最新の「国民医療費事情」とは
医療にかかる費用は増加の一途を辿っていると言われている超高齢社会の日本。厚生労働省は、2015年度の国民医療費を発表しました。その額は前年度から3.8%増の42兆3,644億円となっています。
この結果は一昨年のものであり、昨年、そして今年はまだまだ伸びている可能性があります。今後、高齢者の増加や医療の複雑化、高額な治療薬が保険適用になるなど、さまざまな要因が絡み合うことで日本の医療費は増え続ける可能性があります。

国民医療費は、私たちが支払う健康保険料と税金、窓口で支払う患者負担、そしてその他の財源によって支えられていて、医療関係者の給与や製薬会社などの利益となっていきます。
それ自体は、消費が喚起されるので悪いことではないのですが、医療費42兆円のうち16兆円が税金で支えられているため、支出は少ないほうが良いと考えられるでしょう。
現役世代に比べ、高齢者は4倍の医療費
なお、国民ひとりあたりの医療費は33万3,300円となり、前年度から3.8%増加という結果になりました。
こちらも9年連続で増え続け、過去最高額となっています。
日頃、それほど医療費を使っているつもりはないけれど」と思われるかもしれませんが、これは窓口で払っている医療費の自己負担ではなく、健康保険料も加味した金額です。
また、高齢者は現役世代に比べ、4倍の医療費がかかっています。原因としては病院にかかる頻度が増え、なおかつ持病を複数持っているケースがあり、かかる治療費が増大しているからでしょう。
ところで、ひとりあたり医療費を都道府県で見たデータも厚生労働省は用意しています。かかった医療費の総額は、人口の多い東京都が4兆1,433億円。続いて、人口の多い大阪府は3兆2,193億円。さらに神奈川県2兆7,186億円と続きます。
医療費が増大を続けるカラクリとは
では、なぜ国民の医療費は年々増加しているのでしょうか?様々な原因が考えられますが、やはり高齢化に伴う医療費の増加が中心だと思います。高齢者の医療費は若年者よりも高く、75歳以上は2014年の時点で93.1万円を超えています。

また、年齢別平均投薬数を見ると0歳~9歳頃までは増加傾向にありますが、成人年齢に近づくにつれて、減少します。
しかし、成人時は3種類前後の投薬数だったものが、70歳~74歳になると3.8種類程度になり、75歳~79歳になると4種類を超えます。
85歳上になると5種類以上の薬を投与されており、高齢期には年齢に比例して薬剤数が増えることがわかります。
つまり、治療に使う薬剤数の多い高齢者が増えることによって、医療費全体も増加する、という仕組みです。
もちろん医療費増加の原因はこれだけではないでしょう。
いずれにせよ、医療や年金、介護とその他福祉を含めた社会保障費の総額が100兆円を超えていることは、保険制度崩壊を推し進める要因であることに間違いはないと思われます。
少子高齢化は先進国共通の問題
医療費制度をめぐる問題は、いたる先進国でも起こっています。たとえば、アメリカでは世界一薬価が高く、国民皆保険も未導入のため、病気や怪我で莫大な医療費がかかって破産することもあると聞きます。
反対に、医療費が無料なので、誰でも自由に病院にかかることのできるイギリスや、自己負担が全額還付されるフランスでも、医療費の莫大な増加に悩まされています。
原因としては、少子高齢化が考えられるでしょう。移民が多く経済発展が順調なアメリカをのぞいて、先進国はどこも少子高齢化に悩んでいますし、北欧は福祉国家が多いため、国家財政に占める医療費の負担が大きいのです。
ところで、日本は平均寿命が伸びていることが調査でわかっています。若々しい高齢者が増え、65歳以上は準高齢者、75歳以上を高齢者と呼ぼうという呼びかけもありますし、それにともなって、病院にかからず自分の力で生活できる健康寿命も伸びています。
高齢期になると医療費はかかるものですが、健康寿命を終えて平均寿命が来るまでの期間に集中して、医療費がかかっているのが大半ではないでしょうか。それが累積して、国の莫大な国民医療費につながっているのです。
今後の日本、医療費はどうなる
下に用意したパイチャートは、高齢者と現役世代以下の医療費割合を示したものです。
65歳以上(59.3%) | |
65歳未満(40.7%) |
ご覧の通り現在、医療費の約6割が、高齢者医療に使われています。
平均寿命がいきなり100歳になることは考えられませんが、逆に短くなることも考えにくいので、日本の高齢者は長寿であると同時に、医療費が非常にかかるでしょう。
私達もいずれは年をとり日本の医療制度にお世話になる時が必ずきます。
決して他人事とは思わず、常に考えていくことが大切です。
では、どうすれば増え続ける国民医療費を抑えることができるのでしょうか。まずは、健康寿命をできる限り伸ばして予防医療を充実させ、なるべく病気にかからないような体づくりが大切ではないでしょうか。
実際、歯科の分野では予防歯科が進んでおり、虫歯にかかる前の歯みがきや、定期的な口内メンテナンスを重視するよう、歯医者さん主導で啓蒙しています。それによって医療費が抑えられ、患者はいつまでも健康な歯を保つことができるでしょう。
医療費抑制のためにできることは?
そして、大きな病気にかからないためには、健康診断なども欠かせません。
自分の体に自覚症状がでないうちは、健康診断をおろそかにしてしまいがちです。
また、薬剤の特許期限が切れており、薬価の安いジェネリック医薬品などの活用も有効です。
診察を受ける場合、大学病院を受診するより、近所の病院に頼ったほうが安くすむ場合もあります。
また、高齢者の医療費を支えるのは、若者やこれから生まれてくる子どもたちです。
そうした未来の人たちがいきいきと活躍できるような社会を応援していくことも、経済成長には必要で、それがあれば、高齢化社会の医療費増加は怖くありません。
これらは、ひとりひとりが努力していかなければ解決できない問題なので、国民全員が意識していかなければならないのです。
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2020年9月7日 制定