高齢者の再犯率は約4割!独居老人ほど窃盗などの犯罪を犯しやすいデータも
高齢者の犯罪率が増加傾向にあることをご存知でしょうか?法務省が2017年版犯罪白書を公表し、2万467人の刑務所入所者のうち、2,498人を高齢者が占めている状況であるとわかりました。
日本の”高齢受刑者”事情
高齢犯罪者数の増加
法務省が2017年版犯罪白書で明らかにしたところによると、刑法犯(刑法を犯した犯罪者)の認知件数そのものは減少傾向にあります。
具体的には、刑法犯の数は2015年の時点で前年比9.4%減少して109万8,969件。件数も年々減り続け、1996年と比較すると39.4%もの減少が見られました。

その一方で高齢者による犯罪件数は逆に増加の傾向がみられました。
刑務所へ入所した高齢者の数は、20年前の1996年時点で男性500人、女性30人程度だったものが、2016年には男性2,313人で約5倍、女性は319人で、約11倍に増加。
検挙された65歳以上の高齢者数だけみても、1996年から2006年にかけて爆発的に増えているのです。
高齢犯罪者の再犯率は40.2%!
さらに犯罪白書は、65歳以上の高齢者による再犯率の高さにも注目しています。
刑期を終えて出所したのに再び罪を犯して逮捕・検挙された高齢者は991人。
そのうち40.2%にあたる398人が半年以内に再犯で捕まっているのです年代別に比較しても、高齢になるほど半年や1年未満といった早期に犯罪を繰り返す傾向があります。
この状況を改善するため、2016年には再犯防止対策として国と自治体が力を注ぐよう指導する「再犯防止推進法」が成立し、地域のネットワークを使って更生を後押ししていきたいと犯罪白書が特集を組んでいます。
高齢者が犯す犯罪とは
高齢者が犯す最も多い犯罪は”窃盗”
前の章で高齢者の犯罪率が増えていることがわかりましたが、その具体的な内容をみると、窃盗や暴行・障害が主なものになっているようです。特に窃盗は高齢者の犯罪のうち、約半数を占めるほどになっています。
一方で暴行・傷害も増えており、2015年に暴行・障害で検挙された高齢者の数は5,823人。1997年には暴行・障害は330人前後だったことを考えると、20年前とくらべて17倍に増加しており、どちらも20年間かけて右肩上がりに増加していることがわかります。

しかし暴行・障害が多いといっても全体の3.3%でしかなく、高齢者の中で最も多い犯罪は全体の53.2%の窃盗です。男性高齢者では48.4%、女性高齢者はなんと83.1%が窃盗による犯罪で逮捕され、刑務所に入所しています。
高齢者の窃盗はほとんどがスーパーやコンビニでの万引きです。
万引きは1度目の逮捕では即刑務所送られるということにはならず、微罪処分で検察へ送検されず釈放されます。
2回目の逮捕でも罰金刑になる場合が多く、3回目に逮捕されて送検となってはじめて、”刑務所生活”の可能性がでてきます。
つまり、窃盗で刑務所に入所する高齢者は何度も万引きを繰り返して逮捕されている可能性が多いのです。
高齢者の検挙数推移
では、高齢者の犯罪種別がわかったところで、検挙人数はどの程度なのか見ていきましょう。
2015年の犯罪白書では殺人が164人、強盗が127人と、20年前から増え続けています。
これはとても重大な犯罪であると同時に、殺人は18.0%が高齢者によるものです。
そして窃盗は3万4,429人の検挙人数、高齢者の割合が27.8%と大きな割合。こうして見ると、高齢者の窃盗(万引き)率は他の犯罪と比較しても高く、高齢者にとって犯しやすい犯罪なのだということがわかります。
ところで、2016年の保護観察付執行猶予になった人の数は303人。
そのうち高齢者の割合は8.8%となりました。
これは逮捕されても刑務所へは行かず、保護観察付きの執行猶予処分になった人の数です。
また、刑務所に入所して服役し、刑期の3分の1以上を終えて反省が見られ、仮釈放となった高齢者の数は1,154人でした。
全体の仮釈放者のうち40.1%が高齢者なので、逮捕された人のうち高齢者が占める割合は高くなりつつあることがわかります。
高齢者による犯罪を予防するためには
高齢者の犯罪率が増える原因
増え続ける高齢者による犯罪はなぜ増えたのでしょうか。まず当然ながら、超高齢社会が進行するに従って、高齢者の数そのものが増えているので犯罪の総数も増える、ということが考えられます。
そして窃盗、つまり万引きが高齢者の中で一番多いことから、経済的事情が関係しているものと推測できるでしょう。
高齢者は年金で暮らしている場合が多く、貯金や年金が減ると老後の見通しが立てられなくなるため、不安からタダで食料品や雑貨が手に入る万引きに手を染めてしまうことが多いのです。
そして本人や周囲が気づかずに認知症などになり、物事の善悪が区別つかなくなることで窃盗したり、カッとなりやすくなって暴行や障害を働いてしまったりといったケースも。
犯罪を犯す高齢者は疎外感や孤独感を感じていることがあり、寂しさと退屈さからスリルを求めて窃盗することもあります。

寂しさから犯罪に走る高齢者を裏付けるデータとして、犯罪白書は高齢者の犯罪を調べ、同居状況を明らかにしています。
それまで真面目に生活してきて高齢になってはじめて犯罪をしてしまった「高齢初発群」では、単身者の割合は23.1%が単身者であるのに対し、受刑歴があり、また犯罪を行った「受刑歴あり群」での単身者率は77.9%です。
つまり刑務所に入ることで家族を失い、家族を失ったことで寂しさからまた犯罪に手を出してしまうという悪循環が浮かび上がります。
周りの高齢者を強く意識すること
これらのことから高齢者の犯罪を増加させず、むしろ減らしていくためには何より社会的に孤立させないことが重要。刑務所から出てきた高齢者でも色眼鏡で見ず、更生の意思を示しているのであれば社会が受け入れていく態勢も必要となるかもしれません。
また刑務所のほうが3食のご飯と夜露をしのげる寝床があることから罪を犯し刑務所に入りたがる人もいるため、高齢者の貧困問題についてに注視していかなくてはいけません。
年金がこれ以上増えない中で困窮する状態では、恥ずかしがらずに生活保護を受給するように促すなど、高齢者の意識改革も必要でしょう。
また高齢者が現金収入を得られるよう働く素地を構築するなどの施策も重要です。
社会全体、地域全体が協力しあい、防犯意識を高めて高齢者の犯罪を撲滅するよう努力しなければなりません。
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2020年9月7日 制定