効率化をもたらす介護ロボットの普及が進まず!金銭的事情が大きく影響する中、経営を圧迫する人件費的には導入が正解?
イノベーション可能性のある介護業界
日本は今、国全体が大幅な売り手市場になっています。
労働人口が減り、超高齢社会という構造が巨大化することで国全体の生産力が落ちているのです。
特に、待遇がそれほど良いとは言えない介護業界、なかなか人が集まらないという状態にあることはこれまでに何度もお伝えしてきたとおりです。
世界の先進国はどの国も少子高齢化に悩まされています。中でも日本は進行のスピードが早く、世界で先陣を切って超高齢社会を形成しています。もはや「超・超高齢社会」といっても過言ではないような状況も目前にあると言えるでしょう。
介護ロボットの普及状況は?
しかし、悲観的に考える必要はありません。
社会問題には常にイノベーションの余地があるからです。
特に介護ロボットの導入は、まだまだ人力で手作業を進めている介護現場の生産性を大幅に向上させる可能性を秘めています。
重労働で体力が必要だとされる介護、これに関するさまざまな業務を改善することができる希望がこの分野にはあるのです。
ではそんな介護ロボット、実際の普及状況はどのようになっているのでしょうか。
公益財団法人介護労働安定センターが介護労働の2016年度実態調査を行っています。
それによると、ロボットを導入して「いない」と答えた施設が78.8%にものぼっています。
約8割の施設がロボットを導入していないという事実。
それはすなわち、人手不足と生産性向上に強い関心がない、そしてそれに対する危機感がないということを意味するのかもしれません。
一方で、実際にごく少数使われている介護ロボットにはどのような種類があるのでしょうか。
重労働のお風呂を助けてくれる「入浴支援機器」が1.8%、施設の見守りをサポートしてくれる「見守り支援機器」が1.5%、癒やしに使われる「コミュニケーションロボット」が1.0%などとなっています。
他にも「装着型の移乗介助機器」や「非装着型の移乗介助機器」、「在宅の見守り機器」などがランクインしていますが導入状況はいずれも著しく低く、ほとんど普及していないというのが現状です。
導入状況は非常に悪く、生産性を上げるためにロボットが大切だと感じてはいるものの、できない、現場にフィットしないという問題などが挙げられます。
お金がないからロボットが普及しない!?
それでは、なぜ介護ロボットの普及が進まないのかということについて考察していきましょう。
調査の結果、課題としてあげられた理由では「導入する予算がない」が60.4%を占めています。
これは介護ロボットの価格がまだまだ高すぎるという市場価格の問題もあるでしょう。
普及し始めるに従い、市場原理によって価格が下がることで一気に施設へと広がっていく可能性がここにはあります。
介護ロボットを導入しない理由として次に多いのは32.4%で「誤動作の不安がある」が挙げられます。介護職員には中高年層が多く、特に経営層は年齢が高いのでロボットに理解が足りていないという問題がここにはあるのではないかと思われます。
「清掃や消耗品管理などの維持管理が大変」と答えた施設も30.6%存在し、日頃ただでさえ多忙な業務を送る介護職員の負担がますます増えてしまうのではないかと懸念されていることが想像できます。
ところで、資金面が課題なのであれば、仮に資金が潤沢の場合は介護ロボットを導入しても良いと考えている施設が多いのではないか、と考える事もできます。
介護ロボットの導入は、低賃金かつ過重労働の介護業界で生産性を挙げてくれる可能性のあるテクノロジーです。若い人でも賃金が平均的であって肉体的な負担が少なければ、介護の職についてみたいと考える人も増えるのではないでしょうか。
ロボット普及に向けた助成金や規制緩和策!
現状を打開する可能性のある介護ロボットを普及させるにはどうすればよいのでしょうか。
実際のところ、介護ロボットはメーカーや大学等で研究がなされている段階でまだまだ開発途上のため、市場価格が非常に高いのがネックです。
これは莫大にかかっている研究開発費が製品価格に反映されることの影響であり、ごく当然のことだといえます。
それが何らかの形で価格低下圧力がかかり、普及するにふさわしい価格帯にまでなれば、導入してみたいと考える介護施設は多いのではないでしょうか。
例えば、IoT(モノのインターネット)と呼ばれるサービスには、IoT補助金やIoT助成金といったものが用意されています。そうしたお金を使えば、まずはIoTのジャンルから介護の現場に見守りサービスを導入していくことができます。
また、介護ロボットが高価で買えないのであれば、根本的に売上を伸ばすことへ尽力する方向性も当然考えられます。
高級老人ホームや混合介護などで資産を持っている一部の高齢者にお金を支払ってもらい、それに応じたサービスを提供していくことで介護施設全体の売上を伸ばすことができるかもしれません。
それにはこれまで何度もお伝えしているように、規制を撤廃し、混合介護などを積極的に解禁していくことが重要なのではないでしょうか。
事業収入において人件費が大半をしめる介護の現場
コスト面で導入が阻まれる介護ロボットですが、事業における費用の大半を占める人件費が、こと介護業界においてはどれほどの割合となっているのかをここでみてみましょう。
先の調査によると、訪問介護系施設では事業収入の71.8%を人件費が占めるとされています。他の業種と同様、介護事業においても人件費は見過ごせないコストなのです。
しかし、利益を確保するための急な人件費削減が現実的とは言えません。介護の中心はまだまだ人という現在、人手不足の中で人件費をこれ以上削れば、ますます介護のなり手が少なくなることは避けられません。
訪問介護系の他にも施設入所系が61.5%、施設通所系が63.3%を人件費に割いているのであれば、そこにはまだまだロボットが入り込む余地があるでしょう。今後はできる範囲から、介護ロボットの導入が進んでいくものとみられています。
介護ロボットによる介護のこれから
職業としての介護はとても大変な仕事です。
肉体的にだけでなく精神的にも疲れますが、比較的就職が容易であるという利点も介護職にはあります。
仕事を離れてブランクがある人や他業種からの転職であっても、正社員になって厚生年金等に加入しながら働いていくことも可能なのがこの職種です。
一方で、入浴や移動など、介護する側のスタッフに負担がかかる仕事があるのはまた事実。そうした職務においてパワードスーツやリフトなどがあれば、負担を大きく軽減できるのではないでしょうか。また、見守などもまだまだテクノロジーで効率化できる業務です。
今回の調査では、ロボットの類を「いずれも導入していない」と回答したのが78.8%、「無回答」も16.3%ありましたので、介護ロボットの導入状況はまだまだ低いというのが現状です。
しかし介護施設において経営者層の年齢が高く、ロボットへの理解が不足している一方で「デジタルネイティブ」と呼ばれる、子供の頃からスマートフォンやタブレットなどに親しんでいる世代が介護の現場で働くようになれば、介護ロボットも導入しやすくなるはずです。
高齢者増加による財政負担も大きく、ネガティブに捉えられがちな介護ですが、イノベーションの余地があるとして世界から注目されているのもまた事実なのです。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 31件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定