高齢者のスマホ利用の実態とは? 500万人の高齢者にiPadが無償配布される背景に、8割もの高齢者からの「インターネットはなくてはならない」の声
2015年5月1日、日本郵政は米国アップル・IBMと提携し、2020年までに日本の高齢者人口の15%にあたる500万人に、高齢者用にカスタマイズされたiPadを無償で配布することを発表しました。
このiPadには、テレビ電話の機能を持つ「Facetime」や「メール」「写真管理」などの基本的なアプリのほか、薬の服用を管理したり、高齢者向けのサービスに簡単にアクセスしたりできるようなアプリが搭載される予定です。
現在、高齢者にとても便利なアプリが続々と開発されています。災害時に自動的に応答してくれるものや、家族とのコミュニケーションに便利なテレビ電話、スーパーなどから日用品を配送してもらえるものなどがあります。
総務省が実施した「タブレット端末で親に使わせたいサービス」という調査からも、高齢の親を持つ子世代は、これらのサービスを使ってもらいたいという希望があることがわかります。

今回、配布が発表された500万台という、決して少なくないこの数字、高齢者へのタブレット端末の普及・アプリ開発にかなり力を入れている流れが見てとれます。
一方で、同調査によると「親がタブレット端末を使うための阻害要因」には「使い方が難しくて使えない/57.3%」「あとで面倒を見るのが大変/54.4%」「親がIT自体に興味がない/42.5%」など、使ってもらいたいという周りの希望とは裏腹に、難しそうな現状も見えてきます。
はたして高齢者にアプリを使ってもらうことは、高齢者自身のニーズにあっているのでしょうか?現状をもう少し細かく見ていきましょう。
一般家庭の60代では50%以上がスマホを所有!アプリを使いこなせる素地はできている!?
50代では80%以上の所有率。今後は高齢者がスマホを持つのが当たり前の時代に
日本では2007年のiPhoneの登場から急速にスマートフォンの需要は増え、今ではシーズンごとにさまざまなサイズ・特徴のあるタブレット端末やスマートフォンが発売され、子どもから高齢者まで、ぐっと身近なものになりました。
先にあげた「テレビ電話」などのコミュニケーション用アプリの他にも、より高齢者やその家族、介護者にとって役立つアプリも登場しています。
文字を大きく表示するアプリやメールよりも簡単にメッセージを送り合えるアプリ、脳トレができるアプリ、薬の時間を教えてくれるアプリ、高齢者がスマートフォンを持つなどの動きを検知して健在であることを判断し、異変があると登録した緊急連絡先へ通知してくれるアプリなど多くのアプリがあります。
このようなアプリをうまく使えば、家族や介護者にとって手助けになるため、アプリが普及することによるメリットは多いでしょう。
2014年に行われた内閣府の調査によると、現在、スマートフォンの普及率は、もっとも多い「29歳以下の一般世帯」で94.6%、もっとも少ない「70歳以上の単身世帯」でも15.1%とすべての世代にわたって普及していることがわかります。

他の世代と比べると、高齢者の普及率がぐっと下がりますので、「やはり高齢者にスマートフォンの操作は難しいのではないか?」との見方もあります。
しかし、上の図からも分かるように、「ガラケー(ガラパゴス携帯)」などと呼ばれる従来型携帯電話は「70歳以上の一般世帯」でも73.3%の高い普及率があり、どの世代であってもスマートフォンもしくは携帯電話を1人1台保有するという状態が近いことがわかります。
「新しい機械を使いこなすのは難しい」と思われてしまいがちな高齢者ですが、すでに多くの人が携帯電話を利用しています。これは、携帯電話発売前の予測よりずっと高い普及率です。
こうした状況からみると、今はまだまだ少ないように感じられる高齢者のスマートフォンやタブレット端末の普及率も、今後伸びることが予想されます。
技術が進むにつれ、便利なことにばかり注目してしまいがちですが、高齢者がアプリを使いこなすことは、現実的に可能なのでしょうか?
「インターネットはなくてはならない」と答える高齢者が約8割も!
使い方を教えれば高齢者でもスマホやタブレットを使いこなせる…はず
高齢者がタブレットやスマートフォンを買った後、「壊れないよう、大事に引き出しにしまっておく」「使うときだけ電源を入れる」など、笑い話のような話も聞きます。
買うだけでなく、使わなければ意味がありませんから、そのための方法も検討する必要がありそうです。
また、タブレットやスマートフォンは便利な一方で、「テレビ電話」「災害時の応答」などのアプリを使う際には、インターネットに接続する必要があるということも忘れてはいけません。

総務省の「ICT利活用社会における安心・安全等に関する調査(2011年)」によると、インターネット利用上の課題としてあがっているのは「インターネット接続料金が高い」がダントツで、とくに高齢者に多い回答が「端末の使い方がわからない」「新しい技術・製品・サービスについていくのが難しい」という技術面での課題であることが目立ちます。
また、「インターネット活用技術の習得手段」という項目の調査では、高齢層のネット未使用者に「習得する機会がない」という回答が多く、今後の普及を考えるうえで注目すべきといえます。
毎月のインターネット使用料金を抑えられるような、格安の料金体系をもつ会社からもスマートフォンが販売され始めていますが、各社からも、もっと気軽に使えるような料金体系が増えれば、高齢者向けアプリの可能性もますます広がるでしょう。
料金に関しては、今後に期待したいところですが、実際にインターネットを使用している人の声を聞いた「インターネットの必要度」という調査では、高齢層からも「ほぼ生活になくてはならないものになっている」「必須ではないが、生活になくてはならないものが増えてきている」という回答が合わせて76.1%もあります。

このことから、使い始める前は「難しそう」というイメージや「機会がない」という課題はありますが、一度使ってしまうと必需品になる。そんな状況が見えます。高齢者だからといって「使いこなせない」ということは、なさそうです。
高齢者向けアプリが普及するにつれて、介護などさまざまな場面で役立つことが期待されるので、アプリを使いこなしてもらうためにも、使い方を教える機会を増やすような取り組みも重要になります。
高齢者の見守りにアプリは最適!高齢者との“つながり”がもてるアプリの開発に期待!
ルーマニアでは、若者と高齢者がSNSでつながって…なんとそれがテレビ番組に!?

高齢者にまつわる課題としては、「独居」「介護」「徘徊などの症状がある認知症」「孤独死」などがあります。
これらの課題への対策としては、「介護施設に入居することで24時間365日見守る」「家族がつきっきりで見守る」「独居の高齢者宅への訪問見回り」「家族が訪問する」などさまざまな方法がとられています。
しかし、自ら仕事をしながら高齢者を介護することは、現実的には難しい面も多くあるでしょう。
こういった状況のなかで、24時間365日高齢者と行動をともにすることができるタブレットやスマートフォンに搭載されたアプリの可能性に期待が高まります。
いつどこにいても状況がわかる・連絡が取れる、異変があった時に周囲に知らせるなどのしくみを備えたアプリがあると、家族や介護者にとっても負担を軽減することに役立ちそうです。
また、アプリを利用することで、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などを通じてたくさんの人と繋がることもできます。世界中でそのしくみを利用し、高齢者を社会から孤立させない取り組みも行われています。

ルーマニアでは、75歳以上の高齢者のうち約4割が一人暮らしをしています。そんななか、SNSを利用したある実験が行われました。
夫を亡くした料理好きの女性2人が、SNSを通じて地域に暮らす学生たちに昼食を食べにくるよう呼びかけたところ、どんどん書き込みが寄せられ、週末になると学生が集まるようになったそうです。今では2人のお料理番組が放送されるほど。
この例のように、薄れつつあった世代を越えた交流が可能な時代になっています。流行に敏感で新しい機械にもすぐに順応することができる若い世代が、高齢者にスマートフォンやアプリの使い方を教える、なんていう可能性も期待できます。
いままで出来なかったことが可能になる。手軽に、もっと周囲と繋がる社会へ
めざましいスピードでアプリの開発は進んでいます。
国内外を問わず遠くにいる人ともリアルタイムでやり取りができる、離れていても行動がわかる、世界中どこにいても無料で会話ができるなど、ほんの十数年前には考えられなかったことが、手軽にできるようになりました。
これから先、さまざまな場面でタブレット端末やスマートフォン用のアプリが活躍することは、容易に想像できます。
思うようにカラダが動かず、外出する勇気をなくして、外の世界と疎遠なってしまう高齢者にとっては、家にいながらにして社会と繋がるきっかけ作りにも役立つでしょう。
社会との繋がりが薄くなり、ますます孤立してしまうということにならないように、このような新しいしくみを利用し、心細さや不安を減らすきっかけをつくり、また新しい楽しみを見つけることができたら、高齢者を取り巻いている問題を減らすこと可能になるかもしれません。
周囲の人にとっても、高齢者との新しい「接し方」「見守り方」ができるようなアプリ開発が進むことに期待したいものです。
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2020年9月7日 制定