東北大学、高齢者の「歯の数」と睡眠時間に密接な関係がある研究結果を発表!最も死亡リスクを下げる睡眠時間とは?
歯の数が少ない高齢者の睡眠時間に異変あり
東北大学、高齢者の歯と睡眠時間に関する研究結果を発表
東北大学は10月5日、高齢者の睡眠時間と歯の本数との関係を示す研究結果を発表しました。歯が0本の高齢者は、歯が20本以上ある高齢者よりも、睡眠時間が長時間化あるいは短時間化するリスクが高まることを明らかにしました。
高齢者にとって「睡眠」は重要です。睡眠時間が短すぎる場合はもちろん、長すぎる場合においても健康に悪影響を及ぼし、死亡率が上昇することが研究によって明らかにされています。
歯はかみ合わせを維持する役割を持ち、「歯がない人は下顎が上方に回転することで気道の状態に悪影響を与え、睡眠時の呼吸を妨害する恐れがある」との指摘が、多くの研究者・専門家により以前から指摘されていました。
そこで今回、東北大学は高齢者における歯の残存数と睡眠時間の関連性を検証する大規模な調査を行ったわけです。
研究結果を受けて同大学の研究グループは、歯を失わないように日ごろから歯の健康の維持を行うことが適切な睡眠時間を確保することにつながり、さらには健康寿命の延伸にもつながることが示唆される、と指摘しています。
歯が少ない高齢者は過不足睡眠の傾向に
今回の研究は、2010年に行われた日本老年学的評価研究の調査結果を使用する横断研究の形で実施され、2万548人(平均年齢73.7歳)から得た回答を基に実施されました。睡眠時間7時間を基準にして、現在歯数と短時間・長時間睡眠の分析を行っています。
そして研究の結果、歯が0本の高齢者は、睡眠時間が4時間以下の短時間睡眠が3.3%(100人)、10時間以上の長時間睡眠が9.0%(272人)だったのに対し、歯が20本以上残っている高齢者では、短時間睡眠が2.3%(160人)、長時間睡眠が2.8%(195人)と少なくなっていたとのこと。
さらに、検証によって歯の本数と睡眠時間の間にはU字型の関係性があることも判明しました。現在歯数が20本以上の高齢者と比べた場合、歯数が0本の高齢者は約1.4倍の短時間睡眠、もしくは約1.8倍の長時間睡眠である有意なリスクが認められたと言います。
また、残存歯数が1~9本の高齢者においても、1.3倍の短時間睡眠または1.5倍の長時間睡眠の危険性があることがわかりました。歯の数が少ないほど、健康に有害となる短時間睡眠あるいは長時間睡眠のリスクが高まることが明らかにされたのです。
病気・死亡リスクは睡眠時間で大きく変わる
統計上、最も健康に良い睡眠時間は7時間
JACC Studyが行った調査(全国の約11万人を対象)では、睡眠時間が7時間の人を基準とした場合、男性だと4時間未満の短い睡眠時間でも死亡リスクは上がりませんでしたが、女性では約2.0倍も向上することが判明しました。
さらに7時間以上の長い睡眠をとると、男性・女性ともに死亡リスクを上げることも明らかにされています。睡眠時間を適切に確保することが健康維持において重要であり、特に女性の場合、短すぎず、長すぎない睡眠を意識する必要があります。
しかし、人間は加齢とともに睡眠時間が少なくなる傾向があります。
幼児期(~2歳)だと平均睡眠時間は10時間以上ありますが、小児期(2~13歳)には10時間を切り、思春期(14~30歳)が終わるころまでに8時間以下まで低下。
90歳前後になると平均睡眠時間は6時間以下まで減ります。
JACC Studyの研究結果を踏まえると、高齢女性の方は睡眠時間の減少に伴って死亡リスクが高まっていく恐れがあるのです。
個人差があるためあくまで目安ですが、統計上では7時間程度の睡眠が最も健康に良いとされています。
糖尿病、メタボ、ストレス…睡眠不足は病気を招く
またアメリカにあるペンシルバニア州立大学が行った研究では、高血糖、脂質異常、高血圧、内臓肥満などのいわゆる「メタボ」の人は、1日の睡眠時間が6時間未満だと、脳卒中あるいは心臓病によって死亡するリスクがメタボではない人の約2倍、6時間を超える場合は約1.5倍高まることが明らかにされています。
さらに「日本生活習慣病予防協会」によれば、睡眠不足が続くことでストレスを原因とするコルチゾールなどのホルモンが増加してインスリンの働きが悪化し、血糖値が低下しにくくなって糖尿病のリスクがあります。
ほかにも、睡眠不足は食欲を高めるグレリンといったホルモンを増やし、その一方で満腹感を引き起こすレプチンなどのホルモンが減るため、体重増加につながりやすくなると言います。
睡眠と糖尿病やメタボの間には深い関連性があり、適切な睡眠時間をとっていくことが、健康維持・死亡リスクの低下につながります。
一般的に睡眠時間は、日照時間の多い夏だと短くなりやすく、早い時間に日が沈む冬の場合では長くなりやすいです。
もし日中に強い眠気を感じたら、睡眠不足のサインなので注意せねばなりません。
デンタルケアで健康寿命を伸ばすことが可能に
75歳以上では、歯は15本以下まで減少する
今回の東北大学の研究結果では、高齢者が適切な睡眠時間を確保するうえでは「歯」が大事であることが示されましたが、しかし実際には歯は加齢とともに失われていく傾向にあります。
厚生労働省の「歯科疾患実態調査」(2011年)によれば、1人あたりの平均歯数を年齢階層別にみると、年齢が進むにつれて現在歯数は減っていき、65歳以上では20本以下、75歳以上では15本以下まで減少します。
75歳以上になると、本来の歯数(28本)を半数以上なくしている人が多く、20本以上残っている人の割合は37%に過ぎません。歯の寿命は性別や生えている場所によって差がありますが、全体としては50~60年前後と言われています。
高齢期に歯を失う本数が増える最大の原因は、歯周病の増加です。2005年に行われた「全国抜歯原因調査」の結果によると、抜歯の原因は約4割が「歯周病」であり、虫歯による抜歯の割合(約3割)よりも多くなっています。
歯周病は「歯周病原細菌」による感染症で、40歳を過ぎた日本人の約8割が歯周病にかかっていると言われるほど多い疾患です。
通常は、免疫作用によって歯周病原細菌の活動は抑制されていますが、疾病やストレス、疲労などによって免疫力が下がると、歯周病は悪化します。
歯を多く残して適切な睡眠時間を手に入れる
歯の寿命を延ばしていくには、日常的に歯のケアが大切です。虫歯・歯周病の予防の上では、口内の細菌が集まっている「プラーク(歯垢)」を日ごろから取り除いていくことが欠かせません。
また自分自身でケアを行うだけでなく、定期的に歯科での検診を受け、口内に問題が起こっていないか医師の診断も重要です。
歯の噛み合わせが悪い場合は、歯科医に相談して速やかに治療しましょう。
噛み合わせを治すことで、歯の負担を減らし、顎関節症などの予防にもなります。
さらに歯を存続させる上では、食事や生活習慣を正すことも大事です。栄養バランスの取れた食事を摂り、喫煙などの生活習慣を見直すことで体の免疫力が向上し、歯の寿命を延伸させることができます。
以上のような取り組み・習慣を日常生活の中に取り入れていけば、80歳を過ぎても20本以上の歯を残せるようになり、適切な睡眠時間の確保にも繋がっていきます。
また既に高齢の方は、こうした睡眠の過不足がもたらす健康上のリスクを念頭に置いておく必要があります。
今回は、東北大学の研究結果を参考に、高齢者の睡眠と歯の関係について考えてきました。より多くの歯を残せるように歯の健康を保つことが、睡眠時間を適切に維持し、健康長寿の秘訣になるのです。
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2020年9月7日 制定