日本においてがんで亡くなる人は37万4,000人
日本人の死因でもっとも多いのはがんです。これは昔から変化しておらず、平均寿命が伸びている現在でも食生活やストレス、生活習慣などによってがんに罹患。年間ではおよそ37万4千人もの人が、がんによって亡くなっているのです。
しかし、がんは早期発見、早期治療で回復が見込める病気になってきました。標準医療をどのように受けていくかは医療リテラシーが問われる問題です。根拠のない医学を信じ、治療を放棄してしまわないよう、自己防衛をしていく必要もあります。
国立がん研究センターの調査は、がんの5年生存率を発表しています。

これによると前立腺がんが97.7%、乳がんが92.7%、そして大腸がんが72.6%となっています。
年間でがんに罹患する人の内、75歳以上のケースが42%を占めており、多くの高齢者はがんと戦っていることがわかります。
5年生存率が高いのであれば、がんばって治療しようという希望になるのではないでしょうか。
抗がん剤の効果
しかし、74歳以下の方にとって効果のある抗がん剤治療は、75歳以上の方に対して延命効果がないという研究発表を国立がん研究センターが行っています。
高齢者は75歳を超えて後期高齢者になってくると、抗がん剤が体に大変な負担をかけるようになることがわかってきたのです。
効果のほどよりも副作用の方が強く、結果としてQOLを著しく下げてしまいます。
免疫力も衰えていますので、少しの副作用でも重症化してしまいやすく、そちらのほうが生命を脅かしたり、苦しかったりする可能性があるのです。
高齢期になってくると、体の免疫力の強さ持久力、筋力などの基礎体力は個人によって大きく差が現れます。個人差が大きく、医師や病院側もすべてのがん患者に抗がん剤を勧めるというわけにはいきません。
体力や栄養状態、合併症の可能性、メンタル、そして誰と生活しているのかまでを含めて総合的な判断が行われ、こうしたアセスメントから現場の医師はそれぞれの患者に合わせたオーダーメイド治療を行っているのです。
高齢期の抗がん剤治療、本当に必要!?
若い世代のがん患者は標準治療を受けるのがベストでしょう。
日本の保険診療によって行われる治療は度重なる臨床試験を繰り返し、人体に確実な効果をもたらしてくれるものしか保険診療の許可が降りません。
保険診療外で高額な自己負担を要求される免疫療法や放置して治そうとする自然派治療は、あくまで本人の自己判断の上ということにならざるを得ません。
高齢期においては、もともと糖尿病や高血圧などで体調が優れないというケースがありますので、若い人と同じような治療をするのは困難です。
たとえばステージIの大腸がんであっても、64歳以下の場合は9割以上が手術や内視鏡、抗がん剤の組み合わせで治療が施され、治療が行われなかったケースは1.6%にとどまります。

しかし、75歳以上ではそれが4.6%となり、85歳以上では18.1%に。手術や抗がん剤治療を行わない人の割合は年を重ねるとともに増える傾向にあります。
無治療という選択肢
しかし、75歳以上の後期高齢者にとっては、治療よりも体に負担がかかることや副作用のほうが大きいことから、あえて抗がん剤を治療しない「無治療」の選択肢も増えてきました。
高齢期になってくると、がんになったからといって、抗がん剤治療を使わない、自然な体の老いと病を受け入れるという消極的選択肢が医療の現場で取られつつあるのです。
がんにかかっていることが発覚すると事前に保険金が降りる保険などもあり、消極的ながらも闘病生活を豊かに過ごすという選択肢が可能となりつつあります。
国立がん研究センターは70歳以上でがんに罹患している患者1500人を追跡調査し、抗がん剤治療が有効なのは74歳以下と結論づけました。
75歳以上では抗がん剤を使わなくとも生存率に著しい差は見られなかったのです。
これはまた、自然に死を受け入れていくというスタンスにつながります。高齢期を病とともにどう生きるかという哲学的な問にも派生し、慎重な対応が求められるところです。
医療が大変進歩している今、誰しもが適切な治療を受けて長生きしたいと感じるのが常ですが、高齢期においては、がんによる自然な死を受け入れることもひとつの生き方の選択肢として考えていかなければならないのかもしれません。
高齢者の治療方針をいち早く確立する必要がある

進行性のがん、例えば大腸がんのステージⅣにおいては、75歳以上の後期高齢者に「治療なし」という傾向が顕著みてとれます。
高齢期になると認知機能が大幅に低下し、うまく考えることができなくなることから治療をしないという選択肢が取られるケースも存在し、その場合は家族や介護施設などが患者を支えていく必要があります。
厚生労働省もこの問題には真摯に向き合っており、高齢期のがん患者に向けてガイドラインを作る構えでいます。
いかにして生き、そして死んでいくか?
病気はどれだけ健康に気をつけていても、なるときは突然なってしまうもの。
そしてどのような人生を送っていても、いつかは死が訪れます。
色々なものが自由となっている現代、人生の終盤へと近づいていくにつれ、「いかにして死んでいくか」ということを考えるのが重大なテーマとなっていくでしょう。
ことがんに関して、体に大きな負担をかける抗がん剤は、後期高齢者以上の患者さんにとって苦しさを伴う上に、生存率にあまり差がでないということがわかりました。
がんを必要以上に怖がらず、しっかりと知識を身につけて病を受け入れていくこともまた、大切なことなのかもしれません。
高齢期がん治療の方針を策定する必要性は高く、国立がん研究センターの調査や厚生労働省のガイドラインが待たれます。
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2020年9月7日 制定