バスで高齢者の転倒事故が急増中!免許返納で加速する”バス社会”で、お年寄りを事故から守る方法とは?
高齢者の生活の「足」になりつつあるバス
路線バスで重傷を負う事故が250件発生!被害者の8割が高齢者
2013年度から2017年度までの5年間で、路線バスの運行中に乗客が転倒し、重傷を負う事故が250件発生していたことが先月消費者庁の行った発表で判明しました。
この事故の被害者の8割が高齢者で、停発車などの際に転倒した事例が最多でした。
こうした中、埼玉県熊谷市では運転免許を返納した高齢者を対象としてコミュニティーバスの無料券を配布しています。また、東京都では東京バス協会が都内の70歳以上の高齢者にシルバーパスの発行を行っています。
バスをはじめとした公共交通機関を安価、あるいは無料で利用できる制度を創設するなどして各自治体が対応をしています。移動手段が限られる高齢者にとって、路線バスは買い物や通院と言った日常生活を送るために欠かせないものとなっているのです。
しかし、その高齢者の生活の足として欠かせない交通機関で高齢者の転倒事故が急増している、という今回の消費者庁の発表は、これからさらに高齢化が進行していく日本にとっては、深刻な問題です。
事故の背景には高まる高齢者のバス需要が
高齢者の5割以上が公共交通機関を利用している
内閣府が発表した「高齢者の日常生活に関する意識調査結果」の2014年度版においては、60歳以上の高齢者に主な外出手段について複数回答可能なアンケートを取ったところ、バス・電車が53.7%と半分以上の高齢者が公共交通機関を使用していることがわかりました。

また、国土交通省の調査では、60歳以上の高齢者の外出手段について、バスを利用する人が26.7%と、電車を利用する17.2%に比べて多いとされているなど、公共交通機関の中でもバスへの依存度が高いことがわかります。
また、今年の1月に警察庁がまとめたところによれば、昨年に運転免許を自主返納した事例は42万233件あり、一昨年よりも7万6,000件以上増えて過去最多となりました。この高齢者の免許返納もバス利用の高まりを後押ししていると考えられます。
上述の免許返納者や、高齢者の人口が増えることを考えると、今後は高齢者の公共交通機関の利用率はさらに高まることが考えられます。こうしたバスでの事故は、しっかりとした対策を講じない限り、高齢利用者の増加に伴い、さらに増えてしまう可能性もあるのです。
免許返納や加齢による足腰の衰えで公共交通機関に頼らざるを得なくなる高齢者にとってバスでの転倒などの事故は、生活上の大きな危険になりかねません。
原因は運転手の運転技術?それだけではない問題が発生状況から判明
高齢者のバスでの転倒事故は、主に停発車時に起こっています。
消費者庁が2013年に行ったアンケートでは、バスで転倒した経験のある高齢者144人のうち、「バスの動きが思ったより激しかった」が32%、「危険を意識していなかった」が30%にのぼりました。
これは、急ブレーキを踏んでしまう、あるいは停発車の際にアナウンスを行わないなど、バスの運転手の運転技術をはじめとした問題によって引き起こされているものも少なくありません。
そのためバス会社は高齢者の特性に関する教育を運転手に行ったり、添乗員を配置して安全確認を行うなどして、対策に力を入れています。

しかし、事故の原因はほかにもあります。高齢者の「周囲に迷惑をかけないように」という気持ちが事故につながってしまったケースです。
中でも多いのが、バス停に停車する前に立ち上がり、停車の際に転倒するという事故です。
これは高齢者自身が降車に時間がかかることを認識しているため、先に立ち上がって運転手や乗客の迷惑にならないようにと起こした行動から事故につながったとも考えられています。
高齢者の周りへの気遣いが事故を起こしてしまうという状況もまた、バスでの転倒事故の原因として、無視できないひとつの要素です。
高齢社会に求められる”スピード”とは
高齢者の転倒原因は筋力低下にある
これらの転倒が発生するもうひとつの大きな原因は、高齢者の身体能力の低下によるものです。大きく低下するものとしては、なによりも筋力でしょう。
一般的に、20~30代のピーク時と比べると、60歳を超えた高齢者は筋力が3~4割ほど低下すると言われており、65歳以上になると筋肉量の減少スピードが加速度的に早くなっていくとされています。

筋力の低下により、急に踏ん張ったり、姿勢の維持が難しくなっている高齢者は、日常生活においても転倒の危険があることは周知の通りです。
そんな高齢者にとって、「バスの中で立つ」という足場が不安定な状況は危険です。
特に急停車や急発進という状況においては転倒してしまうリスクが大きいのです。
また、三半規管の機能も同じく低下しているため、バランスを取るのが難しくなっていることも、転倒のリスクを高める一因となっています。
また、転倒事故のリスクも高齢になればなるほど高くなっているのも問題です。
骨の強度が弱くなっていることから、大腿骨の骨折などで寝たきりになってしまい、外出が難しくなり引きこもりがちになってしまいます。
それを原因として認知症を発症し重症化するケースなども多く見られます。
高齢者が転倒事故から身を守るためにできること
バスの転倒事故を防ぐ方法として、バスのバリアフリー化や、運転手の教育ももちろん重要です。
しかし、バスの停発車など、転びやすい状況のときには注意を払う、乗車後は可能な限り着席し、混雑時に座れないときには手すりや吊り革にしっかりと捕まるなど、転倒を防ぐための具体的な行動を高齢者がとることも、すぐにできる現状の解決策として同じく重要です。
また、バスでは急ブレーキがいつ起こるかわからないという危険を意識することや、乗降中につまずいたりしないよう、サンダルやハイヒールなどの不安定な履物を避けるなどの心がけも大切です。
現在、京浜急行電鉄と横浜国立大学、横浜市が、低速で走るゴルフ用カートを高齢者の移動手段に採用するための実証実験が先月公開されましたが、こうした高齢者に合わせた移動手段を考えるのもひとつの方法です。
いま、まさに高齢化の進行と共に高齢者や障害のある人などの交通弱者の速度に合わせていく配慮というものが、社会全体にも求められているのです。
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2020年9月7日 制定