しない・ほとんどしない」と答えた人よりも生存率が高く、長生きできるということがわかりました。
これには、犬や猫の世話を良くしている人のほうが、生活リズムが整っているため、健康につながるということが考えられます。
犬や猫はとても早起きのため、そうした犬猫とともに暮らしていくことは、規則正しい生活習慣を送り、健康的に暮らすのにとても役立つのといえるでしょう。
アニマルセラピーの歴史は古い!?その大きな効果
アニマルセラピーの歴史は古く、1962年頃から研究されています。
入院患者にも外来患者にも効果が見込まれており、1987年の段階で1000件以上の論文が提出されています。
アニマルセラピーの効果を区分すると、生理的効果、心理的効果、社会的効果の3つに整理することができます。
生理的効果は、動物の存在そのものが有益であり、飼っている人の生理状態が改善するとされるものです。
代表的なものとして、動物と触れ合っていると血圧が安定するというものがあります。
また、ペットを飼っているほうが、心臓疾患後の延命率が高いというデータもあります。
心理的効果は、アニマルセラピーを行っている人のほうが、心理的側面の改善が見られるというものです。
注意持続力が動物を飼っている人のほうが長いというものが挙げられますし、他にもストレス後の抑うつを防ぐ要因にもなっています。
また、動物の存在が、集団への参加のモチベーションやインセンティブにもなっています。
最後の社会的効果とは、動物を介してその人自身のお世話が行いやすくなるというもの。
高齢者と施設職員など周囲の人とのコミュニケーションや良好な関係を築くのに役立ちやすいというのが挙げられます。
動物を介して、スタッフとの間に温かさや是認といった欠かせない輪が広がり、社会的相互作用が促されます。
とくにこの社会的効果が、アニマルセラピーの中でも注目を集めています。

全体的にQOLを上げることで、人生の質や健康にかかわる要素を良好にしてくれます。アニマルセラピーには高い効果が見込まれるのです。
在宅復帰強化型の介護福祉施設で、リハビリにも使われているドッグセラピー

急病で倒れ、体に障害が残ってしまった人へのリハビリ施設として、在宅復帰強化型の施設があります。
病院での治療を無事に終了したものの、まだ自宅生活を行うのが困難な人たちの生活をささえて、リハビリを主に行っていく介護老人保健施設となります。
作業療法や理学療法による機能維持訓練や、生活リハビリと精神リハビリをともに提供していきます。
そこでのリハビリで、ドッグセラピーを導入した施設があります。
4匹のドッグセラピー犬と、動物看護師、ドッグトレーナー、トリミングスタッフなどのチームが結成され、グループでケアにあたります。
もともと、施設長が利用者の人たちに犬と触れ合う機会を設けたところ、利用者の笑顔が増えたり、意欲が湧いたりといった高い効果があったもので、本格的に導入されました。
この施設のドッグセラピーでは、心と体のリハビリテーションを目的としたプログラムを実施し、高齢者や認知症など、さまざまな障害を持つ人達に対して、犬と触れ合ってもらうことで、情緒を安定させたり、記憶力を改善させるなどの認知症の改善を行ったり、一緒に散歩することで体の運動機能を回復させたりなどの効果を期待しています。
ドッグセラピーによって安らぎや癒やしを与え、意欲がわかない人たちと触れ合うことで、高齢者の生きがいづくりに最適なパートナーとなってくれます。
ドッグセラピーで高齢者の寿命は伸びる!?
若干ですが、調査報告によると高齢者の寿命も伸びることが研究によってわかりました。
犬や猫の瞳や行動から、人に寄り添うという気持ちが伝わってきます。
それらは、高齢者や認知症のある患者さんなどにとって、かけがえのない癒やしとなってくれるでしょう。
心に傷を負った人々にとってアニマルセラピーは有効で、高齢者になればなるほど、アニマルセラピーの効果は高いようです。
笑顔が増え、意欲が増すなどの高い効果が認められるとのことで、注目が集まっています。
実際に利用者への効果を実感している施設も多いようですから、真実味がありますね。
高齢者が、自分が世話されるだけではなく犬猫の世話をすることによって生活リズムが整い、コミュニケーションやふれあいによって癒され、愛情を感じることによって意欲が高まるのです。
生き物を飼うということは責任を伴うことでもあり、まだまだ課題は多いのですが、確実な効果が見込まれることがわかってきたため、今後はさらにアニマルセラピーを導入する施設が増えそうです。
お年寄りと同時に、犬や猫も幸せに暮らすことができ、相互に長生きできれば理想ではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定