2018年度の介護報酬改定、政府は”引き上げ”を検討!署名活動の思いは届くか?
来年度の介護報酬が引き上げの方向へ!
現在、介護施設の売上は介護報酬によって決められているわけですが、その出所は私達の税金です。その介護報酬ですが、プラス改定の方向で検討に入っている状況であることが明らかとなりました。
保険料上昇を懸念し、小幅な引き上げに?

介護報酬は税金が使われていることもあり、政府によって3年に1度見直しが入り、次の改定は2018年。
昨今の経済事情改善で大幅な人手不足となり、人件費が高騰していることに加え、前回の2015年は-2.27%とかなり引き下げられたことで、収益性が悪化して倒産した介護事業者もありました。
そうした状況に対応するために政府は、検討段階で正式な引き上げ額は明らかになってはいないものの、来年度の介護報酬を引き上げる動きに入っています。
ただし介護報酬が上がると、それに付随して私たちが負担する保険料も上昇するため、あくまで小幅な値上がりとなる見通しです。
その一方で、介護サービスの種類ごとに効率性を重んじ、生産性が上がらない介護の現場において徹底した見直しを行う模様です。
介護報酬改定の経緯
そもそも、介護保険制度の成り立ちは2000年がスタートとなります。超高齢社会で増え続ける高齢者の問題を解決するために、介護保険制度が導入されました。現在は3年に1度の見直しで、成立当初は5年に1度の見直しでした。
2006年には介護ケアから、介護がなくとも自立できることを重視する方向へと転換し、同時に食事や住居費が全額自己負担に。低所得者への給付も広がり、より多くの人が適切な負担で介護サービスを受けられるようになったのです。
そして2012年の改正では、利用者数が当初の3倍となったことを受けて、より重度なケアに対応できるよう、医療と介護の連携を強めることとなりました。地域包括ケアシステムが提唱され、より総合的にかつ地域で介護サービスを進めていくこととなったのです。
さらに2015年頃には低所得者への保険料を軽減する措置が拡充され、ある程度の所得がある人へは自己負担額が2割引き上げられるといった、制度の持続を優先した改定が行われました。
介護報酬引き上げ可能性の背景とは

では、介護報酬が引き上げられるという議論に至るまでの背景にはどのような事情があったのでしょうか。
厚生労働省の「介護事業経営実態調査」によると、2015年改定の翌年度における介護サービス全体の収益差率は全体で3.3%となり、0.5%マイナスとなりました。
前回の引き下げにより、全体的に利益率は急激な悪化を示したのです。一部、訪問介護や通所介護は比較的収益率が高いものの、ほとんどのサービスで事業の収益性が下がっています。
介護報酬は事業所の利益に直結しており、介護施設がうまく運営され事業を幅広く展開していくのも、収益性の悪化で倒産してしまうのも、国の采配次第です。
次回の改定で引き上げになるとすれば、収益率が改善する見通しが立てられ、介護サービスの業界全体が伸びていくと考えられます。
既存の事業拡大や、チャンスを見つけて他業種から参入したりなどの活性化が見込まれ、業界や社会にとっても良い風が吹く可能性があるのです。
介護事業者の訴え
介護報酬の引き上げによる背景のひとつに、先程見た介護業界全体の収益性悪化が関係していると見ることができます。
介護サービスはよく中小企業と比較されますが、その中小企業における収益差率の平均は2.6%。それを踏まえると、まだまだ介護関連事業の利益率は高い反面、昨今の人手不足により人件費が高騰し、収益性を圧迫することになっているのが実情です。
人手不足は介護の仕事を非常にきついものにしてしまい、人が離れていくという離職率の高さへとつながっています。かつてNCCU(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン)は介護職の給料を値上げしてほしいと厚生労働省に要望書を出していることも事実です。
団体によるその訴えが届いた可能性は十分あり、介護労働者の苦しい事情も国は把握しているのかもしれません。
業界団体も署名を行っており、介護報酬引き上げは多くの介護関係者にとって悲願でした。また、現政権は「介護離職ゼロ」を政策に掲げており、介護に力を入れていくことも宣言しているために、介護報酬引き上げの方針が定められた可能性は十分にあります。
介護報酬の変更点とこれからの課題

ここで、訪問介護とデイサービスの利益状況を見てみると、訪問介護は4.8%の利益率、通所介護(デイサービス)は4.9%とかなり高めになっています。
前年と比べて下がりはしたものの、相対的に見ると高くなっており、これが介護報酬引き上げへの懸念となっていました。財務省が審議会を開き、中小企業と比較しても利益率が高いとして、適正化すべきとの提言もあったのです。
とくに訪問介護とデイサービスは利用者が多く、介護給付費が増加する要因となっていました。また、現場では本来は不要なサービスまで提供されている「囲い込み」懸念があり、適正化が必要だったのです。
こうした背景に加えて収益差率も高かったため、訪問介護とデイサービスはメリハリを効かせて増減をはっきりとさせる見通しとなりました。
収益差率から見るに、デイサービスのうち大規模事業所では介護報酬が引き下げられる一方で、機能訓練の介護報酬は手厚くなる可能性も考えられるでしょう。
ITを使った生産性の向上が課題に
介護の仕事はまだまだ非効率、ICT(IT)を導入すればすぐに解決する課題が人力で行われているのが現状です。
そうした現場の声を受けて、厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会の会合では、生産性の向上がテーマのひとつに挙げられました。ITの活用、ロボット技術の導入によって効率化を進めていきたいという考えなのです。
すでに厚生労働省は、今年の夏までにモーターを使用した移乗介助の機器、IoT技術(※)を利用した見守りサービスを、特養などを中心として40施設で試験導入を行っていました。近く、その試験導入の結果を元にした具体策が明らかとなる見通しです。
ITをうまく導入できれば介護にかかる職員の負担が大幅に軽減され、過酷な労働から解放される可能性もあります。効率が良くなれば給与も上がり、介護の仕事をやってみたいと考える人も増えるかもしれません。
介護報酬は次回(2018年)引き上げを予定しており、若干であっても、増加であれば喜ばしいことです。また2021年にはその次の改定が待っており、その頃にはさらに高齢者が増えていることでしょう。
事業者が介護報酬引き上げによって利益を増やせば、介護従事者の給与もあがります。それによって設備投資も可能となり、高齢者は質の高いケアを受けることができるようになるのではないでしょうか。
※:IoT技術=「Internet of Things」。
「モノのインターネット」と訳され、PCやスマートフォンだけでなく「全てのモノ」にインターネット接続できるようにすることで、効率化を目的とした技術のこと。
例えばエアコンの場合、インターネットに接続することによってその日の天気情報を読み取り、自動的に温度調整をすることができる。
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2020年9月7日 制定