介護給付費は過去最大の9.7兆円!税金も投入する現状に改善策は!?
増加の一途をたどる介護給付費は負の連鎖を産んでいる
介護にかかる費用は増加の一途をたどっている超高齢社会、日本。先日、自己負担を含めた介護給付費の総額が約9.7兆円となったことを厚生労働省が発表しました。介護サービスの利用者も614万人、介護給付費と共に過去最高を更新しているという現状です。
介護給付費増大の背景とは?
そもそも介護給付費というと、1年間にかかった介護サービスの保険料支払額をいいます。居宅介護、施設介護などでも介護サービスは使われており、すべてが介護保険で賄われています。
介護保険は2000年にスタートしたサービスであり、さらなる高齢化を見据えた40歳以上の人たちの手によって、相互に支え合おうというコンセプトのもとで作られた保険制度です。
9.7兆円のうち、半分が40歳以上の国民によって成り立っている保険制度ですが、もう半分は税金が投入されています。
ちなみに、介護保険は国民”皆”保険であるため、40歳になると納付義務が必ず発生します。
そんな中、介護給付費について厚生労働省から発表がありました。
昨年2016年度の「介護給付費等実態調査」によると、介護給付費の費用は年間9兆6,924億円となり、過去最高の値になったのです。
過去5年間の介護給付費の伸びをグラフにしましたので御覧ください。
その大きな伸び具合がわかると思います。
また、介護保険を利用した人の数はトータルで613.8万人。
こちらも前年から1.4%ほど増加し、過去最高を記録している状況です。
ひとりあたりの介護保険の利用額は16万400円となり、2%の伸びとなりました。
ちなみに「日常生活支援総合事業」に重点が置かれることによって予防介護や訪問介護などの諸費用が減少しています。
その分は「日常生活総合支援事業」が負担していることになります。
介護給付費はなぜここまで膨れ上がってしまったのでしょうか。これについて厚生労働省は「年齢が上がるにつれて、一人あたりの介護費が増加。さらに、年齢が80歳を超えたあたりから、どんどん介護費用がかかっている」ということがわかるデータを発表しています。
65歳~69歳では3.5万円と、それほどかからない年間の介護費用ですが、75歳~79歳では一変。17.1万円にも膨れ上がります。85歳~89歳ではさらに飛躍し79.9万円、90歳超に関しては153.9万円ものお金がかかっています。
人間、年をとるほど体が思うとおりに動かなくなりますので、介護費用が高くなるのは自然の流れ。そのため、年齢と相関するように、一人あたりの介護費用が増加していくのです。
また、介護が必要な高齢者数も増加傾向にあります。
介護サービスの受給者数は、2013年には566万人だったものが、588万人、605万人と増え続けていき、2016年は613.8万人に増加しています。
これが、冒頭でお知らせした介護保険受給者の実情です。
介護保険増加の理由は自己負担が少なすぎるから?
しかし、この介護保険はある問題を抱えています。たとえば、介護ベッドで考えてみましょう。介護ベッドを大手家具ショップなどで購入すると、約40,000円程度ですが、同程度のものを介護サービス用品店などで購入すると10万円もかかるのです。
この時点では、家具ショップで市販のものを購入したほうが得なのは明らかです。ですが、介護保険制度の適用により介護サービス用品店での購入した場合の自己負担は10,000円で済んでしまいます。
10万円の介護ベッドを10,000円で買えるのですから、介護サービス用品店を選ぶのは合理的な選択です。
しかし、残りの90,000円は、税金で払われているのです。
こうした選択は、介護が発生しているあちこちで起こっています。
介護事業にお金が流れるので消費が喚起されるという考え方もありますが、その原資となっているのは税金です。
終わりの見えない介護の中で、少しでも自己負担が少ない方を選ぶのは誰しも同じでしょう。しかし、これでは介護費は膨らむ一方であり、こうした問題点は是正の余地があるかもしれません。
増え続ける介護費用は当然、財政問題にも波及
ところで、超高齢社会と言われている現在、危惧するほどに高齢者は増えているのでしょうか。その疑問は、1年間の出生と死亡率をまとめた人口動態のグラフを見るとわかります。
65歳以上の人口は、2015年の時点で3,395万人、75歳人口は1,646万人だったものが、2025年には65歳以上が3,657万人、75歳以上が2,179万人となっています。
つまり、今の27歳が高齢者になるころには、人口における高齢者が約40%になる計算なのです。
また、介護保険料を含む社会保障費全体が増加し続けています。年金や医療、介護福祉などを合計した費用は、2016年度で118.3兆円。そのうち、保険料で賄われているのが約65%割程度です。あとは全て、税金と国債などの借り入れでまかなっています。
社会保障を求める人は絶えず、財源はもう限界!?
保険料収入が伸び悩む一方で、社会保障費の負担割合が増加しているという実情。これは、働いていない高齢者が増え、なおかつ現役世代の給与が増えていないことを意味しているのです。
この事実に加えて平均所得も下がる傾向にあり、このままの現状では保険料収入のシステムは維持できません。税金で賄われるのであればかまわないと考える向きもあるかもしれませんが、日本の財政は債務超過状態にあります。
債務残高は増え続け、国債の発行も増加。これまで赤字財政をただひたすらに未来へと先送りしてきた結果が、この1,000兆円を超える借金なのです。解決には、保険料を増加させる、あるいは自己負担額を増加させるなどの対策を講じるしかないのかもしれません。
国の借金と、介護保険および社会保障費の給付が年々増加し続けている現在、保険制度全体の見直しは必須と言わざるをえない状況。
すでに今年、医療費の上昇が一因となり、75歳以上の高齢者でも所得があれば負担をお願いするように制度が改正されました。
これからも高齢者は増え続け、介護費用は増大の一途。
次なる一手は用意されているのでしょうか。
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2020年9月7日 制定