介護福祉士試験の結果が発表に
6万5,574人の新たな介護福祉士が誕生
厚労省は3月28日、2017年度介護福祉士国家試験の結果を発表しました。受験者数は昨年度より1万6,331人多い9万2,654人で、うち合格者は6万5,574人。合格率は前年度比1.3ポイント減の70.8%となっています。
介護福祉士国家試験は2015年度まで15万人以上の受験者数がいましたが、2016年度から、現場で経験を重ねながら資格取得を目指す「実務経験ルート」の受験資格に「実務者研修」が加わったため、受験者数がそれまでの5割程度に落ち込みました。
ただ2017年度は再び増加に転じ、やや持ち直したという状況です。

合格者の内訳を性別でみると、女性が69.6%、男性が30.4%と全体の7割近くが女性。
年齢別では、「41~50歳」が全体の27.8%となる1万8,217人で最も多く、以下、「21~30歳」が1万6,753人(全体の24.0%)、「31~40歳」が1万3,679人(同22.5%)、「51~60歳」が9,693人(同16.2%)となっています。
また受験資格別にみると、「社会福祉施設の介護職員など」が3万9,350人と合格者全体の60.0%を占め、訪問介護員が9,899人(15.1%)、介護福祉士養成施設が5,649人(8.6%)です。
養成施設で受験資格を得る人は少数派で、現場である程度経験を積み、その上で受験、合格する人の割合が非常に多いです。
介護福祉士の仕事はどんな内容?
介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」において資格取得方法が規定されている国家資格。
介護福祉士の有資格者が独占する業務というものはないものの、本人の有する知識、能力を証明する資格であるのは間違いありません。
介護福祉士資格を取得すると、サービス提供責任者や現場のチームリーダーとして活躍することが求められ、責任が増す分、役職・給与のアップも期待できるのです。
介護現場での有資格者というと、ケアマネージャーや「ヘルパー」と呼ばれる介護職員初任者研修・実務者研修などもあります。
これら資格との関係性で言うと、介護福祉士は介護職員初任者研修、実務者研修の上位に位置し、これらの資格取得を経て介護福祉士を目指すというのがキャリアパスにおける1つの形です(2016年度より、実務経験ルートを通る場合に実務者研修の修了が義務化)。
一方ケアマネージャーは、介護保険サービス利用者のためのケアプランを作成する職で、そこで作られたプランを基に、現場で働く介護福祉士・介護士が各施設・事業所にて介護サービスを利用者に提供することになります。
介護福祉士の受験者・合格者が増えたのは介護福祉士になるルートが増えたから?
養成施設ルートのメリット
「養成施設ルート」とは、指定した養成施設に一定期間通い、卒業によって介護福祉士の受験資格を得るというルートのことです。
2016年度までは養成施設の卒業と同時に介護福祉士資格を取得できましたが、「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正に伴い、2017年度からは養成施設を出ても介護福祉士試験を受験して合格せねばならなくなりました。
ただ移行期間が設けられており、2017年度~2021年度の卒業者については、たとえ試験未受験あるいは不合格の場合でも、卒業後5年間は介護福祉士資格保持者として認められます。
この5年の間に資格試験に合格する、もしくはその間継続して介護業務に従事すれば、5年経過した後も介護福祉士として登録し続けることができるのです。
実務経験不要で、学ぶことに集中して効率的に資格取得に向けた勉強ができるのは、養成施設ルートの大きなメリットだと言えるでしょう。

養成施設ルートで介護福祉士を目指す場合、高校卒業後に、①介護福祉士養成施設で学習(2年以上)、②福祉系大学、社会福祉士養成施設、保育士養成施設などを経て介護福祉士養成施設で学習(1年以上)のいずれかを選択する必要があります。
実務経験者ルートのメリット
もう1つの「実務経験ルート」は、介護の現場で実務経験を積んだ後に介護福祉士試験を受験し、資格取得を目指すというルートです。
受験資格としては、対象とされている施設・事業所および職種において実務経験が3年(1,095日)以上あり、かつ実際の従事日時が540日以上あることが実務経験上の条件。
また先に述べた通り、実務経験ルートでは2016年度より「実務者研修」の修了(もしくは2012年度末までに介護職員基礎研修を修了し、喀痰吸引等研修も終了していること)も義務化されています。
実務経験ルートは、しっかりと経験、スキルを積んだ上で資格取得を目指せること、給与を得ながら勉強できるので生活が安定すること、そして学費負担が少ないことなどが主なメリット。
また資格取得のために受講せねばならない実務者研修は、それ自体修了すれば介護現場できちんと評価されます。
現場経験や研修を通じて、着実にキャリアアップしていることを実感できるのが、実務経験ルートの特徴です。
介護福祉士の人材不足を補うのは外国人なのか?
外国人合格者が年々増加
現在日本では、開発途上国の人材育成を支援する「技能実習制度」を実施しており、技能、技術、知識を取得すべく、多くの外国人(主にアジア)が技能実習生として日本で学んでいます。
技能実習生の受け入れ方法は、民間企業が中心となって受け入れる「企業単独型」と非営利の監理団体が実習生を受け入れ、傘下の企業で実習を行う「管理団体型」とがあり、2016年時点での研修生・技能実習生の数は全国で約23万人。
実習期間は最長3年とされ、現場でのOJTを通じて学習していくことになります。

介護分野も技能実習制度の対象分野となっており、2017年度の介護福祉士国家試験では、2014年度に入国したベトナム人の介護福祉士候補第1期生95人が受験して89名が合格し、初めてベトナム人の介護福祉士が誕生しました。
ベトナム人の合格率は93.7%と高く、受験者全体の合格率70.8%、経済連携協定(EPA)に基づく外国人受験者全体の50.7%を大きく上回る結果となっています。
2017年度試験におけるベトナム人を含むEPA候補者全体の合格者数は213人でしたが、これは前年度の合格者数104人の2倍以上。
今後もさらに増加していくものと考えられます。
外国人労働者を増やすことの不安は?
介護分野で外国人労働者を増やすことに対しては、さまざまな不安材料があるのも事実。
その1つとして、国が外国人労働者の増加を目的に、難易度を下げた日本語試験の実施を予定していることが挙げられます。
新試験ではこれまでよりも漢字の筆記を減らしてコミュニケーション能力を重視した内容となり、実質上試験のハードルはかなり下がる見込みです。
しかし介護の現場では、引継ぎの際の書類作成、あるいはサービス内容の報告書作成の際、漢字で表記された専門用語の読み書き能力が求められます。
そのため日本語試験の難易度を低下させると、現場での日本人職員との連携が難しくなるのではないかと懸念されているのです。
また外国人労働者を急に増やすことで、倫理性の低い受け入れ企業も増えるのではないかとの声もあります。
実際既に、外国人労働者に対して賃金不払い、長時間労働、不当な経費の天引きなど違法行為をする受け入れ企業が続出しており、国としても対策を迫られているのが現状なのです。
今回は、介護福祉士試験の合格発表のニュースを取り上げ、介護福祉士という資格・職業の特徴、そして近年増えている外国人合格者の話題について考察しました。
介護現場の深刻な人手不足が続く中、いかにして介護福祉士を増やしていくかは、外国人労働者の問題も含め、今後さらに議論を呼んでいきそうです。
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2020年9月7日 制定